指揮官の休日 No.245 帽振れ
2021/08/06 (Fri) 06:30
XXXX 様
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第253回 専門家という人種:専門ジャーナリストの場合 を掲載いたしました。
コロナ禍を見ていると、様々な専門家の発言が大きな影響力を持つことが分かります。それでは「専門家」とは何なのか、いろいろな角度から考えたいと思います。今回は専門ジャーナリストを取り上げます。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2459
No.245 帽振れ
前回、「指揮権の継承」というタイトルで自衛隊の部隊において指揮官の交代がどのように行われるのかについてご紹介しました。
その中で「帽振れ」という儀式について言及しているのですが、これがどのようなものなのかというお尋ねを頂きました。
この「帽振れ」という儀式は太平洋戦争を舞台にした映画などを観ているとよく出てきます。多いのは特攻機を見送る際に、地上に残る部隊長や整備員たちが帽子を振り回しているシーンです。
この「帽振れ」という儀式は、帝国海軍から行われているお別れのあいさつで、船が出港するときなどで、次にいつ会えるかわからず、少なくとも当分会えないような場合に、見送る側と見送られる側で交わすあいさつです。例えば、洋上で一緒に訓練していた船が、訓練が終わってそれぞれの母港に帰るために部隊編成を解かれて離れていく時などに行われたりします。
そういう性格の挨拶なので、戦闘に向かって出撃する艦を見送る際には行われません。永のお別れになるのではなく、すぐに戻ってくると誓って出ていくからです。特攻の場合などは二度と戻ってこないから「帽振れ」で送ることになります。
この「帽振れ」というあいさつは海上自衛隊でもよく行われます。
毎年、幹部候補生学校を卒業して幹部自衛官に任官した初任幹部を乗せて遠洋練習航海に出る部隊があります。その出航の際には防衛大臣などが見送りに来ますが、出ていく遠洋航海部隊の各艦の舷側に整列した実習幹部は、船が岸壁を離れると艦上から「お見送りありがとうございました。行って参ります。」という意味で「帽振れ」を行って出港していきます。
また、転勤していく者や退職する隊員を送る時などにも行われます。
この挨拶は、被っている制帽を右手で取り、図上高く差し上げてゆっくりと円を描くように回して行います。
帝国海軍がいつからこの挨拶を行っているのか承知していませんが、海上自衛隊は創設期以来ずっと行っています。
海上自衛官は夏服でも冬服でも白いカバーのついた制帽を被っていますので、遠くから見ても白い帽子が一斉に振られるのはきれいです。
ところがこの別れの挨拶を行っているのは海上自衛隊だけで、陸・空自衛隊は行いません。
彼らは最後は拍手をして見送っています。見送られる方はお辞儀をしているようです。
指揮官の交代などで見送る場合は隊員たちは礼装をしており、白い手袋をしているので拍手をしてもあまり音が出ないように思うのですが、いずれにせよ海上自衛隊の「帽振れ」から見ると間が抜けているように思われます。
この「帽振れ」について筆者は特別な思い出を持っています。
2等海佐の時に海上幕僚監部の防衛課で勤務していたことがあります。海上自衛隊の海上防衛政策を担う中枢の幕僚組織です。
この時に防衛庁長官(当時)に斉藤斗志二議員が任命されたことがあります。この国務大臣は我が母校上智大学の出身者でしたが、あまり長い任期ではなく退任されました。
この退任の挨拶において長官がとんでもないことを言い出したのです。
この頃は防衛庁は現在の防衛省がある市ヶ谷に移って間もない頃でした。
市ヶ谷には大講堂がありますが、陸・海・空幕僚監部及び内局の職員全員を収容できるほど大きなものではないので、防衛大臣の離着任などの儀式では各幕の2佐以上が参加することになっていました。
私も海幕勤務の2佐でしたのでこの斉藤大臣の離任挨拶には参列していました。
この離任の挨拶の中で大臣は在任中のいろいろな思い出について語り、その中で一番印象的であったのが、海上自衛隊の遠洋練習航海部隊の出航を晴海で見送った際に行われた「帽振れ」であり、その時の光景は終生忘れることがないであろうと言ってのけたのです。
