指揮官の休日 No.330 行政文書
2023/03/24 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第338回 米無人偵察機とロシア戦闘機の衝突 を掲載いたしました。
黒海上空で起きた米軍無人偵察機とロシア空軍戦闘機の接触事故について、例によってメディアが見当違いの報道をしているので、若干の解説を試みています。
興味のある方はこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2946
No.330 行政文書・公文書
放送法を巡る行政怪文書がマスコミを賑わせています。
事の発端は安倍内閣当時の磯崎首相補佐官が総務省に放送法の解釈を変えるように迫ったということを記録した内部文書があり、これは放送の政治的公平性を政権の介入により歪めるものであるという主張を国会で立憲民主党の小西議員が行ったことにあります。
関連文書は78枚あり、その中で当時の総務大臣であった高市早苗経済安全保障担当大臣に関する部分について、高市大臣が捏造であると答弁し、小西議員が捏造でなかった場合に大臣及び議員の辞職を迫っているためにメディアが取り上げることになったものです。
この騒ぎにおいて、行政文書というものの性格をメディアが理解していないことが明らかですので、今回のテーマとして取り上げました。
元来、このメールマガジンは弊社の専門コラムの更新をお知らせするために発行しており、内容としては知っていても知らなくてもどうでもいい与太話だけを取り上げ、サッサとコラムに跳んで頂こうとするものですが、ウクライナへの応援メッセージなどを配信したりして、結構まじめな話もしています。
今回のようなテーマを取り上げるのは躊躇がありましたが、世間の誤解が酷すぎるのにまともな解説が行われないのに業を煮やして事の本質を明らかにしようと考えました。
しかし、専門コラムの方は危機管理の専門コラムであるので、このような政治臭のプンプンする内容にはそぐわないのでこのメールマガジンで取り上げています。
筆者はいろいろな場所で公言しておりますが、政治も政治家も大嫌いなので、この手の話題を取り上げるのはマムシに頬ずりをするくらい嫌なのですが、どうもこの問題に関して理解できないでいる方が多いので、仕方なく取り上げる次第です。
まず、メディアが理解していないのは行政文書というものの性格です。
役所が持っている文書にはいくつもの種類があります。
分類について根拠規則のあるものとないものがあります。
分類に根拠規則のある文書は「公文書」と呼ばれます。
この文書は起案担当課と起案者が明示され、原義と呼ばれる文書がまず作られます。
起案担当課において課長の決済を得た文書は合議蘭が余白に付けられ、関係する課に回覧され、それぞれの司で審議され合議蘭に捺印されます。(多分最近はハンコではなく、サインになっているはずですし、さらには電子ファイルでの回覧が行われているかと思います。)
部や局をまたがる合議が必要な場合には起案担当課が属する部長や局長への回覧も行われてから回覧されます。
そして文書の発簡権者(大臣、事務次官、局長、課長など)の決済を得る前に、文書審査と法令審査が行われます。前者は誤字脱字の有無、用語が正確に使われているかどうかを審査するものであり、後者はその文書が法令や規則、以前に発簡された文書と矛盾しないかなどが審査されます。
それらの審査が終わったものが決裁権者に回され、決済されると発簡番号が付与され、原義綴りに綴じられ、文書が印刷されて配布されます。この際、取り扱い区分も付与されます。
これは端的に言うと秘密区分であり、自衛隊の場合は「注意」「秘」「極秘」「機密」などの分類が行われ、その分類に従った送付手続きが取られます。「秘」以上の区分が行われた文書は送る際にも受け取る際にも記録が残され、保管期限内では毎年その文書が確実に保管されているかどうかの検査も行われます。また、「極秘」と分類されると郵便での送達ができず、幹部自衛官が出張して直接配布します。
これが「公文書」です。
ところが今回問題になっているのは「行政文書」です。
「行政文書」には役人のメモ書きも含まれています。
筆者は記憶力に自信がないので海上自衛隊在職時に備忘録のようにシステム手帳にいろいろと書き連ねていました。ところが、イージス艦の秘密漏洩事件をきっかけとして文書の管理に極端な規則が作られ、公務員が私的に書いていた手帳も業務に関することが書かれている場合には行政文書であるとされたため、退職時に持って帰ることができず、リフィルを焼却処分としました。
そのため、このメールマガジンにいろいろ書いている自衛隊在職中の話は記録ではなく記憶に基づいて書かざるを得ないのです。
