指揮官の休日 No.278 軍艦の掲げる旗への対応
2022/03/25 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第286回 危機管理論が真価を問われるとき その2 を掲載いたしました。
ウクライナでの激闘が続いています。果たしてロシアに勝ち目はあるのでしょうか。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2653
No.278 軍艦の掲げる旗への対応
前回のメールマガジンで、軍艦が国際法上の要件である国籍を示す旗は国旗に準じて扱われるとお伝えしました。
ちなみに、皆様、軍艦の定義をご存じでしょうか?
灰色に塗っているとか大砲を積んでいるとかではありません。
国際法上の軍艦は、a 国籍を示す標識を掲げ、b 海軍士官名簿に名前が記載されている士官によって指揮され、c 規律を守る乗組員によって運航されていることが必要です。
この三要件を満たすため、南極観測の支援に当たっている砕氷艦「しらせ」は日章旗ではなく自衛艦旗を掲げて航行しています。国際法上、「しらせ」は軍艦として扱われます。
軍艦が掲げる旗にどうやって向き合うかということについて前回お伝えしました。国旗と同じ扱いをする必要があるということです。
ただ、前回の説明は分かりにくいというご意見がありました。
そこで、具体的に軍艦旗がどのような扱いを受けているのかを再度説明させていただきます。
ちょうどいいビデオを見つけました。ちょっと長いのですが、解説をしていきますので、ご覧になりながら解説をお読みください。
https://www.youtube.com/watch?v=f0R0eA0LsZc
これは平成28年度に朝霞駐屯地で行われた自衛隊観閲式の様子です。
観閲式というのは、自衛隊の部隊がその最高指揮官である内閣総理大臣に対して、部隊の威容、整備状況などを検してもらうために行う儀式です。
式次第は次の通りです。
全国から代表として選ばれた自衛隊の部隊が整列し、観閲官である内閣総理大臣を出迎えます。
内閣総理大臣が到着すると栄誉礼が行われ、引き続き巡閲が行われます。
この辺の次第は、先に栄誉礼とはなにかについて説明するメールマガジンを配信していますので、バックナンバーでお読みください。
(メールマガジン「指揮官の休日」No.274 栄誉礼 https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=318 )
巡閲に続いて総理から訓示が行われます。
訓示の後、整列した部隊は一度下がり、観閲行進の準備を行います。
これは各部隊が観閲官の前を行進しながら部隊としての敬礼を行うもので、それぞれ固有の装備品を携帯してきます。
観閲式は元々三自衛隊が別々に行っていたのですが、統合運用の観点から合同で行うことになり、朝霞で陸上自衛隊がメインで行うときも、海上自衛隊や航空自衛隊の音楽隊が演奏に参加し、それぞれの部隊が徒歩行進で参加しています。
相模湾で観艦式が行わる時には輸送艦に陸上自衛隊の部隊が乗艦し、海自航空部隊と一緒に航空自衛隊の戦闘機もフライ・バイを行います。
今回ご紹介するビデオは、朝霞での観閲行進の徒歩行進の部分が収録されています。
まず三自衛隊音楽隊が合同で行進してきます。この音楽隊がまず配置につかないと観閲行進ができないからです。
陸海空音楽隊の三人の隊長を先頭に、バンドマスターに率いられた音楽隊員が演奏しながら行進してきます。
2:02 三人の音楽隊長が歩きながら右を向いて敬礼をしています。敬礼をしている先に紅白の垂れ幕で覆われたお立ち台が見えています。
2:05 カメラがちょっと引いて、お立ち台の全容が見えています。この時点ではよく分かりませんが、中央に安倍首相がいて、向かって右のほうに小柄な白いスーツが見えるのは、当時の稲田防衛大臣です。その他各自衛隊幕僚長や事務次官、防衛大学校長などが壇上に上がっています。
お立ち台の前には何本の旗が自衛官によって保持されています。これは総理大臣旗、統合幕僚長旗、各幕僚長旗などです。
