指揮官の休日 No.380 卒爾ながら
2024/03/22 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第388回 目的は何か その3 を掲載いたしました。
前二回に引き続き、意思決定における目的の認識の重要性について語っています。詳しくは弊社専門コラムをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3273
No.380 卒爾ながら
ついに、二週間続けてメールマガジンを発行できないという事態に陥りました。
一昨年から全く休みのない日々を続け、ついに先日、やっと温泉三昧でまったく仕事をしないという一日を確保したのですが、仕事の方は複雑さが拡大の一方であり、ついにコラムを書けない日々が続きました。メールマガジンは、基本的にはコラムの更新をお知らせしているので、コラムが書けないとメールマガジンも配信できません。
ところが、一昨年筆者が国立がん研究センターに入院して手術を受けたことを覚えていて下さった方がいて、「大丈夫か?まだ2年経ってないからな。」とメールをいただきました。そういう方がいらっしゃる反面、「自衛隊を退職してから金曜日のカレーが無くなったので、お前のメールが来ないと曜日が分からんじゃないか!」というお叱りのメールも頂いています。
特に体調を崩したということではなく、業務が複雑になりすぎて専門コラムはメールマガジンに手が回わらなったということなのですが、往年の筆者と異なり、同時処理の能力が著しく低下していることは否めません。
なんとか業務を整理して専門コラムとこのメールマガジンを復活させましたが、このような臨時休刊はこれからも時々生ずるかもしれません。ご容赦ください。
さて、今回の表題を読み、かつ意味をお分かりの方は、どちらかというと少数派かもしれません。
筆者もこの言葉の本来の意味や由来などについては承知しておりませんが、かつて、武士階級ではよく使われていた言葉かもしれません。
昨年の秋だったと記憶しますが、四ツ谷駅でJRを下車して母校上智大学に向かおうとしていた改札口で、後ろからこの言葉が聞こえたのです。聞こえた瞬間は、その言葉を認識したにとどまり、筆者に向かって発せられたとは思いませんでした。
しかし、次の瞬間、これは誰かが筆者に向かって発した言葉ではないかと考え、しかし、私たちの日常生活でまず聞くことのない言葉であったため、振り向いてみました。
そこにいたのは、多分30代と思われる欧米人で、ネクタイはしていませんでしたがジャケットを着こみ、ニコンのカメラを大切そうに両手で持っている男です。
振り向いた筆者に彼はニコニコして、「ちょっと伺っていいですか?」とたどたどしい日本語で尋ねてきました。
「いいですよ。」と答えると、「迎賓館に行きたいのですが、それはどこにありますか?」ということです。
四ツ谷駅の赤坂口なら簡単なのですが、彼は麹町・四ツ谷口改札に出てきていたので、横断歩道を渡ったりしなければならず、ちょっと面倒でした。
そこで、「分かるところまで、一緒に行きましょう。」と言って地下から地上に上がる通路を一緒に歩きました。
「お忙しいところをご免なさい。」としきりに謝る彼に、「しかし、すごい言葉をご存じですね。」と言うと、「?」という顔をしました。
「卒爾ながら、という言葉は、今の若い日本人には通じないかもしれないですよ。」と言うと、「日本語として、間違っているのですか?」と聞いてきます。
「間違っているのではないけど、昔の教養階級の人々が使っていた言葉ですから、古典の教養がないと意味が分からないかもしれません。」と言うと、「そうなんですか・・・」とのこと。この会話は日本語で行われました。
「日本語はどこで勉強されたんですか?」と尋ねると、英国の大学で、日本から来た留学生と同じ寮に住んでいて、久しぶりに彼女に会うために半年前から夜間の語学学校に通って勉強したとのことでした。
それを聞いて驚愕しました。
半年ですよ!筆者なんぞ、最初に英語の授業を受けてから50年以上の月日が経っているのに・・・・
多分、その「彼女」という人がよほど魅力的な人なのでしょう。
筆者は海上自衛隊で連絡官を経験し、退官後カリフォルニアの米国企業でCEOなども経験しましたが、それもかなり前のことで、筆者の英語は油切れが激しくなっています。
しかし、最近、再び仕事で英語を使わざるを得ない状況に追い込まれており、学び直しを迫られています。このため、かなり強力なリフレッシャーが必要なのと、そもそも要求される英語のレベルが、連絡官やCEOとは異なるレベルなので、相当の勉強が必要になります。
筆者の若いころに比べると、Youtubeなどでも英語を学ぶことのできる教材はたくさんあります。
それらのどれがいいのかと、いろいろなチャンネルを眺めていて気付いたことがあります。
レベルからいうと多分TOEIC600点程度を目指す人たちをターゲットとした動画だということですが、どうすればネイティブのように話すことができるかという動画が目立つのが気になります。