この「行政文書」にはいろいろなものが含まれます。会議の記録やそこで使われたプレゼンテーション資料、担当者間の打ち合わせ状況の報告書、面談に訪れた人との面談の記録など、様々なものが記録に残ります。庁舎入口で書かされる訪問者の住所氏名なども行政文書として保管されます。
「行政文書」というのは、そういう性格のものです。繰り返しますが、担当者のメモも行政文書です。高市大臣はその行政文書の一部が捏造であると主張しているのです。
一方で小西議員は現総務大臣に対して、それらの文書が「行政文書」かどうかを質問し、総務大臣が「行政文書」であると確認したことで鬼の首を取ったように強気になっています。
立憲民主党の安住国対委員長も「総務省が責任を持って文書を作っているので、書かれていることは事実だと認定したい。『安倍政治』の負の遺産のひとつが報道介入で、それを端的に示した例であり、自分たちの意に沿わない番組に『放送法の解釈を変えて潰せるぞ』と圧力をかけることは、民主主義社会の中で一番あってはならないことだ」と述べています。
安住国対委員長は民主党政権下で防衛副大臣や財務大臣を経験されているはずなのですが、行政文書というものがどういう性格を持った文書なのかを全然ご存じないようです。
安住氏が理解していないのは、「行政文書」であるということと、内容が事実かどうかということはまったく別問題だということです。
「公文書」であれば、それなりの手続きを取って発簡されますのでそういい加減な文書は出てこないはずなのですが、行政文書にあっては担当者のメモレベルのものが保管されることもあるので、内容の審査などはまったく行われません。ただ、単にそのような文書が回覧されたという事実が残るだけなのです。
今回問題となった文書は総務省のサイトで読むことができますが、高市大臣に関する数枚に関しては、読んでいて違和感を覚えます。
筆者は海上幕僚監部防衛課員として各課から上げられてくる様々な文書の合議を担当したことがありますし、自衛艦隊司令部で自衛艦隊司令官が発簡する文書の文書審査及び法令審査を担当したこともあります。また、内局に出向して背広組に交じって行政官として勤務していたこともあり、各省庁から来る様々な文書を見ていますので、公文書や行政文書の取り扱いには慣れています。その眼で見ると違和感を抱くものばかりです。
例えば、総務大臣と首相の電話でのやり取りに関するメモがあります。省庁では大臣と首相や首相秘書官とのやり取りなどは、次官や担当局長なども承知しておく必要があるため、メモの形で残します。
そのやり取りを記録した文書の回覧先に大臣室が入っていないのです。常識的には大臣と首相のやり取りを担当者がメモして記録に残す場合、配布先に大臣室を入れて、少なくとも秘書官には「こういうやり取りがありましたよね。」と確認を取ります。秘書官や大臣自身が「そうは言っていない。」とか「ニュアンスが違う。」などと文言の訂正を要求してくることもあるからです。
また、その文書のタイトルが「大臣と首相の電話会談」となっているのも筆者には引っかかるところです。役人なら常識的に「首相と大臣」という語順にするはずです。
取り扱い区分が「厳重取扱注意」となっているのも変です。役人なら「取扱厳重注意」とするはずです。つまり、この文書は役人の仕事に慣れていない人物によって書かれたとしか思えないのです。
実はこの問題を読み解くには別の見方があり、その見方を理解していると問題の本質がはっきり明確に理解できるですが、今回はここまでの指摘に留めます。
弊社のメールマガジンが長すぎてコラムを読む気力が削がれるという指摘が度々我が家の司令長官から上がっています。
実はこのメールマガジンは配信前に我が家の司令長官の検閲を受けて発簡されています。我が家の司令長官はコラムで筆者が政治家などをボロクソに言うのを好まれず、それについて日頃ご指摘を頂いているのですが、弊社ではある一定の影響力を持つ人々の無責任な行為等に関しては先鋭化することが度々あります。それは弊社の方針であり、匿名の誹謗中傷をしているわけではないので度々のご指摘にもめげていないのですが、さすがに長すぎるというご指摘はごもっともなので、心持ち短くするよう努めています。
そもそもコラムの更新をお知らせして読んでいただくためのメールマガジンなのに、メールマガジンが長すぎてコラムが読めないというのは本末転倒だからです。
短い方が楽だと思っていたのですが、短くするのも結構大変だと気付いた今日この頃です。
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専門コラム「指揮官の決断」第338回 米無人偵察機とロシア戦闘機の衝突 掲載のお知らせ
