指揮官の休日 No.092 ヨット乗りには信じてもらえない本当のお話:一杯の紅茶
2018/08/31 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.100 クライシスマネジメントの目指すもの:危機管理の本質 を掲載しています。
危機管理の概念の混乱について述べています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1258 をご覧ください。
No.092 ヨット乗りには信じてもらえない本当のお話:一杯の紅茶
お陰様を持ちまして専門コラム「指揮官の決断」が100号を迎えました。
このメールマガジンはこの専門コラムの更新をお知らせするために配信いたしておりますが、最近けしからぬことにメールマガジンは読んでいるけどコラムは読んでいないと仰る方が意外にいらっしゃることに気が付いて愕然といたしております。
なかには「へぇ コラムなんか書いてんだぁ」などと感心される方もおられ、ますますうんざりです。
しかし、まぁ、どちらでも楽しみに読んで頂く方がいらっしゃるということは執筆者冥利に尽きると思わねばなりません。
今回はコラム100号記念として、当メールマガジンもこれまで書いてきたなかで「秘密」扱いにしていたものの秘密を打ち明けようかと思っています。
かつて紅茶について一度だけ書いたことがあります。(メールマガジン「指揮官の休日」 No.048 アフタヌーン・ティ https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=73 )
この中で、世界中を航海して回っている際に忘れることができない紅茶が三杯あり、一杯は ポーツマスの英国海軍航空救難隊の搭乗員待機室で出されたもの、もう一杯はスリランカのゴール・フェイス・ホテルの中庭のオープンカフェで飲んだ紅茶だと書き、最後の一杯はイギリスのポーツマス入港中に訪れたある場所ではあるが、先方の名誉を守るため公表しないと申し上げています。
どうもこれが気になっている人がいて、それはどこだと聞かれるのですが、多分、この方に申しあげても信じてもらえなのでニコニコして「どこでしょう?」などとはぐらかしてきたのですが、今回はコラム100回記念なのでカミングアウトしてしまおうと思っています。
遠洋航海の途次、イギリスのポーツマスに入港しました。
忙しい日課の中、ある日半日だけ自由になる時間がありました。
私は大学時代に外洋レースに熱中していたヨット乗りです。
場所がポーツマスで若干自由時間がある。
目の前にワイト島がある。
行かないわけがないのです。
ヨット乗りにとってワイト島のカウズという地名の持つ響きには特別な意味があります。
私たち海上自衛隊幹部OBにとっては「江田島」という島の名前が特別な響きを持つように外洋レーサーにとっては「カウズ」というのはただの地名ではないのです。
そこには“Royal Yatch Squadron” があるのです。
世界中で最も由緒正しいヨットクラブです。1815年に創立され、所属ヨットはホワイト・エンサイン(エンスンと発音されるのが普通ですが。)を掲げることが認められています。これは英国海軍艦艇が掲げる軍艦旗と同じものです。
実はこのヨットクラブ主催で行われたレースから「アメリカスカップ」が誕生したのです。
ロンドンで開催された万国博覧会を記念して同ヨットクラブがワイト島一周レースを開催したのですが、ただ一隻アメリカから参加した「アメリカ」号が優勝し、ビクトリア女王から提供された銀製のカップをアメリカに持ち帰ってしまいました。このため、このカップは「アメリカ」号のカップと呼ばれるようになったのです。
アメリカ号のオーナーたちは、「カップ保持者は、いかなる国の挑戦も受けなければならない。」という取り決めをしたうえでニューヨークヨットクラブに寄贈したのですが、それ以後、これを奪還しようとするイギリスと守り抜こうとするアメリカの間でし烈な戦いが繰り広げられてきました。
この話を始めると本が1冊書けそうになるのでここで止めますが、この主催クラブがロイヤルヨットスコードロンであり、世界で最も由緒あるヨットクラブと呼ばれるのです。
かのトーマス・リプトンはこのアメリカスカップ奪還のために何度もチャレンジし、英国の名誉を取り戻そうとした人物ですが、そのリプトンですらなかなか入会を許されなかったほどのクラブです。
なぜリプトンがなかなかメンバーになれなかったかというと、ヨットを商売の宣伝道具としていると認定されたからです。
とてつもなく気位の高いクラブなのです。
このロイヤルヨットスコードロンは英国海軍旗を掲げる名誉を担っていることを深く自覚しており、第2次大戦の冒頭、フランスのダンケルク海岸に追い詰められた30万名の英国派遣軍とフランス軍の一部があわや海に追い落とされようとしている時に、英国宰相のチャーチルのラジオでの呼びかけに応じてクラブ所属艇が次々に出航し、英仏海峡を渡り、ドイツ空軍の猛攻撃の中を海岸線に乗り付けて多くの兵士を英国に連れ帰ったのです。
帰ってきたボートの多くが銃弾でハチの巣になっており、オーナー自身も亡くなって救助された兵士が操縦して帰ってきた船もありました。
このクラブが気位が高いのはこのような過去があるからかもしれません。