例えば、” Good morning “と話しかけられて、” Fine thank you, and you ?” と返すのが日本の学校教育ですが、ネイティブはそうは言わないので、それは止めたほうがいいというような動画がたくさんあります。
アメリカ人の若い講師たちがそう言うので、「そうなんだ。」と思ってしまいます。
彼らに言わせると “ I’ m good. You ?” と返すのがネイティブだということです。
筆者の中学・高校の同級生は知っていますが、筆者は英語に関しては劣等生でしたから、あまり大きなことを申し上げるつもりはないのですが、上述の議論に与するつもりはありません。(若い人に申し上げておきます。「与する」は「よする」と読むのではなく、「くみする」と読みます。)
筆者が若いころに連絡官として勤務していたペンシルバニア州の米海軍基地では、多くのシビリアンも勤務していました。
毎朝、コーヒーメーカーのあるコーナーで出会う年配のシビリアンの紳士は、いつも” Good morning, sir. “と挨拶してくれるのですが、こちらから先に” Good morning !” と声をかけると、嬉しそうに” Oh!I’m fine, thank you, sir. And you, Lieutenant ? “ と一等海尉だった筆者に敬意を表して返してくれました。
外国人士官にも敬意を表することを忘れない程度の教養のある米国人は、このような会話をします。彼が年配だったこともあるかもしれませんが、彼はいつもコーヒーのコーナーに来るときにはペーパーバックを携えて、フレッシュなコーヒーが淹れられるの待っているような人物でした。
ひょっとすると、そのYoutubeチャンネルの講師の英語は、若い人同士のくだけた会話において使われる挨拶かもしれません。ビジネスマンが営業先の社長に挨拶する時には別の言い方があるのかもしれません。
かつて、筆者が一等海佐で海幕の勤務の時のことでしたが、米国大使館において開かれたレセプションに招待されて参加したことがありました。制服が何人か招待されていたので防衛省からマイクロバスが出され、筆者たちは制服着用で臨みました。
レセプションの最中に米国大使館の駐在武官から大使に紹介され、大使と話をしていたところに、商社の若い駐在から戻ったばかりの社員たちが混じってきました。
さすがに彼らの英語は流ちょうで澱みない会話になるのですが、ちょっと気になることがありました。
筆者は一等海佐の制服を着て、駐在武官の米国海軍大佐と並んで大使と話をしています。二人とも、大使に向かっては “ Yes, sir. “ あるいは “Yes, Ambassador “ という受け答えなのですが、商社の若い社員たちは、グラス片手に” Yah !”などと返答をするのです。
大使は温厚な人物なのでにこやかに話を続けるのですが、筆者の方は冷や汗が出ました。
大使が別のグループに回ったので筆者も制服グループのもとに戻ったところで、その商社の防衛省担当の営業部長が目の前を通りかかったのを呼び止めました。
「お前さんのところの若いのが、大使に向かって ”Yah ”とか言ってたぞ。」と言うと、それだけでその部長は顔色を変えて若い社員グループに向かっていき、外へ連れ出して何か小言を言っていました。
言葉は恐ろしいもので、その人の人柄や教養を肩越しに透けて見せてしまいます。うっかりネイティブの表現方法を真似るととんでもないことになる場合があります。
気を付けなければならないのは、ベトナム戦争などを扱った映画でGIたちがしゃべっている英語です。まともな紳士淑女は絶対に口にしない表現を使っているので、間違っても私たちが使っていいものではありません。
筆者は自衛隊に籍を置いていたので、軍人特有の英語の話し方には慣れていますが、それをビジネスの世界で使うと違和感を持たれます。
しかし、逆にそのような表現方法でたどたどしくしゃべっていると、訪問した先の社長が、「あんたは軍歴があるのか?」と聞いてくれます。「海軍に30年いたよ。」と言うと、「ホゥ、俺も7年いて大尉でリタイアしてビジネスの世界に入ったよ。」などと盛り上がることがCEOとしてカリフォルニアで勤務していた頃によくありました。
今年の筆者の目標は英語の上達ですが、決してネイティブのようにしゃべることができるようになりたいとは思っていません。
ネイティブのようではなくても、一生懸命勉強してしゃべっているんだな、と思ってもらえる英語でいいと思っています。
「卒爾ながら」(ちなみに、「そつじながら」と読みます。)という言葉を” Excuse me.” と同義語であると教えられて、それを一生懸命に使って話しかけてくる外国人に「変な奴!」とは思いませんし、逆に、「ちょっといいスカ?」などと話しかけてくる外国人でも、その後が流ちょうで日本の大学生のように話が通じるならともかく、それだけで終わってしまうような日本語なら、「勉強しなおしておいで!」と言いたくなります。
老婆心ながら申し上げると、TOEIC600点程度を目指して勉強している人は、ネイティブのように話すことなどを考える必要はありません。相手の言うことを聞き取り、自分の言いたいことを通じさせることができるということが重要であり、うっかりネイティブの表現などを学ぶと、それがどのような人たちが使う言葉なのかを確かめない限り、とんでもないことになりかねないのです。
