指揮官の休日 No.351 前支え禁止
2023/08/18 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第359回 危機管理の実践のために その2 を掲載いたしました。
危機管理の具体的な議論に入って2回目です。前回は組織が社会的信頼を得ていることの重要性の意味を半分だけお伝えしました。
今回は残りの半分の議論です。
https://aegis-cms.co.jp/3080
No.351 前させ禁止
今回のタイトルの意味がお分かりになる方は極めて少数かと拝察します。
これは陸上自衛隊では普通に行われていた一種の体罰です。
どうするかというと、ライフル銃を両手で体の前方で縦に保持して気を付けの姿勢を取り続けることです。
いわゆる捧げ銃の姿勢のままで長時間動くなと言われると、そのうち腕が震えてきて脂汗がにじみ、大変な思いをします。
海上自衛隊ではライフル銃を持つということが日常的にはないので、この罰則は行われていませんが、陸上自衛隊では普通に行われていました。
最近、ある陸上自衛隊のOBから聞いたのですが、その体罰が禁止されたのだそうです。
体罰禁止の風潮の中で仕方ない措置だと彼は苦笑いしていました。
筆者が海上自衛隊に入隊して幹部候補生となったのは昭和の時代でした。海上自衛隊の幹部候補生学校は海軍兵学校が置かれていた広島県の江田島にあります。
海軍兵学校時代には猛烈な体罰が行われていました。
鉄拳制裁と言われるもので、拳骨で頬を殴りつける体罰です。
この体罰は教官が兵学校の将校生徒に対して行うのではなく、先輩が後輩に対して行うのが特徴でした。
しかし、それは下士官や兵の間で行われていた陰湿な私的制裁ではなく、少しでも強い海軍士官に育てるための体罰だったようです。
その証拠に、海兵出身者の方々に聞くと、その鉄拳さえも懐かしそうに話してくださるからです。
特に海軍兵学校68期生というのは、猛烈に鍛えられたクラスらしく、伝説によると在学中に1200発殴られ、1200発殴って卒業したとのことでした。
兵学校で殴られるのは圧倒的に1年生(4号生徒と呼ばれます。)であり、2年生(3号生徒)は、例外的によほどたるんでいたり、4号との連帯責任を問われた場合に殴られたようですので、入校した最初の年の殴られ方は半端ではなかったかと思います。
筆者はその江田島で候補生生活を送りましたが、筆者の時代にはすでに殴る蹴るの体罰は禁止されており、代わりにグランドを走らされたり、腕立て伏せをさせられたりというのが罰則でした。
しかし、現在ではそれらも禁止されているようです。
ここで、筆者はかなり考えています。
軍隊というのは、戦争が始まると、個人的には何の怨みもない敵と殺し合いをすることになります。一方的に相手を攻めるのではないので、自分たちの側にも大きな被害が出ることだってあります。戦国時代のように刀で斬り合うのではないので、相手の様子を戦闘中に直接見ることはないのですが、自分の方では一緒にいた戦友や部下が次々に死んだり負傷したいする光景を目の当たりにすることになります。海軍の戦いなどは、相手はレーダー上で見ているだけで、被害は自分の周りにしか見受けられません。
そのような異常な仕事を冷静にこなしていかなければならないのが軍隊です。
その隊員たちを強い戦士に育てなければ、彼らが戦場で苦しむことになります。
つまり、軍隊における教育は、中学や高校の部活動とは違うのです。
戦争という異常な環境で、個人的には怨みも何もない敵と血みどろの戦いを続けて生き残って帰ってくる兵士を育てるには、並みの教育や訓練ではダメで、その理不尽さに耐え、しかし正気を失わない強い精神力と、並外れた基礎体力を涵養しておくことが必要になります。
筆者が新入隊員の教育を担当する部隊の指揮官として着任したとき、着任の訓示で直接教育に当たる教官や班長達に伝えたのは、自分の教え子が可愛ければ、彼らがどんな戦場に出ても必ず生きて帰ってこれるように鍛えてやってくれということでした。
その訓示をして隊司令の執務室に戻ってきたところ、直接生活や訓練の指導に当たっている分隊長・分隊士・班長達が押しかけてきて、中には涙を流している者もいて、 「司令のご指示通り、学生をしっかり育てます。」と口々に言うのに驚きました。
筆者の前任の司令は女性自衛官で、かなり優秀な人でしたが、「社会には常識というものがあり、自衛隊もその常識を持って運営しなければなりません。」という指導だったようです。
この人が行った様々な改革の下で、その教育隊は海洋少年団のような存在になってしまい、、海幕が危機感を持ち、当初別の部隊への転勤が予定されていた筆者が急遽赴任したといういきさつがありました。
たしかに自衛隊と言えども、非常識な集団であることは許されません。強大な軍事力の運用を任されている自衛隊こそ、政治家などよりもはるかに常識的でなければならないと考えています。
しかし、やらねばならないことの本質に鑑み、娑婆の常識をそのまま適用すべきとも考えていません。
