指揮官の休日 No.341 ナットブッシュ・シティ・リミッツ
2023/06/09 (Fri) 10:26
XXXX 様
今朝配信したメールマガジンのNo.及びタイトルが更新されていませんでした。
正しく更新したものを再配信いたします。記事の内容は同一です。
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第349回 危機管理とは その7 を掲載いたしました。
危機管理とリスクマネジメントの概念の混乱の原因についてさらに考察を続けています。
興味のある方はこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3022
No.341 ナットブッシュ・シティ・リミッツ
米国の歌手ティナ・ターナーさんが亡くなりました。1960年代から70年代にかけて大活躍し、「ロックンロールの女王」と呼ばれていました。
様々なヒット曲がありますが、筆者がなかなかいいなと思っているのが、「プラウド・メアリー」のカバーです。
最初は「アイク・アンド・ティナ・ターナー」として夫婦で歌っていましたが、実は凄まじい家庭内暴力に苦しめられていたようで、70年代後半に離婚してソロ・アーティストとして活動していました。
歌だけではなく、ロック・ミュージカル「トミー」やメル・ギブソンとともに映画「マッドマックス/サンダードーム」の主演を務めています。
彼女の歌の中に「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」という曲があります。
ナットブッシュというのは米国のテネシー州にある小さな町であり、シティ・リミッツというのは行政区分を指しています。
筆者は南カリフォルニアにある米国法人のCEOを務めたことがあります。その会社は主として自動車用の精密部品を日本から米国の自動車メーカーに納入する業務を行っていたのですが、日本の精密部品加工技術を米国で売り込んでやろうと、いろいろなメーカーに売り込みをかけていました。
筆者はCEOでしたが、きわめて小さな会社でしたので、自ら全米を出張して回っていました。
サンディエゴから飛行機でそれらのメーカーがある都市の空港まで飛び、そこでレンタカーを借りて会社まで行くのですが、大都市にあるメーカーはあまりなく、空港から車で3時間くらいかかるところは珍しくありませんでした。
サンディエゴから中西部まで飛行機で飛ぶと、直行便ならいいのですが、途中で乗り継ぎをしなければならない便だと、朝サンディエゴを出発しても目的地の空港に着くと夜8時とかになっていることもよくあり、そこからレンタカーで真っ暗な田舎道を何時間も走り、本当にこの先に目指す街があるのかどうか心細くなってきたころにやっと目指す街のモーテルにたどり着き、とりあえず地元のバーでビールなど飲んでベッドにもぐりこみ、翌朝一番に会社に出かけて社長と会うというような営業活動でした。
そのような出張を繰り返していたある時、カーナビに“Nutbush”という地名が浮かび上がり、「オオッ!」と思って、若いころ聴いた“Nutbush City Limits”という曲を思い出したりしていました。
暗くてよく分からなかったのですが、どこが街なのか全く分からない、お店など一軒もないようなところでした。多分、走り抜けるのに5分もかからなかったかと思います。
翌日の帰途は別の道を通ったので、結局どのような街なのか分からず仕舞いです。
街がどのような所なのかはいまだに知らないのですが、筆者はこの曲に強烈な思い出があります。
1986年、筆者は当時の海上自衛隊の最新鋭艦「しらゆき」のミサイル担当の砲術士として、任官後3回目の配置に張り切っていました。機関士、通信士と2隻の護衛艦勤務の後でした。
機関士としては航海中は機関室の運転指揮所で当直するか、応急指揮所で戦闘被害対応をしているかでしたので、海を眺めることができず、通信士は航海中は通信の分掌指揮官ではありますが、主業務は艦橋の航海士であり、航海指揮官の補佐をするだけなので自分で操艦することができずフラストレーションがたまっていました。
ところがこの「しらゆき」では、戦闘配置は後部に装備された対空ミサイルを発射するための射撃管制室か砲雷長の補佐として戦闘指揮所にいたのですが、通常の哨戒配備での当直は艦橋で航海指揮官として操艦することができました。
