指揮官の休日 No.190 白い靴墨
2020/07/17 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
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(株)イージスクライシスマネジメントからの緊急提言です。
https://aegis-cms.co.jp/2097
No.190 白い靴墨
何か変なタイトルですね。墨が白いと言うだけで何となく論理矛盾のような気がしますが、これは矛盾でもなんでもなく一つの物語です。
先月末に所用があって港区内をウロウロしていました。
実は弊社の決算期が5月1日から4月30日なので、6月末までに決算申告を出さねばなりません。
弊社はモノを仕入れて売ったり、在庫を抱えたりという面倒なことをしていませんので極めて会計処理がシンプルで、決算に際して税理士にお世話にならず、勉強の意味もあって自分で申告書を作って税務署に行くことにしています。
簿記2級を持っていますので財務諸表を作るのは簡単で、会計ソフトのお世話になることもなくエクセルで作っています。
その申告などサッサとやってしまえばいいのに、大学で会計学の授業が大嫌いだったトラウマでなかなか手を付けず、いつも6月中旬以降になって渋々取り掛かっています。(正直なところ、未だに会計学という学問の何が面白いのかよく分かっていません。つまり会計学という学問をまったく理解できていないということなのですが。)
弊社の本店所在地が虎ノ門なので、管轄税務署が田町の港税務署で、法人住民税はロシア大使館傍の都税事務所に行くことになります。
このところ自粛要請をいいことに都内での会合を全部お断りしていたので、しばらくぶりの東京でした。
いつもは田町でJRを下りて税務署に行って法人税の書類を提出し、そのまま散歩を兼ねてロシア大使館横のゾッとする坂道を上って都税事務所に行き、そのまま東京タワーの横を抜けて増上寺の前を通って田町へ戻るというコースなのですが、この日は何となくタクシーを拾って品川駅まで戻ってきました。
品川プリンスの2階に、いつ行っても席が空いているお気に入りのカフェがあるので、久しぶりに行ってみようと思い立ちました。
ロビーに入り、すぐ前にあるエスカレーターに乗ろうとしたところ、後ろから来た女性が私の右側を追い越してエスカレーターの三段ほど上に乗りました。
彼女が横を通り抜ける時、私の目に入ったのが白いハイヒールでした。そしてエスカレーターでは目の前にそのハイヒールを履いた足が並んでいました。
昭和の時代ならともかく、令和の時代に白いハイヒールを見かけるなどと思ってもいなかったのでビックリしたのですが、30代後半か40代前半と思われる女性(正直なところ女性の年齢というのはまったく分かりません。最近はどう見ても30代に見える60代の女性も珍しくないですからね。)が水色のツーピースに白いハイヒールを履いて颯爽と歩いているのです。
一目見てエナメルではないと見てとり、次に興味を持ったのは、彼女がどうやってそのハイヒールをきれいな白に維持しているのかでした。
私は海上自衛隊に30年在籍していました。海上自衛隊の幹部自衛官は夏は白い制靴を履いています。海曹や海士の隊員は夏服は白なのですが靴は黒を着用します。幹部だけが白靴を履いています。
この白靴を白く維持するのが実は大変な作業です。
革靴ですので、履いていると足の甲の先の方、指の付け根辺りのところにシワが寄ってきます。溝が入るのです。そこに砂やホコリが入りこんで黒っぽくなります。
最初のうちは歯ブラシのようなものでかき出して手入れできるのですが、その溝が深くなっていくとだんだん汚れが落ちなくなります。
仕方なしに白い靴墨を上から塗りたくって隠すことになります。いわゆる年増の厚化粧状態になります。
それを毎日やらないと遠目にも白くはならなくなります。幹部海上自衛官というのは、夏は真っ白なユニフォームを着てスマートに見えますが、実は裏側では靴の汚れと闘う毎日を送っているのです。
陸上自衛隊の幹部の半長靴はお付きの若い隊員が磨いてくれるのですが、海上自衛隊にはそのような伝統はありません。艦長であろうと司令であろうと自分の靴は自分で磨きます。
私は自衛艦隊司令部の幕僚経験がありますが、よく司令官が靴を磨きながら昔話を語るのを聴いていたことがあります。
海上幕僚長くらいになるとどうか分かりませんが、今の山村海上幕僚長の人柄から考えると、彼は自分の靴を持ってサンダル履きで副官室に押しかけ、副官付きの女性事務官に冗談を言ったり鼻歌を歌ったりしながら自分で磨いていても不思議はありません。
