指揮官の休日 No.081 特別支援学校との絆
2018/06/15 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.089 ドキュメント 激闘! 日本の漁師たち を掲載しています。
海上における漁船との行き会い方を通じて危機管理を考えています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1184 をご覧ください。
No.081 特別支援学校との絆
広島県呉市には海上自衛隊呉地方総監部が所在しています。
この地方総監部は瀬戸内海、四国沖などを警備区とする呉地方隊の司令部であり、同時に、呉に在籍する自衛艦隊隷下の護衛艦、潜水艦、輸送艦などの艦艇の補給や整備も担当しています。
かつてこの呉地方総監部隷下の後方支援を担当する部隊の指揮官として勤務していたことがありました。
部隊では、その部隊に与えられた任務を遂行しつつ、隊員に対して任務に必要な専門の知識・技能を向上させるための教育訓練を行い、また、健全な自衛官としての情操教育なども行わなければなりません。
私は、その部隊の指揮官として勤務している間に、隊員の情操教育の一環として社会貢献活動をさせることを計画し、様々な試みを行いました。
例えば、部隊付近の住宅地の小学生が通学路に使っている信号のない横断歩道の朝の通学時に隊員を交代で派遣し、黄色の旗をもって小学生の安全な横断をサポートしたり、クリスマスに施設を訪問したりということから始めたのです。
そのうちに、近くに県立の特別支援学校があることに気が付きました。隊員の一人のお子さんがそこに通っているというのです。
特別支援学校というのは、身体障害や知的障害のある子供さんが通う学校なのですが、その隊員の話を聞くと、予算が潤沢にある学校ではなく、いろいろな面で困っているということでした。
私はここに何らかの貢献ができないかを考えました。
よく聞いてみると、校庭などの環境整備は父兄が休日にボランティアでやっているとのことでしたので、それでは草刈りの支援などができるかと考え、担当者に学校との調整を指示しました。
当初、先方の校長が私たちが何を言いたいのかよく理解できない様子らしいということでしたので、私が直接面会に行き、隊員の情操教育の一環として環境整備の支援をさせて頂きたいと申し出ました。
女性の校長だったのですが、最初困惑気味だった顔が一挙に晴れ、涙ぐまんばかりになり、教頭やいろいろな先生を呼び出して、大騒ぎになってしまいました。
当方としては、私たちの隊員の精神教育の一環として場所を借り、機会を作って頂きたいという申し出だったのですが、その草刈りなどの作業がどれほど学校にとって大変なことだったのかが伝わってきました。
業者を入れて草刈りなどをする予算がないので、父兄のボランティアを募り、教員が休日出勤して土日に行っているのだそうですが、支援学校の教員というのは通常の学校の教員に比べると極端に重労働を強いられており、また、ご父兄もほとんどは障害児を抱えた共稼ぎの家庭なので、休日に草刈りなどの労働をするというのは大きな負担なのだそうです。
さて、草刈りの当日、午後一番にトラック2台に器材を載せ、マイクロバス2台で学校に乗り付けた私たちは、いつものように学校のグランドに整列し、作業要領の示達を簡単に行うと「かかれ!」の一言を合図に各所に散り、4時間の間に全ての作業を終わらせ、膨大な量の刈り取った草をトラックに積み込んでしまいました。
興味津々で見ていた校長はじめ学校職員は、その作業の速さと徹底ぶりに呆気にとられていましたが、我々が早々と帰り支度をしていることに気が付くと大騒ぎになり、生徒を外へ連れてきて皆でお礼をしたいのでちょっとだけ待ってくれということでした。
こちらが整列して待っていると、生徒たちが次々に職員に介護されながら出てきたのですが、彼らなりに周りがきれいになっていることに気が付いたのか、キョロキョロしているのが分かって私たちも思わずニコニコしてしまいました。
校長に言わせると、草刈りをやってくれるとは聞いたけど、校庭は広いので、どれだけの部分をどれくらいの時間でやってくれるのかなと思い、できればここはやってもらいたいと思っていたところがあったのだが、それを相談する暇もなく始まってしまい、エーッと見ている間に校庭全部が整備されてしまったのでびっくりの一言なのだそうです。
