指揮官の休日 No.388 ひろゆき氏VS高橋洋一氏
2024/07/05 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
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専門コラム「指揮官の決断」は、第398回 使命の自覚 を掲載いたしました。
政府も国会も自分たちが何者であり、何をしなければならないのかを理解していないように思われます。
詳しくは、こちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3325
No.388 ひろゆき氏VS高橋洋一氏
週末の夜、膨大な作業に追われている最中のことです。深夜に一段落がついて、ラム酒を舐めていた時に、おもしろいタイトルのネットの記事を見つけました。
Yahooニュースで、高橋洋一氏とひろゆきさんが論争をしているということなのです。
高橋洋一氏というのは、元々は財務官僚であり、その後内閣官房参与を務めた人で、現在はどこかの大学の教授のはずです。東京大学の数学科卒業で、この人の議論はいつも数学的な裏付けがあるので、時々参考にしています。
一方のひろゆき氏というのは、2チャンネルの創始者で、いかなる議論にも勝ってしまう、ある意味で詭弁術の大家ですが、本来的にはそれなりのしっかりとした考え方も持っている人物として評価しています。
この二人がネット上で論争しているというので、ちょっと関心をそそられました。
最近の筆者は、ちょっとした事情があって、膨大な作業量の業務を連日こなさなければならず、基本的に気晴らしにどこかへ出かけるということもできず、PCに向かって、ひたすら作業を続けるという日々がここ2年以上続いています。
そこで、かつてのようにヨットにニスを塗って気分転換するということもできず、作業の合間を縫ってラム酒を舐める程度の気晴らししかできない生活を続けています。
そのつかの間の気休めの時間に目に留まった記事ですので、本格的に読んで検討したものではありませんが、それぞれになかなかの論客なので、どのようなバトルが展開されているのかに興味を持ちました。
以下、Yahooニュースを引用します。
『元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏がテレビ番組で持論である「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない」という内容を披露したことに対し、インフルエンサーの“ひろゆき”こと西村博之氏が、《燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上。電気代も上がります。国内向けで働く人・公務員・年金受給者の手取りは変わらないので、実質的に半額で暮らす。ホントに学者?》
とXで反論。その後、高橋氏はXで《円安(自国通貨安)は日本有利(自国有利)なのは、近隣窮乏化として古今東西知られている》などと反論するも、ひろゆき氏は《『円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない』とメディアで言っておきながら、数式も根拠も出せない》と熱いバトルを繰り広げている。そして6月22日に高橋氏は自身のYouTubeチャンネルでライブ配信を行い『ひろゆきがXで絡んできた!フッ』というサムネイルで詳細を語った。
自国通貨安は自国に有利というノーベル経済学者ポール・クルーグマンの名前を出して、『文句があるんだったら、私なんかに言わないでクルーグマンをやっつけたほうがいい。近隣窮乏化が間違いというのが分かったら、ノーベル賞もんですよ』と嘲笑った。」
ということらしいです。
この議論を読んで、お二人が何を言いたいのかを理解している間にラムがかなり回ってきたので、理論的な話が面倒臭くなってきたことは事実なのですが、しかし、どうしてこれが議論になったのかに興味があったので、まず発端となった高橋氏の議論がどうだったのかを確認しました。
どうも、これが関西地方で放映されている「正義のミカタ」という番組で、内容はYouTubeでも観ることができます。
その番組を確認したところ、たしかに高橋氏は1ドル300円でも誰も文句を言わないという発言をしています。
これに対してひろゆき氏が「燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上」になる、一方で国内向けで働く人・公務員・年金受給者の手取りは変わらないので、 実質的に半額で暮らすことになる、高橋洋一は本当に学者なのかとXで疑問を呈したのです。
これに対して高橋氏は、円安(自国通貨安)は日本有利(自国有利)なのは、近隣窮乏化として古今東西知られている、とXで反論しています。
この議論はどちらも正しく、一方でひろゆき氏の勘違いもあるようですが、高橋氏の説明不足も否めません。
ひろゆき氏が間違っているのは、「燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上」という点です。1ドル150円が300円になったら、物価は倍になるというのは、極端です。輸入されている財貨の総量は国内消費量の15%程度ですから、これらの価格が倍になったところで、物価上昇は30%程度のはずです。実際には燃料や輸送費の上昇はかなりのダメージを経済に与えますので、単純に15%の倍ということにはなりませんが、しかし、一方で原材料費の上昇がそのまま価格転嫁されるわけではないので、15%が倍になるという計算も大雑把です。
