指揮官の休日 No.174 桜の想い出 (再配信)
2020/03/27 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加2をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第182回 Shame on you, the Washington Post 恥を知れ ワシントンポスト を配信いたしました。
米国を代表するメディアであるワシントンポストのでたらめさに腹を据えかねています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1937 をご覧ください。
No.174 桜の想い出(再配信)
世界はコロナウイルスの影響で大変なことになっています。ニューヨークもパリも街から人々が消え、ゴーストタウンのようになっています。それでも感染の勢いは収まらず、毎日数千人の単位で感染者が増えています。
一方で、この1か月半以上にわたって必死で戦ってきた日本は、感染者は増え続けていますが、これまで感染者数を1300人にとどめています。これはほぼ奇跡ともいえるかもしれません。
しかし、ついに東京にオーバーシュートの気配が出現し、この週末からしばらくが決戦の時期となりそうです。
大きなイベントは自粛を求められ、大相撲も無観客試合となりました。この季節の風物詩である花見も花の下で飲食することが禁止されてしまいました。
しかし、日本人は本当に桜の花を見るのが好きなんだろうなと改めて認識しましたが、人々は桜並木の下をニコニコしながら歩いて桜を愛でていました。今週はそのような光景も見ることができないでしょう。
この時期、私には忘れらない想い出があります。それを綴ったメールマガジンを3年前に配信し昨年も配信していますが、新たに配信されている読者の方もおられますので、再度配信させていただきます。
桜にまつわる想い出なのですが、海上自衛隊が海軍士官を志す候補生たちにいかにしてその覚悟を教え込もうとしているのかをご理解いただければ幸いです。
メールマガジン「指揮官の休日」 No.018 桜の想い出
私の住む湘南ではまもなく桜が満開となります。
毎年桜の季節になると必ず思い出す風景があります。
昭和57年3月末、私は快適だった大学院での研究生活を切り上げ、広島県江田島の海上自衛隊幹部候補生学校に入校し、海上自衛官となりました。
思うところあっての転身でしたが、「坂の上の雲」の秋山真之が大学予備門を中退して海軍兵学校に入ったのと似た心境だったように思います。
この幹部候補生学校というのは、海上自衛隊の幹部を養成するための学校で、旧海軍兵学校の伝統を継承して、情け容赦ない妥協のない教育を行う場所でした。私たちが入隊した時の海上幕僚長及び幹部候補生学校長は、それぞれ自分が最後の海軍兵学校出身の海上幕僚長、幹部候補生学校長になるという自覚を持っていたので、海軍の伝統を何としても残したいという強い思いから、我々に対して行われた教育は猛烈なものでした。
朝6時の起床から夜10時の消灯まで、徹底的にあらゆる場面で鍛えられるのです。
もちろん教室での座学も行われますが、重視されたのは気力・体力の錬成及び将来部下を率いて戦場に出るための幹部としての自覚の涵養でした。
座学は教育部の教官が日中に行うのですが、その他の生活面での指導や訓練は学生隊という組織を中心に行われ、その学生隊幹事(3等海佐:海軍少佐相当)のアシスタントである幹事付という配置の二人の若い幹部(2等海尉:海軍中尉相当)が我々を一日中追い掛け回し、ありとあらゆるところで指導を加えるのです。
彼らの使命は、候補生の日常のありとあらゆるところに目を光らせ、候補生を時間的、精神的に追い詰め、問題解決の手法を自ら見つけさせることにあり、その指導は理不尽なものであることも珍しくありませんでした。
要するに、理不尽であろうと非合理的であろうと、何とかしなければならないのが戦場ですから、それに耐えられる強靭な精神力と問題解決能力を涵養しておくことが必要なのです。彼らは、その理不尽な教育をするために、あえて憎まれ役を買って出ているのです。
3月末、私たちは正門から延々と続く見事な桜並木に見とれながら海上自衛隊の門をくぐったのですが、この桜が後でとんでもないものに変わるとは思いもよらないことでした。
入校式を終えて少し経った頃、大掃除が行われました。
海上自衛隊では掃除は三段階に分かれています。
毎日行うのが「甲板掃除」。艦隊生活を基本とする海上自衛隊では、陸上の部隊の廊下であろうと事務室であろうと「甲板掃除」と呼ばれます。
月に一度程度行う若干大掛かりな掃除は「中掃除」と呼ばれます。そして、年に数回行われる徹底した掃除を「大掃除」と呼びます。