故人曰く「生兵法は大怪我のもと」です。
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専門コラム「指揮官の決断」第388回 目的はなにか その3 掲載のお知らせ
前2回にわたって意思決定の目的は何かを考えるという、一見して当たり前のようなことの重要性について語ってきました。
何も考えないと、何を当たり前のことを言ってんだ!ということになりますが、世の中ではその当たり前のことが理解されていないことがびっくりするほど多いのも事実です。
ビジネスマン必読の書と言われた『失敗の本質』という書物は、経営学者と戦史研究の専門家たちによって執筆されていますが、この執筆陣がそれを理解していません。
この「目的は何か」というコラムの第一回で言及していますが、太平洋戦争冒頭における日本海軍艦載機によるハワイ真珠湾の米国海軍太平洋艦隊に対する奇襲攻撃などはその典型例です。
https://aegis-cms.co.jp/3273
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Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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さて、今回の表題を読み、かつ意味をお分かりの方は、どちらかというと少数派かもしれません。
筆者もこの言葉の本来の意味や由来などについては承知しておりませんが、かつて、武士階級ではよく使われていた言葉かもしれません。
昨年の秋だったと記憶しますが、四ツ谷駅でJRを下車して母校上智大学に向かおうとしていた改札口で、後ろからこの言葉が聞こえたのです。聞こえた瞬間は、その言葉を認識したにとどまり、筆者に向かって発せられたとは思いませんでした。
しかし、次の瞬間、これは誰かが筆者に向かって発した言葉ではないかと考え、しかし、私たちの日常生活でまず聞くことのない言葉であったため、振り向いてみました。
そこにいたのは、多分30代と思われる欧米人で、ネクタイはしていませんでしたがジャケットを着こみ、ニコンのカメラを大切そうに両手で持っている男です。
振り向いた筆者に彼はニコニコして、「ちょっと伺っていいですか?」とたどたどしい日本語で尋ねてきました。
「いいですよ。」と答えると、「迎賓館に行きたいのですが、それはどこにありますか?」ということです。
四ツ谷駅の赤坂口なら簡単なのですが、彼は麹町・四ツ谷口改札に出てきていたので、横断歩道を渡ったりしなければならず、ちょっと面倒でした。
そこで、「分かるところまで、一緒に行きましょう。」と言って地下から地上に上がる通路を一緒に歩きました。
「お忙しいところをご免なさい。」としきりに謝る彼に、「しかし、すごい言葉をご存じですね。」と言うと、「?」という顔をしました。
「卒爾ながら、という言葉は、今の若い日本人には通じないかもしれないですよ。」と言うと、「日本語として、間違っているのですか?」と聞いてきます。
「間違っているのではないけど、昔の教養階級の人々が使っていた言葉ですから、古典の教養がないと意味が分からないかもしれません。」と言うと、「そうなんですか・・・」とのこと。この会話は日本語で行われました。
「日本語はどこで勉強されたんですか?」と尋ねると、英国の大学で、日本から来た留学生と同じ寮に住んでいて、久しぶりに彼女に会うために半年前から夜間の語学学校に通って勉強したとのことでした。
それを聞いて驚愕しました。
半年ですよ!筆者なんぞ、最初に英語の授業を受けてから50年以上の月日が経っているのに・・・・
多分、その「彼女」という人がよほど魅力的な人なのでしょう。
筆者は海上自衛隊で連絡官を経験し、退官後カリフォルニアの米国企業でCEOなども経験しましたが、それもかなり前のことで、筆者の英語は油切れが激しくなっています。
しかし、最近、再び仕事で英語を使わざるを得ない状況に追い込まれており、学び直しを迫られています。このため、かなり強力なリフレッシャーが必要なのと、そもそも要求される英語のレベルが、連絡官やCEOとは異なるレベルなので、相当の勉強が必要になります。
筆者の若いころに比べると、Youtubeなどでも英語を学ぶことのできる教材はたくさんあります。
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レベルからいうと多分TOEIC600点程度を目指す人たちをターゲットとした動画だということですが、どうすればネイティブのように話すことができるかという動画が目立つのが気になります。
例えば、” Good morning “と話しかけられて、” Fine thank you, and you ?” と返すのが日本の学校教育ですが、ネイティブはそうは言わないので、それは止めたほうがいいというような動画がたくさんあります。
アメリカ人の若い講師たちがそう言うので、「そうなんだ。」と思ってしまいます。
彼らに言わせると “ I’ m good. You ?” と返すのがネイティブだということです。
