メールマガジン「指揮官の休日」 No.420 頑張れAkikinn
2025/06/13 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第435回 試練のとき その3 を掲載いたしました。
前回に引き続きこのコラムに関してのコメントはありません。
https://aegis-cms.co.jp/3540
No.420 頑張れAkikinn
AkikinnというYouTuberがいます。
この人は、凄い人で、元々は航空自衛官でした。しかも、航空救難員です。この仕事はすさまじい仕事で、本来は、撃墜された友軍機の救援に当たる仕事です。具体的には撃墜された友軍機の上空にヘリコプターで近付き、そこからロープ(実際にはワイヤー)で降下し、機内から搭乗員を救出し、怪我をしていれば応急の処置をしてヘリコプターに連れて帰ってくるという任務を帯びています。
ヘリコプターに帰還することが不可能な場合には、その搭乗員を敵から防護しながら救援されるのを待つという仕事です。命がけで戦友を救出するというすさまじい任務です。
この要員に選ばれるためには、並外れた体力・精神力が無ければなりません。
このAkikinnという人は、陸上自衛隊の空挺レンジャー課程や海上自衛隊の潜水員課程も修了しているそうです。気力・体力ともに並外れた人のはずです。
最近観た動画では、生まれてすぐにお母さんが亡くなり、養護施設で育ったそうです。
中学を卒業して、養護施設を出なければならなくなり、しばらくは料理の修行をしていたそうですが、ある時航空自衛隊に入隊し、恵まれた気力・体力が評価されて航空救難員になったようです。
なぜか13年で退職し、看護師の資格を取得して、現在は看護師、YouTuberとして仕事をしているようです。
この人のチャンネルには数年前から注目していました。
当初は、航空救難員としての経験からの語りが多く、興味を持って観ることが多かったのですが、ここ数年、残念な動画が増えてきました。
どうも、彼は自分が軍事・安全保障の専門家だと勘違いしているようです。
節々に、長く航空自衛隊に務めてきましたという文言が時々挟まれています。
また、航空救難員であったことから航空の専門家だとも勘違いしているようです。
最初に、「アレッ?」と思ったのは、彼が、航空自衛官として日米協同訓練にも何回も参加して、米国の軍人ともよく話をしたことがあると述べた時です。
これは嘘とは言いませんが、かなり大げさな表現です。
彼は日米協同訓練に参加したと言っていますが、その参加命令をよく読んだことがないはずです。なぜそう言い切れるかというと、「日米協同」と言っているからです。陸・海・空自衛隊が一緒に訓練をする際には「協同」という文字を使いますが、日米の時は「共同」という文字を使います。自衛隊ではこの使い分けは厳格で、はっきりと分けて使います。それを知らないというのは、参加命令(般命と通常呼ばれます。一般命令の略です。)を読んだことがないのでしょう。彼は空曹であったので、幹部航空自衛官ではありませんでした。つまり、幹部自衛官としての基本的な教育を受けていません。自衛隊では幹部と曹士自衛官とでは役割が異なります。どちらが優秀という問題ではなく、果たすべき役割が異なるのです。
幹部自衛官は、それなりに軍事や安全保障についての基礎的な教育を受けますが、曹士自衛官にはそのような教育は行われません。行われるのは、軍事技術に関する教育と、気力・体力の錬成です。果たすべき役割が異なるので、受ける教育も異なるのです。
幹部自衛官に対しても、候補生学校では極めて基礎的な軍事や安全保障の教育が行われるに留まり、本格的な教育は、幹部学校の指揮幕僚課程で始められます。しかし、ここで行われる教育も、言ってみれば入門レベルです。ここの学生は陸・海・空ともに1尉から3佐で、選抜試験を通った者ばかりで、陸上は2年間、海上と航空は1年間の教育期間です。
本格的な教育が行われるのは2佐から1佐くらいで入校する高級3課程と呼ばれる課程に入校してからです。それは各自衛隊の幹部学校高級課程や、統幕学校、防衛研究所の課程で、それぞれ1年間の課程です。これらの課程に入校するには指揮幕僚課程を修了している必要があります。
筆者は海上自衛隊幹部学校の高級課程に2佐の時に入校し、在学中に1佐に昇進しました。つまり、自衛隊の高級3課程の修業生ですが、当コラムでは自分は軍事や安全保障の専門家ではないとして、軍事や安全保障に関して発言することはありません。あくまでも危機管理の問題として取り上げる程度です。
ところがAkikinnは、幹部自衛官ではなかったので、指揮幕僚課程も出ていませし、高級3課程も修業していません。これは別に恥ずかしいことではありません。果たすべき役割が違うからです。