ちなみに、海上自衛隊の艦艇では、幹部は士官室で士官室係の乗員がウェイターとしてサービスしてくれる食事を取りますが、洗濯や靴磨きは自分で行い、部下にさせることはしません。艦長も艦長室のバスルームに洗濯機があって、そこで自分で洗濯をします。
話を靴に戻しますが、何故私が白いハイヒールを履いた女性がどうやって靴をメンテナンスしているのかに関心を持ったのかには理由があります。
皆さまご存じないかもしれませんが、白い靴墨は街で買うことができないのです。
靴屋さんの靴墨のコーナーに行くと分かりますが、白として売っているのは、実は無色のクリーナーです。白の靴墨は売られていません。
それでは私たちはどうやって制靴のメンテナンスをしていたのでしょうか。
海上自衛隊の基地の売店には売っているのです。陸上自衛隊の基地の売店にはありません。海上自衛隊の基地の売店だけです。
ある時、基地の売店で品切れだったので買うことができず、週末に近くの繁華街の靴屋に行ったことがありました。まだ、昭和の時代です。
レジ近くの靴墨のコーナーには黒や茶の靴墨はあるのですが白がありません。無色のクリーナーだけです。
レジにいたオヤジさんに「白の靴墨はないの?」と尋ねると、ジロッと私を見て、「今時、白の靴墨なんか使うのは演歌歌手かコレモンだ。」と言って、頬を人差し指で斬って見せる真似をし、ついで「アンタはどっちだい?」と訊いてきました。
面白いオヤジだなと思って、「少なくとも演歌の歌手じゃないね。」と答えると、「ソウカイ、こっちかい?」と言ってもう一度頬を斬る真似をしてニヤッと笑いました。
その挙句、「取っておいてやるから来週おいで。」と言ってまたそっぽを向いてしまいました。
まぁ、私もまだ若かったのですが、舐められたものです。でも、未だに覚えている強烈な印象でした。
制服を着ていた頃、私たちはそれは熱心に靴を磨きました。先にスポンジが付いている黒い液体ワックスを使うと、その場ではピカピカするのですが、すぐにくすんでしまいます。本当の靴墨を使って、丹念に磨くと、その光かたに奥行きがあり、達成感がありました。
いろいろな靴墨を使いましたが、黒・白ともに秀逸だったのはKiwiというメーカーの靴墨で、今でも時々目にします。黒い丸くて平べったい容器に入っている靴墨で、最初は固くて大変なのですが、使い慣れてくるうちに柔らかくなります。固いうちは容器の蓋に唾を飛ばして、それを布で拭って墨を擦り付けるという技が必要でした。
品川プリンスホテルで私を追い越していった女性のハイヒールはとてもきれいにメンテナンスされていたので、どうやってメンテナンスしているのか訊いてみたい気もしないではなかったのですが、見ず知らずの女性に声を掛けるということをやったことが無いので気後れして聞けずに終わってしまいました。
ひょっとすると、メンテナンスなどせずに、1週間ほど履いたら新しいのに履き替えていたかもしれません。
米海軍の提督にはそういう人がいました。海上自衛隊幹部と米海軍士官の処遇の違いを見せつけられたものです。
海上自衛隊は夏は白、冬は黒という極端な色の制服を採用しています。どちらもメンテナンスが難しい色です。特に夏の白の維持は大変です。
陸上自衛隊は深い緑色の制服であり、クリーム色のワイシャツを着用し、夏はクリーム色の半袖・開襟の略制服を着ています。
海上自衛隊の夏服には二種類あり、通常着ているのは白の半袖、開襟です。儀式の時には長袖、詰襟の白い制服を着用します。
真っ白なので毎日着替えないと汚れが目立ってしまいます。
陸自の連中に訊くと、彼らのクリーム色の略服は3日から1週間ほど着ることができるそうです。
何故海上自衛隊がそのような極端な色の制服を採用しているのかといえば、絶えず身だしなみに気を使えという海軍伝統の躾のためであり、世界の多くの海軍も同様な制服を採用しています。
夏の海上自衛官がどのような苦労をしているのか、ちょっと思いを致して頂ければ幸いです。思わぬことに悪戦苦闘しているのです。
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さらに、問題の性格上どうしても辛口にならざるを得ません。何故ならいい加減に処理されると多くの人命や国家の命運にかかわる問題を含むので、無責任な態度は許されないからです。
その結果、いろいろな著名人たちの言動についての批判もしなければならないことが多々あります。それは、それらの方々の発言や行動が世間に与える影響が大きいからです。
そして、話が抽象的になったり、何を言っているのか分からなくなることを防ぐために、実名を挙げさせていただくことがあります。
