指揮官の休日 No.178 USO
2020/04/24 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加2をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第186回 非常時における私たちの行動態様 を掲載いたしました。
首相や東京都知事の度重なる要請にも関わらず、外出を自粛できない人々がいます。この問題は私たちの国民性にも関わる問題であり、現在の特措法のように性善説に立った措置では不十分なのかもしれません。社会心理学の専門家による検証が待たれますが、当コラムでも少なからぬ関心をもって推測をいたしております。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1968 をご覧ください。
No.178 USO
前回、若い頃にバチカンを訪れた際に起こったことについての記事を配信したところ、あちらこちらから反響を頂き、中には「感動しました。」とおっしゃる方も現れ、どうでもいい内容をお送りするというメールマガジン「指揮官の休日」の本旨とかなり離れてしまったことを深く反省しています。今回は、その反省を踏まえ、深遠な内容とは無縁の本来の「指揮官の休日」に戻します。
だからと言って、「嘘」をつくつもりは毛頭ありません。USOが何を意味するのかは後ほどご説明いたします。
昭和43年4月、私は当時まだ珍しかった全寮制の中学・高校であった山手学院に中学1年生として入学しました。全員が寮生活を送るので通学時間という概念がなく、授業が終わった後は体育系のクラブ活動と文科系のサークル活動の両方に参加することが要求されていました。具体的には週2日間が文科系サークルで4日が体育系クラブ活動でした。
私はサークル活動に音楽を選び、ギターを練習してバンドを作っていました。
当時は土曜日は休みではなく、午前中は普通に授業があり、午後はクラブ活動があり、その後外泊や外出が許可されるという日課でした。
私は父が遠隔地で勤務していたため、両親から離れてその学校に入学していたので、普通の週末には帰宅することができず、土曜日はクラブが終わった後は寮の部屋でのんびりとして、日曜日には映画を観るために外出することがよくありました。中学生の小遣いではロードショーなどは滅多に観ることができませんでしたが、当時300円で3本観ることのできた名画座と言われる往年の名画を上演する映画館があちらこちらにあり、よくそのような映画館に出かけ、映画ファンの貧乏学生に交じって観ていました。
当時たくさん観た映画の中で、コルネット奏者のレッド・ニコルズの半生を描いた『五つの銅貨』という映画を観て、その後の音楽の趣味が一変するという経験をしました。
この映画の中で“The Five Pennies “ “ Goodnight Sleep Tight “ “ Lullaby in Ragtime” の三つの曲を重ねて歌うというジャズではごく普通に行われる技法が、当時の私にはとてつもなく新鮮でびっくりしたのです。そしてジャズに興味を持った私はフォアフレッシュメンなどの来日コンサートになけなしの小遣いをはたいて出かけていきました。
ある日、外出が許可された日、いつものように映画を観に行った帰りに寄ったジャズ喫茶(当時はたくさんありました。)で、流れてきた女性のボーカルに思わず耳を奪われました。カウンターにはその時にかけられているレコードのジャケットが立てかけられているので、それを見に行ったら、私が見たことのある歌手でした。
顔なじみのマスターが出てきて「いいだろう?」と声をかけてきたので、「この人の歌を生で聴いたことがありますよ。」と言うと、彼はびっくりして「何処で?」と尋ねてきました。
実は、私は本当にその歌手のライブを観たことがあるのです。
それは中学に入学する直前の3月でした。当時、私は海上自衛官であった父が広島県江田島にある第1術科学校で勤務していたため、江田島に住んでいたのですが、中学入学の準備をしていたある日、父が今夜コンサートがあるから行こうと連れて行ってくれたのが、その歌手のコンサートでした。
当時、江田島には海上自衛隊の術科学校と幹部候補生学校のほかに、米陸軍の弾薬庫がありました。これは現在でもありますが、極東の米陸軍の弾薬を格納するかなり大きな施設です。
