指揮官の休日 No.338 江田島今昔物語
2023/05/19 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第346回 失敗の意味するもの を掲載いたしました。
意思決定に際して重要なことは、その決定の目的をしっかりと認識することです。そして、目的を達することができなかった場合には率直に失敗を認め、その失敗から教訓を学び取ることが大切です。
興味のある方はこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3007
No.338 江田島今昔物語
広島県の瀬戸内海沿岸に江田島という島があります。
広島港から高速フェリーなら25分くらい、呉からなら10分程度で着くところにあります。
この島に帝国海軍がその将校を養成するための海軍兵学校を築地から移転させたのは明治21年でした。
江田島が選ばれたのは、軍艦が錨泊できる入り江があり、一般社会と隔絶して娑婆っ気なしに教育できることなどの条件が整っていたからであり、築地時代からの合計で1万2433名の卒業生を輩出し、78期生を最後のクラスとして昭和20年に幕を閉じました。
戦後は海上自衛隊の幹部候補生学校がおかれ、海上自衛隊の幹部自衛官は例外なしにここで任官前の教育を受けています。今でも娑婆っ気などどこにもないど田舎の島ですが、伝統に支えられて多くの幹部海上自衛官の心の故郷となっています。
構内には、旧海軍兵学校時代からの建築物が多く残されています。
通称赤レンガと呼ばれる幹部候補生学校庁舎はイギリスから一つずつ紙に包まれたレンガが軍艦で運ばれて建てられたといわれ、いまだに海軍兵学校の香りを江田島に残しています。
その他、鉄骨煉瓦石造で外壁に花崗岩が張られた大講堂は幹部候補生の入校式、卒業式などに用いられ、ギリシャ神殿風の教育参考館には勝海舟の海軍建設に関する建白書に始まり、散っていった特攻隊員の遺書や碑銘を刻んだ石板に至る数多くの資料が展示され、候補生たちの精神教育に利用されています。
また、江田島湾に臨む岸壁には表玄関である表桟橋や戦艦陸奥から取り外した主砲が備え付けられ、さらに候補生を鍛えるためのカッターを吊るしたダビッドが装備されています。
構内は掃き清められた道路のほかは芝で覆われ、数多くの桜や松が植えられています。
筆者にとっては、この「江田島」という地名は特別な意味を持っています。
海上自衛官の息子として生まれ、父の転勤に伴い江田島に転居して地元の小学校に転入し、そこを卒業して横浜にあった全寮制の中学に入校したのですが、夏休みや冬休みなどの長期の休みに帰省するのもその江田島でした。
さらに大学院の博士前期課程を修了して海上自衛隊に入隊し、幹部候補生として海上自衛官の第一歩を踏み出したのもこの江田島です。
筆者が入校した時の海上幕僚長と幹部候補生学校長はそれぞれ自分たちが最後の海軍兵学校出身者となるとの自覚の元、海軍の伝統を残すのが自分たちの使命であると思い込んだらしく、それなりの教育・訓練が行われました。もともと海上自衛隊は陸・空自衛隊よりも伝統墨守と言われているので、候補生学校も旧海軍兵学校の跡地に作ったほどです。
そうなったのには理由があります。
自衛隊が創設されたとき、米国の各軍から指導官がやってきました。
陸上自衛隊の指導を担当した米陸軍の指導官は旧陸軍を徹底的に否定し、そこから新しい軍隊を創ろうとして、「俺たちの言うとおりにしろ。」という態度で指導をしました。また、日本国政府も関東軍の独走の苦い経験があったため、陸上自衛隊の最初の指導者たちを旧内務官僚から選んだのです。陸軍士官学校出身者たちは首脳部からは遠ざけられていました。
ところが、日本政府は旧海軍にはそれほど悪い印象を持っていなかったようで、旧海軍兵学校出身者が海上自衛隊の比較的高位の配置に就けられました。さらに、海上自衛隊を指導にきた米海軍の指導官たちの多くは、世界の海軍の三大聖将の一人である東郷提督(他の二人は英国のネルソン提督、米国のジョン・ポール・ジョーンズ提督)を崇拝していたため、「海軍を再建するに際し、何かお困りであればアドバイスを差し上げます。」という態度で接してきたのです。
このため、旧海軍出身者たちは「自分たちは間違っていなかった。」として旧軍の伝統にしたがった海上自衛隊創設を行ったため、伝統墨守という体質になったようです。そのため、陸上自衛隊は陸軍士官学校跡の市谷ではなく、福岡県久留米に幹部候補生学校を作ったのですが、海上自衛隊は迷うことなく江田島に幹部候補生学校を開校したのです。
陸・海・空の幹部候補生学校では海上自衛隊の幹部候補生学校の訓練の厳しさは断トツと言われてきました。そのため、防衛大学校では海上要員を希望する者が少なく、いつも要員確保に悩まされ、足りない分は筆者のような一般大学出身者の採用を増やしているようです。
海軍の伝統を海上自衛隊に残そうという強い思いの海上幕僚長と幹部候補生学校長とによって教育された私たちのクラスですから、防衛大学校で鍛えられてきた同期生の中にあって、東京のど真ん中の私立大学・大学院で6年間の書生生活を送っていた筆者が面食らったのは言うまでもありません。
