指揮官の休日 No.040 中国原子力潜水艦領海侵犯事件
2017/09/01 (Fri) 09:15
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.048 災害救助犬 を掲載いたしております。
災害救助犬について紹介しています。
詳しくは、http://aegis-cms.co.jp/675 をご覧ください。
No.040 中国原子力潜水艦領海侵犯事件
世の中は、北朝鮮が北海道の上空を通過させたミサイルの話題で溢れています。
この10日前後、いわゆる政治評論家という人たちが、いかにその場の思い付きだけでものを言っているのかを思い知らされるテレビ番組ばかりでうんざりしていました。
専門コラムでも指摘していますが(http://aegis-cms.co.jp/670)、29日の早朝に北朝鮮がミサイルを実際に発射するまでは、ミサイルの軌道が測定できないから迎撃はおそらく無理、失敗すれば国民は不安になるし、そもそも迎撃などすれば北朝鮮と戦争になるからそんなことはするべきではないという東大名誉教授や、海上自衛隊がグァムへ飛ぶミサイルを撃ち落としたら集団的自衛権行使の要件から逸脱するという法律の専門家が堂々とテレビに登場しており、評論も地に堕ちたという感がしていました。
政治学専門の東大名誉教授が、弾道ミサイルの軌道の計算を終えるのに必要な時間が発射から数十秒であることを知らないというのには唖然とさせられます。計算自体は一瞬なのですが、打ち上げ後のミサイルの動き方を見極めるのに若干時間がかかるのです。それでもどこを狙って発射されたものかを見極めるのに2分はかかりません。だから3分後にはJアラートが発令されるのです。
この東大名誉教授はJアラートの仕組みを全く理解していないのでしょう。また、多分迎撃は無理というのは、日本が何を根拠に数兆円を投じて弾道ミサイル迎撃態勢を整備してきたのかも理解していないということであり、政治学者としてあまりにも不勉強です。
また、グァムに飛ぶミサイルを迎撃するにはイージス艦は硫黄島より南に展開しなければなりません。本土を防衛するために日本海にいるイージス艦にグァムに向かうミサイルを迎撃できるかどうか、その程度の基礎知識のない評論家が安全保障問題を語るので多くの方々に混乱と不安を与えてしまうのです。
とにかく、マスコミの出鱈目さ加減にうんざりさせられた8月でした。
そこで今回は、最近尖閣諸島でのニュースがあまり出てこない中国のお話です。
2004年11月10日、中国人民解放軍海軍の漢型原子力潜水艦が石垣島と多良間島の間の我が国の領海を潜航したまま通過しました。
浮上して国籍を示す旗を掲げていれば無害航行だったのですが、先行したままだったので領海侵犯となり、海上自衛隊に対して海上における警備行動が発令されました。
私はこの時、1等海佐で自衛艦隊司令部の監理主任幕僚を勤めていました。
自衛艦隊司令部というのは、旧海軍で言えば連合艦隊司令部であり、私はその総務部長のような配置にいたことになります。
この潜水艦は北海艦隊の青島海軍基地を出港した直後から捕捉されており、その針路から、我が国領海を通るつもりではないかということがあらかじめ分かっていましたので、海上自衛隊としても準備を整えており、政府が海上における警備行動を発令するのを淡々と待っていた状態でした。
ただし、自衛艦隊司令部としても若干困ったことがありました。
当日、防衛省が主催するアジア太平洋安全保障セミナーに参加する各国の軍人たちの自衛艦隊司令部研修が計画されていたのです。
このセミナーは防衛省が主催し、アジア太平洋地域の様々な国の大尉から中佐くらいまでの中堅士官が参加して、研修や討論を通じて相互理解を深めるものです。
私も、かつて参加したことがありました。
この11月10日、早朝から自衛艦隊司令部は中国潜水艦への対処のための部隊への命令の発出などでバタバタしていましたが、この程度のことで研修の予定を変更してくれなどと泣き言を言うつもりは全くなかったので、朝、防衛省のセミナー担当者から問い合わせがあった時も、予定通りどうぞ、と伝えてありました。
ただ、問題は研修の一団が司令部に到着した後、自衛艦隊司令部で1時間ほど海上自衛隊の現状についてブリーフィングをすることになっており、私の同期の作戦幕僚が担当することになっていましたが、さすがに彼は地下の作戦室に入ったまま出て来れそうにありませんでした。
接遇そのものは監理幕僚部の所掌でしたので、ブリーフィング会場の準備やその後の昼食を護衛艦の士官室で取ってもらう調整などはしておいたのですが、ブリーフィングそのものは作戦幕僚部の担当でした。
しかし、肝心の作戦幕僚が上って来れないとなるとどうなるのか心配になり、地下の作戦室に下りていくと、彼も私の顔を見てホッとしたような顔をしました。
彼に確認すると、パワーポイントの準備はしてあるが、自分が喋るつもりでいたので原稿を作っていない、というのです。セミナーの公用語は英語ですので、英文の口述原稿さえ作ってあれば彼の部下の幕僚にブリーフィングをさせることもできるが、その準備がないということでした。英文の原稿なしにいきなりブリーフィングができる幕僚もいるのですが、皆手が離せないのだそうです。
末端の小さな部隊ならともかく、自衛艦隊司令部のブリーフィングで、セミナー参加者には中佐もいることから、あまり若い幹部にいい加減なブリーフィングをさせるわけにもいかないので、同期のよしみでお前頼む、ということでした。
