指揮官の休日 No.357 時刻整合
2023/09/29 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第365回 図上演習の薦め を掲載いたしました。
意思決定の最高のツールである「図上演習」を紹介します。 詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3108
No.357 時刻整合
先週、「時報も聞かなくなった」という記事を配信いたしました。
その記事を読んだ海上自衛隊の先輩からメールが送られてきて、「俺はお前のつまらんコラムも我慢して読んでるぞ。」という前書きの後に、「お前はもう時刻整合をやらんのか。俺はこの歳になってもまだやっておるぞ。」とのたまわっておられました。
まぁ、この先輩の部下になったことはないのですが、海幕のスタッフだったころに、よく調整に行っていた班の班長だったり、司令部幕僚として勤務している時の隷下部隊の指揮官だったりという関係でよく話をしたことがあります。口は悪いけど、いろいろなことを教えてくれる尊敬している先輩の一人です。
彼がいまだに時刻整合をやっているというのは、ビックリです。私などはここ10年以上、電波時計以外の腕時計を使ったことがないのですが、多分、その先輩はバカ高い精巧な腕時計を愛用しているのだと思われます。そういえば、現役のときも、全く目立たないところにさりげないお洒落をしている人でした。
筆者などはワイシャツは支給されたものを着ていましたが、彼はオーダーしたものを着ていたところを見たことがあります。
制服のワイシャツは上着を脱いだ時にも階級が分かるように肩に柔らかい階級章を付けるためのベルトが通してあります。ラインパイロットが機内で着ているワイシャツと同様のものです。
この肩ベルトのついたワイシャツは市販されていないので、支給されるものを着るか、オーダーで作るしかありません。
筆者が入隊した頃は、幹部自衛官には制服の類は支給されず、すべて自腹を切っていたので、若い幹部にとっては大変でしたが、いつの頃か処遇改善として、数は少ないですが支給されるようになりました。ただし、制服は質が悪くて、支給されても着用することはほとんどありませんでしたが、ワイシャツや制靴などはありがたく使っていました。
この先輩は、そのワイシャツもオーダーしたものを着ていたのを知っています。
その先輩が言っている「時刻整合」というのが、何をする作業なのかをご紹介します。
軍隊では秒単位で正確な時間を知っていることが重要です。
このため、自分の持っている時計が正確でなければなりません。
ストップウォッチではないので、腕時計の秒針を正確に合わせる機能がついたものはほとんどなかったので、自分の時計が何秒進んでいるのか、遅れているのか、毎日どれくらいのズレを生じるのかを把握していることが必要でした。
このため、筆者が現役の頃は、どこの部隊でも毎朝「時刻整合」というものが行われていました。
毎朝「0745に時刻整合を行う。」というアナウンスが午前7時43分に流されます。
「マルナナヨンゴーニジコクセイゴウヲオコナウ。」という放送です。
44分に「1分前」が流されます。
44分30秒に「30秒前」がアナウンスされます。
44分50秒に「10秒前」が告げられます。
44分55秒からカウントダウンが始まり、午前7時45分ちょうどに「0745、時刻整合終わり。」となります。「マルナナヨンゴー、ジコクセイゴウオワリ。」です。
その瞬間に各隊員は自分の時計を確認して、遅れ進みを把握するのです。
艦上であれば、艦内の基準時計に合わせますし、陸上部隊では当直室にある基準時計に合わせます。
幹部候補生学校では、この時刻整合は英語で行われていました。当直の週番候補生が当直室から放送するのですが、” When I say Time, it will be exactly 0745 “とアナウンスし、” One minute “ ,”30 seconds , “ Ten seconds “ と進み、午前7時45分ちょうどに Time “となります。
電波腕時計が普及した現在、この時刻整合が行われているのかどうか承知していませんが、自衛官が秒単位で時間を考える習慣を持っていることをご理解頂ければと思います。
多分、JRや地下鉄の職員も同じように秒単位でものを考える習慣を持っているはずです。
そうでなければ、世界に冠たる正確なダイアを維持できるはずはありません。
海上自衛隊の場合にも、秒単位での正確性が必要な理由があります。
例えば、異方向同時弾着射撃という射撃法があります。一つの目標に対してある一定の角度以上の開きを持つ三方向からミサイルを撃ち込むとき、その目標からの距離がそれぞれ異なっていても、弾着は正確に指定された時間の〇秒以内に行わなければならないというものです。〇内の数字は「秘」なので明らかにすることが出来ないのですが、その秒数以内に異方向からミサイルが弾着すると敵は対応できないはずという考え方です。散発的にミサイルが近づいてくると、それぞれに対応されてしまいますが、同時だと迎撃が困難だろうということです。もっともこの考え方も相手がイージスシステムを持っていたらあまり役には立ちませんが・・・。
第2次大戦前の旧海軍でも、秒単位の正確さは重要でした。
夜間に照明射撃を行う場合、探照灯で照らす艦と射撃する艦の間で正確な時間が共有されていないと、相手からも見えてしまうからです。探照灯で敵艦を照射する間は、何分何秒から何秒間照射すると決めて照射します。この時間が長いと敵からも位置や針路速力を測られてしまいますので、必要最小限の時間しか照射しません。その間に射撃艦は相手の動きを測り、射撃に必要な計算をします。
射撃計算を終えると、射撃が可能な弾数の射撃を行います。そして弾着する頃に探照灯照射担当艦が照射を行い、射撃を行った船が敵艦の周囲に上がる水柱を観測して必要な修正を行うということを続けるのです。