ただ、高橋氏の説明不足は、最初の段階で自国通貨安が近隣窮乏化として知られている現象であることを説明していない点です。ひろゆき氏がマクロ経済をどの程度理解しているのか承知していませんが、テレビの視聴者に向かって、円安を良しとする以上はその説明をする必要があります。
案の定、ひろゆき氏は「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない』とメディアで言っておきながら、数式も根拠も出せない」とXで反論しました。
このツイートで、ひろゆき氏がマクロ経済学に関してほとんど何も知らないことが分かります。
高橋氏がテレビで使った説明図は近隣窮乏化理論を説明する際によく使われる図であり、出展はOECD NEW GLOBAL MODELです。番組で高橋氏はそのことも説明しています。
OECD NEW GLOBAL MODELはOECDのサイトを閲覧すると読むことができますが、これは数式の塊であり、マクロ経済学の知識がないとちょっと読み解くことができないでしょう。筆者も細部までは読み説くことができません。その図を用いて高橋氏が説明しているのに、「数式も根拠も出せない。」と言うのは、ひろゆき氏がこのモデルの意味を全く理解していないからです。
ただし、ここで高橋氏が自国通貨安は自国に有利というノーベル経済学者ポール・クルーグマンの名前を出して、「文句があるんだったら、私なんかに言わないでクルーグマンをやっつけたほうがいい。近隣窮乏化が間違いというのが分かったら、ノーベル賞もんですよ」と言ったのは、ある意味で議論から逃げているとしか思えません。ノーベル経済学賞受賞の経済学者が自分と同じことを言っているから自分の主張は正しいというのは、議論の仕方としていかがなものかと思います。なぜ、近隣窮乏化が自国にとって有利なのかを自分の言葉で分かりやすく説明すべきです。
要するに、この論争はひろゆき氏のマクロ経済学に関する認識不足と高橋の説明不足ですれ違った結果であろうと考えています。
ひろゆき氏の議論の7割くらいは正しいと筆者も考えます。円安のために物価が上昇しているのは事実ですし、定額の所得しかない公務員や年金生活者はきつい思いをしています。
輸出で空前の収益を記録した企業の社員だけはいい思いをしているはずですが。
読者の皆様は、それではなぜ、自国通貨安で近隣窮乏化によりその国民が豊かになれるはずなのに、私たちはそうなっていなっていないのかと思われているかと拝察します。
原因は簡単です。政府が無策だからです。
近隣窮乏化がなぜ起きるのかは簡単です。
円が安くなれば、相対的にドルが高くなります。極端な円安を防ぐために日銀が介入を行う際には外貨を売って円を買い支えます。つまり、高くなったドルを売っているので儲かっているのです。ドル建て国債も償 還時期が来ると高いドルで支払いが行われ、そこでも利益が出ます。これが自国通貨安の近隣窮乏化です。
しかし、国全体では潤っているはずの利益が国民に還元されないから、私たちは円安による物価高と下がっていく実質賃金に悩まされているのです。
岸田首相は就任当時「新しい資本主義」という意味不明なスローガンを掲げ、「成長と分配の好循環」と二言目には言っていたはずです。最近の彼はまったくそれを言わなくなりました。
国が潤っても、それを分配しようとする気が政府には全くないのです。円安で輸出が好調なら、ガソリン税を下げるなり、いろいろな方法で還元する手段があるはずですが、好循環をさせるつもりが全くないのです。
少子化対策として「子育て支援」策しか出しません。少子化の原因は非正規の若い人たちが結婚して家庭を持てないからであり、家庭を持てる正規就業の若い人たちの有配偶者出生率は過去20年以上少しずつ上昇しています。
つまり、このまま子育て支援を続けると、結婚できない若い人たちと結婚できる人たちの格差を拡大する結果をもたらすことになります。子育て支援は重要な施策ですが、少子化対策にはならないのです。そのようなことすら理解できないのが現政権です。
ある政治家の言い分を聞いていると、子育て支援をしないと、有配偶者出生率が下がってしまい、少子化に拍車がかかるというのですが、こいつの本音を知っています。彼は、同じ年齢ならば世帯持ちの方が投票率が高いので、少子化対策よりも子育て支援の方が選挙で有利だということです。
この国の政治家は、この国をどういう国にしたいのかという以前に、次の選挙でいかに議席を獲得するかしか考えていないようです。
成長と分配の好循環をもたらすのが新しい資本主義だったはずなのに、一部利益を上げている輸出企業に空前の利益を与えたのみで、その利益を社会に分配しようとしない政権のために、私たち日本の社会は円安による物価上昇に苦しんでいます。自国通貨安による近隣窮乏化のメリットを享受するために何が必要なのか、この国の施政者は誰もマクロ経済学の基礎を知らないようです。
追伸
申し訳ありません。当メールマガジンは最近、初心に戻ってどうでもいい内容をお伝えすることにしたはずですが、たまたまアルコールの回った頭にネット上の記事が飛び込んできたので、余計な愚痴をきいてしまいました。
次回は、どうでもいい内容でお送りします。御期待ください。
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専門コラム「指揮官の決断」第398回 使命の自覚
