指揮官の休日 No.069 敵艦見ユトノ警報ニ接シ・・・・
2018/03/23 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.077 情報はそこにあった を掲載しています。
私たちの周りに溢れかえっている情報について考察しています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1105 をご覧ください。
No.069 敵艦見ユトノ警報ニ接シ・・・・
以前に専門コラムで会社における報告のあり方について論じました。
かならずしも5W1Hが報告に必須ではないことに論及し、歴史的にも短い報告の電報として、真珠湾で日本海軍の艦載機の奇襲を受けた米太平洋艦隊が発した「真珠湾空襲、演習にあらず。」“ Air raid, Pearl Harbor This is no drill “ という電報を紹介しました。
まずはこちらをご覧ください。
https://aegis-cms.co.jp/1068
当メールマガジンはこれまでタイトルが示すとおり「コーヒー」だの「ドライマティニ」だの、どうでもいいことを綴ってきておりますが、実は、本当の目的は専門コラムの更新をお知らせするために配信させて頂いているものです。
ところがその本来の目的とは裏腹に、このメールマガジンだけお読みになって、肝心のコラムを読んで頂いていない方が多すぎることに最近気付きました。それどころか、「コラムなんかも書いてるんだ?」などと言われる始末で、このところかなりの危機感を覚えている次第です。・・・・このままではコンサルタントではなくエッセイストになってしまう・・・・・と。
そこで、今回は本来の目的に若干立ち返り、専門コラムに記載した内容に関連するマガジンとさせて頂きます。
ということは、いつものどうでもいい話ではなく、若干内容のある話です。
太平洋戦争の始まりに際し、日本海軍の艦載機の奇襲攻撃を受けた米海軍太平洋艦隊が “ Air raid, Pearl Harbor This is no drill “ という歴史的に短く、しかし軍事的には必要かつ十分な報告電を打つ直前、同じくらい歴史的に有名な電報が同じくハワイから発信されています。
これは先の電報と反対に、日本海軍によって発信された電報です。皆様もご存知かと思います。
「トラトラトラ」です。
これは映画にもなりました。
映画のタイトルは『トラ・トラ・トラ!』でしたが、実際にはモールス符号で「トラ」となる「・・―・・ ・・・」を3連送したものです。
通常、これは「我奇襲に成功セリ」という意味として捉えられていますが、実は攻撃の成功を報告しているのではありません。
真珠湾攻撃を奇襲で行うという指揮官の判断を伝えているのです。
攻撃計画に奇襲と強襲の両方のプランがあったからです。
敵に発見されずにオアフ島上空に達して奇襲攻撃が可能な状況であれば、米艦を直接撃沈できる艦上攻撃機の魚雷による攻撃から開始し、事前に敵に察知されて強襲攻撃にならざるを得ない場合には、まず敵の対空防御を弱体化させる急降下爆撃を先に行うということが計画されていました。
攻撃隊指揮官が敵に発見されずにオアフ島上空に達したので「奇襲」攻撃を選択できる状況であることを機動部隊指揮官に報告したものがこの「トラトラトラ」です。
したがって、電文の意味は「奇襲ニ成功」であり、「奇襲攻撃ニ成功」ではないのです。敵に発見されず、奇襲できる位置まで進出できたという報告であって、攻撃はこれからなのです。
日本には実はもう一つ、歴史的に有名な電報があります。
日露戦争の勝敗を決定的なものにした日本海海戦において、敵艦隊発見の報告を受けて泊地を出撃する連合艦隊から大本営に対して送られた報告です。
「敵艦隊見ユトノ警報ニ接シ聯合艦隊ハ直ニ出動之ヲ撃滅セントス 本日天気晴朗ナレ共波高シ」
この電報は司馬遼太郎氏の『坂の上の雲』でも取り上げられ有名になりました。
先に挙げた拙速を貴ぶ軍人の電報にしては散文的であり、また詩的でもあります。
しかし、この報告にも実はいろいろ意味が含まれており、読み取ることのできる人が読むといろいろなことが理解できます。
この報告でまず注目すべきは「撃滅」という言葉が使われていることです。
この当時の軍人たちは後世の太平洋戦争末期の軍人たちとは別人種であるかのごとく、表現が控えめでした。
出撃に際しても「願わくば努力せよ」などという訓示を与えていたのです。
太平洋戦争では「天佑神助ヲ確信シ、全軍突撃セヨ」などと神頼みになっているのですが、日露戦争を指導した軍人たちはもっと冷静だったようです。