4:50 音楽隊が配置につき、まず陸上自衛隊の音楽隊長が指揮を始め、陸上自衛隊の正式行進曲「陸軍分列行進曲」の演奏が始まります。まず最初に観閲官の前を通る受閲部隊指揮官が陸上自衛隊第一師団長であることから、陸上自衛隊の正式行進曲が演奏されるのでしょう。
ちなみにこの曲は、明治18年に鹿鳴館で初演が行われた曲で、当時フランスから招聘されていたシャルル・ルルーという音楽家が作曲したものです。西南戦争最大の激戦であった田原坂の戦いにおいて官軍で編成された抜刀隊の戦いを歌ったものであり、歌詞は「我は官軍、我こそは・・・」と始まる古式ゆかしい曲です。
6:37 受閲部隊指揮官第一師団長が装甲車の車上から「頭、右」の号令をかけて敬礼をします。同時に師団長旗の旗手が師団長旗を前に倒して敬礼します。
これに対して壇上の首相以下が答礼をしているのが映し出されます。
しかし、壇の前で保持されている総理大臣旗をはじめとする各指揮官旗はそのまま直立していることにご注目ください。指揮官旗は答礼をしないのです。
7:07 壇上の首相以下がさらに左の方を見ながら敬礼をしているのと、音楽隊長が演奏は続いているのに指揮をせずに右を見て敬礼しているのが見えます。これは彼の右45度に部隊用国旗である日章旗が旗衛隊に護られて進んできているからです。音楽隊長は受閲部隊指揮官が通るときには指揮を続けていましたが、国旗には敬礼をしています。
同時に、壇の下で保持されていた各指揮官旗が一斉に前に倒されて敬礼をしているのが見えます。指揮官旗は答礼はしませんが、国旗に対しては敬礼をするのです。
7:39 国旗を敬礼で見送っていた音楽隊長が指揮を再開しました。国旗が彼の左45度より向こうに進んだということです。
次に防衛大学校学生隊が観閲行進を行っています。彼らは小銃を保持しています。続いて防衛医科大学校学生隊が行進していますが、さすがに武装はしておらず白いバッグを抱えています。しかし、仕方ないのでしょうが行進がおそろしくへたくそですね。
お医者さんになってからいい思い出になるでしょう。
11:18 高等工科学校が行進しています。もともとは陸上自衛隊少年工科学校として中学を卒業した者を採用して高校教育をしながら陸上自衛隊の中堅を担う人材を養成する学校でしたが、中学を卒業して入隊するため、これを自衛官にすると「日本は少年兵を使っている。」という国際非難を浴びますので、自衛官の定員から外し、卒業してから自衛官に採用される自衛隊員という位置づけになっています。つまり、ここで小銃をもって行進しているのは高校生です。神奈川県立湘南高校通信課程に在学しています。
ここでも、首相以下は答礼はしていますが、指揮官旗は直立したままです。
12:43 壇上の人々が左を向いて答礼をしました。陸上自衛隊部隊の行進が始まり、陸上自衛隊部隊の指揮官が「頭、右」を令したのに対する答礼です。指揮官旗は直立しています。
12:52 陸上自衛隊は指揮官の後ろを幕僚が乗った車両が続き、そのあとに部隊旗が通ります。つまり、部隊旗の前を指揮官が行進しています。
16:57 演奏を指揮している音楽隊長が左手を挙げました。その後、両手を交差させると「陸軍分列行進曲」の演奏が終わり、ドラムだけになり、陸上自衛隊の音楽隊長が指揮の位置を離れました。
17:12 代わりに海上自衛隊の音楽隊長が現れ、指揮を始めます。海上自衛隊部隊の行進が始まるのです。曲は海上自衛隊正式行進曲「軍艦」に代わります。
17:23 指揮官旗が一斉に持ち上げられ、続いて前に倒されて敬礼をします。演奏は続いていますが、音楽隊長も右を向いて敬礼をしています。安倍首相以下も胸に手を当てています。これは海上自衛隊部隊の先頭を自衛艦旗が行進しているからです。
自衛艦旗は国旗として扱われるため、内閣総理大臣といえども敬礼をしなければなりません。したがって指揮官旗も前に倒されて敬礼をしています。
17:35 一人だけ敬礼をしていない稲田防衛大臣が敬礼をするよう促されて胸に手を当てました。彼女は、自衛艦旗が国旗扱いだということを知らないのです。その程度の認識の防衛大臣だったということです。
17:40 自衛艦旗が旗衛隊に護られて首相の前を通りますが、行進している自衛艦旗は倒されていません。つまり答礼もしないのです。最初に通った部隊用国旗である日章旗もそうでしたが、国旗は答礼さえしないのです。