彼の作戦幕僚部が手一杯なのはよく分かりましたので、すぐに引き受けてブリーフィング会場に上り、彼が準備したパワーポイントがどうなっているのかを確認して、どのように説明するか、セミナー一行が到着する30分前になって考え始めるというウルトラ級の付け焼刃の準備を始めました。
日本語の原稿でもあれば随分助かるのですが、作戦幕僚がどう説明しようとしていたのかを理解するのが大変だったのを覚えています。
予定通り、セミナーご一行が到着、ブリーフィングを行う会議室へ入ってもらったところ、朝ホテルを出てくる前に、「国籍不明の潜水艦」に対する海上における警備行動が発令されたことをニュースで観て、我々の対応に興味津々という雰囲気がありありと出ていました。
会議室に総員が入って準備ができたとの報告を受け、おもむろに会議室に向かった私は、やはり彼らが自衛隊の対応について相当の関心を持っていることをすぐに察知しました。
そこで登壇するなり、「今朝は、どこの国か分からないけどうちの裏庭を潜ったまま横切った奴がいて、若干バタバタしている。ブリーフィングも、本来は専門の幕僚が行う予定だったのだけど、ちょっと忙しそうなので私が代わりに喋ることになった。急なことなので、説明が不足していたら遠慮なく質問してくれ。今裏庭でウロウロしている奴のこと以外なら何でも答える。」と挨拶をしました。
セミナー参加者は総員が軍人なので、それが中国の潜水艦であることを知っており、私の挨拶を聞いてニヤニヤしていました。
私はセミナー参加者の名簿をあらかじめ受け取っていましたので、その中に中国の人民解放軍潜水艦学校の教官をしている海軍大尉がいることを知っていました。
そこで、挨拶に引き継いで間髪をいれず、「潜水艦にはさっきから浮上要求をしているのだが、全然応えるつもりが無いらしい。このままだと撃沈せざるを得ないが、どこの奴かくらいは知っておきたい。監理主任幕僚としては弔電の一つでも送る準備をしなけりゃならん。誰か知らないか?」と続けました。
私が「撃沈」の一言を出したことでロシア海軍、韓国海軍、モンゴル陸軍などの参加者はエッという顔をしましたが、アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍士官は、それが全くの冗談だと知っているのでさらにニヤニヤしていました。
中国海軍の大尉はポーカーフェイスを保ったままでしたので、ちょっとからかってやろうと思い、その中国の海軍大尉を名指しして、「大尉、我々は一昨日からその潜水艦の位置をプロットしていて、奴は今日もずっと我々にホールドダウンされているんだけど、ヘマな艦長だな。なんていう奴だ?」といきなり尋ねました。
すると、不意を突かれてうろたえた彼は思わず「私の知らない艦長です。」と答えたのです。
「なんだ、やっぱりお前のとこの船か」と切り返したところ、アメリカ以下の連中が一斉にゲラゲラと吹き出したので、可哀そうにこの若い中国の海軍大尉は真っ赤になってしまいました。
海上自衛隊の老獪な大佐と中国海軍をこれから背負っていく若い大尉の狡賢さの差が露呈した瞬間でした。
時々、彼が今どこでどのような配置に就いているのかな?と思うことがあります。
我ながら不思議なのですが、ひょっとすると敵と味方に分かれて戦う相手になったかもしれない人民解放軍の若い士官なのに、彼が彼の祖国のために元気で一生懸命に勤務してくれていればいいなと思っています。
若い頃に日本の海軍大佐にからかわれたことを恨みに思っているのか、ほろ苦い思い出として懐かしく思っているのか、訊いてみたい気もします。
私のことを覚えていてくれるかな?などと思ったりすることもあります。
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当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
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専門コラム「指揮官の決断」掲載のご案内
No.048 災害救助犬 を掲載しています。
災害救助犬という犬がいるのをご存知でしょうか。
雪のアルプスでセントバーナードが首から救急箱をぶら下げて遭難者の救助をしている絵が浮かんできます。それが救助犬です。
世の中には様々な任務を持った犬がいます。作業犬とか使役犬などと呼ばれ、各方面で活躍しています。猟犬、牧羊犬などもそうですし、警察犬、麻薬探知犬などを空港で見かけることもあります。盲導犬や介助犬などといわれている犬たちもいます。
それぞれ、犬種ごとの特性や能力に応じて活躍することが期待されています。
災害救助犬というのもそのうちの一つで、この犬たちは人間の数万倍の能力があると言われる嗅覚を活かして、災害現場における行方不明の生存者の捜索に従事しています。
続きはこちらでご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/675
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お薦めのセミナー
『危機管理カンファレンス2017』
2017年9月27日(水曜日)・28日(木曜日)、東京コンファレンスセンター品川
今年は危機管理・BCP担当者向け専門カンファレンスに加え、国土強靭化ビジネスに参入する人のための実務者カンファレンスを2日連続で開催!