当コラムでは最近、目的は何かを問い直すべきというコラムを複数回にわたって掲載いたしました。
意思決定に際して、まず、自分たちの使命は何かを考え、その使命から、自分たちが何をすべきなのかを導き出し、しっかりと目的を設定して意思決定を行うことが重要であるということです。
このことがこの社会一般にほとんど理解されていないということを目の当たりにさせられる事実があります。
今回は、最近の話題の一つから、その事実に触れていきたいと思います。
続きは、下記からお読みください。
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2 スポットコンサルティング
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かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
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トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
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No.388 ひろゆき氏VS高橋洋一氏
週末の夜、膨大な作業に追われている最中のことです。深夜に一段落がついて、ラム酒を舐めていた時に、おもしろいタイトルのネットの記事を見つけました。
Yahooニュースで、高橋洋一氏とひろゆきさんが論争をしているということなのです。
高橋洋一氏というのは、元々は財務官僚であり、その後内閣官房参与を務めた人で、現在はどこかの大学の教授のはずです。東京大学の数学科卒業で、この人の議論はいつも数学的な裏付けがあるので、時々参考にしています。
一方のひろゆき氏というのは、2チャンネルの創始者で、いかなる議論にも勝ってしまう、ある意味で詭弁術の大家ですが、本来的にはそれなりのしっかりとした考え方も持っている人物として評価しています。
この二人がネット上で論争しているというので、ちょっと関心をそそられました。
最近の筆者は、ちょっとした事情があって、膨大な作業量の業務を連日こなさなければならず、基本的に気晴らしにどこかへ出かけるということもできず、PCに向かって、ひたすら作業を続けるという日々がここ2年以上続いています。
そこで、かつてのようにヨットにニスを塗って気分転換するということもできず、作業の合間を縫ってラム酒を舐める程度の気晴らししかできない生活を続けています。
そのつかの間の気休めの時間に目に留まった記事ですので、本格的に読んで検討したものではありませんが、それぞれになかなかの論客なので、どのようなバトルが展開されているのかに興味を持ちました。
以下、Yahooニュースを引用します。
『元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏がテレビ番組で持論である「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない」という内容を披露したことに対し、インフルエンサーの“ひろゆき”こと西村博之氏が、《燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上。電気代も上がります。国内向けで働く人・公務員・年金受給者の手取りは変わらないので、実質的に半額で暮らす。ホントに学者?》
とXで反論。その後、高橋氏はXで《円安(自国通貨安)は日本有利(自国有利)なのは、近隣窮乏化として古今東西知られている》などと反論するも、ひろゆき氏は《『円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない』とメディアで言っておきながら、数式も根拠も出せない》と熱いバトルを繰り広げている。そして6月22日に高橋氏は自身のYouTubeチャンネルでライブ配信を行い『ひろゆきがXで絡んできた!フッ』というサムネイルで詳細を語った。
自国通貨安は自国に有利というノーベル経済学者ポール・クルーグマンの名前を出して、『文句があるんだったら、私なんかに言わないでクルーグマンをやっつけたほうがいい。近隣窮乏化が間違いというのが分かったら、ノーベル賞もんですよ』と嘲笑った。」
ということらしいです。
この議論を読んで、お二人が何を言いたいのかを理解している間にラムがかなり回ってきたので、理論的な話が面倒臭くなってきたことは事実なのですが、しかし、どうしてこれが議論になったのかに興味があったので、まず発端となった高橋氏の議論がどうだったのかを確認しました。
どうも、これが関西地方で放映されている「正義のミカタ」という番組で、内容はYouTubeでも観ることができます。
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これに対してひろゆき氏が「燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上」になる、一方で国内向けで働く人・公務員・年金受給者の手取りは変わらないので、 実質的に半額で暮らすことになる、高橋洋一は本当に学者なのかとXで疑問を呈したのです。
これに対して高橋氏は、円安(自国通貨安)は日本有利(自国有利)なのは、近隣窮乏化として古今東西知られている、とXで反論しています。
