指揮官の休日 No.144 紅茶のお話
2019/08/30 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加2をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.152 GSOMIA破棄に見る「識者」とは を掲載いたしました。
戦後最悪と言われる日韓関係ですが、この騒ぎを巡る所謂「識者」の発言について考えています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1632 をご覧ください。
No.144 紅茶のお話
当メールマガジンはサブタイトルが「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」となっているとおり、コーヒーやドライマティニに若干のこだわりを持っていますが、それ以外には見向きもしないというような偏狭な考えを持っているわけではありません。メールマガジンでも紅茶をこれまで2回取り上げています。
No.092 ヨット乗りには信じてもらえない本当のお話:一杯の紅茶
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=119
No.048 アフタヌーンティー https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=73
実は、朝起きて最初に飲むのは珈琲ですが、朝食時に飲んでいるのは大きなカップになみなみと注いだ紅茶で、たっぷりとミルクを注ぎ込んで飲んでいます。その後も書斎にいる私の目の前からカップがなくなることはなく、珈琲1に対して紅茶2くらいの割合で紅茶の方をたくさん飲んでいます。
つまり、デスクに向かっているときには珈琲か紅茶を飲んでいることになるのですが、よく考えると、それらの飲み方が若干違うことに気が付きました。
紅茶は作業をしながら飲んでいることが多いのですが、珈琲は一息ついたり、お気に入りの小説を読んだり、あるいは音楽を聴いたりする際に飲んでいることが多いようです。
無意識なのですが、これが私の珈琲と紅茶に対する評価なのかもしれません。
さて紅茶ですが、本場の英国には一度しか行ったことがありませんし、それも長期滞在ではなく、海上自衛隊の練習艦隊での遠洋航海の途上寄港したポーツマスで駆け足で英国海軍との行事に参加し、ロンドンで日本大使館の歓迎レセプションに出ていたので、ゆっくりと英国の紅茶を楽しむ余裕もあまりありませんでした。
自由な時間が基本的には夜しかないので、そうなると紅茶ではなく、街へ繰り出してパブのお姉さんの凄まじいポーツマス訛りに悪戦苦闘しながらビールにありつくのが精一杯でした。
しかし、先のメールマガジンでご紹介したとおり、英国海軍航空救難隊の搭乗員待機室でダルマストーブの上に乗せられた大きなブリキのヤカンのグラグラと沸騰しているお湯の中に放り込まれた大きなティーバックから煮出された紅茶を飲んだり、ロイヤルヨットクラブの事務長に紅茶を淹れてもらったりと、一般の観光では経験できない紅茶を飲む機会がありました。
ロイヤルヨットクラブで紅茶をごちそうになった翌日、私たち実習幹部はロンドンにツアーに出かけました。夕方に駐英日本大使館で開かれる歓迎レセプションに出席するためでした。
この時、夕方のレセプション開始まで自由時間があり、私はリーゼントストリートをブラブラ歩いたり、トラファルガー広場でどこか海外の派遣任務から帰還してきた連隊の凱旋行進に出くわしたりしていました。(この時の様子をメールマガジンでお届けしています。 No.063 スコットランド・ザ・ブレイブ
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=89 )
このトラファルガー広場の後、私は若干疲れたのでお茶でも飲もうと適当なお店を探し始めました。
ご承知のとおり、英国には日本のような喫茶店がありません。歩き疲れた頃、ある建物の入り口にレストランの案内が出ていました。どう考えても昼食の時間ではなく、また、アフタヌーンティの時間にもなっていないので、お茶が飲めるのかどうかわからず、恐る恐るそのレストランの案内板の横にあったドアから中に入っていきました。
