指揮官の休日 No.172 贈る言葉 その2
2020/03/13 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加2をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第180回 危機管理の眼から見た新型コロナウィルス対応 その2 を掲載いたしました。
当コラムの執筆者は感染症の専門家ではありませんので、病理学的な切り口ではなく、危機管理論の立場から現状を見るとどう見えるのかについて言及しています。今回はその第2回目です。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1915 をご覧ください。
No.172 贈る言葉 その2
先週のメールマガジンでお伝えしたとおり、今週は筆者が海上自衛隊の新入隊員の教育を担当する部隊の指揮官として、新入隊員たちの入隊式で何を語ったのかをお伝えします。
海上自衛隊には新入隊員の教育に当たる部隊や機関がいくつかあります。
大学を卒業して幹部候補生として採用された者と防衛大学校を卒業して海上自衛隊に入隊した者は幹部候補生学校で教育を受けます。
高校を卒業して航空機搭乗員を目指す航空学生と呼ばれるカテゴリーで採用されたものは、山口県小月の教育航空群で入隊教育を受けます。
一般隊員として採用された者は、横須賀、呉、舞鶴、佐世保の4か所にある教育隊と呼ばれる部隊で入隊教育を受けることになります。
以下に紹介する式辞は私が舞鶴の教育隊で新入隊員を迎え入れ、入隊式を執行した際に読んだものであり、他の教育隊司令も似たような式辞を読んでいたはずです。
海上自衛隊の入隊式の雰囲気を少しでもご理解いただければ幸いです。
入隊式は、新入隊員を部隊に迎え入れた1週間後に、地方総監はじめ舞鶴在籍各部隊指揮官、新入隊員の募集を担当した各地方協力本部長(1佐)、地元市長、市議会議長、商工会会頭、地元選出国会議員、隊員関係者を招待し、音楽隊の演奏協力を得て行います。1週間かけて、新入隊員が自衛隊の儀式において自衛官らしく振舞うことができるよう基本動作などを徹底的に教えこんでから行いますので、それなりに厳粛な儀式となります。
この入隊式の日付で入隊したことになり、3か月後に試験採用期間が終わり、4か月後に修業式を経て部隊に赴任していきます。
以下が式辞です。
「 本日、第4期一般海曹候補生課程及び第1期自衛官候補生課程の入隊式を、部内外から多数の御来賓の御臨席のもと、入隊者御家族のご参加を得て挙行できますことは、舞鶴教育隊にとりまして大きな慶びとするところであります。御多忙中にもかかわらず御臨席を賜りました来賓の皆様には厚く御礼を申し上げます。
また、御列席の御家族の皆様には心からのお祝いを申し上げます。本日皆様の前に整列している新入隊員の姿には、さぞ驚かれたことと存じます。着隊後、わずか一週間で彼らは大きく成長しております。これからも彼らは日々成長してまいります。我々教育隊隊員は総力を挙げて彼らの教育にあたりますが、彼らの何よりの心の支えは、御家族の皆様の温かい励ましであると考えます。どうか、今後とも力強いご声援をお願い申し上げます。
学生諸君、入隊おめでとう。諸君の入隊を心から歓迎する。
今、諸君の胸中を察するに、海上自衛隊に入隊した感激と将来への希望に胸が一杯というよりも、むしろ、これからどういう生活が始まるのだろうという不安の方が大きいかもしれない。
御家族の愛情に包まれて育ってきた家庭を離れ、塀に囲まれた自衛隊の施設の中で、慣れない集団生活を送ることになるとなれば不安を抱くのが当然である。教育隊司令以下の教官、職員も入隊した時は皆同じ不安を持っていたのであって、諸君だけが不安を感じているわけではない。しかし、4か月後、諸君がこの教育隊を巣立っていく時には、ここを離れることに限りない寂しさを抱いているであろうことも疑いない。
今日からしばらくの間、ここが諸君の家となる。そして、生涯にわたってここ舞鶴教育隊が諸君の第二の故郷になる。
諸君を直接指導する教官のほとんどは教育隊の出身者であり、諸君の不安や悩みをよく理解している。諸君は教官を信頼し、ついてきてほしい。
当教育隊での教育訓練を開始するにあたり、司令から諸君に次の三点を要望しておく。
その第一は、海上自衛官としての自覚を持てということである。
海上自衛隊には、日常の挙措動作、礼儀作法、言葉づかいなど諸君がこれまで慣れ親しんできたものとはかなり異なるものがある。これらは海上自衛隊の歴史の中で築き上げられてきたものであり、それぞれがそれなりの意味を持っている。諸君が今日すでに何度も繰り返している右手を挙げて行う敬礼にも、それなりの意味がある。それらの意味をすぐに理解することは難しいかもしれないが、諸君はまず、それらを早く身に付け、海上自衛官らしく立ち振る舞うことができるようになる必要がある。そのうえで、海上自衛隊とはどういう組織なのか、海上自衛隊とはどうあるべきなのかを自分なりに考えてもらいたい。