現在でもそうですが、陸・海・空自衛隊が一堂にそろって何かを行う時は礼式は陸上自衛隊に揃えることになっています。そこで通常の大臣の見送りであれば、一番最後は拍手で見送ることになるのですが、この時は大臣の最後の挨拶が特別でした。
大臣の挨拶が終わり、私たちは大臣の見送りのために庁舎の外に出なければなりません。庁舎前の儀仗広場で大臣は離任時の栄誉礼を受け、見送りの列の前を通って正門に向かうのです。
その見送りのために1階へ下りるエレベーターに乗り込んだところ、目の前に同じ防衛課に勤務する同期生がいました。彼が「聞いたか?」と言ってきたので、「帽振れだろ?」と言うと、彼は「やるしかないな。」と返してきました。そこへ私たちのボスである防衛課長が乗り込んできたので「どうしますか?」と訊くと、課長もそれを考えていたらしく「海自で仕切ってやるしかないだろう。」と言います。
外に出た私たちは見送りの隊員たちが長く並ぶ前を手分けして声をかけて回りました。「皆さんお聞きになったと思いますが、大臣は帽振れを見て感動されたそうです。したがって、私たちも大臣を帽振れで見送りたいと思います。要領は近くにいる海上自衛官が説明しますので、それに従ってください。」
そして陸・空自衛官に「やたらに振り回すのではなく、ゆっくりと円を描くように3回ほど回すこと。」などと教え、「帽振れ」という号令でそれを行うように教えました。
そして、儀仗広場に現れた長官は、儀じょう隊の栄誉礼を受けて参列者の前を通り、正門の前の大きな階段をゆっくり下りていき、送りの車の前で私たちの方を振り返りました。
間髪を入れず、海幕防衛課長の「帽振れ」という号令があがり、総員が一斉に帽振れを行いました。
これは自衛隊史に特記されるべき瞬間です。多分、自衛隊史上初めて統合の「帽振れ」が行われたのです。
終わった後、散会してオフィスに戻る陸上自衛官の後を歩いていると「帽振れというのも案外いいな。」などと言っているのが聞こえました。
筆者に言わせると儀式は海上自衛隊がすべてにおいてスマートなので、全部が海上自衛隊流にやればいいのですが、残念ながら統合幕僚監部が置かれ、統合運用が始まったとき、礼式は陸式で行うことが決められてしまったので、統合部隊による儀式は私たち海上自衛隊OBから見るととんでもなくどんくさいものになってしまいました。
一般の皆様にとっては陸・海・空自衛隊で儀式の行い方が異なるなどは到底ありえないとお考えと拝察いたしますが、実態は挙手の敬礼さえ全然違うんですよ。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
専門コラム「指揮官の決断」第253回 専門家という人種:専門ジャーナリストの場合 掲載のご案内
テレビでは感染者の増加に歯止めがかからないとして第5波だと大騒ぎですが、当コラムとしてはもうこの問題にコメントする気力さえ失いかけています。
確かに検査陽性者数はもの凄い勢いで増えており、その陽性率も20%を超えるようになってきました。しかし、重症化する人数の増加率は遥かに小さく、その人数自体も一番多かった頃が1500人だったのに対して現在はまだ800人に達していません。死亡者に至っては一日最大150人だった頃もあるのに対して現在は10人程度です。2018年のインフルエンザでは毎日60人の方が亡くなっている時に平成最後のお正月などとこの社会は騒いでいたのです。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2459
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
お薦めの書籍
『1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション』 松本順市 著 日経BP
目標による管理がまともに機能している企業が極めて数少ない現在、その矛盾点を見事に突いた本です。
著者の松本氏が人事コンサルタントとして1300社の指導をした実績から炙り出した日本企業への目標管理の適用の矛盾を解決する方法を見事に教えてくれます。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
---------------------------------------------------------------------------------------
弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第253回 専門家という人種:専門ジャーナリストの場合 を掲載いたしました。
コロナ禍を見ていると、様々な専門家の発言が大きな影響力を持つことが分かります。それでは「専門家」とは何なのか、いろいろな角度から考えたいと思います。今回は専門ジャーナリストを取り上げます。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2459
No.245 帽振れ
前回、「指揮権の継承」というタイトルで自衛隊の部隊において指揮官の交代がどのように行われるのかについてご紹介しました。
その中で「帽振れ」という儀式について言及しているのですが、これがどのようなものなのかというお尋ねを頂きました。
この「帽振れ」という儀式は太平洋戦争を舞台にした映画などを観ているとよく出てきます。多いのは特攻機を見送る際に、地上に残る部隊長や整備員たちが帽子を振り回しているシーンです。
この「帽振れ」という儀式は、帝国海軍から行われているお別れのあいさつで、船が出港するときなどで、次にいつ会えるかわからず、少なくとも当分会えないような場合に、見送る側と見送られる側で交わすあいさつです。例えば、洋上で一緒に訓練していた船が、訓練が終わってそれぞれの母港に帰るために部隊編成を解かれて離れていく時などに行われたりします。
そういう性格の挨拶なので、戦闘に向かって出撃する艦を見送る際には行われません。永のお別れになるのではなく、すぐに戻ってくると誓って出ていくからです。特攻の場合などは二度と戻ってこないから「帽振れ」で送ることになります。
この「帽振れ」というあいさつは海上自衛隊でもよく行われます。
毎年、幹部候補生学校を卒業して幹部自衛官に任官した初任幹部を乗せて遠洋練習航海に出る部隊があります。その出航の際には防衛大臣などが見送りに来ますが、出ていく遠洋航海部隊の各艦の舷側に整列した実習幹部は、船が岸壁を離れると艦上から「お見送りありがとうございました。行って参ります。」という意味で「帽振れ」を行って出港していきます。
また、転勤していく者や退職する隊員を送る時などにも行われます。
この挨拶は、被っている制帽を右手で取り、図上高く差し上げてゆっくりと円を描くように回して行います。
帝国海軍がいつからこの挨拶を行っているのか承知していませんが、海上自衛隊は創設期以来ずっと行っています。
海上自衛官は夏服でも冬服でも白いカバーのついた制帽を被っていますので、遠くから見ても白い帽子が一斉に振られるのはきれいです。
ところがこの別れの挨拶を行っているのは海上自衛隊だけで、陸・空自衛隊は行いません。
彼らは最後は拍手をして見送っています。見送られる方はお辞儀をしているようです。
指揮官の交代などで見送る場合は隊員たちは礼装をしており、白い手袋をしているので拍手をしてもあまり音が出ないように思うのですが、いずれにせよ海上自衛隊の「帽振れ」から見ると間が抜けているように思われます。
この「帽振れ」について筆者は特別な思い出を持っています。
2等海佐の時に海上幕僚監部の防衛課で勤務していたことがあります。海上自衛隊の海上防衛政策を担う中枢の幕僚組織です。
この時に防衛庁長官(当時)に斉藤斗志二議員が任命されたことがあります。この国務大臣は我が母校上智大学の出身者でしたが、あまり長い任期ではなく退任されました。
この退任の挨拶において長官がとんでもないことを言い出したのです。
この頃は防衛庁は現在の防衛省がある市ヶ谷に移って間もない頃でした。
市ヶ谷には大講堂がありますが、陸・海・空幕僚監部及び内局の職員全員を収容できるほど大きなものではないので、防衛大臣の離着任などの儀式では各幕の2佐以上が参加することになっていました。
私も海幕勤務の2佐でしたのでこの斉藤大臣の離任挨拶には参列していました。
この離任の挨拶の中で大臣は在任中のいろいろな思い出について語り、その中で一番印象的であったのが、海上自衛隊の遠洋練習航海部隊の出航を晴海で見送った際に行われた「帽振れ」であり、その時の光景は終生忘れることがないであろうと言ってのけたのです。
現在でもそうですが、陸・海・空自衛隊が一堂にそろって何かを行う時は礼式は陸上自衛隊に揃えることになっています。そこで通常の大臣の見送りであれば、一番最後は拍手で見送ることになるのですが、この時は大臣の最後の挨拶が特別でした。