私が噂できいたところでは、クラブハウスにはオーナー夫人と言えどもヨット乗りでなければ入ることができないということでした。(本当かどうか分かりません。イギリス海軍ですら司令官の女房は司令長官と呼ばれていることを私は知っています。)
そのワイト島が目の前にあって、若干自由な時間があれば血が騒ぐのは当然だったのです。
私はさっそくフェリーに乗り込みカウズを目指しました。
クラブを見せてもらうなどと夢にも思ったわけではありません。入口だけでもこの目で見ておきたいと思っただけなのです。
クラブの所在地につき、入り口で感慨にふけっていました。
当時は自撮りができるカメラなど持っておらず、大きな一眼レフカメラをもっていたのですが、私は練習艦隊の実習幹部という身分なので制服で上陸していました。海軍士官がいくらロイヤルヨットスコードロンといえ、その前で自分で自分を撮影しているというのもみっともないので、瞼に焼き付けておこうと思っていました。
すると後ろからかなり古いデザインの三つ揃いをきた紳士がタクシーから降りて私の側を通り抜けて中に入っていきました。
少したって、彼が建物の中から出て来て私に声を掛けました。
“ Sir ? “
何か用か?ということです。
今の私とは違ってまだ初心な青年士官だった私はドギマギしてしまい、「日本海軍の練習艦隊でポーツマスに入港した者です。ヨット乗りでクォータートンのレーサーを維持するのに四苦八苦しています。是非このクラブがどんなところなのかを一目見たくて来ました。帰艦時刻があるのでここで失礼します。」と言うと、彼は、ちょっと考え、「海軍士官でヨット乗りでクォータートンのオーナーなのですね?」とのこと。
「いかにも」と答えると、なんと「ロイヤルヨットスコードロンへようこそ」と言うのです。
そして「紅茶でもいかがですか。懐かしい日本の話を聞かせてください。」と言って私を入れてくれたのです。
自己紹介されたのを聞くとクラブの事務局長のような方で、若い頃外務省の仕事で日本に3年ほど駐在したことがあるのだそうです。そこで結婚まで考えた日本女性がいたのですが、先方のご両親の反対でなかなか結婚できず、そのまま帰国命令が出てしまいましたと苦笑いされていました。
クラブの事務局のカウンターで紅茶をごちそうになり、三田や芝のあたりがどうなっているのかを懐かしそうに聞かれたのを忘れることができません。
日本のヨット乗りにも知り合いが多く、私も存じ上げていた日本の外洋レース界の大御所たちの名前が次々に出て来て、その方はまだ乗ってますよというと驚かれたり、もう亡くなりましたと言うと目を瞑って冥福を祈るというような方でした。
つまり、私がロイヤルヨットスコードロンで紅茶を飲んだというのは本当の話なのですが、多分、日本のヨット乗りは誰も信じてくれないだろうなと思って封印してきたお話です。
これも海軍士官の制服を着ていたお陰であり、日本では制服姿でいい思いをすることはほとんどないのですが、諸外国では結構役得があるのです。
肌寒く今にも雨が降りそうな日の午後に飲んだ忘れ得ぬ一杯の紅茶でした。
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Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
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専門コラム「指揮官の決断」掲載のご案内
No.100 クライシスマネジメントの目指すもの:危機管理の本質 を掲載しています。
お陰様で当コラムも本号で100号を迎えました。
この間、危機管理に重要な3本柱としての「意思決定」「リーダーシップ」そして「プロトコール」の問題を取り上げ、いろいろな事例と共にご紹介してまいりました。
当コラムの最大の問題意識は我が国において(私の知る限り日本においてのみ)、危機管理の概念がかなり誤って理解されているということにあります。
この問題については度々というよりもしつこいくらいに述べて参りました。
なぜ、その問題にこだわっているかと言えば、危機管理の概念が誤解されていると、本来の危機管理が行われなくなってしまうからです。
続きはこちらからお読みください。
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お薦めのセミナー
休職者が半減したBTUプログラム
「過労予防導入ガイド」
第1部『最新の疲労研究と効果的な予防アプローチを徹底解説』
第2部『疲労予防プログラム 導入ガイドと事例紹介』
1.日時 平成30年9月14日 18時30分~
2.場所 ガイアモーレ飯田橋 セミナールーム・マハロ
3.参加費 5,000円(事前申し込み 4,500円)
お問合せ、お申し込みは https://www.btu.co.jp
バランスセラピーという独自のストレスケアのアプローチを開発した株式会社BTU社長 美野田啓二氏自らが講師として企業向けのストレスケアメソッドについて語ります。
バランスセラピーという言葉にはあまりなじみがないかもしれませんが、臨床心理士の行うストレスケアとは異なるアプローチで、心と体を同時にリラックスさせる手法を用いた独自のリラクセーション手法です。
東京大学や熊本大学などとの共同の実証研究によってもその効果が明らかとなっており、メンタルダウンの社員を抱える企業には是非導入をお薦めしたいストレスケア手法です。
実は、我が家の司令長官はストレスケアカウンセラーなのですが、彼女はこのバランスセラピーを十数年に渡って学んでおり、その手法を活かしたストレスケアを行っています。
