メールマガジン「指揮官の休日」 No.413 星を読む その3
2025/04/04 (Fri) 21:28
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第427回 危機管理の視座 その2を掲載いたしました。
危機管理の概念に関する政治家やメディアのスタンスに触れ、危機管理専門コラムとしての在り方を考えています。
https://aegis-cms.co.jp/3501
No.413 星を読む その3
前回、前々回と天測について語ってきました。
筆者も随分と歳をとり、昔が懐かしくなってきていることもありますが、晴れ渡った冬の澄み切った星空に様々な星が光っているのを眺め、しかし、多くの星の名前を忘れてしまっていることに気づき、携帯のアプリでとてもいいものを見つけて夜空を楽しんでいますので、ついその魅力を皆様にもシェアさせて頂きたいと思ったまでで、他意はありません。
前回は海上自衛隊の護衛艦で最後に実用の天測をした話をしました。
天測の精度に問題は無かったのですが、船足の遅いのを考慮に入れずに計算したため、海上自衛隊演習の開始時に30分遅れて哨区の東端に到達したため、そのエリアを通過しようとしていた重要防護対象が潜水艦に雷撃されてしまうという失態を演じてしまうという結果になりました。
今回は、その後の話です。
その最後の天測の話は、筆者が任官して二度目の艦隊勤務の時の話でした。筆者は二等海尉(中尉)でした。
その後、いろいろな勤務を経て、二等海佐になって3年目に海上幕僚監部防衛課のスタッフとして勤務したことがあります。
防衛課というのは、海上幕僚監部の中核を担う課であり、海上防衛の基本的な考え方や、防衛力整備のガイドラインを策定したりしています。
筆者は、その防衛課の業務計画班の班員として着任しました。その前の配置は当時、唯一のイージス艦であった「こんごう」を率いていた第2護衛隊群司令部の幕僚でした。長崎県佐世保を母港とする水上部隊の司令部幕僚として、海上自衛隊初めてのイージス艦の戦力化に忙しい部隊でした。
その司令部幕僚として、筆者は2年間に土・日も含めて17日しか休みのないという勤務をしていました。その配置に着く前は、幹部学校指揮幕僚課程の学生であり、その卒業生は卒業したすぐは、凄まじい勤務に就かせられることは覚悟していたので、激務の水上護衛隊群司令部の幕僚と言われて驚きはしませんでしたが、まさか2年間で17日しか休みのない勤務をすることになるとは想像していませんでした。
きっかり2年の勤務の後は、指揮官配置または少しは楽な配置に就けるものと期待していたのですが、発令は海上幕僚監部防衛課勤務でした。
ここは月曜日に出勤してきて金曜日に帰宅するということが常態化しているところで、着任するスタッフは例外なしに寝袋を持って着任してきます。
筆者もキャンプ用のマットと寝袋を持って着任しました。
筆者が防衛課員として配置を指定されたのは、業務計画班でした。
海上自衛隊の業務計画を策定する部署です。
長期や中期の計画は防衛班が作りますが、業務計画班は、その中期防衛力整備計画を実現するための年度業務計画を作るのが業務です。
そのためには、まず予算の要求から始めなければなりません。したがって、年末に財務原案ができるまでは、予算要求作業がメインとなります。
筆者が着任した年は、橋本行革の初年度で、予算要求に関して防衛省が初めて対前年度同額またはそれ以下と言い渡された年でした。
年間の業務をザっと説明すると、年度初めから、部隊や海幕の各課から上がってきている業務計画の要望や予算要求を審査し、8月までに海上自衛隊としての予算要求をまとめます。
8月末に概算要求を行った後は、財務省が防衛省の予算要求を審査するのに対して、説明を行います。防衛問題には専門性の高い武器などが含まれますが、何故、その武器が、この時期に、その価格で必要なのかを説明しなければ財務省も理解できません。
それが概算要求の後、11月下旬まで続きます。12月には財務省が国会に提出する財務原案を作りますので、業務計画班は、その予算が成立することを前提に翌年度の年度業務計画の策定に入ります。
同時に各部隊から上がってくる翌々年度の業務計画に対する要望の審査を始めます。
業務計画班は1等海佐の班長の下に10人の班員が配置され、うち2名はその年度の業務計画の執行の監督にあたり、8名が事項別に予算要求と業務計画案の策定を行います。
筆者は着任した年は、教育訓練及び部隊運用の予算要求を担当しました。
教育訓練を担当しましたので、海上自衛隊の様々な学校の予算も担当することになります。
ある時、教育課の幹部候補生学校の担当者が筆者のところに来て、新規要望についての説明を始めました。
彼曰く、幹部候補生学校においても衛星航法を教えなければならないとして、衛星航法装置の教材の予算要求をしたいということでした。
筆者は予算要求をしていただけではなく、業務計画も作らなければならず、幹部候補生学校の年度業務計画についても監督しなければならなかったので、教務時間をどうねん出するつもりなのかを尋ねました。
すると、もう部隊では天測を実用で行っていないので、天文航法の教務を廃止し、その代わりに衛星航法の教務を取り入れるということでした。
筆者は実習幹部の海上実習を担当している練習艦隊司令部の訓練幕僚を電話で呼び出し、練習艦隊で天測の実習は廃止するのかと尋ねました。訓練幕僚は、そのような話は聞いていないが、候補生学校で天文航法の教務を行わないのであれば、練習艦隊で基礎から教えなければならなくなるので、どうするのかは海幕で決めて欲しいということでした。
