指揮官の休日 No.348 小型船舶の運航資格
2023/07/28 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第356回 ブルータス、お前もか その3を掲載いたしました。
最近、ちょっと残念に思っていることの続きです。
軍種による考え方の違いが根底にあるかと考えています。
https://aegis-cms.co.jp/3061
No.348 小型船舶の運航資格
筆者はヨット乗りであり、しかも外洋ヨットが専門なので、普段はエンジンがついているヨットに乗りますから、その免許を持っています。
外洋ヨットには二つの免許が必要です。
まずはヨットを運航するのに必要な小型船舶操縦士の免許です。小型船舶とは総トン数20トン未満の船を指しますが、これを超えるようなヨットはあまりありませんので、普通の外洋レース用のヨットなどに乗るなら小型船舶操縦士で十分です。
もう一つは、搭載が義務付けられている国際VHFという無線機で交話するための無線技士の資格です。
今回問題としているのは小型船舶操縦士の資格です。
小型船舶操縦士の免許はいくつかの段階に分かれています。
遠く海外まで航海することのできる1級小型船舶操縦士と陸地から5海里(約9キロメートル)までなら運行できる2級小型船舶操縦士というクラスがあり、湖や川のみで運行する小さなボート用の湖川小出力限定という免許もあり、また水上オートバイは特殊小型船舶操縦士という資格が必要です。
筆者が免許を取った頃は、小型船舶操縦士の資格は1級から4級まであり、4級は総トン数5トン未満で5海里まで、1級は総トン数20トン未満であれば太平洋横断もできました。つまり、1級の業務範囲は変わっていないのですが、海で5トン未満の船用の免許がなくなり、ただ航海できる範囲によって1級と2級の差が生じるということになったものです。
20トン未満と5トン未満で免許を分けなくなったのは、レジャーボートが大型化し、4級免許の人たちに5トン以上の船を売ることが出来ないというのが業界にとって障害だったからでしょう。ただ、元々5トン未満と20トン未満で免許を分ける必要もあまりなかったかとも思います。
たしかに5トン未満の小さなモーターボートと20トンの大型クルーザーでは、風や潮の影響の大きさもまったく別ですし、惰力も舵効きも全く異なるので、岸壁への横付けなど出入港における気の使い方が違います。しかし、それは慣れの問題でしかなく、ちょっと練習すれば出来るようになります。
むしろ5トン未満の船で5海里ギリギリまで出るのと20トンの船で50海里まで出るのでは、5トン未満の船の方が遥かに難しく、高い技量が要求されます。
レジャーボートである個人所有の船に乗るのにも免許がいるという国は世界的に見ると少数派です。お金を取って乗客を乗せる船は免許を要求されますが、まったく個人のレジャー用の船には免許を要求しない国も珍しくはありません。
これはそれらの国の国民が海と関わってきた歴史の深さがバックグランドにあるかと思われます。
昔から国民が海と親しみ、船が日常生活にあった国では免許は要求されていないようです。要求されてもコーストガードのような組織が行う講習を受講すればいいという程度の国もあります。
日本で小型船舶操縦士の免許制度ができた頃、いろいろな議論があったようです。昔から外洋ヨットを楽しんできた人々は基本的に反対派だったようです。
個人が個人の責任で楽しんでいるのに、何で国が免許などを作るのか、免許を持っていれば安全なのかという議論をしている記事などをよく読んだものです。
筆者自身が外洋レース艇に乗り始めた頃はすでに免許制度が定着しており、筆者は必要に迫れれて1級の小型船舶操縦士と無線技士の資格を早々に取得していました。
この小型船舶操縦士の資格はとても簡単に取れる資格なので、確かにそんな免許を持っていることが航海安全とどう関係するのか分かりません。
航法でも、小型船舶操縦士試験に出てくるような航海術ではとても太平洋は渡ることが出来ませんし、エンジンの原理なども試験に出ますが、その程度の知識では日常のメンテナンスもまともにはできません。
一方、この小型船舶操縦士の資格は妙な資格で、数十万トンのタンカーの船長であっても、この小型船舶操縦士の資格を持っていないと20トン未満の船の船長になれないのです。
