指揮官の休日 No.199 トップの命令に反抗する組織
2020/09/18 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第207回 メディアの終焉 その2 を掲載いたしました。
新聞は言葉を知らないと述べたところ、それはたまたまだろうという指摘を頂きましたので、その他の事例を取り上げ、必ずしもたまたま誤記載があったということではなく、いろいろな場面で見受けられることであることに言及しています。
https://aegis-cms.co.jp/2157
No.199 トップの命令に反抗する組織
私は海上自衛隊に約30年間勤務しました。その間、広島県の呉市で勤務したことが2回あります。そもそも入隊して最初に行ったのが海上自衛隊幹部候補生学校で、それは呉市の対岸の江田島にありました。
海上自衛隊に入隊する前にも呉には2回住んだことがあります。父が海上自衛官で、呉と横須賀の勤務が多かったためです。1回目はまだ1歳の頃で、2回目は小学校の4年生の頃でした。その時は7か月くらいしかおらず、横須賀の小学校に転校したのですが、6年生になったときに江田島の小学校に転校して、呉がまた近くなりました。その後、横浜市内の全寮制(当時)の中学に入学したのですが、夏休みや冬休みには江田島に帰省し、呉にもよく買い物などに出かけていました。幼い頃に住んでいたので、広島弁も使うことができました。
この広島弁が役に立ったことがあることをすでにこのメールマガジンでお届けしています。(メールマガジン「指揮官の休日」No.157 方言について https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=192) )
それだけ馴染みのある街なのに、入隊後は船で入港することはあっても勤務することが長らくありませんでしたが、海上自衛隊生活の最後の方で2回続けて呉での勤務を命ぜられました。
最初は呉地方総監部の経理部長で、年間1200億円程度の予算を執行する支出負担行為担当官でした。自分の小遣い帳も満足に付けられないのに、いきなり経験したことのない経理の仕事などを命ぜられて戸惑いましたが、もっと面喰ったのは、その配置の後に、同じく呉地方総監隷下の造修補給所長を命ぜられたことでした。
呉造修補給所というのは、呉を母港とする艦艇及び呉警備区を航行する艦艇に対する補給支援と整備を行うことが主任務で、その他、呉警備区所在の陸上部隊に対する補給を一定に引き受けています。警備区は神戸から西側の九州東岸に至る瀬戸内海及び四国一帯でした。
呉には潜水艦の基地があり、練習艦隊という実習幹部を乗せて遠洋航海を専門的に行う部隊があったり、国際緊急援助などで飛び出さなければならない輸送艦の部隊などもあり、これらの船の整備には相当気を使わねばなりませんでした。
造修補給所は海上自衛隊の5つの警備区にはそれぞれあるのですが、呉の特色は隷下に貯油所という燃料貯蔵施設を持っていることでした。10万キロリットル弱の貯油施設であり、海上自衛隊が平時に保有する燃料の約半分を在庫しています。10万キロ弱なのは、10万キロを超えるとコンビナート扱いで面倒な法律に縛られることになるからです。
しかし、この燃料施設が火災になったり、テロリストに狙われたりすると大変なことになりますので、防火訓練や対テロ訓練などにやたらと気を使わねばならない部隊でした。
私はその所長になるまでに造修補給所の勤務経験がなく、したがってその実務を知りませんでした。
ところが、それ以前に私は海上幕僚監部で監査官をしていたことがありました。
全国の海上自衛隊の部隊の監査を行っていたので、各地の造修補給所にも何度も出張して監査を行っていましたので、呉造修補給所についてもある程度実態を知っていました。
それは必ずしも芳しいものではありませんでした。
つまり、艦隊からの評判があまり良くなかったのです。
官僚的であるとか、極めて事務的である、仕事が遅い、などという評価をいたるところで聴いていました。
監査を行ってみると、手続きや予算執行の問題は発見されないのですが、どうも艦隊乗員の評判が悪すぎるのです。
