指揮官の休日 No.345 ノスタルジー その3
2023/07/07 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第353回 安全保障の議論の経済的側面 その3 を掲載いたしました。
安全保障関連予算の問題点について、前回に引き続き解説しています。
興味のある方はこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3047
No.345 ノスタルジー その3
どうでもいい話を綴るのが旨のメールマガジンで辛口のものが続きました。ここで本来のメールマガジンに戻ります。
以前、海上自衛隊の護衛艦同士が洋上ですれ違った時に交わされた発光信号のやり取りについて綴ったことがあります。今回の話は、その後日談です。(メールマガジン「指揮官の休日」 No.329 ノスタルジー その2 https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=379 )
群司令と筆者が乗った護衛艦が太平洋上に出たあと、筆者は士官室に降りて珈琲を飲んでいました。群司令は艦長と共に艦内を歩きに行ったようでした。
やがて艦長が群司令を案内して士官室に入ってきて珈琲を飲みながらの雑談となりました。
その席上、艦長がいきなり「監理幕僚は学生時代に外洋レースをやっていたんだってね?」と言い出しました。艦長は高校生の頃ヨット部にいたのだそうです。
そして、「天測は得意か?」と尋ねられました。星の高度を測って自分の船の位置を確定する作業です。
筆者は「もちろんです。そう簡単に負けません。候補生学校や術科学校の天文航法の教官をやりたいくらいです。」と答えると、「それでは今晩、航海長と艦位精度の競争をしよう。」と艦長から提案がありました。
何故かというと、この頃、GPSはまだ一般的ではありませんでしたが、ロランやデッカという電波航法機器があり、海上自衛隊では実用の天測はほとんど実施されていなかったからです。ロランやデッカが機能しない遠方に赴く船、例えば南極観測の支援をする砕氷艦など特殊な任務に就く船では行われていたかもしれませんが、筆者が乗っていたような護衛艦隊隷下の船ではほとんど行われていませんでした。筆者も通信士の頃にある航海で3日ほど続けて行ったことがありますが、それだけでした。幹部の大半は練習艦隊での遠洋航海の時に実習として天測を行うだけで、実用の天測はほとんど経験していないはずです。
だからと言って逃げるわけにもいかず、仕方なく引き受けたのですが、司令部幕僚が隷下部隊の幹部に負けるわけにはいきません。最後の天測をしてから何年も経っていますから星も忘れているので、星球儀など持ち出して、見えるはずの星を思い出したりしていました。
ところが、その船には練習艦隊で遠洋航海を終えて着任してきたばかりの初任幹部の通信士が乗っているとのことで、彼も参加することになりました。こやつは強敵です。ついちょっと前まで練習艦隊の遠洋航海で天測の訓練を受けていたのですから。
船には六分儀が二つしかなかったので、三人同時に天測をすることができず、仕方なく、筆者と航海長で薄暮時の天測を行い、筆者と通信士で薄明時の天測を行って艦位を測定することになりました。
星を測るのは薄明と薄暮時で空がうっすらと明るく、星が一番小さく見える時に行います。真夜中のギラギラしている星は大きすぎて高度を測っても誤差が大きいのです。
天文航法にはいろいろなやり方がりますが、海上自衛隊が採用しているのは旧海軍と同じ方法で、天測歴と米村表という天測表を使うやり方です。
米村海軍中将という方が作った天測表を使って、天測歴に記載されている天体の高度を測った値から自分の位置を計算します。
具体的には、自分の四方にある恒星の高度を六分儀で測ります。ある天体がある時間にある高度で見える位置は地球上に一本の線で示すことができます。その線上からならどこでもその天体を同じ角度で眺めることができるはずです。そのような線を少なくとも三方向の天体の高度を測ることにより海図上に引くと三角形ができます。望むらくは四方の天体の 高度を測って四本の線を引くと四角に交わるはずで、その重心を自分の位置であるとするのです。
筆者たちが練習艦隊の実習幹部として遠洋航海で天測を行っていた時は、4つの星を測って40分以内に計算を終え、誤差2マイル以内に収めるよう標準が定められていました。
筆者はこの天測計算が得意で、練習艦隊の実習の際も、星を測り終わってから20分後には珈琲を飲んでいるということが多かったと記憶します。天測計算は中学生の頃に父から理屈を教わり、海技試験の問題集などの問題を解いていたからでもあるのですが、実は他の実習幹部は使っていなかったかと思いますが、筆者は簡易天測歴というものを使うことがありました。
米村表を用いる計算は、極めて精緻な計算をするのですが、実習幹部に求められる精度は誤差2マイルです。
簡易天測歴というのは遠洋の漁船などが用いる天文航法で使われるもので、精度は荒っぽいのですが精緻な計算をしなくて済む簡略な計算方法を使うことができます。ヨット乗りなどもこの計算方法を使っていました。
何故かというと、ヨットの場合、揺れるデッキの上で行う天測は、そもそも観測精度が良くないので、計算だけ緻密に行ってもあまり意味が無いからです。
筆者は要求精度が誤差2マイルであることに目を付け、星がよく見えない夜などの天測の際はこの簡易天測法を使っていたため、早かったのです。簡易天測歴を使っても米村表の精緻な計算をしても、もともとの観測精度が荒っぽいのであまり差が出ないからです。
勿論、正規の米村表に基づく計算も折に触れてやってはいましたので、そう簡単には負けないと宣言したのでした。
薄暮時の天測を航海長と、薄明時の天測を練習艦隊卒業したての通信士と艦橋のトップで行いましたが、晴天であらゆる星が見え、天測には絶好の条件でした。
結果としては、所要時間及び観測精度ともに圧倒的に筆者の勝ちで、なんとか司令部の面目を保ちました。
朝食前に士官室で珈琲を飲んでいると航海長と通信士が入ってきて、天測の要領などについて質問攻めにあいました。筆者は単に遠くの天体を測って地球上の位置が分かるという とが面白くて昔から関心があっただけで、したがって星を見つけるのが得意なのだと伝えると、真面目な通信士は艦内のどこかで星座表を見つけてきてベッドの脇に張り付けていました。