つまり、江田島というのは小学校以来の再びの母校となったという意味があります。
しかし、それだけではありません。
筆者はその候補生時代に小学校の同級生と婚約したのですが、彼女の父親も元海上自衛官で、しかもそちらは海軍兵学校出身者でした。
筆者の父親も海軍大尉で終戦を迎えていますが、兵学校出身ではなく神戸商船学校出身の予備士官の船乗りでした。
また、筆者は父親の転勤の関係で江田島小学校を卒業したのですが、彼女は同じく父親の転勤のため新入生として入学式を迎えたのが江田島小学校でした。つまり、夫婦で入学式と卒業式を経験しているということになります。
さらに彼女は当時航空会社で羽田支店長の秘書を務めていたのですが、彼女の上司の支店長は海軍兵学校出身の方で、仲のいい同期生がその時の海上幕僚長だったという凄まじい縁でつながっていました。
というわけで、筆者にとって「江田島」という地名はとてつもない重さを持って響いてくるものになっています。
江田島での教育や訓練、日常生活については旧海軍兵学校出身の方々がいろいろ書き残しています。それらや当時の写真などを見ていると、海上自衛隊の幹部候補生学校は当時とほとんど変わらぬ教育を行っていることが分かります。
確かに教える教務の内容はアップデートされていますが、しかし、幹部候補生学校で重要視されているのは、軍事技術に関する教育ではなく、幹部自衛官としての覚悟、将来の指揮官としての心構え、そして不撓不屈の気力およびそれを支える体力の錬成です。
技術は日々変化していきますが、指揮官としての覚悟やあり方などは千年昔から変わっていないはずです。それが2500年前の『孫子』がいまだに読み継がれている理由です。
旧海軍兵学校でやっていて幹部候補生学校にないのは鉄拳制裁と棒倒しくらいのものでしょう。
海軍兵学校と海上自衛隊幹部候補生学校がどう違い、どう似ているのかが端的に分かる動画を発見しましたので、皆様にご紹介いたします。
まず、こちらが海軍兵学校です。
https://www.youtube.com/watch?v=RzO6lVmaN3E
そして、こちらが海上自衛隊幹部候補生学校です。
https://www.youtube.com/watch?v=PuFgZJQ9Hrk
着ている服が異なる以外はほとんど同じなのにビックリします。
なお、現代の幹部候補生学校の一年間のドキュメンタリーも同じく動画でご覧いただけますので、URLを貼り付けておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=hw8Gbb3cPvQ&t=485s
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専門コラム「指揮官の決断」第346回 失敗の意味するもの 掲載のお知らせ
『失敗の本質』という著作があります。ビジネスマン必読の書と言われて久しく、出版されて30年以上経つのにいまだに読み継がれています。
これは組織論と戦史の専門研究者たちの共同執筆による第2次世界大戦における日本軍の様々な作戦を取り上げ、それらが失敗に終わった理由を社会科学の観点から分析したもので、大学院で組織論を学んでいた筆者にとっても参考とすべき書籍でした。
この本を初めて読んだのはまだ筆者が海上自衛隊に入隊して数年しか経っていない頃であり、研究室を出て以来、幹部候補生学校や各種の術科学校で様々な勉強はさせられたものの、それらは艦隊勤務に必要な技術的な勉強ばかりだったので、久しぶりに学問的な書物に触れる懐かしさもあり、凄い本が出版されたという驚きを持って読んでいました。
しかし、何回か読み直すうちに、筆者も最前線の部隊勤務での経験を積んでいたこともあり、何となく違和感を抱くようになりました。
続きはこちらでお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/3007
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とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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No.338 江田島今昔物語
広島県の瀬戸内海沿岸に江田島という島があります。
広島港から高速フェリーなら25分くらい、呉からなら10分程度で着くところにあります。
この島に帝国海軍がその将校を養成するための海軍兵学校を築地から移転させたのは明治21年でした。
江田島が選ばれたのは、軍艦が錨泊できる入り江があり、一般社会と隔絶して娑婆っ気なしに教育できることなどの条件が整っていたからであり、築地時代からの合計で1万2433名の卒業生を輩出し、78期生を最後のクラスとして昭和20年に幕を閉じました。
戦後は海上自衛隊の幹部候補生学校がおかれ、海上自衛隊の幹部自衛官は例外なしにここで任官前の教育を受けています。今でも娑婆っ気などどこにもないど田舎の島ですが、伝統に支えられて多くの幹部海上自衛官の心の故郷となっています。