■第5回「危機管理カンファレンス2017」~BCP・危機管理編~
改善が進む組織~災害、事故、システム障害…あらゆるリスクに強くなる秘訣~
┗■詳細プログラム>>> http://c.bme.jp/18/83/869/30147
■第1回「危機管理カンファレンス2017」~インフラ・街づくり編~
レジリエントな街に求められるもの~個の限界からタウンマネジメントへ
┗■詳細プログラム>>> http://c.bme.jp/18/83/870/30147
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Facebookページを公開しています。
「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
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開催予定セミナーのご案内
エクゼクティブセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変える経営トップのための5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
スペシャルセミナーの内容を踏襲しつつ、特に経営トップのために企画されたセミナーです。部隊指揮官、企業の役員、経営者を経験している講師が、経営トップの皆様に特に伝えたい思いを語ります。
経営トップ、役員等の方々限定のセミナーです。
開催場所: 当社鎌倉極楽寺セミナーハウス
リゾート感覚溢れる湘南鎌倉の隠れ家的セミナーハウスです。
限定少人数で開催いたします。
(住所は公開しておりません。参加の方に個別にお知らせします。)
開催時期: 平成29年9月8日(金) 13:00~17:00
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
セミナーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるのかどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたいと考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がないので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
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No.040 中国原子力潜水艦領海侵犯事件
世の中は、北朝鮮が北海道の上空を通過させたミサイルの話題で溢れています。
この10日前後、いわゆる政治評論家という人たちが、いかにその場の思い付きだけでものを言っているのかを思い知らされるテレビ番組ばかりでうんざりしていました。
専門コラムでも指摘していますが(http://aegis-cms.co.jp/670)、29日の早朝に北朝鮮がミサイルを実際に発射するまでは、ミサイルの軌道が測定できないから迎撃はおそらく無理、失敗すれば国民は不安になるし、そもそも迎撃などすれば北朝鮮と戦争になるからそんなことはするべきではないという東大名誉教授や、海上自衛隊がグァムへ飛ぶミサイルを撃ち落としたら集団的自衛権行使の要件から逸脱するという法律の専門家が堂々とテレビに登場しており、評論も地に堕ちたという感がしていました。
政治学専門の東大名誉教授が、弾道ミサイルの軌道の計算を終えるのに必要な時間が発射から数十秒であることを知らないというのには唖然とさせられます。計算自体は一瞬なのですが、打ち上げ後のミサイルの動き方を見極めるのに若干時間がかかるのです。それでもどこを狙って発射されたものかを見極めるのに2分はかかりません。だから3分後にはJアラートが発令されるのです。
この東大名誉教授はJアラートの仕組みを全く理解していないのでしょう。また、多分迎撃は無理というのは、日本が何を根拠に数兆円を投じて弾道ミサイル迎撃態勢を整備してきたのかも理解していないということであり、政治学者としてあまりにも不勉強です。
また、グァムに飛ぶミサイルを迎撃するにはイージス艦は硫黄島より南に展開しなければなりません。本土を防衛するために日本海にいるイージス艦にグァムに向かうミサイルを迎撃できるかどうか、その程度の基礎知識のない評論家が安全保障問題を語るので多くの方々に混乱と不安を与えてしまうのです。
とにかく、マスコミの出鱈目さ加減にうんざりさせられた8月でした。
そこで今回は、最近尖閣諸島でのニュースがあまり出てこない中国のお話です。
2004年11月10日、中国人民解放軍海軍の漢型原子力潜水艦が石垣島と多良間島の間の我が国の領海を潜航したまま通過しました。
浮上して国籍を示す旗を掲げていれば無害航行だったのですが、先行したままだったので領海侵犯となり、海上自衛隊に対して海上における警備行動が発令されました。
私はこの時、1等海佐で自衛艦隊司令部の監理主任幕僚を勤めていました。
自衛艦隊司令部というのは、旧海軍で言えば連合艦隊司令部であり、私はその総務部長のような配置にいたことになります。
この潜水艦は北海艦隊の青島海軍基地を出港した直後から捕捉されており、その針路から、我が国領海を通るつもりではないかということがあらかじめ分かっていましたので、海上自衛隊としても準備を整えており、政府が海上における警備行動を発令するのを淡々と待っていた状態でした。