これはつまり、造修補給所が規則を表に出して、予算がついていない事業を行うことしない傾向があり、業務が硬直化しているということです。
私はこの造修補給所長への異動の内示を受けて、ある覚悟を決めました。
造修補給の実務は知りませんが、監査官の経験を持っていますので、何が違法で何をやってはならないかは熟知していました。海幕防衛課のスタッフも経験して、海上自衛隊の海上防衛政策立案にも参加し、内局へ出向して防衛省の考え方も理解していました。
つまり、実務は知らないけれど、造修補給所が何をすべきであり、何をやってはならないかは心得ていました。
そこで、私は「艦隊の要求にはノーと言わない造修補給所にする。」ことを第一に掲げることにしたのです。
なぜなら、造修補給所の任務は艦隊が全力発揮できるように支援することだからです。造修補給所が淡々と業務を遂行できれば艦隊のニーズが満たされなくてもいいということにはなりません。最前線で血みどろになる彼らを支援するために造修補給所が血みどろになるのは当然のことなのです。
そして着任の日、指揮官の交代を終えて退官する前任者の見送りを行った後、集合した全職員を前に訓示を行いました。
新着任の指揮官としての所信を伝えるためです。
その中で私はまず最初に「艦隊の要求にノーと言ってはならない。」と述べました。
集合した総員は「素人の所長が何を言い出すんだ?」と思ったことでしょう。
しかし、私が何故そう考えるに至ったかということを訓示の中で説明するとだんだんに分かってくれたようです。
もともと私は総監部経理部長として、造修補給所本部のすぐ隣の建物で勤務しており、造修補給所が使う予算の弾力的な執行については最大限の協力をしていたので、造修補給所員には馴染みがありました。私自身も造修補給所の各部によく出かけて話を聞いたり、彼らが自分たちのやりたい事業についての予算の相談に来たりすることも珍しくはありませんでした。
訓示を終えて解散させ、所長室に入って引継ぎの資料などを読んでいると、資材部長がニヤニヤしながら入ってきました。
資材部長は自衛官ではなく防衛省事務官であり、私よりは年上でしたがかつて私が海幕の監査官として勤務していた時の部下でした。実務をよく知っているベテラン事務官で、補給の実務を知らない私にとっては頼りにしなければならない人物です。
彼は地元出身で、呉地方隊を定年前の最後の勤務地として選び、ちょうどその時に資材部長の配置にいたのです。
ニヤニヤしている資材部長が言うことに「艦隊の要求にノーと言うなと言っても、それは無理ですよ。」
私が所長の指導方針にいきなり反論してくるとは何事だと思って眉をしかめると「まぁ、怒りんさんな。ワシら呉のモンは、ノーと言うなと言われても困るんじゃけん。のう言うのはワシらの口癖じゃけんのう。」
私は思わず吹き出してしまいました。
そして言いました。
「そりゃ済まんかったのう。ちいとも気が付かんじゃった。勘弁してくれんかのう。じゃけど、なんとかワシの願いを叶えてくれんかのう?」
資材部長は「もういい、もういい」という顔をして笑いながら部屋を出て行きました。
先に言いましたよね。私は呉弁が使えるんです。
シリアスな書き出しでしたが、どうでもいい内容の駄文を書き綴るという当メールマガジンの面目をギリギリ最後でかろうじて保てました。
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とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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ください
専門コラム「指揮官の決断」第207回 メディアの終焉 その2 掲載のご案内
前回、当コラムでは新聞を取り上げ、言葉を扱うメディアであるにもかかわらず、その
言葉をよく知らない記者と編集者ばかりであることを指摘しました。
それはたまたまだろうとおっしゃる方もおられますので、もう少し具体例を挙げてみます。
毎年夏になると各紙は終戦特集を組みます。今年は戦後75年ということで、各紙も力を入
れていろいろな方々の証言をとっていました。このような取り組みは極めて重要で、戦争
を経験した人がだんだん少なくなっていく現在、その方々の証言をしっかりと集めておか