このような神業のような作業を艦隊単位でできるような猛訓練を帝国海軍は行っていました。月月火水木金金と言われた訓練でした。
太平洋戦争開戦の頃にはその練度は最高潮に達していたはずですが、米軍はレーダーを開発して対抗したので、その猛訓練もあまり役に立ちませんでした。
しかし、軍隊では秒単位の正確さが要求されることはいつの時代でも同様です。そのような習慣が身に付いていますので、一般の方々がびっくりされることがあります。
長野オリンピックの開会式を覚えていらっしゃる方もおられるかと思います。
1989年の開会式では、小澤征爾氏がサイトウ・キネン・オーケストラを会場で指揮して、ベートーヴェンの交響曲第9番を演奏し、東京オペラシンガーズが歓喜の歌を歌ったのですが、その演奏が終わった瞬間にブルーインパルズがカラースモークを引きながら会場をローパスしました。これが1秒早く入ってくると演奏とかぶりますし、3秒くらい遅れると間延びした感じになります。周辺空域で旋回を繰り返し、旋回の途中で針路を会場に変えて編隊を整え、秒単位の正確さでローパスを行うというのは、神業以外の何物でもありません。
海上自衛隊の観艦式も、観閲官(内閣総理大臣)座乗の護衛艦と受閲部隊の護衛艦部隊が剣崎の180度5マイルの地点ですれ違う時間が午後12時00分と指定され、筆者はそれが15秒以上ズレたのを見たのは、初めて艦隊勤務に就いた年に行われた観艦式の予行演習の時だけでした。
この時はオイルショック以後、ずっと中止されていた観艦式について、これ以上実施しないと観艦式のノウハウが失われてしまうからやらせてくれということで7年ぶりに行ったもので、さすがに予行ではバラバラでひどいものでした。
その日の事後研究会で喧々囂々の議論が行われた結果、本番では見事に決まったので、初めての艦隊勤務であった筆者は「凄ゲエナァ」とびっくりしていただけでした。
とにかく、軍隊では秒単位の時間が大切に扱われ、それが習い性になっているので、一般社会に出ると、「あの人ちょっと変わってるわね。」と評価されてしまうことがよくあります。
特に筆者などは海上自衛隊出身なので、「5分前の精神」というのが染みついており、何事も決められた時間の前に準備を整える習性があり、おそろしくせっかちな人だと思われていることが多いようです。
我が家の司令長官は、元々航空会社の出身なので、どちらかというと船乗りよりも飛行機乗りの感性を持っているのか、ジャストオンタイムが好みらしく、筆者のように5分前からウロウロしている者から見ると、イラっとさせられることもあるのですが、まぁ統合運用の難しさかと思って諦めています。
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突然ですが、図上演習という言葉をお聞きになった方はいらっしゃいますでしょうか。
当コラムをお読みいただいている方には耳馴染みの言葉だと思いますが、意外にこの言葉を知らないという方は世間には珍しくありません。
これは、文字通り演習を図面の上で行うものです。
と言っても、何をどうやるのか全くご理解頂けないかと思います。
続きはこちらでお読みください。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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この先輩は、そのワイシャツもオーダーしたものを着ていたのを知っています。
その先輩が言っている「時刻整合」というのが、何をする作業なのかをご紹介します。
軍隊では秒単位で正確な時間を知っていることが重要です。
このため、自分の持っている時計が正確でなければなりません。
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このため、筆者が現役の頃は、どこの部隊でも毎朝「時刻整合」というものが行われていました。
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「マルナナヨンゴーニジコクセイゴウヲオコナウ。」という放送です。
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射撃計算を終えると、射撃が可能な弾数の射撃を行います。そして弾着する頃に探照灯照射担当艦が照射を行い、射撃を行った船が敵艦の周囲に上がる水柱を観測して必要な修正を行うということを続けるのです。
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この時はオイルショック以後、ずっと中止されていた観艦式について、これ以上実施しないと観艦式のノウハウが失われてしまうからやらせてくれということで7年ぶりに行ったもので、さすがに予行ではバラバラでひどいものでした。
その日の事後研究会で喧々囂々の議論が行われた結果、本番では見事に決まったので、初めての艦隊勤務であった筆者は「凄ゲエナァ」とびっくりしていただけでした。
とにかく、軍隊では秒単位の時間が大切に扱われ、それが習い性になっているので、一般社会に出ると、「あの人ちょっと変わってるわね。」と評価されてしまうことがよくあります。
特に筆者などは海上自衛隊出身なので、「5分前の精神」というのが染みついており、何事も決められた時間の前に準備を整える習性があり、おそろしくせっかちな人だと思われていることが多いようです。
我が家の司令長官は、元々航空会社の出身なので、どちらかというと船乗りよりも飛行機乗りの感性を持っているのか、ジャストオンタイムが好みらしく、筆者のように5分前からウロウロしている者から見ると、イラっとさせられることもあるのですが、まぁ統合運用の難しさかと思って諦めています。
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