実名を挙げて批判するということは、こちらにも覚悟が必要です。私は匿名のSNSで他人を中傷しているのではなく、こちらも実名を挙げておりますし、それが私の本業に関わることであり、プロとしての存在をかけてものを言っているのであって、趣味で投稿しているのではないからです。
続きはこちらからお読みください。
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お勧めのコラム
コロナ禍は依然として終息の気配を見せていませんが、多くの企業がその対応のためにテレワークを採用しています。
そのテレワークで問題となるのがコミュニケーションが不足がちになることです。
株式会社ココティアコンサルティングの高橋雅美代表はメンタルヘルスに通暁した臨床心理士の資格を持つコンサルタントですが、
同社のウェブサイトで、その問題を追及し、解決策を提示しています。
テレワークを導入された経営者の方は是非ご一読ください。
「社員が辞めない会社づくりを焦る社長が陥りやすい大間違い https://cocotia.co.jp/column/climate/activemental167 」
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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この白靴を白く維持するのが実は大変な作業です。
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陸上自衛隊の幹部の半長靴はお付きの若い隊員が磨いてくれるのですが、海上自衛隊にはそのような伝統はありません。艦長であろうと司令であろうと自分の靴は自分で磨きます。
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海上幕僚長くらいになるとどうか分かりませんが、今の山村海上幕僚長の人柄から考えると、彼は自分の靴を持ってサンダル履きで副官室に押しかけ、副官付きの女性事務官に冗談を言ったり鼻歌を歌ったりしながら自分で磨いていても不思議はありません。
ちなみに、海上自衛隊の艦艇では、幹部は士官室で士官室係の乗員がウェイターとしてサービスしてくれる食事を取りますが、洗濯や靴磨きは自分で行い、部下にさせることはしません。艦長も艦長室のバスルームに洗濯機があって、そこで自分で洗濯をします。
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皆さまご存じないかもしれませんが、白い靴墨は街で買うことができないのです。
靴屋さんの靴墨のコーナーに行くと分かりますが、白として売っているのは、実は無色のクリーナーです。白の靴墨は売られていません。
それでは私たちはどうやって制靴のメンテナンスをしていたのでしょうか。
海上自衛隊の基地の売店には売っているのです。陸上自衛隊の基地の売店にはありません。海上自衛隊の基地の売店だけです。
ある時、基地の売店で品切れだったので買うことができず、週末に近くの繁華街の靴屋に行ったことがありました。まだ、昭和の時代です。
レジ近くの靴墨のコーナーには黒や茶の靴墨はあるのですが白がありません。無色のクリーナーだけです。
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面白いオヤジだなと思って、「少なくとも演歌の歌手じゃないね。」と答えると、「ソウカイ、こっちかい?」と言ってもう一度頬を斬る真似をしてニヤッと笑いました。
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まぁ、私もまだ若かったのですが、舐められたものです。でも、未だに覚えている強烈な印象でした。
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海上自衛隊は夏は白、冬は黒という極端な色の制服を採用しています。どちらもメンテナンスが難しい色です。特に夏の白の維持は大変です。
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海上自衛隊の夏服には二種類あり、通常着ているのは白の半袖、開襟です。儀式の時には長袖、詰襟の白い制服を着用します。
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要領を確立します。
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代表取締役 林 祐
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