大臣の挨拶が終わり、私たちは大臣の見送りのために庁舎の外に出なければなりません。庁舎前の儀仗広場で大臣は離任時の栄誉礼を受け、見送りの列の前を通って正門に向かうのです。
その見送りのために1階へ下りるエレベーターに乗り込んだところ、目の前に同じ防衛課に勤務する同期生がいました。彼が「聞いたか?」と言ってきたので、「帽振れだろ?」と言うと、彼は「やるしかないな。」と返してきました。そこへ私たちのボスである防衛課長が乗り込んできたので「どうしますか?」と訊くと、課長もそれを考えていたらしく「海自で仕切ってやるしかないだろう。」と言います。
外に出た私たちは見送りの隊員たちが長く並ぶ前を手分けして声をかけて回りました。「皆さんお聞きになったと思いますが、大臣は帽振れを見て感動されたそうです。したがって、私たちも大臣を帽振れで見送りたいと思います。要領は近くにいる海上自衛官が説明しますので、それに従ってください。」
そして陸・空自衛官に「やたらに振り回すのではなく、ゆっくりと円を描くように3回ほど回すこと。」などと教え、「帽振れ」という号令でそれを行うように教えました。
そして、儀仗広場に現れた長官は、儀じょう隊の栄誉礼を受けて参列者の前を通り、正門の前の大きな階段をゆっくり下りていき、送りの車の前で私たちの方を振り返りました。
間髪を入れず、海幕防衛課長の「帽振れ」という号令があがり、総員が一斉に帽振れを行いました。
これは自衛隊史に特記されるべき瞬間です。多分、自衛隊史上初めて統合の「帽振れ」が行われたのです。
終わった後、散会してオフィスに戻る陸上自衛官の後を歩いていると「帽振れというのも案外いいな。」などと言っているのが聞こえました。
筆者に言わせると儀式は海上自衛隊がすべてにおいてスマートなので、全部が海上自衛隊流にやればいいのですが、残念ながら統合幕僚監部が置かれ、統合運用が始まったとき、礼式は陸式で行うことが決められてしまったので、統合部隊による儀式は私たち海上自衛隊OBから見るととんでもなくどんくさいものになってしまいました。
一般の皆様にとっては陸・海・空自衛隊で儀式の行い方が異なるなどは到底ありえないとお考えと拝察いたしますが、実態は挙手の敬礼さえ全然違うんですよ。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
専門コラム「指揮官の決断」第253回 専門家という人種:専門ジャーナリストの場合 掲載のご案内
テレビでは感染者の増加に歯止めがかからないとして第5波だと大騒ぎですが、当コラムとしてはもうこの問題にコメントする気力さえ失いかけています。
確かに検査陽性者数はもの凄い勢いで増えており、その陽性率も20%を超えるようになってきました。しかし、重症化する人数の増加率は遥かに小さく、その人数自体も一番多かった頃が1500人だったのに対して現在はまだ800人に達していません。死亡者に至っては一日最大150人だった頃もあるのに対して現在は10人程度です。2018年のインフルエンザでは毎日60人の方が亡くなっている時に平成最後のお正月などとこの社会は騒いでいたのです。
詳しくはこちらをお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2459
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
お薦めの書籍
『1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション』 松本順市 著 日経BP
目標による管理がまともに機能している企業が極めて数少ない現在、その矛盾点を見事に突いた本です。
著者の松本氏が人事コンサルタントとして1300社の指導をした実績から炙り出した日本企業への目標管理の適用の矛盾を解決する方法を見事に教えてくれます。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
---------------------------------------------------------------------------------------
弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------