お陰様で私も免疫力がかなり向上しているようで、ここ10年以上、風邪をひいたことがありません。
興味のある方は、弊社へお問い合わせ頂いても結構です。
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新刊書案内
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
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開催予定セミナーのご案内
スペシャルセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変えるクライシスマネジメントの5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
経営トップの皆様、役員、各部門の長の方々のご参加をお勧めします。
開催場所:ホテルグランドヒル市ヶ谷
東京都新宿区市ヶ谷本村町4-1
開催時期:決定次第お知らせします。
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
エクゼクティブセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変える経営トップのための5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
スペシャルセミナーの内容を踏襲しつつ、特に経営トップのために企画されたセミナーです。部隊指揮官、企業の役員、経営者を経験している講師が、経営トップの皆様に特に伝えたい思いを語ります。
経営トップ、役員等の方々限定のセミナーです。
開催場所: 当社鎌倉極楽寺セミナーハウス
リゾート感覚溢れる湘南鎌倉の隠れ家的セミナーハウスです。
限定少人数で開催いたします。
(住所は公開しておりません。参加の方に個別にお知らせします。)
開催時期: 決定次第お知らせします。
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
セミナーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるのかどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたいと考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がないので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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どうもこれが気になっている人がいて、それはどこだと聞かれるのですが、多分、この方に申しあげても信じてもらえなのでニコニコして「どこでしょう?」などとはぐらかしてきたのですが、今回はコラム100回記念なのでカミングアウトしてしまおうと思っています。
遠洋航海の途次、イギリスのポーツマスに入港しました。
忙しい日課の中、ある日半日だけ自由になる時間がありました。
私は大学時代に外洋レースに熱中していたヨット乗りです。
場所がポーツマスで若干自由時間がある。
目の前にワイト島がある。
行かないわけがないのです。
ヨット乗りにとってワイト島のカウズという地名の持つ響きには特別な意味があります。
私たち海上自衛隊幹部OBにとっては「江田島」という島の名前が特別な響きを持つように外洋レーサーにとっては「カウズ」というのはただの地名ではないのです。
そこには“Royal Yatch Squadron” があるのです。
世界中で最も由緒正しいヨットクラブです。1815年に創立され、所属ヨットはホワイト・エンサイン(エンスンと発音されるのが普通ですが。)を掲げることが認められています。これは英国海軍艦艇が掲げる軍艦旗と同じものです。
実はこのヨットクラブ主催で行われたレースから「アメリカスカップ」が誕生したのです。
ロンドンで開催された万国博覧会を記念して同ヨットクラブがワイト島一周レースを開催したのですが、ただ一隻アメリカから参加した「アメリカ」号が優勝し、ビクトリア女王から提供された銀製のカップをアメリカに持ち帰ってしまいました。このため、このカップは「アメリカ」号のカップと呼ばれるようになったのです。
アメリカ号のオーナーたちは、「カップ保持者は、いかなる国の挑戦も受けなければならない。」という取り決めをしたうえでニューヨークヨットクラブに寄贈したのですが、それ以後、これを奪還しようとするイギリスと守り抜こうとするアメリカの間でし烈な戦いが繰り広げられてきました。
この話を始めると本が1冊書けそうになるのでここで止めますが、この主催クラブがロイヤルヨットスコードロンであり、世界で最も由緒あるヨットクラブと呼ばれるのです。
かのトーマス・リプトンはこのアメリカスカップ奪還のために何度もチャレンジし、英国の名誉を取り戻そうとした人物ですが、そのリプトンですらなかなか入会を許されなかったほどのクラブです。
なぜリプトンがなかなかメンバーになれなかったかというと、ヨットを商売の宣伝道具としていると認定されたからです。