ないと歴史を振り返ることができなくなるので、メディア中心に頑張って頂きたいと思って
います。
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お勧めのコラム
このコーナーに時々登場する高橋雅美さんのコラムです。
臨床心理士の資格を持つメンタルヘルス専門のコンサルタントの方ですが、アフターコロナ
における従業員のメンタルの変化について警鐘を鳴らされています。
アフターコロナにおいて社会が大きく変わるであろうことを認識している経営者は多いので
すが、しかし変わるのは社会やクライアントだけではなく、勤務形態が変わってくる従業員の
メンタルにも変化が現れるはずだということで、経営者はその小さな兆候を見逃してはならな
いと説かれています。
勤務形態が変わらなくとも、従業員を取り巻く環境が変わればメンタルにも変化が現れるは
ずなので、その僅かな兆候を見逃してはならないという指摘は傾聴すべきでしょう。
「アクティブメンタル流 伸びる会社の社員と組織の育て方」
第175話: コロナ渦における社員の「心の変化」を未来の経営に活かす視点
https://cocotia.co.jp/column/communication/activemental175
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
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No.199 トップの命令に反抗する組織
私は海上自衛隊に約30年間勤務しました。その間、広島県の呉市で勤務したことが2回あります。そもそも入隊して最初に行ったのが海上自衛隊幹部候補生学校で、それは呉市の対岸の江田島にありました。
海上自衛隊に入隊する前にも呉には2回住んだことがあります。父が海上自衛官で、呉と横須賀の勤務が多かったためです。1回目はまだ1歳の頃で、2回目は小学校の4年生の頃でした。その時は7か月くらいしかおらず、横須賀の小学校に転校したのですが、6年生になったときに江田島の小学校に転校して、呉がまた近くなりました。その後、横浜市内の全寮制(当時)の中学に入学したのですが、夏休みや冬休みには江田島に帰省し、呉にもよく買い物などに出かけていました。幼い頃に住んでいたので、広島弁も使うことができました。
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それだけ馴染みのある街なのに、入隊後は船で入港することはあっても勤務することが長らくありませんでしたが、海上自衛隊生活の最後の方で2回続けて呉での勤務を命ぜられました。
最初は呉地方総監部の経理部長で、年間1200億円程度の予算を執行する支出負担行為担当官でした。自分の小遣い帳も満足に付けられないのに、いきなり経験したことのない経理の仕事などを命ぜられて戸惑いましたが、もっと面喰ったのは、その配置の後に、同じく呉地方総監隷下の造修補給所長を命ぜられたことでした。
呉造修補給所というのは、呉を母港とする艦艇及び呉警備区を航行する艦艇に対する補給支援と整備を行うことが主任務で、その他、呉警備区所在の陸上部隊に対する補給を一定に引き受けています。警備区は神戸から西側の九州東岸に至る瀬戸内海及び四国一帯でした。
呉には潜水艦の基地があり、練習艦隊という実習幹部を乗せて遠洋航海を専門的に行う部隊があったり、国際緊急援助などで飛び出さなければならない輸送艦の部隊などもあり、これらの船の整備には相当気を使わねばなりませんでした。
造修補給所は海上自衛隊の5つの警備区にはそれぞれあるのですが、呉の特色は隷下に貯油所という燃料貯蔵施設を持っていることでした。10万キロリットル弱の貯油施設であり、海上自衛隊が平時に保有する燃料の約半分を在庫しています。10万キロ弱なのは、10万キロを超えるとコンビナート扱いで面倒な法律に縛られることになるからです。
しかし、この燃料施設が火災になったり、テロリストに狙われたりすると大変なことになりますので、防火訓練や対テロ訓練などにやたらと気を使わねばならない部隊でした。