当直中にいろいろと下令される戦術運動をこなしたり、あるいは陣形内の自艦の占位位置を保つための操艦をしなければならないのですが、筆者はそれが大好きだったので、この勤務を楽しんでいました。小さなヨットでも思い通りに動かすことができると面白いのですが、大きな護衛艦を自分の思い通りに操艦できたときの爽快感は何とも言えないものです。
その護衛艦に乗り組んでいた時、その船が米国主催で行われる環太平洋合同軍事演習(RIMPAC86)に参加しました。
この演習は三つのフェーズに分かれています。
まず参加艦艇がサンディエゴに集まり、事前の研究会や作戦会議を行います。
その間、各艦の乗員たちはサンディエゴ基地にある陸上の訓練施設を使った訓練を受けます。一大ゲームセンターを開業できるくらい様々なシミュレーターが備えられています。
そして、作戦会議や事前研究会が終わると一斉に出港してシナリオ演習に入ります。これは二つのグループに分かれ、一方はハワイを本拠地としてハワイを防衛する部隊、もう一方はサンディエゴを本拠地としてハワイ攻略を目指す部隊です。
筆者の乗る「しらゆき」はハワイに攻め込む部隊で、米空母の直衛としてハワイまで行動しました。そして、ハワイ入港後はトロフィーディナーとして全部隊の士官が集まる夕食会が開催されます。
最初のサンディエゴ入港中のことですが、同じ部隊で空母の直衛を行うオーストラリアの駆逐艦が近くに停泊していました。
その船と筆者たちは作戦会議でよく同席したのですが、乗員同士の交流もしようということになり、艦長命令で筆者がその船に調整に行くことになりました。
ある日の朝、筆者はそのオーストラリア駆逐艦に出かけ、士官室で乗員同士の交流をどうするかを相談しました。結論としてはソフトボールの試合をしようということになり、一段落がつきました。先方の艦長から昼食を食べていかないかとお誘いを受けたので、「カンガルーとかアルマジロなんかは食べませんよ。」などと冗談を言って、そのお誘いを受けることにしました。
食後、士官室のソファーで珈琲を楽しんでいると、その船で一番若い士官がギターを持って現れ、鮮やかな日本語で「我は海の子」を歌い始めました。高校生の頃、交換留学で京都に行ったことがあるのだそうです。
彼は歌い終わると筆者にギターを差し向け、「あんたも何かやれるかい?」と訊いてきました。ここで黙って退散したらサムライの名に恥じると思った筆者はそのギターを受け取り、オーストラリアの曲を始めました。
「悲しきカンガルー」です。
筆者は中学・高校でバンドを組んでギターを弾いていたことがあります。このフォークソングの名曲は中学1年の文化祭でバンドで演奏した記憶があり、コード進行も指が覚えていました。
すると陽気なオーストラリア海軍士官たちは一緒に歌いだして大盛り上がりとなりました。気を良くした筆者が続けて「ワルチング・マチルダ」を歌いだすと、さらに士官室は大盛り上がりになりました。
その頃には騒ぎを聞きつけた各部門の先任下士官たちも士官室に現れ、大騒ぎになりました。ワルチング・マチルダを終わるとアンコールのリクエストが鳴りやまず、オーストラリアの曲など他に知らないよな、困ったなぁと思ったときに思い出したのがティナ・ターナーの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」でした。
なぜかこの曲はオーストラリアで有名で、小学校でこの曲で踊ることを教えていると聞いたことがあったので、その真偽は知らなかったのですが、うろ覚えの歌詞で歌い始めました。
すると驚いたことに、先任下士官や若い士官たちが踊り始めたのです。艦長も皆について踊っていたのには本当にびっくりしました。
オーストラリアでは誰でもこの曲で踊れるというのは本当でした。
すごいなぁと思いました。
でも、よく考えると、日本でもそんな曲がありますよね。
盆踊りでよく踊られる「炭坑節」です。輪形陣で単純な振り付けで踊って回るこの曲はオーストラリアの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」かもしれません。
一生懸命調整したソフトボールでしたが、肝心の試合の日に射撃関係の事前研究会が行われたので筆者は見に行くことができませんでした。また勝敗も覚えていません。
そのオーストラリア艦とは同じ「レンジャー」打撃部隊に属し、空母「レンジャー」の直衛にあたってハワイまで行動を共にしました。たまに陣形運動ですれ違うことがあり、ウィングに出て見ていると、先方の艦橋で艦長が手を振ってくれているのが見えたりしました。