というよりも、この当時の軍人たちは大言壮語を品が無いとして嫌うだけのセンスを持っていました。武士道を身に付けていたのです。
その軍人たちの中で最も寡黙な指揮官であった東郷連合艦隊司令長官の出撃に向けた報告電に「撃滅」という文字が現れたことで、大本営は連合艦隊の並々ならぬ覚悟を再認識しました。
つまり、例え敵と刺し違えでも全滅させてやるという決意を読み取ったのです。
この当時の軍人が「撃滅」という言葉を使うには、昭和の軍人たちとは全く異なる背景や覚悟があったのです。
この後に続く「本日天気晴朗ナレ共波高シ」という一文が、単に文章を流麗にしたのみならず、波が荒い海面では射撃訓練を十分に行っている日本海軍に有利であることを示したことは有名です。
しかし、この一文にはもう一つの意味が含まれています。
大本営は、現場海域が時化ているので旧式の小型艦艇及び水雷艇は出撃ができず、主力艦のみで出撃するという報告として理解しました。
連合艦隊の作戦計画は当然のことながら、あらゆる場面を想定して作られています。
その中で、小型艦艇が主力に先立って出撃できない場合の計画を採用するという報告でもあったのです。
小型艦艇及び水雷艇で執拗に襲撃を繰り返し、本隊同士の決戦が始まる前に敵艦隊を撹乱し、陣形を乱し、ロシア艦隊の乗員を配置にくぎ付けにして休息を取らせないという作戦を取ることができず、いきなり主力艦同士の殴り合いになるぞと報告しているのです。
大本営は苦戦と大被害を覚悟せざるを得ないと考えました。
ただし、波が荒いので訓練が十分な我が方に有利であり、天気がいいので遠くからも射撃に必要な観測ができるだけではなく、取り逃がすこともないだろうと判断したのです。
それらの内容を「本日天気晴朗ナレ共波高シ」という一文に潜ませてしまい、かつ、軍事電報を一つの文学作品に仕立ててしまった作戦参謀の秋山真之という軍人の才能は、やはり私のような凡人には及びもつかない、とてつもないものだったと改めて思い直しています。
ちなみにこの秋山真之を比較文学の対象として研究された島田謹二氏の『アメリカにおける秋山真之』という本を、私は四半世紀前に連絡官としてペンシルバニア州へ赴任する機内に持ち込んで読んでいました。
忙しかった艦隊勤務の間に買い求めた『アメリカにおける秋山真之』と『ロシアにおける広瀬武夫』のそれぞれ上下巻計4冊の大作をいつか読んでやろうと思っていたのですが、絶好の機会だと思ったのです。
秋山真之が最初に米国に渡ったのが大尉の時で、連絡官として赴任する私も1等海尉で同じ階級だったからです。
離陸してしばらくしてから読み始めたのですが、読みふけるほどに、この明治海軍きっての秀才と謳われた名参謀とは、私など足元にもよれないほどの開きがあることを思い知らされました。
海軍士官であればその名を知らぬ者のない米国海軍の海軍戦略の大家アルフレッド・マハンの本は、私も2冊だけ持っており、荷物に入れて米国に送ってありました。しかし、それは翻訳です。
一方の秋山真之は、マハンの論文のほとんどを読んで理解しています。翻訳などない頃の話です。
私がそれらの本を真剣に読んだのは、連絡官勤務を終えて帰国してから入学した幹部学校指揮幕僚課程の学生になってからであり、それもアメリカに送ったものの読まずに送り返した翻訳の2冊です。
あらためて原文で読んだのは同じく幹部学校の高級課程学生の時で、すでに1等海佐でした。
大佐になってやっと彼が大尉の時には読んでいた書物に手が届いたということなのです。
明治の海軍がこのような人材を抱えていたということがどれだけ幸運だったことかと考え、そして、21世紀の自衛隊にもこういう人材を育てなければと思ったものでした。
次回からはまたもとに戻って、どうでもいい内容を綴ってまいります。
このメールマガジンが、専門コラムへの導線を敷いているのだということをちょっと思い出して頂ければ幸いです。
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Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
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No.077 情報はそこにあった を掲載しています。
“A Peer-to-Peer Electronic Cash System” と聞いて、「オッ」と思う方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
これはある論文のタイトルであり、今世紀、世界に最も大きな影響を与えた研究かも知れません。