小型船舶操縦士の資格が、航海と機関の双方にまたがる資格であるということが根拠なのだそうですが、大型船の船長でも、その程度の機関に関する基礎知識は持っていますので、あえて別免許にする理由が希薄です。
筆者の父親は旧制神戸商船学校出身で、どれだけ大きな船の船長もできる資格を持っており、海上自衛隊で3隻の護衛艦の艦長を経験し、退職後は東海大学の調査練習船の船長として船乗りの養成にあたり、船を降りたのちは教壇に立って航海工学科の学生を指導していた船乗りでしたが、小型船舶の免許の更新講習を定期的に受けねばなりませんでした。
ある時、更新講習に出かけたところ、教え子が講師として現れて呆れていました。
つまり、もともと制度に欠陥のある免許制度なのでしょう。
ただ、筆者はヨット界の大先輩たちとは若干異なる見解を持っています。
レジャーボードであっても免許は必要だと考えています。
自家用車を運転するのには免許が必要です。事故を起こすと加害者になるおそれがあるからです。
自家用機を操縦するにも操縦士の資格が必要です。墜落すると下にいる人々に被害を与えるおそれがあるからです。
小型船舶であっても、海水浴場に入り込んで泳いでいる人をケガさせたり、他の小型船舶と衝突して人身事故となることもあります。
航海術や機関の原理などについてはともかくとして、航海法規くらいは知っていてもらわないと困るのです。
ところが、この船舶職員法が改悪されました。全長3m未満、2馬力以下程度のエンジンを積んだ船には免許も船舶検査も不要になったのです。
船舶検査はまだいいでしょう。安全備品が無くて死んでしまうのが自分だからです。
ところが、航海法規の試験も受けていない船長が操縦する船というのが困るのです。
筆者はヨット乗りですが、航海法規を守って航行している漁船を見たことがありません。つまり、漁船と衝突針路になった時、動力船は帆船を避けなければならないという海上衝突予防法に従った避航動作を取った漁船を見たことがないということです。
それではなぜ今日まで無事に生きているのかということなのですが、ヨット乗りは漁船が針路を変えないのを知っていますから、ヨットの方で避けるからです。
漁船の運行には免許が必要であり、漁師は海上衝突予防法を勉強しているはずなのですが、その有様です。
まして、免許すら持っていない小型ボートはどう動くか分からないので、ヨット側から見ると不安で仕方ないのです。
相手が漁船ならヨットを避けないのを知っていますから、その針路を避けるように動かせばいいのですが、3m未満の船はどう動くか分からないのです。
漁船のように針路を変えるつもりのない船なら避けやすいのですが、3m未満の船の船長は海上衝突予防法を知っているのか知らないのかも分からないので、避けるのか避けないのかも見当がつかず、どうやって避ければいいのか判断できません。
まぁ、海上衝突予防法の基本的な考え方は、衝突を避けるというよりも、衝突の危険性そのものを避けるということにありますので、海の上で小さな船を見つけたら、衝突針路などには絶対入らないよう、あらかじめ避けておくことが重要ではないかと考えています。
この船舶職員法の改悪は、ボートと小型のエンジンを売りたい業界の圧力によるものと思われますが、所管の国交省は、それら小型のボートの海難が極めて多いことに警鐘を鳴らしています。
筆者に言わせれば当然です。海の怖さも航海法規も知らない素人が安直に海に乗り出すのですから、事故が増えるはずです。
一番海を舐めているのは国交省かもしれません。
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専門コラム「指揮官の決断」第356回 ブルータス、お前もか その3 掲載のお知らせ
過去2回にわたり、元陸上自衛隊東部方面総監の危機管理に関する発言を契機に、陸軍と海軍のものの考え方の違いなどに言及してきました。
簡単に振り返ります。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部元陸将の危機管理の考え方を要約すると次のようになります。
「危機管理の要諦は最悪の事態を想定して備えること。」であると述べ、、さらに危機に備えておくためには、常にリスクを想定し、対応策を準備しておく必要がある。」