17:51 海上自衛隊部隊の指揮官が首相の前に達しましたが、音楽隊長は演奏の指揮に戻って、指揮官に敬礼はしていません。音楽隊長が演奏中に敬礼をするのは国旗に対してだけなのです。
首相以下は相変わらず胸に手を当てていますが、これは敬礼をしているのではなく、海上自衛隊部隊の敬礼に対して答礼をしていることになります。
以下、同様に航空自衛隊の部隊などの行進が続きます。
ここでボケーッと見ていたのではない方々はお気づきになったかと思いますが、陸・空自衛隊と海上自衛隊の部隊とでは観閲行進のやり方が異なります。
陸・空自衛隊では指揮官が先頭で部隊旗はその後ろを行進しますが、海上自衛隊の行進は常に自衛艦旗が旗衛隊とともに先頭を行進します。
これは自衛艦旗が国旗だからです。
前回のメールマガジンでご紹介した軍艦旗は国旗として扱われるということの意味をご理解いただければ幸いです。
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専門コラム「指揮官の決断」第286回 危機管理論が真価を問われるとき その2 掲載のご案内
当コラムは危機管理の専門コラムとして軸足を組織論・意思決定論において議論を展開しています。そして、これまでリスクマネジメントとクライシスマネジメント(危機管理)は別物と数限りない回数をかけて主張してきました。
このコラムを長い間お読みいただいている方々は「また始まった。」と思われるかと存じますが、そもそも危機管理論とは現在の世界情勢のような状況をいかに回避するかという議論から始まっています。
第2次大戦が終わったのち、世界は平和になったと思う間もなく東西冷戦が始まりました。これが冷戦ではなくホットな戦争になったとき、核兵器が使用されるかもしれず、それは世界の終末を意味するかもしれないということから、そのような事態を何としても避けようとして議論が始まったのが危機管理論です。
以後70年を経て、世界は危機管理論が想定し何とかして回避しようとしてきた事態に直面しています。ロシアの武力侵攻に伴う核による恫喝は世界が歴史上初めて経験する事態です。
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是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
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内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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まず三自衛隊音楽隊が合同で行進してきます。この音楽隊がまず配置につかないと観閲行進ができないからです。
陸海空音楽隊の三人の隊長を先頭に、バンドマスターに率いられた音楽隊員が演奏しながら行進してきます。
2:02 三人の音楽隊長が歩きながら右を向いて敬礼をしています。敬礼をしている先に紅白の垂れ幕で覆われたお立ち台が見えています。
2:05 カメラがちょっと引いて、お立ち台の全容が見えています。この時点ではよく分かりませんが、中央に安倍首相がいて、向かって右のほうに小柄な白いスーツが見えるのは、当時の稲田防衛大臣です。その他各自衛隊幕僚長や事務次官、防衛大学校長などが壇上に上がっています。
お立ち台の前には何本の旗が自衛官によって保持されています。これは総理大臣旗、統合幕僚長旗、各幕僚長旗などです。
4:50 音楽隊が配置につき、まず陸上自衛隊の音楽隊長が指揮を始め、陸上自衛隊の正式行進曲「陸軍分列行進曲」の演奏が始まります。まず最初に観閲官の前を通る受閲部隊指揮官が陸上自衛隊第一師団長であることから、陸上自衛隊の正式行進曲が演奏されるのでしょう。
ちなみにこの曲は、明治18年に鹿鳴館で初演が行われた曲で、当時フランスから招聘されていたシャルル・ルルーという音楽家が作曲したものです。西南戦争最大の激戦であった田原坂の戦いにおいて官軍で編成された抜刀隊の戦いを歌ったものであり、歌詞は「我は官軍、我こそは・・・」と始まる古式ゆかしい曲です。