候補生学校においては掃除も教育の一環です。大掃除の後には大掃除点検が行われ、学校長以下、主要幹部職員などが点検官として点検を行います。
この初めての大掃除の時、私は一本の大きな桜の木が植えられている場所の担当になりました。散っている桜の花びらを集め、雑草を抜き、道路の両肩の玉砂利に目立てを行い、結構大変な場所でした。
およそ1時間の掃除が終わり、「大掃除点検」という号令が流れます。担当者はその号令があると、自分が担当した場所の前に出て、点検官が来るのを直立不動で待たなければなりません。
広い学校内を点検官の一同が歩いて点検をするので、なかなか私の持ち場の番にならないのですが、待ちくたびれたころ、やっと点検官一行が近付いてきました。
点検官が目の前まで来て立ち止まると、私が敬礼をしながら「教育参考館前、第5分隊」と申告し、点検官及びその御付きが桜の木の周りをぐるっと回り、最後に私の前を通る際、再度敬礼をして見送るというだけのことで、これはいわば儀式なのです。学校長以下、誰も何も言わず、無言で来て、無言で去っていきました。
実は私がその場所の担当であることを知ったある古手の教官が掃除が始まる前にソッと教えてくれたことがあります。爪楊枝を持って行けと言って30本ほど渡してくれたのです。
意味がよく分からなかったのですが、爪楊枝を作業服のポケットに入れて掃除をしていました。大掃除点検の号令がかかり不動の姿勢をとっているときに、その爪楊枝の意味が分かったのです。満開の桜の花の下を掃除しているのですから、そよ風が吹いても花びらは散ってきます。「大掃除点検」の号令がかかったら点検官が来るまで不動の姿勢でいなければならないので、その間には数百枚の花びらが散ることになります。したがって、点検官が建物の陰などで見えないときに、その爪楊枝で落ちている花びらを突き刺して拾えということだと気が付いたのです。
私の持ち場の点検が終わり学校長及びその他の学校職員が別の場所へ移っていったのでホッとしていると、どこにいたのか幹事付の一人が「林候補生!」と言って近づいてきました。「お前はいったいどこを掃除したのか?」とすごい剣幕で言うのです。
一瞬何のことかわからずにいたのですが、幹事付が指さす方を見ると、桜の花びらが散っています。幹事付はその桜の花びらを指さしているのです。
点検を受けている数分の間にも何枚も散ってくる桜の花びらです。さすがに「エーッ?」と思っていると、私の作業服のズボンのポケットが爪楊枝に刺した花びらで膨らんでいるのを見た幹事付は、ちょっとニヤッとして、しかし、「大掃除点検不備、第3グランド5周、かかれ!」と言って去っていきました。
私は懲罰のグランド5周を走りながら、これが妥協のない理不尽な江田島教育というやつかと改めて思いなおしました。もし爪楊枝を持っていなかったら、幹事付は本当に怒ったかもしれません。何が起こるであろうかという予見もなしに事に臨み、何の対策も持たずに成り行きに流されてしまうような態度を彼は見逃すことはなかったはずです。海上勤務や戦場で、そのような安直な態度で事に臨んだら、部下を殺してしまうことになるのだということを教えようとしているのです。
自分の知恵ではありませんでしたが、爪楊枝を持って出てきて、点検官が来るまで必死で花びらを取り除き続けたことを幹事付は見抜き、しかし、現場に数枚の花びらが残っているという事実には一切の妥協を許さない理不尽さを発揮したのです。
桜の花を見ると、いつも候補生の頃を思い出し、何とも言えない懐かしい気分になります。
ちなみに、旧海軍の伝統を重視する海上自衛隊は制服や部隊マークなどいろいろなところで桜と錨のデザインが使われています。海上保安庁は海上自衛隊より前に創設されていますが、海軍と訣別するために桜も錨も使っていません。梅とコンパス(羅針儀)と救命浮環のデザインを使っています。それぞれの組織の覚悟や思い入れが伺えます。
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とが出来ます。
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Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
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第182回 Shame on you, the Washington Post 恥を知れ ワシントンポスト
As of March 25, 400,000 people have been infected with the new coronavirus worldwide.