先の東日本大震災に際し、海上自衛隊も過去最大規模の災害派遣を実施中である。海自上自衛隊の部隊は、出動を命ぜられれば直ちに現場海面に進出し、洋上において最善を尽くし、引き揚げを命ぜられればそのまま現場海面を離れて戻ってくる。
その作業の大半は人目につかない洋上で行われるため、国民の目に触れることもあまりない。しかし、それは海上自衛隊の特性であり、宿命であり、我々はそのことを誇りとしてきたし、それが海上自衛隊の文化でもある。
余計なことは言わない、政治的発言は避ける、そして誰にも認められずともやるべきことをやってくるのが諸君が入隊した海上自衛隊である。諸君にはそのような海上自衛隊の文化を早く理解し、身につけてもらいたい。
要望の第二は、あきらめるなということである。
諸君もある程度覚悟しているであろうが、当教育隊での訓練は楽しいことよりも厳しいと感ずることの方が遥かに多いはずである。しかし、あきらめてはいけない。入隊教育は諸君の先輩たちが一人残らず通った道であり、彼らにできて諸君にできないはずはない。途中であきらめさえしなければ、栄冠は諸君のものになる。要領が悪くて皆に遅れを取ってもかまわないし、皆ができるのに自分だけができないことがあってもいい。ただ、何があってもあきらめないという強い思いだけは捨てないで欲しい。舞鶴教育隊はフラフラになっても最後までファイティングポーズをとり続ける者を見捨てたり切り捨てたりすることはない。
要望の第三は、同期の絆を大切にしてほしいということである。
教育隊の訓練は厳しいかもしれないが、同期が励ましあって、落伍者を出さずに最後まで乗りきってもらいたい。ここで築かれた同期の絆は今後何十年と続き、何物にも替え難いものになるはずである。同期の絆を大切にすることは海上自衛隊の伝統でもある。
以上三点を新入隊員の諸君に要望しておく。
諸君は今日から我が国の海上防衛の一翼を担うことになる。そして4か月後には海上防衛の第一線に立つ。諸君が当教育隊で過ごす期間は決して長くはない。一日一日を大切に、同期と励まし合って全員がそろって修業の日を迎えることができるよう日々の訓練に励むことを要望する。諸君の健闘を祈っている。」
入隊式を終えて隊員たちが自分の分隊の居住区に戻ってくると、この式辞にあった司令からの要望事項が「司令指導方針」として額に入れられて壁に掲示されています。
以後、彼らは分隊点検など事あるごとに「司令指導方針を言え」などとチェックされるのです。
三つだけなら覚えるのもそう難しくはないのですが、指導方針を出すのは司令だけではなく、学生隊長も分隊長も出しますので、それなりにたくさん覚えなければなりません。
服装容疑や分隊の威容を点検する儀式などでは隊員たちは極度の緊張を強いられますので、点検官から質問されてもしっかりと答えられないこともあります。
でも心配いりません。そのような儀式で答えられない場合は、元気よく「忘れました!」と答えればいいことになっています。
「知りません」はダメです。基本的な姿勢が問われます。でも忘れてしまうのは仕方ないので、やたらに元気よく「忘れました!!」と答えると「元気があってよろしい」という変なほめられ方をします。
もっともそれは一般隊員の話で、幹部候補生がそんなことをやたら元気よく答えようものなら「お前はそんな大切なことも覚えられんのか!声がでかければいいというもんじゃない!」と怒られます。
とにかく軍隊というのは理不尽さに耐える教育を行うのが得意なのです。
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第180回 危機管理の眼から見た新型コロナウィルス対応 その2
当コラムで執筆者が感染症の専門家ではないと度々申し上げているにもかかわらず、新型コロナウイルスについてお問い合せをうけることがあります。
さすがに具体的な症状等についてのお問い合せではなく、報道されている事実をどう解釈すればいいのかというようなお問い合せがほとんどですので、個別にはお答えしているのですが、皆さま同じような論点についてのお尋ねが多いので、感染症については専門外ではありますが、危機管理の眼から見るとどう解釈されるのかという観点からの記事を掲載いたしました。(専門コラム「指揮官の決断」第179回 危機管理の眼から見た新型コロナウィルス対応 https://aegis-cms.co.jp/1909 )
ところがこのコラム以降もお問い合わせがありますので、再度掲載することといたしました。
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ブランディングを専門とするコンサルタントである吉澤由美子さんのセミナーをご紹介します。
吉澤さんはコンサルティングファームであるH&Cブランディングマネジメント株式会社の代表として活躍されているコンサルタントです。
ブランディングの一環として「事業発展ストーリー」を作ることを指導されており、その着眼点のユニークさが際立っています。