筆者が人前でギターを弾いたのはその時が最後で、かなり後になって部隊のサークル活動として音楽部を作ったりもしましたが、自ら演奏することはなく、最近は左の指が不自由になってきたので弾きたくても弾けなくなりました。
最近考えているのは、リハビリのためにギターを再開するかということです。もう思い切り弾きながら歌うなどという真似はできませんので、ジャズギターにでも挑戦しようかと思ったりもします。そのうちに演奏会のお知らせなど出すかもしれませんが、怖いもの見たさでおいでいただけると嬉しいです。
ここまで読んできた海上自衛隊の同期生や諸先輩は、「オッ?あいつは歌うのか?」と思われたかもしれません。海上自衛隊で筆者が歌っているのを見たことのある者はきわめて少数です。最初の船で隊歌係士官として隊歌訓練の指導をしていたこともありますが、この時も、「声が小さい!」と怒鳴りまくっていただけで自分で歌ったりしませんでしたし、カラオケはやらないからです。
なぜかカラオケが大嫌いなんです。生はやりますが、カラが嫌いなのです。自分でギターを弾きながらとかバンドをバックにしてなら歌っていたこともありますが、カラオケは大嫌いなので誘われても行きません。バーでは飲むけどスナックには行かないのはカラオケが嫌いだからです。
オーストラリアの駆逐艦では別に酔っていたのではないのですが、船全体のノリの良さに飲み込まれてしまい、全く筆者らしくない行動を取ったことになります。
でも、オーストラリア人は皆この曲で踊ることができるというのは事実のようでした。
実際にこの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」を踊っている動画をご紹介します。
足だけの単純な振り付けの繰り返しですが、やってみると楽しいですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=FUWCCIxtgJo
https://www.youtube.com/watch?v=RViLKu7VO_U
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専門コラム「指揮官の決断」第347回 危機管理とは その7
掲載のお知らせ
危機管理論の入門的議論に戻ります。
これまで6回にわたり、わが国では危機管理の概念が混乱しているという現状について語ってきました。
具体的にはリスクマネジメントを危機管理だと考える勘違いが生じており、そのような混乱が起きているのは、少なくとも筆者が調べたところでは日本だけであること。その混乱は阪神淡路大震災後に政府・自治体が重視し始めた危機管理(クライシスマネジメント)と金融機関が始めた企業を金融商品で守っていこうとするリスクマネジメントをマスコミが区別できずに一緒に扱ったために生じたことなどを指摘してきました。
しかし、問題をこじらせたのはマスコミだけの責任ではありません。学問の世界にも責任の一端があります。
続きはこちらでお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3022
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Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
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メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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代表取締役 林 祐
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No.341 ナットブッシュ・シティ・リミッツ
米国の歌手ティナ・ターナーさんが亡くなりました。1960年代から70年代にかけて大活躍し、「ロックンロールの女王」と呼ばれていました。
様々なヒット曲がありますが、筆者がなかなかいいなと思っているのが、「プラウド・メアリー」のカバーです。
最初は「アイク・アンド・ティナ・ターナー」として夫婦で歌っていましたが、実は凄まじい家庭内暴力に苦しめられていたようで、70年代後半に離婚してソロ・アーティストとして活動していました。
