指揮官の休日 No.195 I`m going to the head.
2020/08/21 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第203回 『不都合な真実』その2 を掲載いたしました。
マスコミや医学者にとって不都合な真実は何か、この国の医療を崩壊させようとするテロ行為にも等しい彼らの現実について考えています。
詳しくはこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2132?_thumbnail_id=2134
No.195 I`m going to the head.
さて、私はどこへ行こうとしているのでしょうか?
最近、米国のドラマを観ていたときに、面白い吹き替えを見つけました。
ニューヨーク市警を舞台にしたドラマで、二か国語放送なので、ニューヨーク訛りをどこまで聞き取れるのか試してやろうと思い、音声を英語に切り替えて観ていました。
男性の警官と女性の警官が署内のカフェテリアでコーヒーを飲みながら議論をしているシーンでした。だんだん女性の方がエキサイトしてきて議論が白熱してきているようでした。すると突然、女性警官が立ち上がり、椅子を蹴とばすとどこかへ行こうとしました。相手の男性の警察官が「何処へ行くんだ?」と聞いたのに対して彼女が答えたのが今日のタイトルです。
観ていた私は「ホォッ」と思いました。そして、吹き替えではどう訳しているのか知りたくなって、日本語に切り替えてその場面を観なおしました。教材用に二か国語で録画していたのです。
案の定、吹き替えは見事な誤訳でした。その間違い方が傑作なんです。喧嘩別れになったシーンだったので、何と「本当に頭にきちゃう!」と訳されたのでした。I`m going なので、「来ちゃう」じゃなくて「行っちゃう」のほうが正しいようにも思えるのですが、訳者は苦労したんでしょう。
これは「トイレに行ってくる。」と訳すのが正解です。
私が「ホォッ」と思ったのは、彼女が警察官なのにトイレをヘッドと呼んだからです。船乗りやヨット乗りはトイレをヘッドと呼ぶのですが、それ以外の人々がヘッドと呼ぶのを初めて聞きました。
船乗りの用語はちょっと特殊なのですが、それが日常にも使われることがあるので、話をしていると「はぁ、この人は海軍出身だな」などと分ることがあります。床をフロアと呼ばずにデッキと呼んだら間違いなくその人は船乗りです。手回り品は空港では「baggage」ですが、船乗りは「 dunnage」と言います。したがって、” Leave your dunnage on the deck”(荷物を床に置いて行け)と言ったら、まず船乗りか海軍出身であると思っていいでしょう。
船でトイレをヘッドと呼ぶのには理由があります。船内に水洗の設備がなかった帆船時代、水兵や平水夫は用を足すときに、船の一番前に行ったからです。船の後部は船長以下の高級船員用の居住区で水兵や平水夫は立ち入りが禁止されていました。その頃の船は船の最前部にバウスプリットという柱を前に突き出していて、その先端と一番前にあるマストのトップを結ぶワイヤーやロープを使って前部の三角帆を張っていました。そのバウスプリットの根元に穴をあけ、そこから用を足していたのです。つまり船の一番前にトイレがあったのでヘッドと呼ばれるようになったということです。
日本語でも「便所に行く」という表現は通常使わず、「化粧室へ行く」「手を洗いに行く」などと言いかえるのが普通ですが、英語でも” I`m going to the toilet” という言い方は避けて" wash up” などと言いかえるのが普通です。その点、I`m going to the head と言う表現はマナー違反でもなく、私などが使うのにはいい言い方だと思っています。
カリフォルニアで米国企業のCEOをしていた時、ゴルフのシャフトを扱っていたためカールスバッドという全米のゴルフメーカーの多くが所在している街に私たちのオフィスもありました。そこに、よく遊びに来るあるメーカーの役員がいました。
私が着任したのを知って、早速どんな奴か見てやろうと思ったらしく、着任して3日後くらいにオフィスにやってきました。
初対面の挨拶をしたのち、シャフトを在庫している倉庫を見せてくれないかと言うので案内することにしました。一通り在庫を見せて、新製品なども説明したりして応接室に戻る際に、彼がいきなり” Where is the head ?”と訊いてきたので、反対側の壁を指さして” Open the door, and on your right.” (ドアを開けたら右にあるよ。)と教えてやったら、ニコッと笑ってそちらへ行きました。ちょっとすると戻ってきて、「どうもお前さんは商売人らしくないと思ったけど、ここへ来る前は何をやってたんだ?」と訊いてきました。
さすがに年季の入った経営者だけあって、こっちがビジネスには素人なのを見破られたか?と思ったのですが、「何でそんなことを訊くんだ?」と尋ねると「だって、ヘッドと言って分かる日本人はそういないぜ。」という返答でした。日本相手のビジネスには相当経験があるようでした。
「実は30年間海軍にいて、ビジネスは初めてだ。」と答えると、彼はとてもうれしそうな顔をしました。大学でROTC(Reserve Officer Training Corp 予備士官養成課程)の単位を取り、卒業後海軍に入って6年後、大尉で除隊してビジネスの世界に入ったのだそうです。
米国のビジネスマンにはそのような経歴を持っている人物は別に珍しくありません。そういう連中と会うと同じ軍歴を持ったものとして親しみを持って接してくれるのでうれしかったです。