そこは実はホテルでした。
きわめて小さなホテルなのですが、玄関ホールの横のラウンジには重厚なソファがいくつか置かれ、年代物の木のベンチやテーブルも半端ではない貫録を放っていました。
制靴が踝まで埋まるのではないかと思われるような絨毯を踏みしめて、そのラウンジに入っていくと、カウンタの内側にいた年配の紳士が近づいてきました。
「紅茶を頂けますか?」と尋ねると、その老紳士はニッコリして「もちろんです。」と私をさらに隣のティールームに招き入れました。
窓際の居心地のよさそうなテーブルに案内してくれた彼は、「お見受けしたところロイヤルネイビーの士官ではなさそうですが、どちらからお出でになりました?」と聞いてきました。米・英・豪・ニュージーランドなどコモンウェルスの海軍の制服は極めて似ていて、海上自衛隊の制服も注意して見ないと米海軍とそっくりなので海軍士官であることは分かったのでしょうが、帽子の記章や制服の腕に巻いた金線の階級章が若干違うことに気が付いたのでしょう。
「日本から来てポーツマスに入港中です。」と答えると、彼はさらにニッコリとして「私の祖父が若い頃、やはりこのホテルで日本海軍の方々をお迎えしたことがあります。とても可愛がって頂き、結婚したばかりの祖母とともに船に招待して頂いた写真を見たことがあります。」と言い出しました。日英同盟締結の頃の話でしょう。なんとお爺さんの代から同じホテルで働いていたのです。(よく考えると、そのホテルのオーナーだったのかもしれません。)
しばらくすると大きなお盆に紅茶のポットとカップ、お湯差しと大きなミルクソーサー、クッキーを載せた皿などをもって再び現れ、「今、お茶の葉を蒸らしているところなので、もう2~3分たってから注いでください。ごゆっくりどうぞ。」と言って去っていきました。
そのティールームには私しかおらず、1時間弱過ごしたのですが誰も入ってきません。
ポットも大きかったのですが、お湯差しがついてきて5杯くらい飲んでもお湯が冷めておらず、どういうお湯差しなのかが不思議でした。
ゆっくりと紅茶を楽しんで腰を上げ、どこで会計をするのかとキョロキョロしていると件の老紳士が現れ、「ご出発ですか?」と尋ねてきます。
ゆっくりさせてもらった礼を述べていくらかを尋ね、返ってきた答えに愕然としました。
“ Eighty Pence, sir “ と言うのです。
残念なことに当時のポンドのレートを覚えていないのですが、私の咄嗟の暗算では200円くらいなのです。
私は一瞬、一桁間違っていると考えたのですが、12ペンスが1シリングだった時代はとっくに終わっていて100ペンスが1ポンドの時代になっていたので、どう考えていいのかわからず、” Padon ?” と聞き直しました。
彼は今度はとてもゆっくり” Eighty Pence, sir “ と言い直しました。
ちょっと信じられず “ Just Eighty ? “と尋ねると、” Yes, sir “と辛抱強く答えてくれます。
実はノルウェーのオスロでは公園の片隅の屋台で買った紙コップの珈琲が500円で、その後に入港したドイツのキールではほとんど日本と同じ値段だったので、ロンドンのど真ん中の由緒ありそうなホテルで紅茶を飲んだら2000円くらいはするだろうと思っていました。
その後30年以上を経て、カナダのビクトリアにあるフェアモント・エンプレス・ホテルで我が家の司令長官とアフタヌーン・ティを楽しんで一人6500円かかったことを考えると、この時の紅茶のサービスの対価が、30年の隔たりがあるとはいえ、とてつもないものだったように思います。
残念ながらこのホテルの名前を憶えていません。トラファルガー広場から歩いて10分はかからないところにある建物に挟まれた古い小さなホテルです。
ロンドンを再び訪れる機会があれば是非探し出したいと思っています。
どなたかロンドンに詳しい方でお心当たりがあれば教えて頂ければ幸いです。
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No.152 GSOMIA破棄に見る「識者」とは?