歌だけではなく、ロック・ミュージカル「トミー」やメル・ギブソンとともに映画「マッドマックス/サンダードーム」の主演を務めています。
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ナットブッシュというのは米国のテネシー州にある小さな町であり、シティ・リミッツというのは行政区分を指しています。
筆者は南カリフォルニアにある米国法人のCEOを務めたことがあります。その会社は主として自動車用の精密部品を日本から米国の自動車メーカーに納入する業務を行っていたのですが、日本の精密部品加工技術を米国で売り込んでやろうと、いろいろなメーカーに売り込みをかけていました。
筆者はCEOでしたが、きわめて小さな会社でしたので、自ら全米を出張して回っていました。
サンディエゴから飛行機でそれらのメーカーがある都市の空港まで飛び、そこでレンタカーを借りて会社まで行くのですが、大都市にあるメーカーはあまりなく、空港から車で3時間くらいかかるところは珍しくありませんでした。
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1986年、筆者は当時の海上自衛隊の最新鋭艦「しらゆき」のミサイル担当の砲術士として、任官後3回目の配置に張り切っていました。機関士、通信士と2隻の護衛艦勤務の後でした。
機関士としては航海中は機関室の運転指揮所で当直するか、応急指揮所で戦闘被害対応をしているかでしたので、海を眺めることができず、通信士は航海中は通信の分掌指揮官ではありますが、主業務は艦橋の航海士であり、航海指揮官の補佐をするだけなので自分で操艦することができずフラストレーションがたまっていました。
ところがこの「しらゆき」では、戦闘配置は後部に装備された対空ミサイルを発射するための射撃管制室か砲雷長の補佐として戦闘指揮所にいたのですが、通常の哨戒配備での当直は艦橋で航海指揮官として操艦することができました。
当直中にいろいろと下令される戦術運動をこなしたり、あるいは陣形内の自艦の占位位置を保つための操艦をしなければならないのですが、筆者はそれが大好きだったので、この勤務を楽しんでいました。小さなヨットでも思い通りに動かすことができると面白いのですが、大きな護衛艦を自分の思い通りに操艦できたときの爽快感は何とも言えないものです。
その護衛艦に乗り組んでいた時、その船が米国主催で行われる環太平洋合同軍事演習(RIMPAC86)に参加しました。
この演習は三つのフェーズに分かれています。
まず参加艦艇がサンディエゴに集まり、事前の研究会や作戦会議を行います。
その間、各艦の乗員たちはサンディエゴ基地にある陸上の訓練施設を使った訓練を受けます。一大ゲームセンターを開業できるくらい様々なシミュレーターが備えられています。
そして、作戦会議や事前研究会が終わると一斉に出港してシナリオ演習に入ります。これは二つのグループに分かれ、一方はハワイを本拠地としてハワイを防衛する部隊、もう一方はサンディエゴを本拠地としてハワイ攻略を目指す部隊です。
筆者の乗る「しらゆき」はハワイに攻め込む部隊で、米空母の直衛としてハワイまで行動しました。そして、ハワイ入港後はトロフィーディナーとして全部隊の士官が集まる夕食会が開催されます。
最初のサンディエゴ入港中のことですが、同じ部隊で空母の直衛を行うオーストラリアの駆逐艦が近くに停泊していました。
その船と筆者たちは作戦会議でよく同席したのですが、乗員同士の交流もしようということになり、艦長命令で筆者がその船に調整に行くことになりました。
ある日の朝、筆者はそのオーストラリア駆逐艦に出かけ、士官室で乗員同士の交流をどうするかを相談しました。結論としてはソフトボールの試合をしようということになり、一段落がつきました。先方の艦長から昼食を食べていかないかとお誘いを受けたので、「カンガルーとかアルマジロなんかは食べませんよ。」などと冗談を言って、そのお誘いを受けることにしました。
食後、士官室のソファーで珈琲を楽しんでいると、その船で一番若い士官がギターを持って現れ、鮮やかな日本語で「我は海の子」を歌い始めました。高校生の頃、交換留学で京都に行ったことがあるのだそうです。
彼は歌い終わると筆者にギターを差し向け、「あんたも何かやれるかい?」と訊いてきました。ここで黙って退散したらサムライの名に恥じると思った筆者はそのギターを受け取り、オーストラリアの曲を始めました。