時代はベトナム戦争真っ盛りの頃であり、その弾薬庫も相当な作業量をこなしていたのだろうと思います。そこへ米本国から慰問団がやってきたのです。
その慰問団を送り込んできたのが、今回のタイトルであるUSOという団体です。
このUSOという団体は、United Service Organizations (米国慰問協会)という名称で、全世界に展開している米軍将兵のために慰問団を派遣している組織です。朝鮮戦争の際にマリリン・モンローが来日した有名なニュース映像がありますが、彼女もこのUSOにより米軍の慰問のために訪れたものです。
米国の多くの歌手や俳優たちがこのUSOのプログラムのために世界中に展開する米軍の慰問に訪れていることはあまり日本では知られていません。日本にもびっくりするような大スターが岩国や横須賀に来ていて、しかし日本ではコンサートなどを行わずに帰国していることもよくあります。彼らは成田や羽田ではなく横田に着くので誰も気が付かないのでしょう。
私は湾岸戦争勃発時に米国に駐在していましたが、湾岸への輸送計画に当時有名だった歌手や女優が多数含まれているのにびっくりしたことがありました。中には洋上で作戦中の航空母艦へ行ってきた歌手もいて、着艦と発艦のショックがいかに凄まじかったかをテレビのインタビューで語っているのを観たこともあります。
それでは、私が中学入学前にライブを観た女性ボーカリストは誰だったでしょうか。
サラ・ボーンです。
江田島の米陸軍の弾薬施設にはオフィサーズクラブなどがなく、サラ・ボーンが来るにしても演奏するホールなどがありませんでした。そこで米軍から海上自衛隊の講堂を使わせて欲しいという調整があり、世界的なジャズ・ボーカリストなので海上自衛隊の方々もどうぞ来てくださいということだったそうです。
ジャズのライブなど聴いたことはありませんでしたが、両親に連れられて聴きに行き、ビッグバンドの生演奏やボーカルのおばさんの迫力に圧倒されたライブでした。
馴染みのジャズ喫茶でかかっていた曲が彼女の“A Lover’s Concerto” だったので気が付いたのです。他の曲であったら中学生の私には難しくて分からなかったかもしれませんが、このメロディアスな曲は忘れようがありません。
この曲はライブのアンコールで歌われ、それまでビッグバンドのかなりの音量でシャウト気味に歌っていた彼女が、バイオリンとギターなどわずかなメンバーのバックでしっとりと歌ったので余計に印象的でした。
ライブが終わって帰宅する途中、父が最後の曲はバッハの曲だろうなと言っていたのも印象的で忘れることのできない曲でした。
父はその直前に米国で大ヒットしていたこの曲のことを知らず、ただ昔レコードで聴いた覚えのあるピアノ曲と同じメロディだったのに気が付いたのでしょう。父は神戸商船出身の船乗りでしたが、祖父が音楽家だったため、小さい頃からレコードを聴いて勉強する祖父のために蓄音機のゼンマイを巻くことをよくやらされていて、いろいろな曲を聴いて育っており、自分は音楽教育は一切受けていないにも関わらずクラシック好きでした。
私はそれを聞いて、サラ・ボーンの曲がバッハのメヌエットだと思い込んでいたのですが、高校生の頃に授業をさぼって音楽室でレコードを聴いていたときに、それがバッハの曲ではないことに気が付きました。
何気なしにかけたピアノ曲集の中に収録されていたのですが、作曲者名がバッハではなく知らない音楽家だったので、「オヤジの間違いか。」と気が付いた次第でした。
後年、それでは誰だったんだろうと思って調べてみると、父が勘違いしたのも無理のない話であることが分かりました。この曲の原曲であるメヌエットは「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳」という楽譜集に掲載されている曲なので、多くの人がバッハ作曲だと勘違いしているのだそうです。実際にそう解説されているレコードジャケットも多数あり、父はそれを読んでいたのだと思われます。
私がサラ・ボーンのライブを観た経緯を離すと、その喫茶店のマスターはいたく感動した風で、「それは良かったね。そんなチャンスはそうないぜ。」と言って、珈琲のお代わりとチーズケーキをご馳走してくれました。生まれて初めて食べたチーズケーキでした。
サラ・ボーンの歌唱はこちらでお聴きいただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=cFLv7sicgAM
P.S.