執筆者は Satoshi Nakamoto という方ですが、どこの誰なのか誰も知りません。日本人の男性のような名前ですが、それも真偽の程は分かりません。
世界中で行われる取引の決済手段はおろか契約そのもの、あるいは情報の世界に革命を引き起こしつつあるビットコインをはじめとする暗号通貨の基本的な考え方を世に問うた最初の論文と言われます。
続きはこちらからお読みください。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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スペシャルセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変えるクライシスマネジメントの5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
経営トップの皆様、役員、各部門の長の方々のご参加をお勧めします。
開催場所:ホテルグランドヒル市ヶ谷
東京都新宿区市ヶ谷本村町4-1
開催時期:決定次第お知らせします。
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
エクゼクティブセミナー
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どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
スペシャルセミナーの内容を踏襲しつつ、特に経営トップのために企画されたセミナーです。部隊指揮官、企業の役員、経営者を経験している講師が、経営トップの皆様に特に伝えたい思いを語ります。
経営トップ、役員等の方々限定のセミナーです。
開催場所: 当社鎌倉極楽寺セミナーハウス
リゾート感覚溢れる湘南鎌倉の隠れ家的セミナーハウスです。
限定少人数で開催いたします。
(住所は公開しておりません。参加の方に個別にお知らせします。)
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セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
セミナーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるのかどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたいと考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がないので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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No.069 敵艦見ユトノ警報ニ接シ・・・・
以前に専門コラムで会社における報告のあり方について論じました。
かならずしも5W1Hが報告に必須ではないことに論及し、歴史的にも短い報告の電報として、真珠湾で日本海軍の艦載機の奇襲を受けた米太平洋艦隊が発した「真珠湾空襲、演習にあらず。」“ Air raid, Pearl Harbor This is no drill “ という電報を紹介しました。
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そこで、今回は本来の目的に若干立ち返り、専門コラムに記載した内容に関連するマガジンとさせて頂きます。
ということは、いつものどうでもいい話ではなく、若干内容のある話です。
太平洋戦争の始まりに際し、日本海軍の艦載機の奇襲攻撃を受けた米海軍太平洋艦隊が “ Air raid, Pearl Harbor This is no drill “ という歴史的に短く、しかし軍事的には必要かつ十分な報告電を打つ直前、同じくらい歴史的に有名な電報が同じくハワイから発信されています。
これは先の電報と反対に、日本海軍によって発信された電報です。皆様もご存知かと思います。
「トラトラトラ」です。
これは映画にもなりました。
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通常、これは「我奇襲に成功セリ」という意味として捉えられていますが、実は攻撃の成功を報告しているのではありません。
真珠湾攻撃を奇襲で行うという指揮官の判断を伝えているのです。
攻撃計画に奇襲と強襲の両方のプランがあったからです。