とにかくいざという時にやらねばならない仕事は、常識では推し量ることのできな理不尽さと悲惨さを持っており、その中にあって正気を保ち、生き残る隊員を育てるには並大抵の教育や訓練では通用しないのです。
その理不尽さ、異常さを理解しないメディアや評論家が何と言おうと、自衛隊は本来行うべき教育と訓練を行わなければなりません。
かつて米議会に呼びだされた米国海兵隊総司令官が「軍隊に民主主義はない。」と発言し、議会から猛烈な非難を受けるのではなく、スタンディングオペレーションの拍手を得たことがありました。
海兵隊の新平教育などは、徹底した人格否定から始まります。
筆者は日本ではそのような教育はさすがに受け入れられないかと考えますが、中学や高校の部活動同様の訓練で自衛隊の訓練が行われていいはずはありません。
筆者が教育隊の指揮官として注意していたのは、厳しい教育や訓練が、学生たちの将来を思って行われていれば問題はないものの、一時の感情や面白がって行うイジメであってはならないということでした。
それは自分たちが入隊教育を受けたときの思い出があるからです。
自分たちを育てるために厳しくしている教官と、一時の感情で怒りをむき出しにする教官は、学生たちは本能で嗅ぎ分けてしまいます。筆者が教育を受けた頃の候補生学校には後者のような教官はいなかったように思います。
当時よく叱られ、腕立て伏せを何百回もさせられた教官などは、この歳になっても親交を続けています。
メディアのコメンテーターたちは、その場でメディア受けするコメントに終始しますので、ことの本質を考えるということをほとんどしません。
軍隊の本質を考えたとき、本当に部下が可愛ければ、彼らがいかなる状況に立たされても、しっかりと戦える戦士となるように教育してやるのが本来の姿です。
時には心を鬼にしなければならないこともあるでしょう。
だからこそ、軍隊においては部下と上司の人間関係は重要なのです。
筆者が自衛隊を退官し、ビジネスの世界に入った時、一番衝撃的だったのは、会社における部下と上司の人間関係の希薄なことでした。
筆者がそれまで暮らしてきた世界は、死ぬときは一緒という運命共同体でした。最期を看取ってくれるのは家族ではなく、同じ持ち場にいる部下かもしれないのです。
そこで築かれる濃密な人間関係に慣れていた筆者は、会社の部下と上司の人間関係の希薄さに圧倒されたものでした。
しかし、筆者には慣れ親しんだ部下統率法しかありませんでしたので、新編営業部の部長として、部隊にいたときのように付き合っていました。
その結果、新編営業部のことで営業成績はなかなか上がらずに役員会ではメンバーのメンタルが心配されましたが、産業医のメンタルヘルチェックで、会社で最も活気があり士気の高い部門と認定されることになりました。
筆者が特別なことをしていたわけではなく、海上自衛隊ならだれでもやることを淡々とやっていただけでした。
世の中の常識とは違うのかもしれませんが、海上自衛隊という組織は、極めて人間関係が暖かい組織です。ビジネスの世界に飛び込んで、そのことに気付きました。
その暖かい人間関係を大切にする組織で行われている訓練について、事の本質を考えないメディアのコメンテーターや評論家が何を言おうと、黙殺すべきと考えます。
彼らに迎合して、ひ弱な隊員を育てると、結局はその隊員が悲惨な戦場から生きてもどれないということになるのです。
そうなってもコメンテーターは責任を取らず、今度は精強な部隊を育成してこなかったことを批判するのです。
はっきり言いましょう。こいつらに迎合する必要はありません。
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専門コラム「指揮官の決断」第359回 危機管理の実践のために その2 掲載のお知らせ
前回のコラムで、かなりもったいぶった終わり方をしました。
危機管理において、その組織が常日頃から社会的信頼を勝ち得ていることが重要だと述べたのですが、その理由の半分をお伝えしましたが、前回は、肝心な理由について触れずに終わってしまいました。
前回、当コラムでは、組織が社会的に絶対の信頼を得ていないと、いくら正しい意思決定をしても受け入れてもらえず、努力がすべて無駄に終わる恐れがあることを指摘しました。
福島原発において発生する処理水を巡って、どれだけ丁寧に地元説明をしても、中央大学の目加田設子教授のように、そのような事情を全く知らずに風評被害を引き起こす発言を平気でする識者がいると、地元は風評被害を防げないという判断に立ち、処理水の放出に反対の立場を取らざるを得なくなるということが現実に起こっています。
続きはこちらでお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3080
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2 スポットコンサルティング