つまり、筆者に言わせれば、彼は軍事・安全保障に関しては素人です。それでいいんです。
ところが、世の中の人びとは、航空自衛隊に13年いたというと、軍事・安全保障の専門家だと思うらしく、このYouTubeチャンネルの登録者は20万人を超えているようです。
当初、彼は元航空救難員としての発信をしていました。
それなら、彼はとても優れた人材なので、十分に資格があると思いますし、それなりに見応えのある動画でした。
ところが、ある時期から、彼の勘違いが始まりました。
彼は航空自衛隊に13年間務めたことを誇っているようですが、筆者に言わせれば、たった13年で、最後まで全うせずに中途で退職しています。そして、日米共同の意味も理解しておらず、軍事・安全保障に関しては素人です。その証拠に、彼が尖閣問題などに言及している動画を観ると、自衛権の発動要件も知らず、日米安全保障条約についても理解していないことが分かります。
これらの議論は、航空自衛隊に空曹として13年いたくらいでは無理なのです。筆者は海上自衛隊に約30年在職し、指揮幕僚課程も高級課程も修業していますが、そのような議論はしたことがありません。軍事・安全保障の専門家ではないからです。
筆者が自衛隊について語るのは、筆者が経験した範囲のみです。
ある時からAkikinnは軍事・安全保障の専門家になったようです。
これはチャンネル登録者が増えてきたことによる自信からでしょう。
航空救難員であったことから、自分が航空の専門家であるという勘違いも犯しています。
それが如実に分かるのは、海上自衛隊の艦載ヘリの衝突墜落事故についての解説動画をアップしたときでした。
彼は2機のヘリの間隔を「クリアランスという。」と解説しました。この瞬間、筆者はこいつは航空に関してはド素人だと確信しました。
航空のプロなら、2機の距離はセパレーションと言い、クリアランスとは絶対に言いません。確かに英語では間隔のことをクリアランスと表現することがありますが、航空の世界では、クリアランスというのは、管制の許可を指しており、ICAOでも、そう規定されています。パイロットは、航空機間の距離を絶対にクリアランスとは言いません。
筆者は航空機の操縦資格を持っておりますが、最初にその資格を取る訓練を受けたのは米国でした。航空英語はネイティブでも難しいらしく、それらを解説するVTRや参考図書が売られていました。その中で、よく試験問題に出されるのが、クリアランスとセパレーションの違いです。
航空救難員はヘリには乗っかっているだけで、その運航に関与しているのではないので、知らないのは無理もないのですが、彼は自分が航空の専門家だと勘違いしているので、そのような発言になったのでしょう。
最近の動画では、元国家公務員として米価格の高騰について解説していますが、これも滑稽なほど間違いだらけです。 https://www.youtube.com/watch?v=WISHHwMiGc0
彼は減反政策がGHQの陰謀で始まり、農協と農水省が一緒になって現状を作っていると解説していますが、まともな社会常識をもったビジネスマンなら、この議論の出鱈目さはすぐに分かります。まぁ、戦後の農地改革に端を求めるなら、その議論もできないことではありませんが、彼の議論はそのような筋立てにはなっていません。誰かいい加減な評論家の受け売りでしょう。
筆者は、1993年の記録的な冷夏と雨不足による米不足の時に内局に出向しており、当時の食糧庁が刑務所に収監されている受刑者には選択の余地がないので米を配給するが、自衛隊は対象外であるという方針を出したのに対して猛烈に抗議して、何度も食糧庁に出かけて担当者と膝詰め談判をして何とか配給を獲得したことがあり、日本のコメに関する行政の一端を見聞きしたことがありますが、AkikinnはGHQが何をしたのか、減反政策がいつどうして始まったのかも知らずに解説をしています。
AkikinnというYouTuberは、本来ものすごい人であるだけでなく、国を憂う心も人一倍強い人のように見えます。
なので、とても惜しいと思っています。
元航空救難員として語るべきことはたくさんあるかと思います。それから離れて、何も知らないのに軍事や安全保障について語るのはいかがなものかと思います。
ちょっと事情を知っている者から観ると滑稽なだけなのです。
航空救難員としての体験を語っている動画は、筆者も、「これは凄い元自衛官だな。」と感心して観ていましたが、最近の動画では、「デタラメ言うなよ。」という感想しかありませんし、米騒動に至っては「こいつはバカか?」と思うようになります。
困るのは何万人もいるチャンネル登録者が、彼の言うことが真実だと思ってしまうことです。
彼は航空自衛隊に13年間しかいなかった軍事・安全保障に関しては素人でしかありません。