筆者は、教育課の幹部候補生学校担当者を呼び、「衛星航法訓練装置の導入は認めない。」と言い渡しました。
彼は、「やはり今年度予算は厳しいんですね。」と言ってあきらめ顔でした。筆者は「そうじゃない、そんなものは担ごうと思えば担げない金額ではない。ただ、担ぐ気にならないから担がないだけだ。」と述べ、「星を読めない船乗りを作るつもりはない。」と言い放ちました。
しばらくすると教育課の担当班長が乗り込んできました。
「衛星航法訓練装置を否認したのはお前か?」と鼻息を荒くしています。
「お前は知らないだろうけど、部隊ではもう天測なんかやってないんだよ。」ということです。
「部隊がどうなっているかは講釈して頂かなくても結構です。この3月まで第2護衛隊群にいましたからね。」と言うとその班長は黙ってしまいました。第2護衛隊群がどういう部隊なのかは皆知っていたようです。
「しかし、これからは衛星航法の時代であり、先手を打つ必要がある。海上自衛隊の教育は常に時代遅れの教育をしてきたが、これからは時代の先端を行く教育が必要だ。」と声を荒げます。
筆者は、「だからこそ、訓練装置など無用だと申し上げています。衛星航法装置は日進月歩の世界です。これから予算要求して、訓練装置を設計して納入される頃にはすでに時代遅れの産物です。しかもそれから10年くらいは使い続けることになる。完全に石器時代の遺物になるでしょう。そもそも衛星航法装置を使うのに候補生学校の教育が必要なんですか?
スイッチを入れれば緯度経度が表示されるのに、教育も訓練もないでしょう。それらの整備や修理をする技術者を養成しようというのなら話は別ですが、それは候補生学校ではありません。」とつたえました。
件の班長は、「お前はこんな安価なものの予算を担げないというのか?」と声を荒げるのですが、筆者は「予算の問題ではなく、候補生学校での天文航法の廃止を問題としているんです。とにかく、星を読めない船乗りを作るつもりはありません。」と譲りませんでした。
班長は顔を真っ赤にして帰っていきましたが、声を荒げていたので、防衛課の他のスタッフたちも我々の論争を聞いていたようです。
班長が帰ると、防衛班の一期下の班員(のちに海上幕僚長になりました。)が、ニコニコしながら拍手を送ってくれました。業務計画班の班長も「それでいい。」とニコニコしていました。
理屈では、教育課の言い分が正しいのかもしれません。しかし、幹部候補生学校という学校の性格を考えた時に、天文航法を廃止して衛星航法に差し替えるということには抵抗がありました。候補生には、最新のテクノロジーを教えるのではなく、気力・体力の錬成、船乗りの気質、マナーの習得、英語などもっとやるべきことがあるだろうと考えていました。
今なら当然かと思いますが、当時はまだ天測歴が毎年更新されていた時代です。これが更新されなくなったのは令和4年です。
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専門コラム 第427回 危機管理の視座その2
前回、当コラムでは、日本では危機管理の概念が正しく理解されてこなかったことを指摘し、リスクマネジメントと危機管理が同義であるとの誤解が蔓延ってきたと述べました。
また、東日本大震災、コロナ禍、能登半島震災などを経て、やっとリスクマネジメントでは対応できない危機があることに気付き始め、リスクマネジメントと危機管理は別物であるという議論が起き始めていることに言及しました。
https://aegis-cms.co.jp/3501
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
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防衛課というのは、海上幕僚監部の中核を担う課であり、海上防衛の基本的な考え方や、防衛力整備のガイドラインを策定したりしています。
筆者は、その防衛課の業務計画班の班員として着任しました。その前の配置は当時、唯一のイージス艦であった「こんごう」を率いていた第2護衛隊群司令部の幕僚でした。長崎県佐世保を母港とする水上部隊の司令部幕僚として、海上自衛隊初めてのイージス艦の戦力化に忙しい部隊でした。
その司令部幕僚として、筆者は2年間に土・日も含めて17日しか休みのないという勤務をしていました。その配置に着く前は、幹部学校指揮幕僚課程の学生であり、その卒業生は卒業したすぐは、凄まじい勤務に就かせられることは覚悟していたので、激務の水上護衛隊群司令部の幕僚と言われて驚きはしませんでしたが、まさか2年間で17日しか休みのない勤務をすることになるとは想像していませんでした。
きっかり2年の勤務の後は、指揮官配置または少しは楽な配置に就けるものと期待していたのですが、発令は海上幕僚監部防衛課勤務でした。
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筆者は予算要求をしていただけではなく、業務計画も作らなければならず、幹部候補生学校の年度業務計画についても監督しなければならなかったので、教務時間をどうねん出するつもりなのかを尋ねました。
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筆者は、教育課の幹部候補生学校担当者を呼び、「衛星航法訓練装置の導入は認めない。」と言い渡しました。
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