筆者の中学・高校の同級生は知っていますが、筆者は英語に関しては劣等生でしたから、あまり大きなことを申し上げるつもりはないのですが、上述の議論に与するつもりはありません。(若い人に申し上げておきます。「与する」は「よする」と読むのではなく、「くみする」と読みます。)
筆者が若いころに連絡官として勤務していたペンシルバニア州の米海軍基地では、多くのシビリアンも勤務していました。
毎朝、コーヒーメーカーのあるコーナーで出会う年配のシビリアンの紳士は、いつも” Good morning, sir. “と挨拶してくれるのですが、こちらから先に” Good morning !” と声をかけると、嬉しそうに” Oh!I’m fine, thank you, sir. And you, Lieutenant ? “ と一等海尉だった筆者に敬意を表して返してくれました。
外国人士官にも敬意を表することを忘れない程度の教養のある米国人は、このような会話をします。彼が年配だったこともあるかもしれませんが、彼はいつもコーヒーのコーナーに来るときにはペーパーバックを携えて、フレッシュなコーヒーが淹れられるの待っているような人物でした。
ひょっとすると、そのYoutubeチャンネルの講師の英語は、若い人同士のくだけた会話において使われる挨拶かもしれません。ビジネスマンが営業先の社長に挨拶する時には別の言い方があるのかもしれません。
かつて、筆者が一等海佐で海幕の勤務の時のことでしたが、米国大使館において開かれたレセプションに招待されて参加したことがありました。制服が何人か招待されていたので防衛省からマイクロバスが出され、筆者たちは制服着用で臨みました。
レセプションの最中に米国大使館の駐在武官から大使に紹介され、大使と話をしていたところに、商社の若い駐在から戻ったばかりの社員たちが混じってきました。
さすがに彼らの英語は流ちょうで澱みない会話になるのですが、ちょっと気になることがありました。
筆者は一等海佐の制服を着て、駐在武官の米国海軍大佐と並んで大使と話をしています。二人とも、大使に向かっては “ Yes, sir. “ あるいは “Yes, Ambassador “ という受け答えなのですが、商社の若い社員たちは、グラス片手に” Yah !”などと返答をするのです。
大使は温厚な人物なのでにこやかに話を続けるのですが、筆者の方は冷や汗が出ました。
大使が別のグループに回ったので筆者も制服グループのもとに戻ったところで、その商社の防衛省担当の営業部長が目の前を通りかかったのを呼び止めました。
「お前さんのところの若いのが、大使に向かって ”Yah ”とか言ってたぞ。」と言うと、それだけでその部長は顔色を変えて若い社員グループに向かっていき、外へ連れ出して何か小言を言っていました。
言葉は恐ろしいもので、その人の人柄や教養を肩越しに透けて見せてしまいます。うっかりネイティブの表現方法を真似るととんでもないことになる場合があります。
気を付けなければならないのは、ベトナム戦争などを扱った映画でGIたちがしゃべっている英語です。まともな紳士淑女は絶対に口にしない表現を使っているので、間違っても私たちが使っていいものではありません。
筆者は自衛隊に籍を置いていたので、軍人特有の英語の話し方には慣れていますが、それをビジネスの世界で使うと違和感を持たれます。
しかし、逆にそのような表現方法でたどたどしくしゃべっていると、訪問した先の社長が、「あんたは軍歴があるのか?」と聞いてくれます。「海軍に30年いたよ。」と言うと、「ホゥ、俺も7年いて大尉でリタイアしてビジネスの世界に入ったよ。」などと盛り上がることがCEOとしてカリフォルニアで勤務していた頃によくありました。
今年の筆者の目標は英語の上達ですが、決してネイティブのようにしゃべることができるようになりたいとは思っていません。
ネイティブのようではなくても、一生懸命勉強してしゃべっているんだな、と思ってもらえる英語でいいと思っています。
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老婆心ながら申し上げると、TOEIC600点程度を目指して勉強している人は、ネイティブのように話すことなどを考える必要はありません。相手の言うことを聞き取り、自分の言いたいことを通じさせることができるということが重要であり、うっかりネイティブの表現などを学ぶと、それがどのような人たちが使う言葉なのかを確かめない限り、とんでもないことになりかねないのです。
故人曰く「生兵法は大怪我のもと」です。
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前2回にわたって意思決定の目的は何かを考えるという、一見して当たり前のようなことの重要性について語ってきました。
何も考えないと、何を当たり前のことを言ってんだ!ということになりますが、世の中ではその当たり前のことが理解されていないことがびっくりするほど多いのも事実です。
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