ただ、皆様にこの表現はあまりお勧めしません。相手に船乗り出身だと思い込まれて、話がそのモードに切り替わってしまいます。そしてついていけなくなってお里が知れてしまったら、逆に疎んじられることになります。海や船の話で盛り上がることのできる方にのみお勧めします。
一般にトイレに行くという時、どう言えばマナー違反にならないかというのはそれほど面倒でもありません。個人のお宅なら bathroom でいいですし、公共施設などなら restroom で問題はありません。女性ならladies roomもお勧めです。
駐在員などがちょっと慣れてくるとThe LooとかThe Johnなどという表現を使いたがるのですが、このような極めて口語的な表現は避けた方がいいかもしれません。
かつて、都内のホテルで駐日米国大使をお招きしてのレセプションがあり、私も何の因果かそこに参加したことがあります。大使を取り囲んだ30代から40代の商社マンが、駐在経験で得た達者な英語で話をしているのを傍で聞いていたのですが、彼らがしきりに” Yah,” を連発するのでとても気になりました。
私は海上自衛隊の制服を着用していましたので、大使と話をするときには” Yes, sir “ ですらなく、” Yes,Mr.Ambassador”(ハイ、大使閣下)と受け答えをしていたのですが、社交上は私の表現が正しく、特命全権大使は「閣下」と呼ばれるのが普通であり、30代の若造が「うん、そうだね。」などと相槌を打っていい相手ではありません。
たまたまその商社の部長(日本有数の商社の一つで、その部長はその後役員となり、最後は米国の子会社の社長として辣腕を振るわれました。)が目の前に現れたので、「あいつらに”Yah”とか言うのをやめさせないとおたくの教育が疑われるぞ。」と注意したら、さすがに部長は理解したようで顔色を変えて飛んでいきました。
昔と違って現在の駐在員たちは米国での社交生活をほとんど経験しません。家族ぐるみの付き合いもなく、駐在員同士の付き合いがほとんどのようです。子供を地元の学校に通わせたりしていると地域の付き合いにいやでも参加することになりますが、カリフォルニアで勤務していた時に知り合った駐在員たちはほとんどが単身赴任で、私が夫婦で来ていると言うと珍しがられたものです。
若い駐在員たちがたまに街のオネエサンたちとしゃべって覚えた表現をそのまま使うので困ったものです。
私が特殊な社会出身で、かつ年寄りで英会話を習ったのが大昔だからということではありません。米国でも軍歴のある私より若いビジネスエクゼクティブは、私が退役海軍少将であることを知ると” Sir “をつけて話をするようになります。その会社の社員たちも当然そうなります。
米国は日本ほど平等な社会ではないので、そのような社会的な階級が重視されます。
一方で、Sirとか言わずにファーストネームで呼んでくれと言うと急に態度が変わります。そのような社会であることを商社の駐在員くらいの経験では理解できないかもしれません。
生兵法は大けがのもとだと自らを戒める経験でした。
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専門コラム「指揮官の決断」203回 『不都合な真実』その2 掲載のご案内
タイトルに用いた画像をよくご覧ください。
これはある医師がツイッターに投稿した記事に添付された画像です。
このコメントには「真夏の北半球でコロナが急増している先進国は、トランプを支持する米国の一部と日本くらいです。」とあります。
「先進国では米国の一部と」というのはどういう意味なのかよく分かりませんが、要するにヨーロッパ各国では終息に向かっているこの夏に米国と日本だけは感染が急増しているということが示されています。
このツイートしたのは上昌広という医師で、国会の公聴会などでも公述人として質疑に応じているところが中継されたことがあります。経歴は申し分なく、東京大学の医学部を卒業し、同大学院で勉強もしていて、同大学の医科学研究所の教授としても勤務されていました。ご専門はメディカルネットワーク論、医療ガバナンス論ということで、現在は特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を勤められています。医療ガバナンスというのは、まだまだ研究が進んでいない領域なので、その先駆者とも言えるかもしれません。
詳しくはこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/2132
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お勧めのコラム
日本コンサルティング推進機構のコンサルタント仲間である吉澤由美子さんの最新コラムです。
テレワークになかなか踏み切れない経営者向けのコラムなのですが、ここで彼女は極めて重要なことを書き綴っています。
業務を数字を用いて言語化することの重要性です。
私は常に根拠を示すことを重要視し、かつての職業でも部下に常にそれを求め続け、私自身も上司への説明には根拠を持ってあたっていました。その根拠には二種類ありました。数字と規則です。
数字化することにより、あいまいであったものがハッキリと見え、また、無駄も分かると言い切っています。これは彼女がしっかりとした実務経験をもっていることを示しており、コンサルタントとして十分な資質があることを証明するものです。
コンサルタントの中には、勤めているのが上手くいかずに独立して開業するコンサルタントが多いのですが、吉澤さんは相当な実績をもって開業したことをうかがわせるコラムを数多く掲載されています。是非、そのウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