外出自粛で憂鬱な日々が続いていますが、海上自衛隊横須賀音楽隊が国民の皆様を応援する演奏を始めました。隊長の長岡1尉はかつて私が指揮していた部隊で勤務していたこともある旧知の仲です。
音楽隊も基地の外での演奏などはすべて取りやめているようで、自分たちが練習する部屋で、演奏服ではなく通常の制服を着て演奏していますが、彼らの日常のリハーサル風景がこのようなものであることもご理解いただけるような動画になっています。
https://www.youtube.com/watch?v=TV4wEXfE0AQ
このチャンネルを多くの方に拡散して頂ければと思います。
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Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご
覧ください
専門コラム「指揮官の決断」掲載のご案内
第186回 非常時における私たちの行動態様
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、連日憂鬱な報道が続いている時に、1週間に一度のこのコラムまで毎回コロナの話ではうんざりかもしれませんが、今しばらくお付き合いください。今が踏ん張り時です。
私は感染症の専門家ではありませんが危機管理を研究してきた者として、この事態をある視点から興味深く眺めています。
それは、このような危機管理上の事態における政府・マスコミの動き、そしてそれに反応する私たち市民社会の動きです。
これは社会心理学の研究対象でもあるのですが、しっかりと理解しておくことが危機管理上の事態への対応を考える時に重要であることは間違いありません。
続きは、こちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/1968
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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昭和43年4月、私は当時まだ珍しかった全寮制の中学・高校であった山手学院に中学1年生として入学しました。全員が寮生活を送るので通学時間という概念がなく、授業が終わった後は体育系のクラブ活動と文科系のサークル活動の両方に参加することが要求されていました。具体的には週2日間が文科系サークルで4日が体育系クラブ活動でした。
私はサークル活動に音楽を選び、ギターを練習してバンドを作っていました。
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当時たくさん観た映画の中で、コルネット奏者のレッド・ニコルズの半生を描いた『五つの銅貨』という映画を観て、その後の音楽の趣味が一変するという経験をしました。
この映画の中で“The Five Pennies “ “ Goodnight Sleep Tight “ “ Lullaby in Ragtime” の三つの曲を重ねて歌うというジャズではごく普通に行われる技法が、当時の私にはとてつもなく新鮮でびっくりしたのです。そしてジャズに興味を持った私はフォアフレッシュメンなどの来日コンサートになけなしの小遣いをはたいて出かけていきました。
ある日、外出が許可された日、いつものように映画を観に行った帰りに寄ったジャズ喫茶(当時はたくさんありました。)で、流れてきた女性のボーカルに思わず耳を奪われました。カウンターにはその時にかけられているレコードのジャケットが立てかけられているので、それを見に行ったら、私が見たことのある歌手でした。
顔なじみのマスターが出てきて「いいだろう?」と声をかけてきたので、「この人の歌を生で聴いたことがありますよ。」と言うと、彼はびっくりして「何処で?」と尋ねてきました。
実は、私は本当にその歌手のライブを観たことがあるのです。
それは中学に入学する直前の3月でした。当時、私は海上自衛官であった父が広島県江田島にある第1術科学校で勤務していたため、江田島に住んでいたのですが、中学入学の準備をしていたある日、父が今夜コンサートがあるから行こうと連れて行ってくれたのが、その歌手のコンサートでした。
当時、江田島には海上自衛隊の術科学校と幹部候補生学校のほかに、米陸軍の弾薬庫がありました。これは現在でもありますが、極東の米陸軍の弾薬を格納するかなり大きな施設です。