「悲しきカンガルー」です。
筆者は中学・高校でバンドを組んでギターを弾いていたことがあります。このフォークソングの名曲は中学1年の文化祭でバンドで演奏した記憶があり、コード進行も指が覚えていました。
すると陽気なオーストラリア海軍士官たちは一緒に歌いだして大盛り上がりとなりました。気を良くした筆者が続けて「ワルチング・マチルダ」を歌いだすと、さらに士官室は大盛り上がりになりました。
その頃には騒ぎを聞きつけた各部門の先任下士官たちも士官室に現れ、大騒ぎになりました。ワルチング・マチルダを終わるとアンコールのリクエストが鳴りやまず、オーストラリアの曲など他に知らないよな、困ったなぁと思ったときに思い出したのがティナ・ターナーの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」でした。
なぜかこの曲はオーストラリアで有名で、小学校でこの曲で踊ることを教えていると聞いたことがあったので、その真偽は知らなかったのですが、うろ覚えの歌詞で歌い始めました。
すると驚いたことに、先任下士官や若い士官たちが踊り始めたのです。艦長も皆について踊っていたのには本当にびっくりしました。
オーストラリアでは誰でもこの曲で踊れるというのは本当でした。
すごいなぁと思いました。
でも、よく考えると、日本でもそんな曲がありますよね。
盆踊りでよく踊られる「炭坑節」です。輪形陣で単純な振り付けで踊って回るこの曲はオーストラリアの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」かもしれません。
一生懸命調整したソフトボールでしたが、肝心の試合の日に射撃関係の事前研究会が行われたので筆者は見に行くことができませんでした。また勝敗も覚えていません。
そのオーストラリア艦とは同じ「レンジャー」打撃部隊に属し、空母「レンジャー」の直衛にあたってハワイまで行動を共にしました。たまに陣形運動ですれ違うことがあり、ウィングに出て見ていると、先方の艦橋で艦長が手を振ってくれているのが見えたりしました。
筆者が人前でギターを弾いたのはその時が最後で、かなり後になって部隊のサークル活動として音楽部を作ったりもしましたが、自ら演奏することはなく、最近は左の指が不自由になってきたので弾きたくても弾けなくなりました。
最近考えているのは、リハビリのためにギターを再開するかということです。もう思い切り弾きながら歌うなどという真似はできませんので、ジャズギターにでも挑戦しようかと思ったりもします。そのうちに演奏会のお知らせなど出すかもしれませんが、怖いもの見たさでおいでいただけると嬉しいです。
ここまで読んできた海上自衛隊の同期生や諸先輩は、「オッ?あいつは歌うのか?」と思われたかもしれません。海上自衛隊で筆者が歌っているのを見たことのある者はきわめて少数です。最初の船で隊歌係士官として隊歌訓練の指導をしていたこともありますが、この時も、「声が小さい!」と怒鳴りまくっていただけで自分で歌ったりしませんでしたし、カラオケはやらないからです。
なぜかカラオケが大嫌いなんです。生はやりますが、カラが嫌いなのです。自分でギターを弾きながらとかバンドをバックにしてなら歌っていたこともありますが、カラオケは大嫌いなので誘われても行きません。バーでは飲むけどスナックには行かないのはカラオケが嫌いだからです。
オーストラリアの駆逐艦では別に酔っていたのではないのですが、船全体のノリの良さに飲み込まれてしまい、全く筆者らしくない行動を取ったことになります。
でも、オーストラリア人は皆この曲で踊ることができるというのは事実のようでした。
実際にこの「ナットブッシュ・シティ・リミッツ」を踊っている動画をご紹介します。
足だけの単純な振り付けの繰り返しですが、やってみると楽しいですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=FUWCCIxtgJo
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しかし、問題をこじらせたのはマスコミだけの責任ではありません。学問の世界にも責任の一端があります。
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代表取締役 林 祐
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