脱!お願い営業への道」
テレワークが苦手?上手くいくコツと作業効率アップの秘訣とは
2020年8月18日 応援コラム
http://www.hc-bm.com/column/6170.html
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
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観ていた私は「ホォッ」と思いました。そして、吹き替えではどう訳しているのか知りたくなって、日本語に切り替えてその場面を観なおしました。教材用に二か国語で録画していたのです。
案の定、吹き替えは見事な誤訳でした。その間違い方が傑作なんです。喧嘩別れになったシーンだったので、何と「本当に頭にきちゃう!」と訳されたのでした。I`m going なので、「来ちゃう」じゃなくて「行っちゃう」のほうが正しいようにも思えるのですが、訳者は苦労したんでしょう。
これは「トイレに行ってくる。」と訳すのが正解です。
私が「ホォッ」と思ったのは、彼女が警察官なのにトイレをヘッドと呼んだからです。船乗りやヨット乗りはトイレをヘッドと呼ぶのですが、それ以外の人々がヘッドと呼ぶのを初めて聞きました。
船乗りの用語はちょっと特殊なのですが、それが日常にも使われることがあるので、話をしていると「はぁ、この人は海軍出身だな」などと分ることがあります。床をフロアと呼ばずにデッキと呼んだら間違いなくその人は船乗りです。手回り品は空港では「baggage」ですが、船乗りは「 dunnage」と言います。したがって、” Leave your dunnage on the deck”(荷物を床に置いて行け)と言ったら、まず船乗りか海軍出身であると思っていいでしょう。
船でトイレをヘッドと呼ぶのには理由があります。船内に水洗の設備がなかった帆船時代、水兵や平水夫は用を足すときに、船の一番前に行ったからです。船の後部は船長以下の高級船員用の居住区で水兵や平水夫は立ち入りが禁止されていました。その頃の船は船の最前部にバウスプリットという柱を前に突き出していて、その先端と一番前にあるマストのトップを結ぶワイヤーやロープを使って前部の三角帆を張っていました。そのバウスプリットの根元に穴をあけ、そこから用を足していたのです。つまり船の一番前にトイレがあったのでヘッドと呼ばれるようになったということです。
日本語でも「便所に行く」という表現は通常使わず、「化粧室へ行く」「手を洗いに行く」などと言いかえるのが普通ですが、英語でも” I`m going to the toilet” という言い方は避けて" wash up” などと言いかえるのが普通です。その点、I`m going to the head と言う表現はマナー違反でもなく、私などが使うのにはいい言い方だと思っています。
カリフォルニアで米国企業のCEOをしていた時、ゴルフのシャフトを扱っていたためカールスバッドという全米のゴルフメーカーの多くが所在している街に私たちのオフィスもありました。そこに、よく遊びに来るあるメーカーの役員がいました。
私が着任したのを知って、早速どんな奴か見てやろうと思ったらしく、着任して3日後くらいにオフィスにやってきました。
初対面の挨拶をしたのち、シャフトを在庫している倉庫を見せてくれないかと言うので案内することにしました。一通り在庫を見せて、新製品なども説明したりして応接室に戻る際に、彼がいきなり” Where is the head ?”と訊いてきたので、反対側の壁を指さして” Open the door, and on your right.” (ドアを開けたら右にあるよ。)と教えてやったら、ニコッと笑ってそちらへ行きました。ちょっとすると戻ってきて、「どうもお前さんは商売人らしくないと思ったけど、ここへ来る前は何をやってたんだ?」と訊いてきました。
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「実は30年間海軍にいて、ビジネスは初めてだ。」と答えると、彼はとてもうれしそうな顔をしました。大学でROTC(Reserve Officer Training Corp 予備士官養成課程)の単位を取り、卒業後海軍に入って6年後、大尉で除隊してビジネスの世界に入ったのだそうです。
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私は海上自衛隊の制服を着用していましたので、大使と話をするときには” Yes, sir “ ですらなく、” Yes,Mr.Ambassador”(ハイ、大使閣下)と受け答えをしていたのですが、社交上は私の表現が正しく、特命全権大使は「閣下」と呼ばれるのが普通であり、30代の若造が「うん、そうだね。」などと相槌を打っていい相手ではありません。
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米国は日本ほど平等な社会ではないので、そのような社会的な階級が重視されます。
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「先進国では米国の一部と」というのはどういう意味なのかよく分かりませんが、要するにヨーロッパ各国では終息に向かっているこの夏に米国と日本だけは感染が急増しているということが示されています。
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