とてつもなく気位の高いクラブなのです。
このロイヤルヨットスコードロンは英国海軍旗を掲げる名誉を担っていることを深く自覚しており、第2次大戦の冒頭、フランスのダンケルク海岸に追い詰められた30万名の英国派遣軍とフランス軍の一部があわや海に追い落とされようとしている時に、英国宰相のチャーチルのラジオでの呼びかけに応じてクラブ所属艇が次々に出航し、英仏海峡を渡り、ドイツ空軍の猛攻撃の中を海岸線に乗り付けて多くの兵士を英国に連れ帰ったのです。
帰ってきたボートの多くが銃弾でハチの巣になっており、オーナー自身も亡くなって救助された兵士が操縦して帰ってきた船もありました。
このクラブが気位が高いのはこのような過去があるからかもしれません。
私が噂できいたところでは、クラブハウスにはオーナー夫人と言えどもヨット乗りでなければ入ることができないということでした。(本当かどうか分かりません。イギリス海軍ですら司令官の女房は司令長官と呼ばれていることを私は知っています。)
そのワイト島が目の前にあって、若干自由な時間があれば血が騒ぐのは当然だったのです。
私はさっそくフェリーに乗り込みカウズを目指しました。
クラブを見せてもらうなどと夢にも思ったわけではありません。入口だけでもこの目で見ておきたいと思っただけなのです。
クラブの所在地につき、入り口で感慨にふけっていました。
当時は自撮りができるカメラなど持っておらず、大きな一眼レフカメラをもっていたのですが、私は練習艦隊の実習幹部という身分なので制服で上陸していました。海軍士官がいくらロイヤルヨットスコードロンといえ、その前で自分で自分を撮影しているというのもみっともないので、瞼に焼き付けておこうと思っていました。
すると後ろからかなり古いデザインの三つ揃いをきた紳士がタクシーから降りて私の側を通り抜けて中に入っていきました。
少したって、彼が建物の中から出て来て私に声を掛けました。
“ Sir ? “
何か用か?ということです。
今の私とは違ってまだ初心な青年士官だった私はドギマギしてしまい、「日本海軍の練習艦隊でポーツマスに入港した者です。ヨット乗りでクォータートンのレーサーを維持するのに四苦八苦しています。是非このクラブがどんなところなのかを一目見たくて来ました。帰艦時刻があるのでここで失礼します。」と言うと、彼は、ちょっと考え、「海軍士官でヨット乗りでクォータートンのオーナーなのですね?」とのこと。
「いかにも」と答えると、なんと「ロイヤルヨットスコードロンへようこそ」と言うのです。
そして「紅茶でもいかがですか。懐かしい日本の話を聞かせてください。」と言って私を入れてくれたのです。
自己紹介されたのを聞くとクラブの事務局長のような方で、若い頃外務省の仕事で日本に3年ほど駐在したことがあるのだそうです。そこで結婚まで考えた日本女性がいたのですが、先方のご両親の反対でなかなか結婚できず、そのまま帰国命令が出てしまいましたと苦笑いされていました。
クラブの事務局のカウンターで紅茶をごちそうになり、三田や芝のあたりがどうなっているのかを懐かしそうに聞かれたのを忘れることができません。
日本のヨット乗りにも知り合いが多く、私も存じ上げていた日本の外洋レース界の大御所たちの名前が次々に出て来て、その方はまだ乗ってますよというと驚かれたり、もう亡くなりましたと言うと目を瞑って冥福を祈るというような方でした。
つまり、私がロイヤルヨットスコードロンで紅茶を飲んだというのは本当の話なのですが、多分、日本のヨット乗りは誰も信じてくれないだろうなと思って封印してきたお話です。
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1.日時 平成30年9月14日 18時30分~
2.場所 ガイアモーレ飯田橋 セミナールーム・マハロ
3.参加費 5,000円(事前申し込み 4,500円)
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バランスセラピーという独自のストレスケアのアプローチを開発した株式会社BTU社長 美野田啓二氏自らが講師として企業向けのストレスケアメソッドについて語ります。
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開催場所: 当社鎌倉極楽寺セミナーハウス
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その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
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1 ACMS導入コンサルティング
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2 スポットコンサルティング
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導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がないので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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