指揮官の休日 No.131 暗夜に霜の落つるが如く
2019/05/31 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.139 5W1Hなんかどうでもいい! を掲載いたしました。
新入社員教育で相変わらず教えられる報告の5W1Hについて考えています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1512
をご覧ください。
No.131 暗夜に霜の落つるが如く
もし今回の「暗夜に霜の落つるが如く」というタイトルを奥様や恋人にお見せになって、その方がうっすらとした笑みを唇の端に漂わせたとしたら、その方は特別な訓練を受けた特殊工作員だった可能性があります。寝首をかかれないようご注意ください。
この言葉が表現しているものを俳句や短歌の世界で理解しようとすると、寒い2月の深夜、底冷えする庭に静かに霜が積もっていくという情景が浮かんできます。
極めて日本的な幽玄の世界が映し出されてくるかもしれません。
しかし、実はこの言葉はかなり物騒な内容を含んでいます。
射撃の訓練を受ける者が最初に教えられる言葉なのです。
リボルバーは別ですが、マガジン式の自動拳銃やライフルなどは薬室に弾を送りこんで安全装置を外し、引き金を引くと発射されるのですが、その引き金を引く要領がこれなのです。
つまり、ソーッと引き金を引いていき、気張らず、そのまま静かに引き続け、ある時、ストンという感じで撃針が動き、次の瞬間に弾が銃口を飛び出す、それが射撃において最も重要な心構えであるということなのです。
私が幹部候補生で最初に小火器射撃の訓練を受けた頃、私たちに貸与されていた銃はライフルはM-1であり、拳銃はコルト45ガバーメントスペシャルでした。
知らない方には何のことかさっぱりわからないかもしれません。
M-1というライフル銃は米軍が第2次大戦から朝鮮戦争にかけて使用していたライフル銃で、メンテナンスが楽で性能もそこそこいいものでした。
コルト45ガバーメントスペシャルというのはマニア垂涎の代物で、45口径の弾頭は尖っておらず、丸くなっています。これはどういうことかというと、体の真ん中に命中すると前に倒れることができず、必ず後ろに飛ぶようにして倒れるということになるということです。丸くなっているのでそのすんなりと体内を貫通せず、その威力を全身で受け止めてしまうからです。
この拳銃は全体が大きくグリップも大きかったので、指の短い私には扱いにくい銃でした。射法も標的に対して正対せず、90度横向きになり、左手を腰に当て、銃を持った右手を水平に上げて顔を横に向けて狙うというやり方で、戦場において実用的とは言いがたい撃ち方でした。後にベレッタをライセンス国産して9mm拳銃と称して制式採用されてからは、標的に正対して両手で撃てるようになったので命中率がかなり高くなったのを覚えています。
M-1もコルト45も自衛隊が創設された時に米軍から貸与を受けたものであり、私が入隊した頃はすでに時代遅れであり、部隊では国産の拳銃及びライフルが使用されていましたが、教育部隊まで回ってくる余裕がなく、私たちはその古いライフルと拳銃で訓練を受けたのです。
入隊した日に武器貸与という儀式があり、各人にライフルと銃が渡され、以後、卒業まで責任をもって管理することが命ぜられるのです。
そして射撃の訓練が始まります。
まず、銃の構造などを座学で学び、基本的な取り扱いの訓練が行われます。
ライフルに関しては執銃訓練といって「捧げ銃」(ささげつつ)「立て銃」(たてつつ)など部隊でライフルを持って行進したり、栄誉礼などで銃で敬礼をしたりする訓練を受けているのですが、この場合は儀式の訓練ではなく、実弾を撃つための訓練なので真剣度がちょっと違います。
基本的な取り扱いはグランドで行われ、徹底的に基本を叩きこまれ、一切の応用動作が禁止されます。それらがしっかりとできるようになったところで射撃訓練場に出かけて実弾射撃の訓練が行われます。
さすがに実弾を渡され、それを装填すると緊張が高まります。うっかり落としただけで弾が出ることがあるからで、冗談は許されないのです。
初めての実弾射撃を終えると、ちょっと別の人になったような気がします。とてつもない攻撃力を身に付けるからでしょう。
幹部候補生では見たことがありませんが、一般隊員の入隊教育では震えて歯の根が合わない者もいるそうです。
たしかに緊張が極度に高まって正気を失う者もいるようで、私たちが入隊した頃、陸上自衛隊で新入隊員が興奮して実弾の入ったライフルを乱射して死亡者が出るという事件がありました。
候補生学校を卒業して数年後、私は護衛艦の砲術士として艦隊勤務に忙殺されていました。
若い幹部はいろいろな係を命ぜられ、私はミサイル射撃を担当する砲術士としての仕事の他に人事や教育を担当する砲雷科分隊の分隊士を兼務し、さらには小火器射撃訓練の訓練指導官としての仕事もしていました。
ある時、その護衛艦が年度訓練計画に示されている小火器射撃訓練のため陸上自衛隊の屋内射撃訓練場を借りて訓練を行うことになりました。
訓練場を借りる調整や弾の手配など事前の準備を終わり、当日、船の乗員を連れて訓練場に着いてみると、びっくりしたことに射座の真上や真横に弾痕があるのです。
海上自衛隊のライフル射撃は200mの距離で行うのですが、前方の天井や横の壁に弾痕があっても「一体何を狙ったらそんなところに弾痕ができるんだ?」と思うのに、撃つ場所の真上や真横に弾痕があるというのは、どういうことなのでしょうか?