6:37 受閲部隊指揮官第一師団長が装甲車の車上から「頭、右」の号令をかけて敬礼をします。同時に師団長旗の旗手が師団長旗を前に倒して敬礼します。
これに対して壇上の首相以下が答礼をしているのが映し出されます。
しかし、壇の前で保持されている総理大臣旗をはじめとする各指揮官旗はそのまま直立していることにご注目ください。指揮官旗は答礼をしないのです。
7:07 壇上の首相以下がさらに左の方を見ながら敬礼をしているのと、音楽隊長が演奏は続いているのに指揮をせずに右を見て敬礼しているのが見えます。これは彼の右45度に部隊用国旗である日章旗が旗衛隊に護られて進んできているからです。音楽隊長は受閲部隊指揮官が通るときには指揮を続けていましたが、国旗には敬礼をしています。
同時に、壇の下で保持されていた各指揮官旗が一斉に前に倒されて敬礼をしているのが見えます。指揮官旗は答礼はしませんが、国旗に対しては敬礼をするのです。
7:39 国旗を敬礼で見送っていた音楽隊長が指揮を再開しました。国旗が彼の左45度より向こうに進んだということです。
次に防衛大学校学生隊が観閲行進を行っています。彼らは小銃を保持しています。続いて防衛医科大学校学生隊が行進していますが、さすがに武装はしておらず白いバッグを抱えています。しかし、仕方ないのでしょうが行進がおそろしくへたくそですね。
お医者さんになってからいい思い出になるでしょう。
11:18 高等工科学校が行進しています。もともとは陸上自衛隊少年工科学校として中学を卒業した者を採用して高校教育をしながら陸上自衛隊の中堅を担う人材を養成する学校でしたが、中学を卒業して入隊するため、これを自衛官にすると「日本は少年兵を使っている。」という国際非難を浴びますので、自衛官の定員から外し、卒業してから自衛官に採用される自衛隊員という位置づけになっています。つまり、ここで小銃をもって行進しているのは高校生です。神奈川県立湘南高校通信課程に在学しています。
ここでも、首相以下は答礼はしていますが、指揮官旗は直立したままです。
12:43 壇上の人々が左を向いて答礼をしました。陸上自衛隊部隊の行進が始まり、陸上自衛隊部隊の指揮官が「頭、右」を令したのに対する答礼です。指揮官旗は直立しています。
12:52 陸上自衛隊は指揮官の後ろを幕僚が乗った車両が続き、そのあとに部隊旗が通ります。つまり、部隊旗の前を指揮官が行進しています。
16:57 演奏を指揮している音楽隊長が左手を挙げました。その後、両手を交差させると「陸軍分列行進曲」の演奏が終わり、ドラムだけになり、陸上自衛隊の音楽隊長が指揮の位置を離れました。
17:12 代わりに海上自衛隊の音楽隊長が現れ、指揮を始めます。海上自衛隊部隊の行進が始まるのです。曲は海上自衛隊正式行進曲「軍艦」に代わります。
17:23 指揮官旗が一斉に持ち上げられ、続いて前に倒されて敬礼をします。演奏は続いていますが、音楽隊長も右を向いて敬礼をしています。安倍首相以下も胸に手を当てています。これは海上自衛隊部隊の先頭を自衛艦旗が行進しているからです。
自衛艦旗は国旗として扱われるため、内閣総理大臣といえども敬礼をしなければなりません。したがって指揮官旗も前に倒されて敬礼をしています。
17:35 一人だけ敬礼をしていない稲田防衛大臣が敬礼をするよう促されて胸に手を当てました。彼女は、自衛艦旗が国旗扱いだということを知らないのです。その程度の認識の防衛大臣だったということです。
17:40 自衛艦旗が旗衛隊に護られて首相の前を通りますが、行進している自衛艦旗は倒されていません。つまり答礼もしないのです。最初に通った部隊用国旗である日章旗もそうでしたが、国旗は答礼さえしないのです。
17:51 海上自衛隊部隊の指揮官が首相の前に達しましたが、音楽隊長は演奏の指揮に戻って、指揮官に敬礼はしていません。音楽隊長が演奏中に敬礼をするのは国旗に対してだけなのです。
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以下、同様に航空自衛隊の部隊などの行進が続きます。
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