指揮官の休日 No.277 イージス窟主人の憂い
2022/03/18 (Fri) 06:30
XXXX 様
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第285回 検討使500歩後退 を掲載いたしました。
いろいろ言うけど、結局何もやらずに「検討する。」を繰り返す指導者というのも困ったものです。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2648
No.276 イージス窟主人の困惑
さて、イージス窟主人も困り果てております。
当メールマガジンは基本的にどうでもいいこと、知っていても何の役にも立たないことをグダグダとおしゃべりし、あまりのくだらなさにサッサと専門コラムに飛んで頂こうという趣旨で書き綴ってきております。
しかし、今、東欧ではウクライナの人々が祖国の存立をかけて死に物狂いの闘いを続けており、30年間軍隊に籍を置きながら、只の一度も自分に向けられた実弾の下をくぐらずに退官した筆者が、気楽な戯言などを並べていていいはずはないとの思いもあります。
ウクライナが義勇兵を募っていると知って、老骨に鞭打って応募しようと思ったのですが、日本ではそれが出来ません。その理由は刑法の規定にあります。
刑法第93条に私戦予備及び陰謀罪という罪について規定されています。
93条
外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。
ロシアという外国に対して、防衛出動を命ぜられた現役自衛官でもないのに戦闘行為をする目的で行動したり企んだりしてはならないのです。
義勇軍に参加しようと思っただけでは陰謀をしたことにはならず、構成要件を満たさないので罪にはならないのですが、そもそも日本国内で義勇兵の募集はできず、ウクライナ大使館も受け付けていません。医療関係者のボランティアなどを募集しているようです。
私のような老兵が駆けつけてもウクライナにとっては迷惑かもしれませんが、老兵は老兵なりに悪知恵を持っていますから、何らかのお役には立てるかと思っていたのに残念でした。
ということで、この度のウクライナ戦役に参戦することは取りやめ、ちょっと真面目なお話でもしようかと思っています。
今回の話は国際的には常識なのですが、日本ではほとんど知られていないプロトコールの問題ですので、読んでおくと為になること請け合いです。
読んで役に立つような話はしないというのが建前の当メールマガジンにとっては堕落の第一歩です。
今回皆様に偉そうにお伝えするのは、軍艦旗に対してどう対応すべきかという国際的なエチケットの問題です。
軍艦に限らず船舶は国籍を示す旗を掲げなければなりません。これは筆者の愛艇のような小型ヨットにも適用される法律に規定された規則です。ただし、小型の帆のみ、あるいは櫓や櫂のみによって動く船舶は例外とされています。
日本の船舶は日章旗を掲げることになります。
日章旗を掲げる根拠は「国旗国歌法」ですが、1999年に同法が制定されるまでの根拠は、太政官布告第57号の商船規則でした。
太政官布告ですぞ。それが平成の時代まで生きていたんです。
日本の船は日章旗を掲げることになっています。したがって、昨年手に入れた筆者の相手も船尾に国旗掲揚のためのポールを装備しています。
東京湾を航行したり、横須賀に出入りする護衛艦艦長は要注意です。わが愛艇が船尾の日章旗を半分おろして敬礼しているのを見逃したりしようものなら、たちまち25Wの出力を持つ国際VHF無線で「無礼者!どこを見ておるのか。しっかり見張り員を監督せいっ!」と怒鳴り上げられますぞ!