「リスクとは、危機が発生する可能性のある事態であり、そのリスクを想定するには、過去の危機事例を分析し、自分が直面する可能性があるリスクを特定する必要がある。そして、リスクを特定したら、それに対応するための対策を準備する必要があり、対策として、予防策と事後対応策があり、予防策とは、危機が発生しないようにするための対策で、事後対応策とは、危機が発生したときに、被害を最小限に抑えるための対策を指す。そして、危機が発生したときには、迅速かつ適切に対応することが重要である。」
「迅速な対応をするために、危機管理体制を構築しておくことが重要であり、危機管理体制とは、危機が発生したときに、対応するための組織や役割分担を明確に定めたものである。」
という考え方です。
続きはこちらでお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3061
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Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
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No.348 小型船舶の運航資格
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外洋ヨットには二つの免許が必要です。
まずはヨットを運航するのに必要な小型船舶操縦士の免許です。小型船舶とは総トン数20トン未満の船を指しますが、これを超えるようなヨットはあまりありませんので、普通の外洋レース用のヨットなどに乗るなら小型船舶操縦士で十分です。
もう一つは、搭載が義務付けられている国際VHFという無線機で交話するための無線技士の資格です。
今回問題としているのは小型船舶操縦士の資格です。
小型船舶操縦士の免許はいくつかの段階に分かれています。
遠く海外まで航海することのできる1級小型船舶操縦士と陸地から5海里(約9キロメートル)までなら運行できる2級小型船舶操縦士というクラスがあり、湖や川のみで運行する小さなボート用の湖川小出力限定という免許もあり、また水上オートバイは特殊小型船舶操縦士という資格が必要です。
筆者が免許を取った頃は、小型船舶操縦士の資格は1級から4級まであり、4級は総トン数5トン未満で5海里まで、1級は総トン数20トン未満であれば太平洋横断もできました。つまり、1級の業務範囲は変わっていないのですが、海で5トン未満の船用の免許がなくなり、ただ航海できる範囲によって1級と2級の差が生じるということになったものです。
20トン未満と5トン未満で免許を分けなくなったのは、レジャーボートが大型化し、4級免許の人たちに5トン以上の船を売ることが出来ないというのが業界にとって障害だったからでしょう。ただ、元々5トン未満と20トン未満で免許を分ける必要もあまりなかったかとも思います。
たしかに5トン未満の小さなモーターボートと20トンの大型クルーザーでは、風や潮の影響の大きさもまったく別ですし、惰力も舵効きも全く異なるので、岸壁への横付けなど出入港における気の使い方が違います。しかし、それは慣れの問題でしかなく、ちょっと練習すれば出来るようになります。
むしろ5トン未満の船で5海里ギリギリまで出るのと20トンの船で50海里まで出るのでは、5トン未満の船の方が遥かに難しく、高い技量が要求されます。
レジャーボートである個人所有の船に乗るのにも免許がいるという国は世界的に見ると少数派です。お金を取って乗客を乗せる船は免許を要求されますが、まったく個人のレジャー用の船には免許を要求しない国も珍しくはありません。
これはそれらの国の国民が海と関わってきた歴史の深さがバックグランドにあるかと思われます。
昔から国民が海と親しみ、船が日常生活にあった国では免許は要求されていないようです。要求されてもコーストガードのような組織が行う講習を受講すればいいという程度の国もあります。
日本で小型船舶操縦士の免許制度ができた頃、いろいろな議論があったようです。昔から外洋ヨットを楽しんできた人々は基本的に反対派だったようです。
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この小型船舶操縦士の資格はとても簡単に取れる資格なので、確かにそんな免許を持っていることが航海安全とどう関係するのか分かりません。