航空救難員としては素晴らしい人材だったかもしれませんし、空挺レンジャーや潜水員の課程を修業したとんでもない気力・体力を持った隊員だったのでしょうが、それと軍事や安全保障を語る能力とは全く関係がありません。
彼には、もっと航空救難の現場の話を語って欲しいと思っています。それこそ彼でなければ語れない話がたくさんあるはずです。
軍事・安全保障、ましてや農政にいたっては、彼の解説は滑稽なだけで、彼のチャンネルの評価を下げてしまうだけでしょう。
彼には、是非、自分のフィールドに戻って、彼でなければ語ることのできない話でチャンネルを盛り上げていって欲しいと願っています。
最近のような動画が続くと、レベルの高いファンが離れて行ってしまい、低レベルのファンしか残らなくなります。そうすると、どんな解説をしても受け入れてしまうので、動画の質が低下していきます。そして、いつか最低のチャンネルになり下がってしまいます。
一方で、元国家公務員としての評論や、軍事・安全保障の専門家ではなく、元航空救難員として話は、彼にしかできないものがたくさんあるはずであり、良き後継者の育成のためにも彼に語って欲しいと思っています。
繰り返しますが、航空自衛隊で航空救難員となるには、特別に気力・体力に秀でていなければなりませんし、陸上自衛隊の空挺レンジャーなど普通の人には耐えられない過酷な訓練をクリアしなければなりません。筆者は海上自衛隊にいましたので、潜水課程がどのような訓練を行うか見たことがありますが、これも尋常ではない訓練を強いています。どのような任務でもそれを完遂して生還して欲しいという教官も必死の思いで訓練をしているからです。
それらを越えてきて、YouTubeで人に語る技術を持っているAkikinnというYouTuberは並外れた凄いYouTuberです。
筆者は、そういう意味で彼を心底応援しています。
決して元自衛官で、国防や安全保障など語らなくてもいいんです。それらは元幕僚長とか方面総監などに任せて、専門家として、キラ星の将官には語ることのできない、現場の話を聞かせて欲しいと願っています。
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専門コラム 第435回 試練の時 その3
一国の首相が自分の国の財政は明らかにギリシャより悪いとか、消費税の廃止にはレジの改修に1年かかるとか、どう考えてもまともな答弁とは思えず、就任以来の言動を見ていると、正常の精神状況ではないのではないかと疑いたくなります。
ひょっとすると錯乱状態にあるのではないかという疑いさえ持ちます。
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とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
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No.420 頑張れAkikinn
AkikinnというYouTuberがいます。
この人は、凄い人で、元々は航空自衛官でした。しかも、航空救難員です。この仕事はすさまじい仕事で、本来は、撃墜された友軍機の救援に当たる仕事です。具体的には撃墜された友軍機の上空にヘリコプターで近付き、そこからロープ(実際にはワイヤー)で降下し、機内から搭乗員を救出し、怪我をしていれば応急の処置をしてヘリコプターに連れて帰ってくるという任務を帯びています。
ヘリコプターに帰還することが不可能な場合には、その搭乗員を敵から防護しながら救援されるのを待つという仕事です。命がけで戦友を救出するというすさまじい任務です。
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最近観た動画では、生まれてすぐにお母さんが亡くなり、養護施設で育ったそうです。
中学を卒業して、養護施設を出なければならなくなり、しばらくは料理の修行をしていたそうですが、ある時航空自衛隊に入隊し、恵まれた気力・体力が評価されて航空救難員になったようです。
なぜか13年で退職し、看護師の資格を取得して、現在は看護師、YouTuberとして仕事をしているようです。
この人のチャンネルには数年前から注目していました。
当初は、航空救難員としての経験からの語りが多く、興味を持って観ることが多かったのですが、ここ数年、残念な動画が増えてきました。
どうも、彼は自分が軍事・安全保障の専門家だと勘違いしているようです。
節々に、長く航空自衛隊に務めてきましたという文言が時々挟まれています。
また、航空救難員であったことから航空の専門家だとも勘違いしているようです。
最初に、「アレッ?」と思ったのは、彼が、航空自衛官として日米協同訓練にも何回も参加して、米国の軍人ともよく話をしたことがあると述べた時です。
