指揮官の休日 No.177 バチカン:ローマカトリック教会
2020/04/17 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加2をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第185回 言っちゃダメなこと、やっちゃいけないこと その2 を掲載いたしました。
毎日憂鬱な日々が続いていますが、ここが私たちの頑張りどころです。欧米諸国のように強権的に外出禁止を命じなくとも、自粛要請で対応できるということを世界に示し、日本国民がいかに高いモラルを持っているかを理解させる絶好の機会でもあります。皆さん、頑張りましょう。
今回は、このところ気になっている事柄について言及しています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1955 をご覧ください。
No.177 バチカン:ローマカトリック教会
4月12日、復活祭のミサをほんの少数の修道士に見守られながら一人で執り行うローマカトリック教会のフランシスコ教皇のメッセージがネットで配信されました。
私はカトリックの信者ではありませんが、フランシスコ教皇は私の母校を設立したイエズス会出身の教皇であり、先日来日された折りに来校してスピーチをされたこともあり、親しみを覚えています。
たった一人でサンピエトロ大聖堂の大広場でミサを執り行う姿は胸が痛みますが、同じことはイスラム教にも起こっていて、メッカでも巡礼が禁止されて誰もいない光景が報道されていました。
私は特定の宗教を持っておらず、むしろ宗教には懐疑的なのですが、ここで一つ分からないことがあります。
このような危機に際しては、一同に会して祈りを捧げるのが宗教ではないのでしょうか。神様というのはそういう行為を守っては下さらないのでしょうか?
お祈りに行くと危ないというのがどうもピンと来ないのです。
それはさておき、サンピエトロ大聖堂には強烈な思い出があります。
私が大学院での研究を切り上げて海上自衛隊に入隊した頃、私の母校の学長を勤めていたのはヨゼフ・ピタウ神父でした。
私はピタウ神父から博士前期課程の修了式において修士号の学位記を授与され、大学を後にして広島県江田島の幹部候補生学校に向かいました。桜の花びらを爪楊枝で拾い集めることになるなど夢にも思っていませんでしたが(メールマガジン「指揮官の休日」No.174 桜の想い出 https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=209 )、しかし、相当きつい訓練が待ち受けているであろうことを覚悟しており、必ずしもウキウキしていたわけではありませんでした。
翌年3月、幹部候補生学校を修了し、大学院を出ていたことから3等海尉ではなく2等海尉に任官し、約8か月の艦隊実習勤務に就くことになりました。
卒業式の後、練習艦隊に乗り組んでそのまま江田島湾を出港し、国内巡航を終えて遠洋航海に乗りだしました。
この時の遠洋航海は太平洋を渡り、パナマ運河を抜け、大西洋を渡ってノルウェーまで走り、キール運河を抜けてポーツマスに入港、その後、リスボンに寄ってから地中海に入り、沿岸諸国に寄りながらイスタンブールまで行き、その後スエズ運河を抜けてインド洋に入り、マレーシアを経由して日本に戻るという16か国訪問の航海でした。
途中、地中海を航海中にナポリに寄港しました。各寄港地では地元の研修や親善行事などが行われるのですが、ナポリ入港中にはローマの研修が行われました。
ナポリからローマまで夜行の寝台列車で進出し、ローマ市内の史跡を研修したのち、若干の自由行動時間がありました。駐イタリア日本大使主催のレセプションが大使館で予定されており、それまでの数時間、自由行動が許可されたのです。
バスから下ろされたのがグッチの目の前だったのですが、私はブランドには何も興味がなかったので散歩することに決めていました。
実習幹部は制服を着用していますので海軍士官としてふさわしい場所以外に行くことは慎まなければなりません。どこへ行こうかと思っていたところ、目の前にサンピエトロ大聖堂が現れたのです。
バチカンがローマ市内にあることは知っていましたが、それほど近くにあるとは思っていなかったのでびっくりしました。東京に明治神宮があるのを知っていても、銀座4丁目の交差点でバスを下ろされたらどうやっていけばいいのか分からなかったでしょう。ところが、この時はちょっと歩いていたら目の前に見えたのです。
私はヨゼフ・ピタウ神父がバチカンに戻って教皇代理補佐に就任されていることを聞いていました。在学中は修業式以外に言葉を交わしたことはありませんでしたが、異国の地で妙に懐かしくなり、バチカンを訪ねることにしました。
夕方で、サンピエトロ大聖堂の広場は珍しく人影があまりなく、特に大聖堂の中央にある幅の広い通路には誰もいませんでした。
特にどこに行く当てもありませんでしたが、何となくその通りを歩いていると、前方から修道士が一人歩いてきました。
彼は私が道に迷ったと思ったらしく、私の顔を見てちょっと微笑んで、「何か?」というような顔をしました。
私は「ヨゼフ・ピタウ神父はお元気ですか?」と尋ねました。
彼はニッコリして「とてもお元気です。残念ながら今日はポーランドに出張していますよ。何かお約束でもありましたか?」と訊いてきました。私は「ヨゼフ・ピタウ神父が学長を勤められた大学を昨年卒業して海軍士官となりました。昨日ナポリに入港して、これから日本大使館のレセプションに出席するところです。アポを取ったわけではありません。ただ懐かしくて参りました。」とだけ述べ、その場を離れました。