私たちとしては普段やっている部隊の環境整備作業とそれほど違うことをしたわけではないのですが、海上自衛隊のスタンダードと支援学校のスタンダードがかなり違ったということなのでしょう。
翌週、生徒たちが描いたという学校の校庭の絵と父兄の方々からの数十通の手紙が届き、隊員一同を感激させました。
私たちが草刈りをしている時に気になったのが、学校のフェンスが錆びだらけだったことです。
海上自衛官というのは錆に極めて敏感に反応します。船では暇があれば錆を落とす作業と真鍮を磨く作業をしており、錆びているとか金物が光っていないなどというのは許されないからです。
そこで、次回はフェンスの塗装をすることにしました。
私が指揮を執っていた後方支援部隊は艦艇の整備も担当していましたので、ペイントはたくさん持っていました。しかし、それらのペイントは、海上防衛のための予算で購入されたものなので、いくら社会貢献の目的であっても私の一存で他の目的に使うことはできません。
解釈の仕方によっては、隊員の精神教育の一環として行う作業に必要なものという理由付けができないことはないのですが、そのためにはペイントが教育訓練費という予算科目で調達されていなければなりません。
私の部隊が持っていたペイントは艦船修理費という予算科目で調達されたものなので、予算の目的外使用となってしまいます。
私は一計を案じました。
定期整備で造船所に入る船のために造船所にペイントを官給しています。
整備を終えて船が戻ってくる際、造船所では官給された資材の残りを返納したり、処分したりします。
通常、ペイント類は返納されても困るので、蓋を開けた缶については処分指示を出して現地で処分してもらっていましたが、私はその処分指示を出さず、船に頼んで積んで帰ってもらうことにしました。
そして私の部隊で船から受取り、それを倉庫で保管して、そのペイントを使ってフェンスを塗り直すことを考えたのです。
黙っていれば経費をかけて処分されるペイントですので、それを流用するのは大きな問題にはなりません。帳簿上は処分した扱いとなっています。
大きな問題にはならないというのは、厳密に言えば物資の横流しにあたるので問題が無いわけではないのですが、私が責任を取れば済む話なのです。
この時も、秋のある日、トラックとマイクロバスで乗り付け、半日でフェンスを塗り直したところ、錆でまっ茶色だったフェンスが銀ペンで輝き始めたので、周囲の民家の方々がびっくりしたのだそうです。
海上自衛官はペンキ塗りが得意です。まして私は入隊前は外洋レース艇のクルーとして日々ペンキとニス塗りに明け暮れていたのですから半端な腕前ではありません。当然、陣頭指揮を執っていました。
オフィスにいると総監がお呼びだとか、どこかの会社の社長が表敬に来たとか、決済してもらいたい文書があるとか面倒な仕事が多いので、その類はなるべく副長に任せて、外に出るようにしていたことは否めません。
私にとっては簡単なことでした。
「何か不測自体が起こるといけないので、現地において陣頭指揮を執る。」と宣言すればいいだけです。(そのたびに副長が情けない顔をするが面白いのもありましたが。)
このようにして特別支援学校との絆を深めていったのですが、この続きはまた来週とさせて頂きます。お楽しみに。
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私は普段地上波のテレビはニュース以外にあまり観ないのですが、CSのドキュメンタリー番組はよく観ています。ナショナルジオグラフィックやアニマルプラネット、ヒストリーチャンネル、ディスカバリーチャンネルなどは番組表からこれはと思う番組を録画しておいて、時間のある時によく観ています。
そのようなドキュメンタリー番組で、沿岸漁業の漁師さんたちを取材した番組は視聴率が高いのかよく放送されています。津軽海峡や対馬海峡の本マグロ、あるいは沖縄のカジキマグロ漁など、ほとんどは一人または二人乗りの小さな漁船で、命がけの激闘を繰り広げて大きなマグロを釣り上げています。
これらの番組を観ていて、いろいろことに気が付きます。
続きはこちらからお読みください。
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新刊書案内
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
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開催予定セミナーのご案内
スペシャルセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変えるクライシスマネジメントの5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
経営トップの皆様、役員、各部門の長の方々のご参加をお勧めします。
開催場所:ホテルグランドヒル市ヶ谷
東京都新宿区市ヶ谷本村町4-1
開催時期:決定次第お知らせします。
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
エクゼクティブセミナー
――危機管理が人を育て、事業を伸ばす!――
「危機を機会に変える経営トップのための5大戦略」
どうすれば危機に陥りにくい組織を作ることができるのか、危機的な状況に陥った場合に、毅然として対応できるようになるためにはどのような組織を作っておけばいいのかを、イージスクライシスマネジメントシステムを体系化した講師が語ります。
スペシャルセミナーの内容を踏襲しつつ、特に経営トップのために企画されたセミナーです。部隊指揮官、企業の役員、経営者を経験している講師が、経営トップの皆様に特に伝えたい思いを語ります。
経営トップ、役員等の方々限定のセミナーです。
開催場所: 当社鎌倉極楽寺セミナーハウス
リゾート感覚溢れる湘南鎌倉の隠れ家的セミナーハウスです。
限定少人数で開催いたします。
(住所は公開しておりません。参加の方に個別にお知らせします。)
開催時期: 決定次第お知らせします。
セミナー料金: ¥38,000 (返金保証)
内容にご不満の場合は、理由の如何を問わず全額を返金させていただきます。
その他
特別開催: 経営トップの皆様が役員や担当者をお連れになり、チームで受講したいとお考えの場合は、上記の当社鎌倉極楽寺セミナーハウスのエクゼクティブセミナーをご利用ください。当社開催日以外であっても、日程の調整を承ります。
セミナーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるのかどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたいと考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がないので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂きます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
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No.081 特別支援学校との絆
広島県呉市には海上自衛隊呉地方総監部が所在しています。
この地方総監部は瀬戸内海、四国沖などを警備区とする呉地方隊の司令部であり、同時に、呉に在籍する自衛艦隊隷下の護衛艦、潜水艦、輸送艦などの艦艇の補給や整備も担当しています。
かつてこの呉地方総監部隷下の後方支援を担当する部隊の指揮官として勤務していたことがありました。
部隊では、その部隊に与えられた任務を遂行しつつ、隊員に対して任務に必要な専門の知識・技能を向上させるための教育訓練を行い、また、健全な自衛官としての情操教育なども行わなければなりません。
私は、その部隊の指揮官として勤務している間に、隊員の情操教育の一環として社会貢献活動をさせることを計画し、様々な試みを行いました。
例えば、部隊付近の住宅地の小学生が通学路に使っている信号のない横断歩道の朝の通学時に隊員を交代で派遣し、黄色の旗をもって小学生の安全な横断をサポートしたり、クリスマスに施設を訪問したりということから始めたのです。
そのうちに、近くに県立の特別支援学校があることに気が付きました。隊員の一人のお子さんがそこに通っているというのです。
特別支援学校というのは、身体障害や知的障害のある子供さんが通う学校なのですが、その隊員の話を聞くと、予算が潤沢にある学校ではなく、いろいろな面で困っているということでした。
私はここに何らかの貢献ができないかを考えました。
よく聞いてみると、校庭などの環境整備は父兄が休日にボランティアでやっているとのことでしたので、それでは草刈りの支援などができるかと考え、担当者に学校との調整を指示しました。