日本の船舶は日章旗を掲げることになっていますが、海上自衛隊の艦艇のみが日本の船舶でありながら日章旗ではなく旭日旗を掲げています。
これは公海に関する条約や国連海洋法条約などによって認められた制度で、国籍を示す外部標識を掲げることになってはいますが、それが必ずしも国旗と一致していなければならないということになっていないからです。
日本のように国旗とは別の軍艦旗を掲げる国は珍しくはありません。英・豪・加・印・バングラディシュ、南アフリカ、ウクライナなどがそうです。ただし、日本を含めこれらの国は停泊中に艦首に掲げる艦首旗に国旗を使用しています。
一方米海軍は星条旗を軍艦旗として掲げ、停泊中の艦首旗には青地に白い星が51個描かれた旗を用いています。
海上自衛隊の旭日旗は戦前の帝国海軍と同じものを採用しており、これを巡って、韓国が観艦式に海上自衛隊は旭日旗を降ろして入港するように要求してきたことから、海上自衛隊は韓国と友好的な関係を保つことが出来なくなり、その挙句、哨戒機が射撃指揮装置のレーダー波を浴びせかけられるという事件が起きたため、その関係は最悪の状態のままになっています。
海上自衛隊が旭日旗を採用したことについてはあるエピソードが語られています。
戦後、日本の外洋ヨットの黎明期に外洋帆走協会が発足しました。そこの理事に海軍兵学校出身のヨット乗りがいました。
彼は旭日旗が戦後誰にも顧みられることが無くなってしまった事態を憂い、誰か悪意あるものに利用されることがないように外洋帆走協会のクラブ旗として登録してしまったのです。
その後、海上自衛隊が創設され、それ以前に発足していた海上保安庁と同じ旗を掲げるわけにもいかないと独自の旗の図案を一生懸命に考えました。
ある学者に依頼して考案してもらおうということになったのですが、その学者が一生懸命に考えた挙句、旭日旗を超えるデザインは無理であるという結論に至ったそうです。
たしかに自衛艦旗はよく考えてデザインされています。
四角い布の中央に日の丸を描いて周りに後光を描いたものではありません。風にはためいた時にもっとも美しく見えるようにオフセットされたデザインなのです。
この旭日旗を海上自衛隊の艦艇に掲げる旗として登録しようとした際に、すでに日本外洋帆走協会がそのデザインをクラブ旗として登録していたことが分かったのです。
海上自衛隊から外洋帆走協会の理事の海軍兵学校の同期生が使者に立ちました。
その結果、外洋帆走協会としても悪用されるのを防ぐために登録しただけであり、海軍が再建されてそこで使用されるのであれば異存はないということで快く譲ることになったそうですが、しかしヨット乗りの意地もあったのでしょう、旭日旗のデザインを使用する権利だけは留保させろということで、ブルーのペナントの根元に旭日旗をあしらったクラブ旗を作り直しました。
外洋レースのヨット乗りで構成されていた日本外洋帆走協会はその後発展的に解消してディンギー乗りと合同して日本セーリング連盟となり、この旭日旗をあしらったペナントはなくなりましたが、私が若い頃外洋帆走協会の会員だった頃にメンバーとして貰ったネクタイにはそのデザインが刺繍されていました。
ということで、無事に旭日旗は海軍に戻され、海上自衛隊の艦艇の艦尾に掲げられています。
さて、冒頭に偉そうに軍艦旗に対してどう対応すべきかということが国際的なエチケットの問題であると述べている理由について説明しなければなりません。
上述のように、軍艦旗というのはその国籍を示す旗なのです。しかも国を代表する海軍が奉持しています。
つまり、軍艦旗に対しては国旗に対すると同じ対応をしなければなりません。
諸外国の軍人はそのことを熟知していますから、朝霞で行われる観閲式において、陸上自衛隊や航空自衛隊の部隊が行進してくるときには座って見学していますが、海上自衛隊の部隊が行進してくるときは一応に起立して敬礼をしています。
陸上自衛隊や航空自衛隊の部隊の先頭には部隊旗が行進していますが、それは国旗ではないのに対して、海上自衛隊の部隊の先頭には自衛艦旗が進むからです。
観閲官である内閣総理大臣も、受閲部隊指揮官の陸自の将官の敬礼には答礼をしていますが、海上自衛隊の部隊が行進してくると、答礼ではなく先に敬礼の仕草(胸に手を当てる動作)をしています。これは自衛艦旗が国旗であり、内閣総理大臣といえども敬意を表しなければならないからです。
これが国際的なプロトコール上の常識です。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
専門コラム「指揮官の決断」第285回 検討使500歩後退 掲載のご案内
当コラムは危機管理の専門コラムですから、政治や軍事の各論ではなく、広く危機管理論全体について語っていきたいと思っています。なぜなら、この国では危機管理が正しく理解されておらず、リスクマネジメントを危機管理だと誤解している方が多数いるからです。