3月14日、黒海上空で米軍の無人偵察機MQ9ディーパーとロシア空軍のSu27戦闘機による接触事故が発生しました。
米軍の発表によれば、無人偵察機は黒海上空で情報収集・監視・偵察の任務を遂行中にロシア空軍戦闘機から飛行を妨害され、制御ができなくなったため墜落させたということです。
国防省の報道官はロシア軍の危険さと未熟さ、さらに能力の欠如を示していると述べています。
このニュースは新聞でもテレビのニュースでも取り上げられましたが、米ロの直接対決に発展しかねない重大事件として取り扱われました。各局の解説者やコメンテーターも由々しき事態に発展する危険性を指摘しました。例外は、当初からウクライナの戦争について解説を続けてきている数人の専門家たちです。彼らはこの事件の及ぼす影響をしっかりと見積もっているので、特に騒ぎ立てませんでした。
もし、この事件が米ロの直接対決に発展するようなものであるとすれば、危機管理の専門コラムとして当コラムも沈黙を守るわけにはいかないのですが、筆者のような安全保障を専門としない者から見ても、この程度の話は別に大騒ぎするような問題ではなく、日常的に生起しているとまでは言いませんが特別な事例という訳でもありません。
この辺りはしっかりと説明しておかないと不必要な心配をされる方がいるかもしれないので、今回のテーマとして取り上げておきます。
続きはこちらでお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2946
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とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
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No.330 行政文書・公文書
放送法を巡る行政怪文書がマスコミを賑わせています。
事の発端は安倍内閣当時の磯崎首相補佐官が総務省に放送法の解釈を変えるように迫ったということを記録した内部文書があり、これは放送の政治的公平性を政権の介入により歪めるものであるという主張を国会で立憲民主党の小西議員が行ったことにあります。
関連文書は78枚あり、その中で当時の総務大臣であった高市早苗経済安全保障担当大臣に関する部分について、高市大臣が捏造であると答弁し、小西議員が捏造でなかった場合に大臣及び議員の辞職を迫っているためにメディアが取り上げることになったものです。
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筆者はいろいろな場所で公言しておりますが、政治も政治家も大嫌いなので、この手の話題を取り上げるのはマムシに頬ずりをするくらい嫌なのですが、どうもこの問題に関して理解できないでいる方が多いので、仕方なく取り上げる次第です。
まず、メディアが理解していないのは行政文書というものの性格です。
役所が持っている文書にはいくつもの種類があります。
分類について根拠規則のあるものとないものがあります。
分類に根拠規則のある文書は「公文書」と呼ばれます。
この文書は起案担当課と起案者が明示され、原義と呼ばれる文書がまず作られます。
起案担当課において課長の決済を得た文書は合議蘭が余白に付けられ、関係する課に回覧され、それぞれの司で審議され合議蘭に捺印されます。(多分最近はハンコではなく、サインになっているはずですし、さらには電子ファイルでの回覧が行われているかと思います。)
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そして文書の発簡権者(大臣、事務次官、局長、課長など)の決済を得る前に、文書審査と法令審査が行われます。前者は誤字脱字の有無、用語が正確に使われているかどうかを審査するものであり、後者はその文書が法令や規則、以前に発簡された文書と矛盾しないかなどが審査されます。
それらの審査が終わったものが決裁権者に回され、決済されると発簡番号が付与され、原義綴りに綴じられ、文書が印刷されて配布されます。この際、取り扱い区分も付与されます。
これは端的に言うと秘密区分であり、自衛隊の場合は「注意」「秘」「極秘」「機密」などの分類が行われ、その分類に従った送付手続きが取られます。「秘」以上の区分が行われた文書は送る際にも受け取る際にも記録が残され、保管期限内では毎年その文書が確実に保管されているかどうかの検査も行われます。また、「極秘」と分類されると郵便での送達ができず、幹部自衛官が出張して直接配布します。
これが「公文書」です。
ところが今回問題になっているのは「行政文書」です。