このたび、その「事業発展ストーリー」がいかなるものなのかについてのセミナーが開催されます。
【東京】2020年3月19日(木)受付中
各回10名限定のセミナーですので、この機会をお見逃しないようお申し込みください。
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H&Cブランディングマネジメント株式会社のウェブサイトはこちらです。
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読み応えのあるコラムが掲載されており、私もよく参考にさせて頂いています。
当コラムをお読みの方はお気づきかもしれませんが、危機管理にはプロトコールが極めて重要ですが、それは究極的には組織のブランディングのために重要だということを意味しています。
つまり、組織が信頼できる組織に見えるために、内部をしっかりと統制していくことももちろん重要ですが、しかし、それだけではなく、ステークホルダーから万全の信頼を勝ち取ることが必要なのです。
そのためにはブランディングをおろそかにしてはならないと常に考えています。
その意味で吉澤さんのコラムには学ぶところが多々あります。
ぜひご一読をお勧めします。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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No.172 贈る言葉 その2
先週のメールマガジンでお伝えしたとおり、今週は筆者が海上自衛隊の新入隊員の教育を担当する部隊の指揮官として、新入隊員たちの入隊式で何を語ったのかをお伝えします。
海上自衛隊には新入隊員の教育に当たる部隊や機関がいくつかあります。
大学を卒業して幹部候補生として採用された者と防衛大学校を卒業して海上自衛隊に入隊した者は幹部候補生学校で教育を受けます。
高校を卒業して航空機搭乗員を目指す航空学生と呼ばれるカテゴリーで採用されたものは、山口県小月の教育航空群で入隊教育を受けます。
一般隊員として採用された者は、横須賀、呉、舞鶴、佐世保の4か所にある教育隊と呼ばれる部隊で入隊教育を受けることになります。
以下に紹介する式辞は私が舞鶴の教育隊で新入隊員を迎え入れ、入隊式を執行した際に読んだものであり、他の教育隊司令も似たような式辞を読んでいたはずです。
海上自衛隊の入隊式の雰囲気を少しでもご理解いただければ幸いです。
入隊式は、新入隊員を部隊に迎え入れた1週間後に、地方総監はじめ舞鶴在籍各部隊指揮官、新入隊員の募集を担当した各地方協力本部長(1佐)、地元市長、市議会議長、商工会会頭、地元選出国会議員、隊員関係者を招待し、音楽隊の演奏協力を得て行います。1週間かけて、新入隊員が自衛隊の儀式において自衛官らしく振舞うことができるよう基本動作などを徹底的に教えこんでから行いますので、それなりに厳粛な儀式となります。
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以下が式辞です。
「 本日、第4期一般海曹候補生課程及び第1期自衛官候補生課程の入隊式を、部内外から多数の御来賓の御臨席のもと、入隊者御家族のご参加を得て挙行できますことは、舞鶴教育隊にとりまして大きな慶びとするところであります。御多忙中にもかかわらず御臨席を賜りました来賓の皆様には厚く御礼を申し上げます。
また、御列席の御家族の皆様には心からのお祝いを申し上げます。本日皆様の前に整列している新入隊員の姿には、さぞ驚かれたことと存じます。着隊後、わずか一週間で彼らは大きく成長しております。これからも彼らは日々成長してまいります。我々教育隊隊員は総力を挙げて彼らの教育にあたりますが、彼らの何よりの心の支えは、御家族の皆様の温かい励ましであると考えます。どうか、今後とも力強いご声援をお願い申し上げます。
学生諸君、入隊おめでとう。諸君の入隊を心から歓迎する。
今、諸君の胸中を察するに、海上自衛隊に入隊した感激と将来への希望に胸が一杯というよりも、むしろ、これからどういう生活が始まるのだろうという不安の方が大きいかもしれない。
御家族の愛情に包まれて育ってきた家庭を離れ、塀に囲まれた自衛隊の施設の中で、慣れない集団生活を送ることになるとなれば不安を抱くのが当然である。教育隊司令以下の教官、職員も入隊した時は皆同じ不安を持っていたのであって、諸君だけが不安を感じているわけではない。しかし、4か月後、諸君がこの教育隊を巣立っていく時には、ここを離れることに限りない寂しさを抱いているであろうことも疑いない。
今日からしばらくの間、ここが諸君の家となる。そして、生涯にわたってここ舞鶴教育隊が諸君の第二の故郷になる。
諸君を直接指導する教官のほとんどは教育隊の出身者であり、諸君の不安や悩みをよく理解している。諸君は教官を信頼し、ついてきてほしい。
当教育隊での教育訓練を開始するにあたり、司令から諸君に次の三点を要望しておく。
その第一は、海上自衛官としての自覚を持てということである。