これは嘘とは言いませんが、かなり大げさな表現です。
彼は日米協同訓練に参加したと言っていますが、その参加命令をよく読んだことがないはずです。なぜそう言い切れるかというと、「日米協同」と言っているからです。陸・海・空自衛隊が一緒に訓練をする際には「協同」という文字を使いますが、日米の時は「共同」という文字を使います。自衛隊ではこの使い分けは厳格で、はっきりと分けて使います。それを知らないというのは、参加命令(般命と通常呼ばれます。一般命令の略です。)を読んだことがないのでしょう。彼は空曹であったので、幹部航空自衛官ではありませんでした。つまり、幹部自衛官としての基本的な教育を受けていません。自衛隊では幹部と曹士自衛官とでは役割が異なります。どちらが優秀という問題ではなく、果たすべき役割が異なるのです。
幹部自衛官は、それなりに軍事や安全保障についての基礎的な教育を受けますが、曹士自衛官にはそのような教育は行われません。行われるのは、軍事技術に関する教育と、気力・体力の錬成です。果たすべき役割が異なるので、受ける教育も異なるのです。
幹部自衛官に対しても、候補生学校では極めて基礎的な軍事や安全保障の教育が行われるに留まり、本格的な教育は、幹部学校の指揮幕僚課程で始められます。しかし、ここで行われる教育も、言ってみれば入門レベルです。ここの学生は陸・海・空ともに1尉から3佐で、選抜試験を通った者ばかりで、陸上は2年間、海上と航空は1年間の教育期間です。
本格的な教育が行われるのは2佐から1佐くらいで入校する高級3課程と呼ばれる課程に入校してからです。それは各自衛隊の幹部学校高級課程や、統幕学校、防衛研究所の課程で、それぞれ1年間の課程です。これらの課程に入校するには指揮幕僚課程を修了している必要があります。
筆者は海上自衛隊幹部学校の高級課程に2佐の時に入校し、在学中に1佐に昇進しました。つまり、自衛隊の高級3課程の修業生ですが、当コラムでは自分は軍事や安全保障の専門家ではないとして、軍事や安全保障に関して発言することはありません。あくまでも危機管理の問題として取り上げる程度です。
ところがAkikinnは、幹部自衛官ではなかったので、指揮幕僚課程も出ていませし、高級3課程も修業していません。これは別に恥ずかしいことではありません。果たすべき役割が違うからです。
つまり、筆者に言わせれば、彼は軍事・安全保障に関しては素人です。それでいいんです。
ところが、世の中の人びとは、航空自衛隊に13年いたというと、軍事・安全保障の専門家だと思うらしく、このYouTubeチャンネルの登録者は20万人を超えているようです。
当初、彼は元航空救難員としての発信をしていました。
それなら、彼はとても優れた人材なので、十分に資格があると思いますし、それなりに見応えのある動画でした。
ところが、ある時期から、彼の勘違いが始まりました。
彼は航空自衛隊に13年間務めたことを誇っているようですが、筆者に言わせれば、たった13年で、最後まで全うせずに中途で退職しています。そして、日米共同の意味も理解しておらず、軍事・安全保障に関しては素人です。その証拠に、彼が尖閣問題などに言及している動画を観ると、自衛権の発動要件も知らず、日米安全保障条約についても理解していないことが分かります。
これらの議論は、航空自衛隊に空曹として13年いたくらいでは無理なのです。筆者は海上自衛隊に約30年在職し、指揮幕僚課程も高級課程も修業していますが、そのような議論はしたことがありません。軍事・安全保障の専門家ではないからです。
筆者が自衛隊について語るのは、筆者が経験した範囲のみです。
ある時からAkikinnは軍事・安全保障の専門家になったようです。
これはチャンネル登録者が増えてきたことによる自信からでしょう。
航空救難員であったことから、自分が航空の専門家であるという勘違いも犯しています。
それが如実に分かるのは、海上自衛隊の艦載ヘリの衝突墜落事故についての解説動画をアップしたときでした。
彼は2機のヘリの間隔を「クリアランスという。」と解説しました。この瞬間、筆者はこいつは航空に関してはド素人だと確信しました。
航空のプロなら、2機の距離はセパレーションと言い、クリアランスとは絶対に言いません。確かに英語では間隔のことをクリアランスと表現することがありますが、航空の世界では、クリアランスというのは、管制の許可を指しており、ICAOでも、そう規定されています。パイロットは、航空機間の距離を絶対にクリアランスとは言いません。
筆者は航空機の操縦資格を持っておりますが、最初にその資格を取る訓練を受けたのは米国でした。航空英語はネイティブでも難しいらしく、それらを解説するVTRや参考図書が売られていました。その中で、よく試験問題に出されるのが、クリアランスとセパレーションの違いです。