8月22日、韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定し、翌日、駐韓日本大使を呼んで通告を行いました。
正直に申し上げると、私は韓国は破棄しないだろうと考えていました。
破棄すると韓国は失うものばかりで得るものがまったくありません。
一方、破棄しないことを宣言すると韓国には大きなメリットがもたらされます。
続きはこちらからどうぞ。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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実は、朝起きて最初に飲むのは珈琲ですが、朝食時に飲んでいるのは大きなカップになみなみと注いだ紅茶で、たっぷりとミルクを注ぎ込んで飲んでいます。その後も書斎にいる私の目の前からカップがなくなることはなく、珈琲1に対して紅茶2くらいの割合で紅茶の方をたくさん飲んでいます。
つまり、デスクに向かっているときには珈琲か紅茶を飲んでいることになるのですが、よく考えると、それらの飲み方が若干違うことに気が付きました。
紅茶は作業をしながら飲んでいることが多いのですが、珈琲は一息ついたり、お気に入りの小説を読んだり、あるいは音楽を聴いたりする際に飲んでいることが多いようです。
無意識なのですが、これが私の珈琲と紅茶に対する評価なのかもしれません。
さて紅茶ですが、本場の英国には一度しか行ったことがありませんし、それも長期滞在ではなく、海上自衛隊の練習艦隊での遠洋航海の途上寄港したポーツマスで駆け足で英国海軍との行事に参加し、ロンドンで日本大使館の歓迎レセプションに出ていたので、ゆっくりと英国の紅茶を楽しむ余裕もあまりありませんでした。
自由な時間が基本的には夜しかないので、そうなると紅茶ではなく、街へ繰り出してパブのお姉さんの凄まじいポーツマス訛りに悪戦苦闘しながらビールにありつくのが精一杯でした。
しかし、先のメールマガジンでご紹介したとおり、英国海軍航空救難隊の搭乗員待機室でダルマストーブの上に乗せられた大きなブリキのヤカンのグラグラと沸騰しているお湯の中に放り込まれた大きなティーバックから煮出された紅茶を飲んだり、ロイヤルヨットクラブの事務長に紅茶を淹れてもらったりと、一般の観光では経験できない紅茶を飲む機会がありました。
ロイヤルヨットクラブで紅茶をごちそうになった翌日、私たち実習幹部はロンドンにツアーに出かけました。夕方に駐英日本大使館で開かれる歓迎レセプションに出席するためでした。
この時、夕方のレセプション開始まで自由時間があり、私はリーゼントストリートをブラブラ歩いたり、トラファルガー広場でどこか海外の派遣任務から帰還してきた連隊の凱旋行進に出くわしたりしていました。(この時の様子をメールマガジンでお届けしています。 No.063 スコットランド・ザ・ブレイブ
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このトラファルガー広場の後、私は若干疲れたのでお茶でも飲もうと適当なお店を探し始めました。
ご承知のとおり、英国には日本のような喫茶店がありません。歩き疲れた頃、ある建物の入り口にレストランの案内が出ていました。どう考えても昼食の時間ではなく、また、アフタヌーンティの時間にもなっていないので、お茶が飲めるのかどうかわからず、恐る恐るそのレストランの案内板の横にあったドアから中に入っていきました。
そこは実はホテルでした。
きわめて小さなホテルなのですが、玄関ホールの横のラウンジには重厚なソファがいくつか置かれ、年代物の木のベンチやテーブルも半端ではない貫録を放っていました。
制靴が踝まで埋まるのではないかと思われるような絨毯を踏みしめて、そのラウンジに入っていくと、カウンタの内側にいた年配の紳士が近づいてきました。
「紅茶を頂けますか?」と尋ねると、その老紳士はニッコリして「もちろんです。」と私をさらに隣のティールームに招き入れました。
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「日本から来てポーツマスに入港中です。」と答えると、彼はさらにニッコリとして「私の祖父が若い頃、やはりこのホテルで日本海軍の方々をお迎えしたことがあります。とても可愛がって頂き、結婚したばかりの祖母とともに船に招待して頂いた写真を見たことがあります。」と言い出しました。日英同盟締結の頃の話でしょう。なんとお爺さんの代から同じホテルで働いていたのです。(よく考えると、そのホテルのオーナーだったのかもしれません。)
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ちょっと信じられず “ Just Eighty ? “と尋ねると、” Yes, sir “と辛抱強く答えてくれます。
実はノルウェーのオスロでは公園の片隅の屋台で買った紙コップの珈琲が500円で、その後に入港したドイツのキールではほとんど日本と同じ値段だったので、ロンドンのど真ん中の由緒ありそうなホテルで紅茶を飲んだら2000円くらいはするだろうと思っていました。
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残念ながらこのホテルの名前を憶えていません。トラファルガー広場から歩いて10分はかからないところにある建物に挟まれた古い小さなホテルです。
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