この議論はどちらも正しく、一方でひろゆき氏の勘違いもあるようですが、高橋氏の説明不足も否めません。
ひろゆき氏が間違っているのは、「燃料費・肥料代、輸送費が2倍になるので農作物・水産物の価格は2倍。輸入品の価格は2倍以上」という点です。1ドル150円が300円になったら、物価は倍になるというのは、極端です。輸入されている財貨の総量は国内消費量の15%程度ですから、これらの価格が倍になったところで、物価上昇は30%程度のはずです。実際には燃料や輸送費の上昇はかなりのダメージを経済に与えますので、単純に15%の倍ということにはなりませんが、しかし、一方で原材料費の上昇がそのまま価格転嫁されるわけではないので、15%が倍になるという計算も大雑把です。
ただ、高橋氏の説明不足は、最初の段階で自国通貨安が近隣窮乏化として知られている現象であることを説明していない点です。ひろゆき氏がマクロ経済をどの程度理解しているのか承知していませんが、テレビの視聴者に向かって、円安を良しとする以上はその説明をする必要があります。
案の定、ひろゆき氏は「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない』とメディアで言っておきながら、数式も根拠も出せない」とXで反論しました。
このツイートで、ひろゆき氏がマクロ経済学に関してほとんど何も知らないことが分かります。
高橋氏がテレビで使った説明図は近隣窮乏化理論を説明する際によく使われる図であり、出展はOECD NEW GLOBAL MODELです。番組で高橋氏はそのことも説明しています。
OECD NEW GLOBAL MODELはOECDのサイトを閲覧すると読むことができますが、これは数式の塊であり、マクロ経済学の知識がないとちょっと読み解くことができないでしょう。筆者も細部までは読み説くことができません。その図を用いて高橋氏が説明しているのに、「数式も根拠も出せない。」と言うのは、ひろゆき氏がこのモデルの意味を全く理解していないからです。
ただし、ここで高橋氏が自国通貨安は自国に有利というノーベル経済学者ポール・クルーグマンの名前を出して、「文句があるんだったら、私なんかに言わないでクルーグマンをやっつけたほうがいい。近隣窮乏化が間違いというのが分かったら、ノーベル賞もんですよ」と言ったのは、ある意味で議論から逃げているとしか思えません。ノーベル経済学賞受賞の経済学者が自分と同じことを言っているから自分の主張は正しいというのは、議論の仕方としていかがなものかと思います。なぜ、近隣窮乏化が自国にとって有利なのかを自分の言葉で分かりやすく説明すべきです。
要するに、この論争はひろゆき氏のマクロ経済学に関する認識不足と高橋の説明不足ですれ違った結果であろうと考えています。
ひろゆき氏の議論の7割くらいは正しいと筆者も考えます。円安のために物価が上昇しているのは事実ですし、定額の所得しかない公務員や年金生活者はきつい思いをしています。
輸出で空前の収益を記録した企業の社員だけはいい思いをしているはずですが。
読者の皆様は、それではなぜ、自国通貨安で近隣窮乏化によりその国民が豊かになれるはずなのに、私たちはそうなっていなっていないのかと思われているかと拝察します。
原因は簡単です。政府が無策だからです。
近隣窮乏化がなぜ起きるのかは簡単です。
円が安くなれば、相対的にドルが高くなります。極端な円安を防ぐために日銀が介入を行う際には外貨を売って円を買い支えます。つまり、高くなったドルを売っているので儲かっているのです。ドル建て国債も償 還時期が来ると高いドルで支払いが行われ、そこでも利益が出ます。これが自国通貨安の近隣窮乏化です。
しかし、国全体では潤っているはずの利益が国民に還元されないから、私たちは円安による物価高と下がっていく実質賃金に悩まされているのです。
岸田首相は就任当時「新しい資本主義」という意味不明なスローガンを掲げ、「成長と分配の好循環」と二言目には言っていたはずです。最近の彼はまったくそれを言わなくなりました。
国が潤っても、それを分配しようとする気が政府には全くないのです。円安で輸出が好調なら、ガソリン税を下げるなり、いろいろな方法で還元する手段があるはずですが、好循環をさせるつもりが全くないのです。
少子化対策として「子育て支援」策しか出しません。少子化の原因は非正規の若い人たちが結婚して家庭を持てないからであり、家庭を持てる正規就業の若い人たちの有配偶者出生率は過去20年以上少しずつ上昇しています。
つまり、このまま子育て支援を続けると、結婚できない若い人たちと結婚できる人たちの格差を拡大する結果をもたらすことになります。子育て支援は重要な施策ですが、少子化対策にはならないのです。そのようなことすら理解できないのが現政権です。
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この国の政治家は、この国をどういう国にしたいのかという以前に、次の選挙でいかに議席を獲得するかしか考えていないようです。
成長と分配の好循環をもたらすのが新しい資本主義だったはずなのに、一部利益を上げている輸出企業に空前の利益を与えたのみで、その利益を社会に分配しようとしない政権のために、私たち日本の社会は円安による物価上昇に苦しんでいます。自国通貨安による近隣窮乏化のメリットを享受するために何が必要なのか、この国の施政者は誰もマクロ経済学の基礎を知らないようです。
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