航法でも、小型船舶操縦士試験に出てくるような航海術ではとても太平洋は渡ることが出来ませんし、エンジンの原理なども試験に出ますが、その程度の知識では日常のメンテナンスもまともにはできません。
一方、この小型船舶操縦士の資格は妙な資格で、数十万トンのタンカーの船長であっても、この小型船舶操縦士の資格を持っていないと20トン未満の船の船長になれないのです。
小型船舶操縦士の資格が、航海と機関の双方にまたがる資格であるということが根拠なのだそうですが、大型船の船長でも、その程度の機関に関する基礎知識は持っていますので、あえて別免許にする理由が希薄です。
筆者の父親は旧制神戸商船学校出身で、どれだけ大きな船の船長もできる資格を持っており、海上自衛隊で3隻の護衛艦の艦長を経験し、退職後は東海大学の調査練習船の船長として船乗りの養成にあたり、船を降りたのちは教壇に立って航海工学科の学生を指導していた船乗りでしたが、小型船舶の免許の更新講習を定期的に受けねばなりませんでした。
ある時、更新講習に出かけたところ、教え子が講師として現れて呆れていました。
つまり、もともと制度に欠陥のある免許制度なのでしょう。
ただ、筆者はヨット界の大先輩たちとは若干異なる見解を持っています。
レジャーボードであっても免許は必要だと考えています。
自家用車を運転するのには免許が必要です。事故を起こすと加害者になるおそれがあるからです。
自家用機を操縦するにも操縦士の資格が必要です。墜落すると下にいる人々に被害を与えるおそれがあるからです。
小型船舶であっても、海水浴場に入り込んで泳いでいる人をケガさせたり、他の小型船舶と衝突して人身事故となることもあります。
航海術や機関の原理などについてはともかくとして、航海法規くらいは知っていてもらわないと困るのです。
ところが、この船舶職員法が改悪されました。全長3m未満、2馬力以下程度のエンジンを積んだ船には免許も船舶検査も不要になったのです。
船舶検査はまだいいでしょう。安全備品が無くて死んでしまうのが自分だからです。
ところが、航海法規の試験も受けていない船長が操縦する船というのが困るのです。
筆者はヨット乗りですが、航海法規を守って航行している漁船を見たことがありません。つまり、漁船と衝突針路になった時、動力船は帆船を避けなければならないという海上衝突予防法に従った避航動作を取った漁船を見たことがないということです。
それではなぜ今日まで無事に生きているのかということなのですが、ヨット乗りは漁船が針路を変えないのを知っていますから、ヨットの方で避けるからです。
漁船の運行には免許が必要であり、漁師は海上衝突予防法を勉強しているはずなのですが、その有様です。
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漁船のように針路を変えるつもりのない船なら避けやすいのですが、3m未満の船の船長は海上衝突予防法を知っているのか知らないのかも分からないので、避けるのか避けないのかも見当がつかず、どうやって避ければいいのか判断できません。
まぁ、海上衝突予防法の基本的な考え方は、衝突を避けるというよりも、衝突の危険性そのものを避けるということにありますので、海の上で小さな船を見つけたら、衝突針路などには絶対入らないよう、あらかじめ避けておくことが重要ではないかと考えています。
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「リスクとは、危機が発生する可能性のある事態であり、そのリスクを想定するには、過去の危機事例を分析し、自分が直面する可能性があるリスクを特定する必要がある。そして、リスクを特定したら、それに対応するための対策を準備する必要があり、対策として、予防策と事後対応策があり、予防策とは、危機が発生しないようにするための対策で、事後対応策とは、危機が発生したときに、被害を最小限に抑えるための対策を指す。そして、危機が発生したときには、迅速かつ適切に対応することが重要である。」
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3 プレコンサルティング
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