このことについては当コラムで何度となく指摘してきました。
リスクマネジメントは専門家の仕事です。対象とする範囲が広く、それぞれに専門的な知識経験が無ければならないマネジメントです。
一方の危機管理(クライシスマネジメント)はトップの仕事です。
想定外の事態が生じても踏みとどまり、反撃の機会を見出して事業を躍進していくためには、それなりの覚悟とリーダーシップが必要です。
リスクマネジメントは広範囲でそれぞれの専門家に任せてもいいのでしょうが、クライシスマネジメントはトップの専権事項であり、誰に委任してもなりません。
その違いを理解していないトップには危機管理はできません。
当コラムが岸田首相のトップとしての資質に疑問を投げかけたのは昨年の9月末でした。
https://aegis-cms.co.jp/2648
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
---------------------------------------------------------------------------------------
弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第285回 検討使500歩後退 を掲載いたしました。
いろいろ言うけど、結局何もやらずに「検討する。」を繰り返す指導者というのも困ったものです。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2648
No.276 イージス窟主人の困惑
さて、イージス窟主人も困り果てております。
当メールマガジンは基本的にどうでもいいこと、知っていても何の役にも立たないことをグダグダとおしゃべりし、あまりのくだらなさにサッサと専門コラムに飛んで頂こうという趣旨で書き綴ってきております。
しかし、今、東欧ではウクライナの人々が祖国の存立をかけて死に物狂いの闘いを続けており、30年間軍隊に籍を置きながら、只の一度も自分に向けられた実弾の下をくぐらずに退官した筆者が、気楽な戯言などを並べていていいはずはないとの思いもあります。
ウクライナが義勇兵を募っていると知って、老骨に鞭打って応募しようと思ったのですが、日本ではそれが出来ません。その理由は刑法の規定にあります。
刑法第93条に私戦予備及び陰謀罪という罪について規定されています。
93条
外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。
ロシアという外国に対して、防衛出動を命ぜられた現役自衛官でもないのに戦闘行為をする目的で行動したり企んだりしてはならないのです。
義勇軍に参加しようと思っただけでは陰謀をしたことにはならず、構成要件を満たさないので罪にはならないのですが、そもそも日本国内で義勇兵の募集はできず、ウクライナ大使館も受け付けていません。医療関係者のボランティアなどを募集しているようです。
私のような老兵が駆けつけてもウクライナにとっては迷惑かもしれませんが、老兵は老兵なりに悪知恵を持っていますから、何らかのお役には立てるかと思っていたのに残念でした。
ということで、この度のウクライナ戦役に参戦することは取りやめ、ちょっと真面目なお話でもしようかと思っています。
今回の話は国際的には常識なのですが、日本ではほとんど知られていないプロトコールの問題ですので、読んでおくと為になること請け合いです。
読んで役に立つような話はしないというのが建前の当メールマガジンにとっては堕落の第一歩です。
今回皆様に偉そうにお伝えするのは、軍艦旗に対してどう対応すべきかという国際的なエチケットの問題です。
軍艦に限らず船舶は国籍を示す旗を掲げなければなりません。これは筆者の愛艇のような小型ヨットにも適用される法律に規定された規則です。ただし、小型の帆のみ、あるいは櫓や櫂のみによって動く船舶は例外とされています。
日本の船舶は日章旗を掲げることになります。
日章旗を掲げる根拠は「国旗国歌法」ですが、1999年に同法が制定されるまでの根拠は、太政官布告第57号の商船規則でした。
太政官布告ですぞ。それが平成の時代まで生きていたんです。
日本の船は日章旗を掲げることになっています。したがって、昨年手に入れた筆者の相手も船尾に国旗掲揚のためのポールを装備しています。
東京湾を航行したり、横須賀に出入りする護衛艦艦長は要注意です。わが愛艇が船尾の日章旗を半分おろして敬礼しているのを見逃したりしようものなら、たちまち25Wの出力を持つ国際VHF無線で「無礼者!どこを見ておるのか。しっかり見張り員を監督せいっ!」と怒鳴り上げられますぞ!