航空救難員はヘリには乗っかっているだけで、その運航に関与しているのではないので、知らないのは無理もないのですが、彼は自分が航空の専門家だと勘違いしているので、そのような発言になったのでしょう。
最近の動画では、元国家公務員として米価格の高騰について解説していますが、これも滑稽なほど間違いだらけです。 https://www.youtube.com/watch?v=WISHHwMiGc0
彼は減反政策がGHQの陰謀で始まり、農協と農水省が一緒になって現状を作っていると解説していますが、まともな社会常識をもったビジネスマンなら、この議論の出鱈目さはすぐに分かります。まぁ、戦後の農地改革に端を求めるなら、その議論もできないことではありませんが、彼の議論はそのような筋立てにはなっていません。誰かいい加減な評論家の受け売りでしょう。
筆者は、1993年の記録的な冷夏と雨不足による米不足の時に内局に出向しており、当時の食糧庁が刑務所に収監されている受刑者には選択の余地がないので米を配給するが、自衛隊は対象外であるという方針を出したのに対して猛烈に抗議して、何度も食糧庁に出かけて担当者と膝詰め談判をして何とか配給を獲得したことがあり、日本のコメに関する行政の一端を見聞きしたことがありますが、AkikinnはGHQが何をしたのか、減反政策がいつどうして始まったのかも知らずに解説をしています。
AkikinnというYouTuberは、本来ものすごい人であるだけでなく、国を憂う心も人一倍強い人のように見えます。
なので、とても惜しいと思っています。
元航空救難員として語るべきことはたくさんあるかと思います。それから離れて、何も知らないのに軍事や安全保障について語るのはいかがなものかと思います。
ちょっと事情を知っている者から観ると滑稽なだけなのです。
航空救難員としての体験を語っている動画は、筆者も、「これは凄い元自衛官だな。」と感心して観ていましたが、最近の動画では、「デタラメ言うなよ。」という感想しかありませんし、米騒動に至っては「こいつはバカか?」と思うようになります。
困るのは何万人もいるチャンネル登録者が、彼の言うことが真実だと思ってしまうことです。
彼は航空自衛隊に13年間しかいなかった軍事・安全保障に関しては素人でしかありません。
航空救難員としては素晴らしい人材だったかもしれませんし、空挺レンジャーや潜水員の課程を修業したとんでもない気力・体力を持った隊員だったのでしょうが、それと軍事や安全保障を語る能力とは全く関係がありません。
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繰り返しますが、航空自衛隊で航空救難員となるには、特別に気力・体力に秀でていなければなりませんし、陸上自衛隊の空挺レンジャーなど普通の人には耐えられない過酷な訓練をクリアしなければなりません。筆者は海上自衛隊にいましたので、潜水課程がどのような訓練を行うか見たことがありますが、これも尋常ではない訓練を強いています。どのような任務でもそれを完遂して生還して欲しいという教官も必死の思いで訓練をしているからです。
それらを越えてきて、YouTubeで人に語る技術を持っているAkikinnというYouTuberは並外れた凄いYouTuberです。
筆者は、そういう意味で彼を心底応援しています。
決して元自衛官で、国防や安全保障など語らなくてもいいんです。それらは元幕僚長とか方面総監などに任せて、専門家として、キラ星の将官には語ることのできない、現場の話を聞かせて欲しいと願っています。
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専門コラム 第435回 試練の時 その3
一国の首相が自分の国の財政は明らかにギリシャより悪いとか、消費税の廃止にはレジの改修に1年かかるとか、どう考えてもまともな答弁とは思えず、就任以来の言動を見ていると、正常の精神状況ではないのではないかと疑いたくなります。
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林 祐 著
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1 ACMS導入コンサルティング
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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Web : http://aegis-cms.co.jp
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