時代はベトナム戦争真っ盛りの頃であり、その弾薬庫も相当な作業量をこなしていたのだろうと思います。そこへ米本国から慰問団がやってきたのです。
その慰問団を送り込んできたのが、今回のタイトルであるUSOという団体です。
このUSOという団体は、United Service Organizations (米国慰問協会)という名称で、全世界に展開している米軍将兵のために慰問団を派遣している組織です。朝鮮戦争の際にマリリン・モンローが来日した有名なニュース映像がありますが、彼女もこのUSOにより米軍の慰問のために訪れたものです。
米国の多くの歌手や俳優たちがこのUSOのプログラムのために世界中に展開する米軍の慰問に訪れていることはあまり日本では知られていません。日本にもびっくりするような大スターが岩国や横須賀に来ていて、しかし日本ではコンサートなどを行わずに帰国していることもよくあります。彼らは成田や羽田ではなく横田に着くので誰も気が付かないのでしょう。
私は湾岸戦争勃発時に米国に駐在していましたが、湾岸への輸送計画に当時有名だった歌手や女優が多数含まれているのにびっくりしたことがありました。中には洋上で作戦中の航空母艦へ行ってきた歌手もいて、着艦と発艦のショックがいかに凄まじかったかをテレビのインタビューで語っているのを観たこともあります。
それでは、私が中学入学前にライブを観た女性ボーカリストは誰だったでしょうか。
サラ・ボーンです。
江田島の米陸軍の弾薬施設にはオフィサーズクラブなどがなく、サラ・ボーンが来るにしても演奏するホールなどがありませんでした。そこで米軍から海上自衛隊の講堂を使わせて欲しいという調整があり、世界的なジャズ・ボーカリストなので海上自衛隊の方々もどうぞ来てくださいということだったそうです。
ジャズのライブなど聴いたことはありませんでしたが、両親に連れられて聴きに行き、ビッグバンドの生演奏やボーカルのおばさんの迫力に圧倒されたライブでした。
馴染みのジャズ喫茶でかかっていた曲が彼女の“A Lover’s Concerto” だったので気が付いたのです。他の曲であったら中学生の私には難しくて分からなかったかもしれませんが、このメロディアスな曲は忘れようがありません。
この曲はライブのアンコールで歌われ、それまでビッグバンドのかなりの音量でシャウト気味に歌っていた彼女が、バイオリンとギターなどわずかなメンバーのバックでしっとりと歌ったので余計に印象的でした。
ライブが終わって帰宅する途中、父が最後の曲はバッハの曲だろうなと言っていたのも印象的で忘れることのできない曲でした。
父はその直前に米国で大ヒットしていたこの曲のことを知らず、ただ昔レコードで聴いた覚えのあるピアノ曲と同じメロディだったのに気が付いたのでしょう。父は神戸商船出身の船乗りでしたが、祖父が音楽家だったため、小さい頃からレコードを聴いて勉強する祖父のために蓄音機のゼンマイを巻くことをよくやらされていて、いろいろな曲を聴いて育っており、自分は音楽教育は一切受けていないにも関わらずクラシック好きでした。
私はそれを聞いて、サラ・ボーンの曲がバッハのメヌエットだと思い込んでいたのですが、高校生の頃に授業をさぼって音楽室でレコードを聴いていたときに、それがバッハの曲ではないことに気が付きました。
何気なしにかけたピアノ曲集の中に収録されていたのですが、作曲者名がバッハではなく知らない音楽家だったので、「オヤジの間違いか。」と気が付いた次第でした。
後年、それでは誰だったんだろうと思って調べてみると、父が勘違いしたのも無理のない話であることが分かりました。この曲の原曲であるメヌエットは「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳」という楽譜集に掲載されている曲なので、多くの人がバッハ作曲だと勘違いしているのだそうです。実際にそう解説されているレコードジャケットも多数あり、父はそれを読んでいたのだと思われます。
私がサラ・ボーンのライブを観た経緯を離すと、その喫茶店のマスターはいたく感動した風で、「それは良かったね。そんなチャンスはそうないぜ。」と言って、珈琲のお代わりとチーズケーキをご馳走してくれました。生まれて初めて食べたチーズケーキでした。
サラ・ボーンの歌唱はこちらでお聴きいただけます。
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