当初、先方の校長が私たちが何を言いたいのかよく理解できない様子らしいということでしたので、私が直接面会に行き、隊員の情操教育の一環として環境整備の支援をさせて頂きたいと申し出ました。
女性の校長だったのですが、最初困惑気味だった顔が一挙に晴れ、涙ぐまんばかりになり、教頭やいろいろな先生を呼び出して、大騒ぎになってしまいました。
当方としては、私たちの隊員の精神教育の一環として場所を借り、機会を作って頂きたいという申し出だったのですが、その草刈りなどの作業がどれほど学校にとって大変なことだったのかが伝わってきました。
業者を入れて草刈りなどをする予算がないので、父兄のボランティアを募り、教員が休日出勤して土日に行っているのだそうですが、支援学校の教員というのは通常の学校の教員に比べると極端に重労働を強いられており、また、ご父兄もほとんどは障害児を抱えた共稼ぎの家庭なので、休日に草刈りなどの労働をするというのは大きな負担なのだそうです。
さて、草刈りの当日、午後一番にトラック2台に器材を載せ、マイクロバス2台で学校に乗り付けた私たちは、いつものように学校のグランドに整列し、作業要領の示達を簡単に行うと「かかれ!」の一言を合図に各所に散り、4時間の間に全ての作業を終わらせ、膨大な量の刈り取った草をトラックに積み込んでしまいました。
興味津々で見ていた校長はじめ学校職員は、その作業の速さと徹底ぶりに呆気にとられていましたが、我々が早々と帰り支度をしていることに気が付くと大騒ぎになり、生徒を外へ連れてきて皆でお礼をしたいのでちょっとだけ待ってくれということでした。
こちらが整列して待っていると、生徒たちが次々に職員に介護されながら出てきたのですが、彼らなりに周りがきれいになっていることに気が付いたのか、キョロキョロしているのが分かって私たちも思わずニコニコしてしまいました。
校長に言わせると、草刈りをやってくれるとは聞いたけど、校庭は広いので、どれだけの部分をどれくらいの時間でやってくれるのかなと思い、できればここはやってもらいたいと思っていたところがあったのだが、それを相談する暇もなく始まってしまい、エーッと見ている間に校庭全部が整備されてしまったのでびっくりの一言なのだそうです。
私たちとしては普段やっている部隊の環境整備作業とそれほど違うことをしたわけではないのですが、海上自衛隊のスタンダードと支援学校のスタンダードがかなり違ったということなのでしょう。
翌週、生徒たちが描いたという学校の校庭の絵と父兄の方々からの数十通の手紙が届き、隊員一同を感激させました。
私たちが草刈りをしている時に気になったのが、学校のフェンスが錆びだらけだったことです。
海上自衛官というのは錆に極めて敏感に反応します。船では暇があれば錆を落とす作業と真鍮を磨く作業をしており、錆びているとか金物が光っていないなどというのは許されないからです。
そこで、次回はフェンスの塗装をすることにしました。
私が指揮を執っていた後方支援部隊は艦艇の整備も担当していましたので、ペイントはたくさん持っていました。しかし、それらのペイントは、海上防衛のための予算で購入されたものなので、いくら社会貢献の目的であっても私の一存で他の目的に使うことはできません。
解釈の仕方によっては、隊員の精神教育の一環として行う作業に必要なものという理由付けができないことはないのですが、そのためにはペイントが教育訓練費という予算科目で調達されていなければなりません。
私の部隊が持っていたペイントは艦船修理費という予算科目で調達されたものなので、予算の目的外使用となってしまいます。
私は一計を案じました。
定期整備で造船所に入る船のために造船所にペイントを官給しています。
整備を終えて船が戻ってくる際、造船所では官給された資材の残りを返納したり、処分したりします。
通常、ペイント類は返納されても困るので、蓋を開けた缶については処分指示を出して現地で処分してもらっていましたが、私はその処分指示を出さず、船に頼んで積んで帰ってもらうことにしました。
そして私の部隊で船から受取り、それを倉庫で保管して、そのペイントを使ってフェンスを塗り直すことを考えたのです。
黙っていれば経費をかけて処分されるペイントですので、それを流用するのは大きな問題にはなりません。帳簿上は処分した扱いとなっています。
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