ただし、自衛艦隊司令部としても若干困ったことがありました。
当日、防衛省が主催するアジア太平洋安全保障セミナーに参加する各国の軍人たちの自衛艦隊司令部研修が計画されていたのです。
このセミナーは防衛省が主催し、アジア太平洋地域の様々な国の大尉から中佐くらいまでの中堅士官が参加して、研修や討論を通じて相互理解を深めるものです。
私も、かつて参加したことがありました。
この11月10日、早朝から自衛艦隊司令部は中国潜水艦への対処のための部隊への命令の発出などでバタバタしていましたが、この程度のことで研修の予定を変更してくれなどと泣き言を言うつもりは全くなかったので、朝、防衛省のセミナー担当者から問い合わせがあった時も、予定通りどうぞ、と伝えてありました。
ただ、問題は研修の一団が司令部に到着した後、自衛艦隊司令部で1時間ほど海上自衛隊の現状についてブリーフィングをすることになっており、私の同期の作戦幕僚が担当することになっていましたが、さすがに彼は地下の作戦室に入ったまま出て来れそうにありませんでした。
接遇そのものは監理幕僚部の所掌でしたので、ブリーフィング会場の準備やその後の昼食を護衛艦の士官室で取ってもらう調整などはしておいたのですが、ブリーフィングそのものは作戦幕僚部の担当でした。
しかし、肝心の作戦幕僚が上って来れないとなるとどうなるのか心配になり、地下の作戦室に下りていくと、彼も私の顔を見てホッとしたような顔をしました。
彼に確認すると、パワーポイントの準備はしてあるが、自分が喋るつもりでいたので原稿を作っていない、というのです。セミナーの公用語は英語ですので、英文の口述原稿さえ作ってあれば彼の部下の幕僚にブリーフィングをさせることもできるが、その準備がないということでした。英文の原稿なしにいきなりブリーフィングができる幕僚もいるのですが、皆手が離せないのだそうです。
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彼の作戦幕僚部が手一杯なのはよく分かりましたので、すぐに引き受けてブリーフィング会場に上り、彼が準備したパワーポイントがどうなっているのかを確認して、どのように説明するか、セミナー一行が到着する30分前になって考え始めるというウルトラ級の付け焼刃の準備を始めました。
日本語の原稿でもあれば随分助かるのですが、作戦幕僚がどう説明しようとしていたのかを理解するのが大変だったのを覚えています。
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そこで、挨拶に引き継いで間髪をいれず、「潜水艦にはさっきから浮上要求をしているのだが、全然応えるつもりが無いらしい。このままだと撃沈せざるを得ないが、どこの奴かくらいは知っておきたい。監理主任幕僚としては弔電の一つでも送る準備をしなけりゃならん。誰か知らないか?」と続けました。
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「なんだ、やっぱりお前のとこの船か」と切り返したところ、アメリカ以下の連中が一斉にゲラゲラと吹き出したので、可哀そうにこの若い中国の海軍大尉は真っ赤になってしまいました。
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時々、彼が今どこでどのような配置に就いているのかな?と思うことがあります。
我ながら不思議なのですが、ひょっとすると敵と味方に分かれて戦う相手になったかもしれない人民解放軍の若い士官なのに、彼が彼の祖国のために元気で一生懸命に勤務してくれていればいいなと思っています。
若い頃に日本の海軍大佐にからかわれたことを恨みに思っているのか、ほろ苦い思い出として懐かしく思っているのか、訊いてみたい気もします。
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(住所は公開しておりません。参加の方に個別にお知らせします。)
開催時期: 平成29年9月8日(金) 13:00~17:00
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
セミナーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
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1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるのかどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたいと考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
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5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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メールマガジン「指揮官の休日」
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