私はその所長になるまでに造修補給所の勤務経験がなく、したがってその実務を知りませんでした。
ところが、それ以前に私は海上幕僚監部で監査官をしていたことがありました。
全国の海上自衛隊の部隊の監査を行っていたので、各地の造修補給所にも何度も出張して監査を行っていましたので、呉造修補給所についてもある程度実態を知っていました。
それは必ずしも芳しいものではありませんでした。
つまり、艦隊からの評判があまり良くなかったのです。
官僚的であるとか、極めて事務的である、仕事が遅い、などという評価をいたるところで聴いていました。
監査を行ってみると、手続きや予算執行の問題は発見されないのですが、どうも艦隊乗員の評判が悪すぎるのです。
これはつまり、造修補給所が規則を表に出して、予算がついていない事業を行うことしない傾向があり、業務が硬直化しているということです。
私はこの造修補給所長への異動の内示を受けて、ある覚悟を決めました。
造修補給の実務は知りませんが、監査官の経験を持っていますので、何が違法で何をやってはならないかは熟知していました。海幕防衛課のスタッフも経験して、海上自衛隊の海上防衛政策立案にも参加し、内局へ出向して防衛省の考え方も理解していました。
つまり、実務は知らないけれど、造修補給所が何をすべきであり、何をやってはならないかは心得ていました。
そこで、私は「艦隊の要求にはノーと言わない造修補給所にする。」ことを第一に掲げることにしたのです。
なぜなら、造修補給所の任務は艦隊が全力発揮できるように支援することだからです。造修補給所が淡々と業務を遂行できれば艦隊のニーズが満たされなくてもいいということにはなりません。最前線で血みどろになる彼らを支援するために造修補給所が血みどろになるのは当然のことなのです。
そして着任の日、指揮官の交代を終えて退官する前任者の見送りを行った後、集合した全職員を前に訓示を行いました。
新着任の指揮官としての所信を伝えるためです。
その中で私はまず最初に「艦隊の要求にノーと言ってはならない。」と述べました。
集合した総員は「素人の所長が何を言い出すんだ?」と思ったことでしょう。
しかし、私が何故そう考えるに至ったかということを訓示の中で説明するとだんだんに分かってくれたようです。
もともと私は総監部経理部長として、造修補給所本部のすぐ隣の建物で勤務しており、造修補給所が使う予算の弾力的な執行については最大限の協力をしていたので、造修補給所員には馴染みがありました。私自身も造修補給所の各部によく出かけて話を聞いたり、彼らが自分たちのやりたい事業についての予算の相談に来たりすることも珍しくはありませんでした。
訓示を終えて解散させ、所長室に入って引継ぎの資料などを読んでいると、資材部長がニヤニヤしながら入ってきました。
資材部長は自衛官ではなく防衛省事務官であり、私よりは年上でしたがかつて私が海幕の監査官として勤務していた時の部下でした。実務をよく知っているベテラン事務官で、補給の実務を知らない私にとっては頼りにしなければならない人物です。
彼は地元出身で、呉地方隊を定年前の最後の勤務地として選び、ちょうどその時に資材部長の配置にいたのです。
ニヤニヤしている資材部長が言うことに「艦隊の要求にノーと言うなと言っても、それは無理ですよ。」
私が所長の指導方針にいきなり反論してくるとは何事だと思って眉をしかめると「まぁ、怒りんさんな。ワシら呉のモンは、ノーと言うなと言われても困るんじゃけん。のう言うのはワシらの口癖じゃけんのう。」
私は思わず吹き出してしまいました。
そして言いました。
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すが、しかし変わるのは社会やクライアントだけではなく、勤務形態が変わってくる従業員の
メンタルにも変化が現れるはずだということで、経営者はその小さな兆候を見逃してはならな
いと説かれています。
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ずなので、その僅かな兆候を見逃してはならないという指摘は傾聴すべきでしょう。
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