「行政文書」には役人のメモ書きも含まれています。
筆者は記憶力に自信がないので海上自衛隊在職時に備忘録のようにシステム手帳にいろいろと書き連ねていました。ところが、イージス艦の秘密漏洩事件をきっかけとして文書の管理に極端な規則が作られ、公務員が私的に書いていた手帳も業務に関することが書かれている場合には行政文書であるとされたため、退職時に持って帰ることができず、リフィルを焼却処分としました。
そのため、このメールマガジンにいろいろ書いている自衛隊在職中の話は記録ではなく記憶に基づいて書かざるを得ないのです。
この「行政文書」にはいろいろなものが含まれます。会議の記録やそこで使われたプレゼンテーション資料、担当者間の打ち合わせ状況の報告書、面談に訪れた人との面談の記録など、様々なものが記録に残ります。庁舎入口で書かされる訪問者の住所氏名なども行政文書として保管されます。
「行政文書」というのは、そういう性格のものです。繰り返しますが、担当者のメモも行政文書です。高市大臣はその行政文書の一部が捏造であると主張しているのです。
一方で小西議員は現総務大臣に対して、それらの文書が「行政文書」かどうかを質問し、総務大臣が「行政文書」であると確認したことで鬼の首を取ったように強気になっています。
立憲民主党の安住国対委員長も「総務省が責任を持って文書を作っているので、書かれていることは事実だと認定したい。『安倍政治』の負の遺産のひとつが報道介入で、それを端的に示した例であり、自分たちの意に沿わない番組に『放送法の解釈を変えて潰せるぞ』と圧力をかけることは、民主主義社会の中で一番あってはならないことだ」と述べています。
安住国対委員長は民主党政権下で防衛副大臣や財務大臣を経験されているはずなのですが、行政文書というものがどういう性格を持った文書なのかを全然ご存じないようです。
安住氏が理解していないのは、「行政文書」であるということと、内容が事実かどうかということはまったく別問題だということです。
「公文書」であれば、それなりの手続きを取って発簡されますのでそういい加減な文書は出てこないはずなのですが、行政文書にあっては担当者のメモレベルのものが保管されることもあるので、内容の審査などはまったく行われません。ただ、単にそのような文書が回覧されたという事実が残るだけなのです。
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筆者は海上幕僚監部防衛課員として各課から上げられてくる様々な文書の合議を担当したことがありますし、自衛艦隊司令部で自衛艦隊司令官が発簡する文書の文書審査及び法令審査を担当したこともあります。また、内局に出向して背広組に交じって行政官として勤務していたこともあり、各省庁から来る様々な文書を見ていますので、公文書や行政文書の取り扱いには慣れています。その眼で見ると違和感を抱くものばかりです。
例えば、総務大臣と首相の電話でのやり取りに関するメモがあります。省庁では大臣と首相や首相秘書官とのやり取りなどは、次官や担当局長なども承知しておく必要があるため、メモの形で残します。
そのやり取りを記録した文書の回覧先に大臣室が入っていないのです。常識的には大臣と首相のやり取りを担当者がメモして記録に残す場合、配布先に大臣室を入れて、少なくとも秘書官には「こういうやり取りがありましたよね。」と確認を取ります。秘書官や大臣自身が「そうは言っていない。」とか「ニュアンスが違う。」などと文言の訂正を要求してくることもあるからです。
また、その文書のタイトルが「大臣と首相の電話会談」となっているのも筆者には引っかかるところです。役人なら常識的に「首相と大臣」という語順にするはずです。
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米軍の発表によれば、無人偵察機は黒海上空で情報収集・監視・偵察の任務を遂行中にロシア空軍戦闘機から飛行を妨害され、制御ができなくなったため墜落させたということです。
国防省の報道官はロシア軍の危険さと未熟さ、さらに能力の欠如を示していると述べています。
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もし、この事件が米ロの直接対決に発展するようなものであるとすれば、危機管理の専門コラムとして当コラムも沈黙を守るわけにはいかないのですが、筆者のような安全保障を専門としない者から見ても、この程度の話は別に大騒ぎするような問題ではなく、日常的に生起しているとまでは言いませんが特別な事例という訳でもありません。
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