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かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
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要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
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毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
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No.351 前させ禁止
今回のタイトルの意味がお分かりになる方は極めて少数かと拝察します。
これは陸上自衛隊では普通に行われていた一種の体罰です。
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いわゆる捧げ銃の姿勢のままで長時間動くなと言われると、そのうち腕が震えてきて脂汗がにじみ、大変な思いをします。
海上自衛隊ではライフル銃を持つということが日常的にはないので、この罰則は行われていませんが、陸上自衛隊では普通に行われていました。
最近、ある陸上自衛隊のOBから聞いたのですが、その体罰が禁止されたのだそうです。
体罰禁止の風潮の中で仕方ない措置だと彼は苦笑いしていました。
筆者が海上自衛隊に入隊して幹部候補生となったのは昭和の時代でした。海上自衛隊の幹部候補生学校は海軍兵学校が置かれていた広島県の江田島にあります。
海軍兵学校時代には猛烈な体罰が行われていました。
鉄拳制裁と言われるもので、拳骨で頬を殴りつける体罰です。
この体罰は教官が兵学校の将校生徒に対して行うのではなく、先輩が後輩に対して行うのが特徴でした。
しかし、それは下士官や兵の間で行われていた陰湿な私的制裁ではなく、少しでも強い海軍士官に育てるための体罰だったようです。
その証拠に、海兵出身者の方々に聞くと、その鉄拳さえも懐かしそうに話してくださるからです。
特に海軍兵学校68期生というのは、猛烈に鍛えられたクラスらしく、伝説によると在学中に1200発殴られ、1200発殴って卒業したとのことでした。
兵学校で殴られるのは圧倒的に1年生(4号生徒と呼ばれます。)であり、2年生(3号生徒)は、例外的によほどたるんでいたり、4号との連帯責任を問われた場合に殴られたようですので、入校した最初の年の殴られ方は半端ではなかったかと思います。
筆者はその江田島で候補生生活を送りましたが、筆者の時代にはすでに殴る蹴るの体罰は禁止されており、代わりにグランドを走らされたり、腕立て伏せをさせられたりというのが罰則でした。
しかし、現在ではそれらも禁止されているようです。
ここで、筆者はかなり考えています。
軍隊というのは、戦争が始まると、個人的には何の怨みもない敵と殺し合いをすることになります。一方的に相手を攻めるのではないので、自分たちの側にも大きな被害が出ることだってあります。戦国時代のように刀で斬り合うのではないので、相手の様子を戦闘中に直接見ることはないのですが、自分の方では一緒にいた戦友や部下が次々に死んだり負傷したいする光景を目の当たりにすることになります。海軍の戦いなどは、相手はレーダー上で見ているだけで、被害は自分の周りにしか見受けられません。
そのような異常な仕事を冷静にこなしていかなければならないのが軍隊です。
その隊員たちを強い戦士に育てなければ、彼らが戦場で苦しむことになります。
つまり、軍隊における教育は、中学や高校の部活動とは違うのです。
戦争という異常な環境で、個人的には怨みも何もない敵と血みどろの戦いを続けて生き残って帰ってくる兵士を育てるには、並みの教育や訓練ではダメで、その理不尽さに耐え、しかし正気を失わない強い精神力と、並外れた基礎体力を涵養しておくことが必要になります。
筆者が新入隊員の教育を担当する部隊の指揮官として着任したとき、着任の訓示で直接教育に当たる教官や班長達に伝えたのは、自分の教え子が可愛ければ、彼らがどんな戦場に出ても必ず生きて帰ってこれるように鍛えてやってくれということでした。
その訓示をして隊司令の執務室に戻ってきたところ、直接生活や訓練の指導に当たっている分隊長・分隊士・班長達が押しかけてきて、中には涙を流している者もいて、 「司令のご指示通り、学生をしっかり育てます。」と口々に言うのに驚きました。
筆者の前任の司令は女性自衛官で、かなり優秀な人でしたが、「社会には常識というものがあり、自衛隊もその常識を持って運営しなければなりません。」という指導だったようです。
この人が行った様々な改革の下で、その教育隊は海洋少年団のような存在になってしまい、、海幕が危機感を持ち、当初別の部隊への転勤が予定されていた筆者が急遽赴任したといういきさつがありました。