China, the source of the infection, appears to have been largely suppressed, but Italy, the United States, Spain, Germany, and France seem to be failing.
I would like to look at the media coverage of this situation and explore the nature of the media in crisis situations.
https://aegis-cms.co.jp/1937
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
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しかし、ついに東京にオーバーシュートの気配が出現し、この週末からしばらくが決戦の時期となりそうです。
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思うところあっての転身でしたが、「坂の上の雲」の秋山真之が大学予備門を中退して海軍兵学校に入ったのと似た心境だったように思います。
この幹部候補生学校というのは、海上自衛隊の幹部を養成するための学校で、旧海軍兵学校の伝統を継承して、情け容赦ない妥協のない教育を行う場所でした。私たちが入隊した時の海上幕僚長及び幹部候補生学校長は、それぞれ自分が最後の海軍兵学校出身の海上幕僚長、幹部候補生学校長になるという自覚を持っていたので、海軍の伝統を何としても残したいという強い思いから、我々に対して行われた教育は猛烈なものでした。
朝6時の起床から夜10時の消灯まで、徹底的にあらゆる場面で鍛えられるのです。
もちろん教室での座学も行われますが、重視されたのは気力・体力の錬成及び将来部下を率いて戦場に出るための幹部としての自覚の涵養でした。
座学は教育部の教官が日中に行うのですが、その他の生活面での指導や訓練は学生隊という組織を中心に行われ、その学生隊幹事(3等海佐:海軍少佐相当)のアシスタントである幹事付という配置の二人の若い幹部(2等海尉:海軍中尉相当)が我々を一日中追い掛け回し、ありとあらゆるところで指導を加えるのです。
彼らの使命は、候補生の日常のありとあらゆるところに目を光らせ、候補生を時間的、精神的に追い詰め、問題解決の手法を自ら見つけさせることにあり、その指導は理不尽なものであることも珍しくありませんでした。
要するに、理不尽であろうと非合理的であろうと、何とかしなければならないのが戦場ですから、それに耐えられる強靭な精神力と問題解決能力を涵養しておくことが必要なのです。彼らは、その理不尽な教育をするために、あえて憎まれ役を買って出ているのです。
3月末、私たちは正門から延々と続く見事な桜並木に見とれながら海上自衛隊の門をくぐったのですが、この桜が後でとんでもないものに変わるとは思いもよらないことでした。
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海上自衛隊では掃除は三段階に分かれています。
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候補生学校においては掃除も教育の一環です。大掃除の後には大掃除点検が行われ、学校長以下、主要幹部職員などが点検官として点検を行います。
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およそ1時間の掃除が終わり、「大掃除点検」という号令が流れます。担当者はその号令があると、自分が担当した場所の前に出て、点検官が来るのを直立不動で待たなければなりません。
広い学校内を点検官の一同が歩いて点検をするので、なかなか私の持ち場の番にならないのですが、待ちくたびれたころ、やっと点検官一行が近付いてきました。
点検官が目の前まで来て立ち止まると、私が敬礼をしながら「教育参考館前、第5分隊」と申告し、点検官及びその御付きが桜の木の周りをぐるっと回り、最後に私の前を通る際、再度敬礼をして見送るというだけのことで、これはいわば儀式なのです。学校長以下、誰も何も言わず、無言で来て、無言で去っていきました。
実は私がその場所の担当であることを知ったある古手の教官が掃除が始まる前にソッと教えてくれたことがあります。爪楊枝を持って行けと言って30本ほど渡してくれたのです。
意味がよく分からなかったのですが、爪楊枝を作業服のポケットに入れて掃除をしていました。大掃除点検の号令がかかり不動の姿勢をとっているときに、その爪楊枝の意味が分かったのです。満開の桜の花の下を掃除しているのですから、そよ風が吹いても花びらは散ってきます。「大掃除点検」の号令がかかったら点検官が来るまで不動の姿勢でいなければならないので、その間には数百枚の花びらが散ることになります。したがって、点検官が建物の陰などで見えないときに、その爪楊枝で落ちている花びらを突き刺して拾えということだと気が付いたのです。
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一瞬何のことかわからずにいたのですが、幹事付が指さす方を見ると、桜の花びらが散っています。幹事付はその桜の花びらを指さしているのです。
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