この時の天測が筆者が行った最後の天測となりました。現在はGPSがあるので、天測という技術も必要が無くなりましたが、星を読むという言葉が失われていくのが寂しいと思っています。
独白:この時の天測の様子は妙にはっきりと記憶に残っています。薄暮時の天測で六分儀を持って艦橋トップに上がってきてくれた信号長と交わした会話や最初に測った星がアルタイルだったこと、測り終わって艦橋に降りてきたとき、たまたま艦橋にいた艦長が「オッ!もう測ったのか?」とちょっとビックリしていたこと、士官室で計算をしていたら群司令と副官が入ってきて、士官室係が珈琲を淹れてくれたので計算を中断していたら航海長が測り終わって入ってきて一緒に珈琲を飲んだことなど、つい先程のことのように覚えています。
短期記憶が失われ、長期記憶だけが残るということはひょっとすると認知症の初期症状かもしれません。
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専門コラム「指揮官の決断」第353回 安全保障の議論の経済的側面 その33 掲載のお知らせ
安全保障関連予算が対GDP比2%へ増額になることの問題点についての議論を続けます。
この問題の経済的側面についての議論を続けているので、面倒で分かりにくい議論が続くとは思いますが、やはり予算の話ですので財政学的な議論を避けて通ることができないので、しばらくご辛抱ください。
過去2回にわたり、経済学的視点からの議論をしてきました。これはある意味で弊社のタブーを犯しています。
弊社では当コラムが「専門コラム」を標榜することの「専門性」にこだわり、専門外の領域に踏み込むことについては臆病なほど慎重な態度をとっているからです。様々な専門的な事柄についても、その専門的な見地からではなく、危機管理論の視点で見るとどう見えるかという議論を踏み出さないようにしているのですが、ここ2回ほどは経済学の視点から見ています
続きはこちらでお読みください。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
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ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
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やがて艦長が群司令を案内して士官室に入ってきて珈琲を飲みながらの雑談となりました。
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そして、「天測は得意か?」と尋ねられました。星の高度を測って自分の船の位置を確定する作業です。
筆者は「もちろんです。そう簡単に負けません。候補生学校や術科学校の天文航法の教官をやりたいくらいです。」と答えると、「それでは今晩、航海長と艦位精度の競争をしよう。」と艦長から提案がありました。
何故かというと、この頃、GPSはまだ一般的ではありませんでしたが、ロランやデッカという電波航法機器があり、海上自衛隊では実用の天測はほとんど実施されていなかったからです。ロランやデッカが機能しない遠方に赴く船、例えば南極観測の支援をする砕氷艦など特殊な任務に就く船では行われていたかもしれませんが、筆者が乗っていたような護衛艦隊隷下の船ではほとんど行われていませんでした。筆者も通信士の頃にある航海で3日ほど続けて行ったことがありますが、それだけでした。幹部の大半は練習艦隊での遠洋航海の時に実習として天測を行うだけで、実用の天測はほとんど経験していないはずです。
だからと言って逃げるわけにもいかず、仕方なく引き受けたのですが、司令部幕僚が隷下部隊の幹部に負けるわけにはいきません。最後の天測をしてから何年も経っていますから星も忘れているので、星球儀など持ち出して、見えるはずの星を思い出したりしていました。
ところが、その船には練習艦隊で遠洋航海を終えて着任してきたばかりの初任幹部の通信士が乗っているとのことで、彼も参加することになりました。こやつは強敵です。ついちょっと前まで練習艦隊の遠洋航海で天測の訓練を受けていたのですから。
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星を測るのは薄明と薄暮時で空がうっすらと明るく、星が一番小さく見える時に行います。真夜中のギラギラしている星は大きすぎて高度を測っても誤差が大きいのです。
天文航法にはいろいろなやり方がりますが、海上自衛隊が採用しているのは旧海軍と同じ方法で、天測歴と米村表という天測表を使うやり方です。
米村海軍中将という方が作った天測表を使って、天測歴に記載されている天体の高度を測った値から自分の位置を計算します。
具体的には、自分の四方にある恒星の高度を六分儀で測ります。ある天体がある時間にある高度で見える位置は地球上に一本の線で示すことができます。その線上からならどこでもその天体を同じ角度で眺めることができるはずです。そのような線を少なくとも三方向の天体の高度を測ることにより海図上に引くと三角形ができます。望むらくは四方の天体の 高度を測って四本の線を引くと四角に交わるはずで、その重心を自分の位置であるとするのです。
筆者たちが練習艦隊の実習幹部として遠洋航海で天測を行っていた時は、4つの星を測って40分以内に計算を終え、誤差2マイル以内に収めるよう標準が定められていました。
筆者はこの天測計算が得意で、練習艦隊の実習の際も、星を測り終わってから20分後には珈琲を飲んでいるということが多かったと記憶します。天測計算は中学生の頃に父から理屈を教わり、海技試験の問題集などの問題を解いていたからでもあるのですが、実は他の実習幹部は使っていなかったかと思いますが、筆者は簡易天測歴というものを使うことがありました。
米村表を用いる計算は、極めて精緻な計算をするのですが、実習幹部に求められる精度は誤差2マイルです。
簡易天測歴というのは遠洋の漁船などが用いる天文航法で使われるもので、精度は荒っぽいのですが精緻な計算をしなくて済む簡略な計算方法を使うことができます。ヨット乗りなどもこの計算方法を使っていました。
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