日本の船舶は日章旗を掲げることになっていますが、海上自衛隊の艦艇のみが日本の船舶でありながら日章旗ではなく旭日旗を掲げています。
これは公海に関する条約や国連海洋法条約などによって認められた制度で、国籍を示す外部標識を掲げることになってはいますが、それが必ずしも国旗と一致していなければならないということになっていないからです。
日本のように国旗とは別の軍艦旗を掲げる国は珍しくはありません。英・豪・加・印・バングラディシュ、南アフリカ、ウクライナなどがそうです。ただし、日本を含めこれらの国は停泊中に艦首に掲げる艦首旗に国旗を使用しています。
一方米海軍は星条旗を軍艦旗として掲げ、停泊中の艦首旗には青地に白い星が51個描かれた旗を用いています。
海上自衛隊の旭日旗は戦前の帝国海軍と同じものを採用しており、これを巡って、韓国が観艦式に海上自衛隊は旭日旗を降ろして入港するように要求してきたことから、海上自衛隊は韓国と友好的な関係を保つことが出来なくなり、その挙句、哨戒機が射撃指揮装置のレーダー波を浴びせかけられるという事件が起きたため、その関係は最悪の状態のままになっています。
海上自衛隊が旭日旗を採用したことについてはあるエピソードが語られています。
戦後、日本の外洋ヨットの黎明期に外洋帆走協会が発足しました。そこの理事に海軍兵学校出身のヨット乗りがいました。
彼は旭日旗が戦後誰にも顧みられることが無くなってしまった事態を憂い、誰か悪意あるものに利用されることがないように外洋帆走協会のクラブ旗として登録してしまったのです。
その後、海上自衛隊が創設され、それ以前に発足していた海上保安庁と同じ旗を掲げるわけにもいかないと独自の旗の図案を一生懸命に考えました。
ある学者に依頼して考案してもらおうということになったのですが、その学者が一生懸命に考えた挙句、旭日旗を超えるデザインは無理であるという結論に至ったそうです。
たしかに自衛艦旗はよく考えてデザインされています。
四角い布の中央に日の丸を描いて周りに後光を描いたものではありません。風にはためいた時にもっとも美しく見えるようにオフセットされたデザインなのです。
この旭日旗を海上自衛隊の艦艇に掲げる旗として登録しようとした際に、すでに日本外洋帆走協会がそのデザインをクラブ旗として登録していたことが分かったのです。
海上自衛隊から外洋帆走協会の理事の海軍兵学校の同期生が使者に立ちました。
その結果、外洋帆走協会としても悪用されるのを防ぐために登録しただけであり、海軍が再建されてそこで使用されるのであれば異存はないということで快く譲ることになったそうですが、しかしヨット乗りの意地もあったのでしょう、旭日旗のデザインを使用する権利だけは留保させろということで、ブルーのペナントの根元に旭日旗をあしらったクラブ旗を作り直しました。
外洋レースのヨット乗りで構成されていた日本外洋帆走協会はその後発展的に解消してディンギー乗りと合同して日本セーリング連盟となり、この旭日旗をあしらったペナントはなくなりましたが、私が若い頃外洋帆走協会の会員だった頃にメンバーとして貰ったネクタイにはそのデザインが刺繍されていました。
ということで、無事に旭日旗は海軍に戻され、海上自衛隊の艦艇の艦尾に掲げられています。
さて、冒頭に偉そうに軍艦旗に対してどう対応すべきかということが国際的なエチケットの問題であると述べている理由について説明しなければなりません。
上述のように、軍艦旗というのはその国籍を示す旗なのです。しかも国を代表する海軍が奉持しています。
つまり、軍艦旗に対しては国旗に対すると同じ対応をしなければなりません。
諸外国の軍人はそのことを熟知していますから、朝霞で行われる観閲式において、陸上自衛隊や航空自衛隊の部隊が行進してくるときには座って見学していますが、海上自衛隊の部隊が行進してくるときは一応に起立して敬礼をしています。
陸上自衛隊や航空自衛隊の部隊の先頭には部隊旗が行進していますが、それは国旗ではないのに対して、海上自衛隊の部隊の先頭には自衛艦旗が進むからです。
観閲官である内閣総理大臣も、受閲部隊指揮官の陸自の将官の敬礼には答礼をしていますが、海上自衛隊の部隊が行進してくると、答礼ではなく先に敬礼の仕草(胸に手を当てる動作)をしています。これは自衛艦旗が国旗であり、内閣総理大臣といえども敬意を表しなければならないからです。
これが国際的なプロトコール上の常識です。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
専門コラム「指揮官の決断」第285回 検討使500歩後退 掲載のご案内
当コラムは危機管理の専門コラムですから、政治や軍事の各論ではなく、広く危機管理論全体について語っていきたいと思っています。なぜなら、この国では危機管理が正しく理解されておらず、リスクマネジメントを危機管理だと誤解している方が多数いるからです。
このことについては当コラムで何度となく指摘してきました。
リスクマネジメントは専門家の仕事です。対象とする範囲が広く、それぞれに専門的な知識経験が無ければならないマネジメントです。
一方の危機管理(クライシスマネジメント)はトップの仕事です。
想定外の事態が生じても踏みとどまり、反撃の機会を見出して事業を躍進していくためには、それなりの覚悟とリーダーシップが必要です。
リスクマネジメントは広範囲でそれぞれの専門家に任せてもいいのでしょうが、クライシスマネジメントはトップの専権事項であり、誰に委任してもなりません。
その違いを理解していないトップには危機管理はできません。
当コラムが岸田首相のトップとしての資質に疑問を投げかけたのは昨年の9月末でした。
https://aegis-cms.co.jp/2648
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
---------------------------------------------------------------------------------------
弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------