海上自衛隊には、日常の挙措動作、礼儀作法、言葉づかいなど諸君がこれまで慣れ親しんできたものとはかなり異なるものがある。これらは海上自衛隊の歴史の中で築き上げられてきたものであり、それぞれがそれなりの意味を持っている。諸君が今日すでに何度も繰り返している右手を挙げて行う敬礼にも、それなりの意味がある。それらの意味をすぐに理解することは難しいかもしれないが、諸君はまず、それらを早く身に付け、海上自衛官らしく立ち振る舞うことができるようになる必要がある。そのうえで、海上自衛隊とはどういう組織なのか、海上自衛隊とはどうあるべきなのかを自分なりに考えてもらいたい。
先の東日本大震災に際し、海上自衛隊も過去最大規模の災害派遣を実施中である。海自上自衛隊の部隊は、出動を命ぜられれば直ちに現場海面に進出し、洋上において最善を尽くし、引き揚げを命ぜられればそのまま現場海面を離れて戻ってくる。
その作業の大半は人目につかない洋上で行われるため、国民の目に触れることもあまりない。しかし、それは海上自衛隊の特性であり、宿命であり、我々はそのことを誇りとしてきたし、それが海上自衛隊の文化でもある。
余計なことは言わない、政治的発言は避ける、そして誰にも認められずともやるべきことをやってくるのが諸君が入隊した海上自衛隊である。諸君にはそのような海上自衛隊の文化を早く理解し、身につけてもらいたい。
要望の第二は、あきらめるなということである。
諸君もある程度覚悟しているであろうが、当教育隊での訓練は楽しいことよりも厳しいと感ずることの方が遥かに多いはずである。しかし、あきらめてはいけない。入隊教育は諸君の先輩たちが一人残らず通った道であり、彼らにできて諸君にできないはずはない。途中であきらめさえしなければ、栄冠は諸君のものになる。要領が悪くて皆に遅れを取ってもかまわないし、皆ができるのに自分だけができないことがあってもいい。ただ、何があってもあきらめないという強い思いだけは捨てないで欲しい。舞鶴教育隊はフラフラになっても最後までファイティングポーズをとり続ける者を見捨てたり切り捨てたりすることはない。
要望の第三は、同期の絆を大切にしてほしいということである。
教育隊の訓練は厳しいかもしれないが、同期が励ましあって、落伍者を出さずに最後まで乗りきってもらいたい。ここで築かれた同期の絆は今後何十年と続き、何物にも替え難いものになるはずである。同期の絆を大切にすることは海上自衛隊の伝統でもある。
以上三点を新入隊員の諸君に要望しておく。
諸君は今日から我が国の海上防衛の一翼を担うことになる。そして4か月後には海上防衛の第一線に立つ。諸君が当教育隊で過ごす期間は決して長くはない。一日一日を大切に、同期と励まし合って全員がそろって修業の日を迎えることができるよう日々の訓練に励むことを要望する。諸君の健闘を祈っている。」
入隊式を終えて隊員たちが自分の分隊の居住区に戻ってくると、この式辞にあった司令からの要望事項が「司令指導方針」として額に入れられて壁に掲示されています。
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三つだけなら覚えるのもそう難しくはないのですが、指導方針を出すのは司令だけではなく、学生隊長も分隊長も出しますので、それなりにたくさん覚えなければなりません。
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でも心配いりません。そのような儀式で答えられない場合は、元気よく「忘れました!」と答えればいいことになっています。
「知りません」はダメです。基本的な姿勢が問われます。でも忘れてしまうのは仕方ないので、やたらに元気よく「忘れました!!」と答えると「元気があってよろしい」という変なほめられ方をします。
もっともそれは一般隊員の話で、幹部候補生がそんなことをやたら元気よく答えようものなら「お前はそんな大切なことも覚えられんのか!声がでかければいいというもんじゃない!」と怒られます。
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ブランディングを専門とするコンサルタントである吉澤由美子さんのセミナーをご紹介します。
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読み応えのあるコラムが掲載されており、私もよく参考にさせて頂いています。
当コラムをお読みの方はお気づきかもしれませんが、危機管理にはプロトコールが極めて重要ですが、それは究極的には組織のブランディングのために重要だということを意味しています。
つまり、組織が信頼できる組織に見えるために、内部をしっかりと統制していくことももちろん重要ですが、しかし、それだけではなく、ステークホルダーから万全の信頼を勝ち取ることが必要なのです。
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