敵に発見されずにオアフ島上空に達して奇襲攻撃が可能な状況であれば、米艦を直接撃沈できる艦上攻撃機の魚雷による攻撃から開始し、事前に敵に察知されて強襲攻撃にならざるを得ない場合には、まず敵の対空防御を弱体化させる急降下爆撃を先に行うということが計画されていました。
攻撃隊指揮官が敵に発見されずにオアフ島上空に達したので「奇襲」攻撃を選択できる状況であることを機動部隊指揮官に報告したものがこの「トラトラトラ」です。
したがって、電文の意味は「奇襲ニ成功」であり、「奇襲攻撃ニ成功」ではないのです。敵に発見されず、奇襲できる位置まで進出できたという報告であって、攻撃はこれからなのです。
日本には実はもう一つ、歴史的に有名な電報があります。
日露戦争の勝敗を決定的なものにした日本海海戦において、敵艦隊発見の報告を受けて泊地を出撃する連合艦隊から大本営に対して送られた報告です。
「敵艦隊見ユトノ警報ニ接シ聯合艦隊ハ直ニ出動之ヲ撃滅セントス 本日天気晴朗ナレ共波高シ」
この電報は司馬遼太郎氏の『坂の上の雲』でも取り上げられ有名になりました。
先に挙げた拙速を貴ぶ軍人の電報にしては散文的であり、また詩的でもあります。
しかし、この報告にも実はいろいろ意味が含まれており、読み取ることのできる人が読むといろいろなことが理解できます。
この報告でまず注目すべきは「撃滅」という言葉が使われていることです。
この当時の軍人たちは後世の太平洋戦争末期の軍人たちとは別人種であるかのごとく、表現が控えめでした。
出撃に際しても「願わくば努力せよ」などという訓示を与えていたのです。
太平洋戦争では「天佑神助ヲ確信シ、全軍突撃セヨ」などと神頼みになっているのですが、日露戦争を指導した軍人たちはもっと冷静だったようです。
というよりも、この当時の軍人たちは大言壮語を品が無いとして嫌うだけのセンスを持っていました。武士道を身に付けていたのです。
その軍人たちの中で最も寡黙な指揮官であった東郷連合艦隊司令長官の出撃に向けた報告電に「撃滅」という文字が現れたことで、大本営は連合艦隊の並々ならぬ覚悟を再認識しました。
つまり、例え敵と刺し違えでも全滅させてやるという決意を読み取ったのです。
この当時の軍人が「撃滅」という言葉を使うには、昭和の軍人たちとは全く異なる背景や覚悟があったのです。
この後に続く「本日天気晴朗ナレ共波高シ」という一文が、単に文章を流麗にしたのみならず、波が荒い海面では射撃訓練を十分に行っている日本海軍に有利であることを示したことは有名です。
しかし、この一文にはもう一つの意味が含まれています。
大本営は、現場海域が時化ているので旧式の小型艦艇及び水雷艇は出撃ができず、主力艦のみで出撃するという報告として理解しました。
連合艦隊の作戦計画は当然のことながら、あらゆる場面を想定して作られています。
その中で、小型艦艇が主力に先立って出撃できない場合の計画を採用するという報告でもあったのです。
小型艦艇及び水雷艇で執拗に襲撃を繰り返し、本隊同士の決戦が始まる前に敵艦隊を撹乱し、陣形を乱し、ロシア艦隊の乗員を配置にくぎ付けにして休息を取らせないという作戦を取ることができず、いきなり主力艦同士の殴り合いになるぞと報告しているのです。
大本営は苦戦と大被害を覚悟せざるを得ないと考えました。
ただし、波が荒いので訓練が十分な我が方に有利であり、天気がいいので遠くからも射撃に必要な観測ができるだけではなく、取り逃がすこともないだろうと判断したのです。
それらの内容を「本日天気晴朗ナレ共波高シ」という一文に潜ませてしまい、かつ、軍事電報を一つの文学作品に仕立ててしまった作戦参謀の秋山真之という軍人の才能は、やはり私のような凡人には及びもつかない、とてつもないものだったと改めて思い直しています。
ちなみにこの秋山真之を比較文学の対象として研究された島田謹二氏の『アメリカにおける秋山真之』という本を、私は四半世紀前に連絡官としてペンシルバニア州へ赴任する機内に持ち込んで読んでいました。
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秋山真之が最初に米国に渡ったのが大尉の時で、連絡官として赴任する私も1等海尉で同じ階級だったからです。
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1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
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代表取締役 林 祐
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