私は陸上自衛隊で起きた事故を思い出しました。
そこで私は一同を集め、皆の前で腰に吊るしていた拳銃に実弾を込め、「いいか、ライフルを持って射座についたら絶対に振り返ってはならん。もし振り返った奴がいたら俺が撃つからそのつもりでいろ!」と申し渡しました。(もちろん冗談で、弾も実弾を入れたマガジンと何も入っていないマガジンを直後にすり替えておきました。間違って実弾を発射したら大変ですからね。)
その時の小火器射撃訓練は極めて成績が悪く、船に帰ってからその成績を分析したところ、まだ就役3年目の新鋭艦でしたが、その3年間で最低の成績でした。
何が悪かったのかを検討したのですが、寒い日で肩に力が入ったくらいしか原因が思い浮かばず、しかたなく、アンケートをとりました。
その結果、「後ろで実弾を込めた拳銃を持って睨んでいる砲術士が怖くて集中できなかった。」というペーパーがいくつかあり、これ以外に原因は考えられませんと艦長に報告して怒られたのをよく覚えています。
まだ着任して日が浅く、砲雷科の分隊員は私が冗談を言っているのをよく承知していて緊張がとれたのか成績は悪くなかったのですが、私をよく知らない他の分隊員が本気にしたようでした。
令和の時代、自衛隊にそんな指導官がいたら新聞で袋叩きにされかねませんが、昭和というのはそんなことも許された時代でした。
私は拳銃や小銃の射撃があまり好きではなかったので熱心に練習したりはしませんでした。射撃の検定の時も、面倒なのでサッサと撃ってしまうため、何人か並んで撃つ際にはいつも最初の一発は私が撃ち、全弾撃ち終わるのも私が圧倒的に早かったように思います。
「暗夜に霜の落つるが如く・・・」という言葉は比喩としては他にも用途がありそうですので覚えておいて損はないかと思います。
今回はちょっとためになるお話でした。
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No.139 5W1Hなんかどうでもいい!
長かったGWが終わり、令和元年が本格的に始動して間もなく1か月がたちます。毎年、この時期、大きな企業では4月に入社した新入社員たちが新入社員研修を終わり、配属先が決まり、そろそろ会社の雰囲気に慣れてきたころでしょう。慣れることができなかった新入社員たちはいわゆる五月病で潰れていきます。
私が勤務していた専門技術商社では新入社員教育期間中に各部長がそれぞれの部の業務の紹介などを行う時間があり、私もそのころ自分の営業部が所掌していた業務について30分程度の時間を割り当てられて説明をしていました。
私はその営業部の部長を足掛け三年務めたのですが、何故か毎回、圧倒的多数の新入社員が配属を希望したのだそうです。人事を所掌する総務部長が私のところに来て曰く、「林さんの話はほかの部長と何か違うんですよね。」 何がどうちがうのかを尋ねても、とにかく「何か違う」としか言ってくれないので、自分でも何がどうちがうのかよくわかりませんでした。他の部長がどういう話をしているのか聞いたこともありませんのでなおさらです。
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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M-1もコルト45も自衛隊が創設された時に米軍から貸与を受けたものであり、私が入隊した頃はすでに時代遅れであり、部隊では国産の拳銃及びライフルが使用されていましたが、教育部隊まで回ってくる余裕がなく、私たちはその古いライフルと拳銃で訓練を受けたのです。
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そして射撃の訓練が始まります。
まず、銃の構造などを座学で学び、基本的な取り扱いの訓練が行われます。
ライフルに関しては執銃訓練といって「捧げ銃」(ささげつつ)「立て銃」(たてつつ)など部隊でライフルを持って行進したり、栄誉礼などで銃で敬礼をしたりする訓練を受けているのですが、この場合は儀式の訓練ではなく、実弾を撃つための訓練なので真剣度がちょっと違います。
基本的な取り扱いはグランドで行われ、徹底的に基本を叩きこまれ、一切の応用動作が禁止されます。それらがしっかりとできるようになったところで射撃訓練場に出かけて実弾射撃の訓練が行われます。
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