ナポリを出港後、私たちは地中海を東に進み、トルコのイスタンブールから折り返してアレキサンドリアに入港しました。
入港当日、私は実習幹部副直士官として勤務していました。夕方、士官室にいると舷門から連絡があり、大使館の人が来て林さんという人がいるかどうか尋ねてきていますとのことでした。
舷門に出て行くと若い書記官がいて、練習艦隊2隻のうち、この船には林という隊員が2名いて、うち一人が私だと名乗ると、「上智大学の出身ですか?」と訊いてきました。私がそれなら私だと答えると「バチカン市国からメッセージが届いています。」ということでした。
彼が手渡してくれた電報用紙を見ると、ヨゼフ・ピタウ神父からのメッセージで、「任官おめでとう。訪ねて来てくれてありがとう。安全な航海を祈っています。」と書かれていました。
書記官の説明によると、ローマカトリック教会からバチカン大使(日本国政府はバチカンにも大使を駐在させています。)に、ナポリに来た日本の艦隊に上智大学出身の士官は乗っているかという問い合わせがあったのだそうです。バチカン大使から外務省に照会があり、外務省から防衛省、海上幕僚監部と照会が伝達され、林という2等海尉が実習幹部として乗艦していることが伝えられ、さらに艦隊の行動予定が伝えられたため、そのメッセージがアレキサンドリアに入港した際に追いついてきたということでした。
ローマカトリック教会というのは、現存する世界最古かつ世界最大の官僚制組織ですが、さすがにその官僚機構は凄いものだと強烈な印象でした。名前を告げたわけでもなく、ただちょっとした立ち話をしただけなのに、それから数か月後に全く違う国にメッセージが届くというシステムがこの組織を世界最大かつ最古の組織に育てたのだと思います。
ちなみに、この時舷門に上がって来た書記官も上智大学の出身者で、大学入学が同じ年でした。彼は学部在学中に外交官試験に合格して入省したため、この年にカイロの大使館に赴任してきていて、イスタンブールに入港する海上自衛隊の支援に当たっていたそうです。
5か月かけて一周してきた地球はとてつもなく大きかったのですが、世界は意外に狭いものでした。
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第185回 言っちゃダメなこと、やっちゃいけないこと その2
数週間前に「言っちゃダメなこと、やっちゃいけないこと」についていくつか言及しました。今回はその第2弾です。
どのような事態においても同様なのですが、危機管理上の事態においてはトップがぶれないことが特に重要になります。ほとんど情報がない中で次々に決断を下していかなければならないトップにはパーフェクトゲームを期待することはできません。やってみて間違いであったことが分かったら次の一手をすかさずに打っていかなければなりません。ただし、それはぶれるということとは違った次元の話です。
トップに求められるのは、様々な可能性を考慮し、それぞれの可能性に備えた策を準備し、それをやってみて事情が異なっていることが分かったら、すかさず用意してある別の手を打つということであり、行き当たりばったりに施策を打っていくということではありません。
続きは、こちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/1947
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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No.177 バチカン:ローマカトリック教会
4月12日、復活祭のミサをほんの少数の修道士に見守られながら一人で執り行うローマカトリック教会のフランシスコ教皇のメッセージがネットで配信されました。
私はカトリックの信者ではありませんが、フランシスコ教皇は私の母校を設立したイエズス会出身の教皇であり、先日来日された折りに来校してスピーチをされたこともあり、親しみを覚えています。
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翌年3月、幹部候補生学校を修了し、大学院を出ていたことから3等海尉ではなく2等海尉に任官し、約8か月の艦隊実習勤務に就くことになりました。
卒業式の後、練習艦隊に乗り組んでそのまま江田島湾を出港し、国内巡航を終えて遠洋航海に乗りだしました。
この時の遠洋航海は太平洋を渡り、パナマ運河を抜け、大西洋を渡ってノルウェーまで走り、キール運河を抜けてポーツマスに入港、その後、リスボンに寄ってから地中海に入り、沿岸諸国に寄りながらイスタンブールまで行き、その後スエズ運河を抜けてインド洋に入り、マレーシアを経由して日本に戻るという16か国訪問の航海でした。
途中、地中海を航海中にナポリに寄港しました。各寄港地では地元の研修や親善行事などが行われるのですが、ナポリ入港中にはローマの研修が行われました。
ナポリからローマまで夜行の寝台列車で進出し、ローマ市内の史跡を研修したのち、若干の自由行動時間がありました。駐イタリア日本大使主催のレセプションが大使館で予定されており、それまでの数時間、自由行動が許可されたのです。
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舷門に出て行くと若い書記官がいて、練習艦隊2隻のうち、この船には林という隊員が2名いて、うち一人が私だと名乗ると、「上智大学の出身ですか?」と訊いてきました。私がそれなら私だと答えると「バチカン市国からメッセージが届いています。」ということでした。
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