たしかに自衛隊と言えども、非常識な集団であることは許されません。強大な軍事力の運用を任されている自衛隊こそ、政治家などよりもはるかに常識的でなければならないと考えています。
しかし、やらねばならないことの本質に鑑み、娑婆の常識をそのまま適用すべきとも考えていません。
とにかくいざという時にやらねばならない仕事は、常識では推し量ることのできな理不尽さと悲惨さを持っており、その中にあって正気を保ち、生き残る隊員を育てるには並大抵の教育や訓練では通用しないのです。
その理不尽さ、異常さを理解しないメディアや評論家が何と言おうと、自衛隊は本来行うべき教育と訓練を行わなければなりません。
かつて米議会に呼びだされた米国海兵隊総司令官が「軍隊に民主主義はない。」と発言し、議会から猛烈な非難を受けるのではなく、スタンディングオペレーションの拍手を得たことがありました。
海兵隊の新平教育などは、徹底した人格否定から始まります。
筆者は日本ではそのような教育はさすがに受け入れられないかと考えますが、中学や高校の部活動同様の訓練で自衛隊の訓練が行われていいはずはありません。
筆者が教育隊の指揮官として注意していたのは、厳しい教育や訓練が、学生たちの将来を思って行われていれば問題はないものの、一時の感情や面白がって行うイジメであってはならないということでした。
それは自分たちが入隊教育を受けたときの思い出があるからです。
自分たちを育てるために厳しくしている教官と、一時の感情で怒りをむき出しにする教官は、学生たちは本能で嗅ぎ分けてしまいます。筆者が教育を受けた頃の候補生学校には後者のような教官はいなかったように思います。
当時よく叱られ、腕立て伏せを何百回もさせられた教官などは、この歳になっても親交を続けています。
メディアのコメンテーターたちは、その場でメディア受けするコメントに終始しますので、ことの本質を考えるということをほとんどしません。
軍隊の本質を考えたとき、本当に部下が可愛ければ、彼らがいかなる状況に立たされても、しっかりと戦える戦士となるように教育してやるのが本来の姿です。
時には心を鬼にしなければならないこともあるでしょう。
だからこそ、軍隊においては部下と上司の人間関係は重要なのです。
筆者が自衛隊を退官し、ビジネスの世界に入った時、一番衝撃的だったのは、会社における部下と上司の人間関係の希薄なことでした。
筆者がそれまで暮らしてきた世界は、死ぬときは一緒という運命共同体でした。最期を看取ってくれるのは家族ではなく、同じ持ち場にいる部下かもしれないのです。
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しかし、筆者には慣れ親しんだ部下統率法しかありませんでしたので、新編営業部の部長として、部隊にいたときのように付き合っていました。
その結果、新編営業部のことで営業成績はなかなか上がらずに役員会ではメンバーのメンタルが心配されましたが、産業医のメンタルヘルチェックで、会社で最も活気があり士気の高い部門と認定されることになりました。
筆者が特別なことをしていたわけではなく、海上自衛隊ならだれでもやることを淡々とやっていただけでした。
世の中の常識とは違うのかもしれませんが、海上自衛隊という組織は、極めて人間関係が暖かい組織です。ビジネスの世界に飛び込んで、そのことに気付きました。
その暖かい人間関係を大切にする組織で行われている訓練について、事の本質を考えないメディアのコメンテーターや評論家が何を言おうと、黙殺すべきと考えます。
彼らに迎合して、ひ弱な隊員を育てると、結局はその隊員が悲惨な戦場から生きてもどれないということになるのです。
そうなってもコメンテーターは責任を取らず、今度は精強な部隊を育成してこなかったことを批判するのです。
はっきり言いましょう。こいつらに迎合する必要はありません。
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前回のコラムで、かなりもったいぶった終わり方をしました。
危機管理において、その組織が常日頃から社会的信頼を勝ち得ていることが重要だと述べたのですが、その理由の半分をお伝えしましたが、前回は、肝心な理由について触れずに終わってしまいました。
前回、当コラムでは、組織が社会的に絶対の信頼を得ていないと、いくら正しい意思決定をしても受け入れてもらえず、努力がすべて無駄に終わる恐れがあることを指摘しました。
福島原発において発生する処理水を巡って、どれだけ丁寧に地元説明をしても、中央大学の目加田設子教授のように、そのような事情を全く知らずに風評被害を引き起こす発言を平気でする識者がいると、地元は風評被害を防げないという判断に立ち、処理水の放出に反対の立場を取らざるを得なくなるということが現実に起こっています。
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3 プレコンサルティング
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