構内には、旧海軍兵学校時代からの建築物が多く残されています。
通称赤レンガと呼ばれる幹部候補生学校庁舎はイギリスから一つずつ紙に包まれたレンガが軍艦で運ばれて建てられたといわれ、いまだに海軍兵学校の香りを江田島に残しています。
その他、鉄骨煉瓦石造で外壁に花崗岩が張られた大講堂は幹部候補生の入校式、卒業式などに用いられ、ギリシャ神殿風の教育参考館には勝海舟の海軍建設に関する建白書に始まり、散っていった特攻隊員の遺書や碑銘を刻んだ石板に至る数多くの資料が展示され、候補生たちの精神教育に利用されています。
また、江田島湾に臨む岸壁には表玄関である表桟橋や戦艦陸奥から取り外した主砲が備え付けられ、さらに候補生を鍛えるためのカッターを吊るしたダビッドが装備されています。
構内は掃き清められた道路のほかは芝で覆われ、数多くの桜や松が植えられています。
筆者にとっては、この「江田島」という地名は特別な意味を持っています。
海上自衛官の息子として生まれ、父の転勤に伴い江田島に転居して地元の小学校に転入し、そこを卒業して横浜にあった全寮制の中学に入校したのですが、夏休みや冬休みなどの長期の休みに帰省するのもその江田島でした。
さらに大学院の博士前期課程を修了して海上自衛隊に入隊し、幹部候補生として海上自衛官の第一歩を踏み出したのもこの江田島です。
筆者が入校した時の海上幕僚長と幹部候補生学校長はそれぞれ自分たちが最後の海軍兵学校出身者となるとの自覚の元、海軍の伝統を残すのが自分たちの使命であると思い込んだらしく、それなりの教育・訓練が行われました。もともと海上自衛隊は陸・空自衛隊よりも伝統墨守と言われているので、候補生学校も旧海軍兵学校の跡地に作ったほどです。
そうなったのには理由があります。
自衛隊が創設されたとき、米国の各軍から指導官がやってきました。
陸上自衛隊の指導を担当した米陸軍の指導官は旧陸軍を徹底的に否定し、そこから新しい軍隊を創ろうとして、「俺たちの言うとおりにしろ。」という態度で指導をしました。また、日本国政府も関東軍の独走の苦い経験があったため、陸上自衛隊の最初の指導者たちを旧内務官僚から選んだのです。陸軍士官学校出身者たちは首脳部からは遠ざけられていました。
ところが、日本政府は旧海軍にはそれほど悪い印象を持っていなかったようで、旧海軍兵学校出身者が海上自衛隊の比較的高位の配置に就けられました。さらに、海上自衛隊を指導にきた米海軍の指導官たちの多くは、世界の海軍の三大聖将の一人である東郷提督(他の二人は英国のネルソン提督、米国のジョン・ポール・ジョーンズ提督)を崇拝していたため、「海軍を再建するに際し、何かお困りであればアドバイスを差し上げます。」という態度で接してきたのです。
このため、旧海軍出身者たちは「自分たちは間違っていなかった。」として旧軍の伝統にしたがった海上自衛隊創設を行ったため、伝統墨守という体質になったようです。そのため、陸上自衛隊は陸軍士官学校跡の市谷ではなく、福岡県久留米に幹部候補生学校を作ったのですが、海上自衛隊は迷うことなく江田島に幹部候補生学校を開校したのです。
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海軍の伝統を海上自衛隊に残そうという強い思いの海上幕僚長と幹部候補生学校長とによって教育された私たちのクラスですから、防衛大学校で鍛えられてきた同期生の中にあって、東京のど真ん中の私立大学・大学院で6年間の書生生活を送っていた筆者が面食らったのは言うまでもありません。
つまり、江田島というのは小学校以来の再びの母校となったという意味があります。
しかし、それだけではありません。
筆者はその候補生時代に小学校の同級生と婚約したのですが、彼女の父親も元海上自衛官で、しかもそちらは海軍兵学校出身者でした。
筆者の父親も海軍大尉で終戦を迎えていますが、兵学校出身ではなく神戸商船学校出身の予備士官の船乗りでした。
また、筆者は父親の転勤の関係で江田島小学校を卒業したのですが、彼女は同じく父親の転勤のため新入生として入学式を迎えたのが江田島小学校でした。つまり、夫婦で入学式と卒業式を経験しているということになります。
さらに彼女は当時航空会社で羽田支店長の秘書を務めていたのですが、彼女の上司の支店長は海軍兵学校出身の方で、仲のいい同期生がその時の海上幕僚長だったという凄まじい縁でつながっていました。
というわけで、筆者にとって「江田島」という地名はとてつもない重さを持って響いてくるものになっています。
江田島での教育や訓練、日常生活については旧海軍兵学校出身の方々がいろいろ書き残しています。それらや当時の写真などを見ていると、海上自衛隊の幹部候補生学校は当時とほとんど変わらぬ教育を行っていることが分かります。
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まず、こちらが海軍兵学校です。
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