指揮官の休日 No.126 令和の時代になりますね
2019/04/26 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.134 私、失敗しないので を掲載いたしました。
フリーランスの女医に学ぶプロの覚悟とは?
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1488
をご覧ください。
No.126 令和の時代になりますね
間もなく年号が変わります。
私が生まれた昭和の時代、二つ前の年号であった明治はいかにも古く、明治生まれの方々が本当にお年寄りに見えたものでしたが、いよいよ私も二つ前の時代人になってしまいます。実は私たちの息子も昭和生まれなので、彼ももう若くは見られないということになります。
新年号が発表になった時、私はたまたま鎌倉のある料亭の一室で家族と食事をしていました。息子がスマートフォンで発表の瞬間を観せてくれたのですが、一瞬、凄い年号だと勘違いしました。和の国が世界に令する覚悟を決めたかと一瞬思ったのですが、次の瞬間、それはあり得ないと考え直し、しかし、古典に関する造詣が著しく不足しているので出展が分からずに、どういう意味なのかを考えたりました。
今回の改元は現天皇の譲位へのご意思に基づくものなのでしょうが、しかし、全体としてほのぼのとした祝賀ムードの中で行わる改元であり、昭和から平成への改元がいかに重苦しい雰囲気の中で行われたのかをしっかりと記憶している者の眼にはとても望ましいものに映ります。
現天皇ご夫妻に対する感謝の思いに国民の多くが満たされ、さらに新天皇に対する期待も高まり、特に長い間、体調を崩しておられた新皇后が、これを機に本来の実力を発揮されて皇室外交が進展するのではないかという期待は大きいものがあります。
平成という年号にようやく慣れてきた平成2年、私は米海軍への海上自衛隊からの連絡官としてペンシルバニア州メカニスバーグの米海軍基地へ赴任しました。当時建造中であったイージス1番艦「こんごう」のシステムの調達を商社を介在させずに政府間契約で直接行うことになったため、本来は商社が行うはずの連絡調整を行うためでした。
公式の連絡調整はフィラデルフィアに派遣された連絡官が米海軍側の窓口となるオフィスと行うのですが、こちらは公式の窓口なので、主としてドキュメント類の交換など形式的な事務が多くなります。しかし、実際には米海軍が海上自衛隊のための調達を予定通り行っているか、それをどのタイミングで日本の造船所に送るかなどの実務的な調整が必要だったのです。
そこで米海軍の後方組織の中に入りこみ、実務レベルの調整を行うために送りこまれたのが私でした。
米海軍の補給システム司令部内で勤務して連絡調整を行うのですが、着任した年の夏にイラクがクェートに侵攻するという事件が起こり、私も米海軍が戦争に突入していく渦中に飲みこまれながらの仕事を強いられ大変な苦労をさせられました。
ただ、米海軍の同僚たちとは仲良く、楽しい勤務であったことも事実でした。
ある時、その基地で公式の晩餐会が開かれ、連絡官であった私にも招待状が送られました。
その晩餐会の模様については、かつてこのメールマガジンにも書いたことがありますので、詳しくはそちらをお読みください。(メールマガジン「指揮官の休日」No.114 ダイニング・イン/ダイニング・アウト https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=147 )
この晩餐会で今でも忘れない一コマがありました。
晩餐会の最後に乾杯が行われます。日本の宴会では、冒頭に延々と長い挨拶が続き、いい加減うんざりしてきたところでやっと乾杯になり、そして、最後に、終わりなのに「中締め」としてもう一度誰かの発声により乾杯が行われるの一般的ですが、私の知る限り欧米の夕食会では乾杯は最後に行われることが多いようです。始まる前にはテーブルにつく前にすでに食前酒が振る舞われていることが多いからかもしれません。
とにかく、その晩餐会の時も、最後に乾杯が行われたのですが、これが半端な乾杯ではありません。
誰かが挨拶して「乾杯」と言ってちょっと口をつけておしまいではないのです。
大きなワイングラスにポートワインが注がれ(さすがに並々とではありませんが)、一回乾杯するごとに飲み干して、次のワインが注がれるのです。そして乾杯の音頭が参加者に順番に回って来て、いろいろなものに対する乾杯がおこなわるのです。
例えば、英国海軍の少佐が「合衆国海軍に乾杯」と捧げると、すかさず米海軍の誰かが「ロイヤルネイビーに乾杯」とやります。それを見ていたオーストラリア海軍が「海上自衛隊に乾杯」などと応酬するのです。
私は外国人士官団の一番前の席に座っていたので乾杯の音頭を取る順番が比較的早く回って来ました。「ジョージ・ブッシュ合衆国大統領及びバーバラ・ブッシュ大統領夫人に乾杯」と口上を述べたところ、米海兵隊の少佐がすかさず立ち上がり、「エンペラーアキヒト及びエンプレスミチコに乾杯」と言ったのです。
この海兵隊の少佐は私たちが勤務していた基地で勤務しているのではなく、近くの海兵隊の基地所属だったのですが、海軍と海兵隊で共通に装備している装備品の予備品の調達のために連絡将校としてよく来ていた人物で、私も時々ですが会議などで会ったことがありました。
アメリカの海兵隊員にしては珍しく日本での勤務の経験がなく、海外勤務はヨーロッパばかりという少佐でしたが、私が驚いたのはまだ在位1年にしかならない日本の天皇夫妻のファーストネームをしっかりと知っていたことでした。
当時の私は海兵隊員は脳ミソまで筋肉でできていると思っていましたので(米海軍の連中がそう言っていたのです。)、びっくりしました。
ある時、思いついて彼のオフィスを訪ねてみて驚かされました。オフィスの壁一面に作りつけられた本棚には大学の研究室かと思うほど本がぎっしりと並べられ、半分近くは歴史の本でした。米軍の士官には別に珍しくないのですが、彼も修士号を持っており、それが歴史学で取ったものだと知ったのもこの時でした。私は経済学修士ですが、オフィスには経済学の本など一冊もなく、アメリカ海軍協会の機関誌が数冊と同じオフィスに勤務するシビリアンにもらったナショナルジオグラフィックマガジンが何冊かだけでしたし、官舎に戻っても持ってきた本は梱包も解かず、基地の外の本屋で買った海洋冒険小説が並んでいるだけという状況で、とても恥ずかしく思いました。
当時三等海佐であった私にはもちろん秘書などいませんでしたが、同じ階級の海兵隊少佐であった彼には米軍の常識としては当然のことながら秘書がいて、「私の仕事は毎月送られてくる膨大な量の論文を整理すること。勉強になるので楽しい。」とニコニコしていたのが印象的でした。
彼の蔵書の中でも日本やアジアの歴史について書かれた書物がたくさんあり、「なんでこの方面の本が多いんだ?」と訊くと、「俺は海兵隊員だからな。戦うとすれば上陸作戦で戦いたい。ヨーロッパの奥の方は陸軍に任せるよ。」ということでした。
彼の本棚には日本の皇室やタイの王室について書かれた本も何冊か並べられており、それぞれの御夫妻の写真が小さな額に入れて立てかけられていました。各国国民の国民性などを読み解こうとしていたようです。
これを機に、時々私の勤務する基地に来たついでに私のオフィスに寄って日本人のモノの考え方などについて質問をしていくようになりました。
米国の前国防長官マティス氏は日本では「狂犬と呼ばれている」と紹介されましたが、これは完全な誤訳で、「荒くれ者」というニュアンスの敬意を込めたあだ名なのです。彼は歴史、戦史・戦略の研究を趣味として数千冊の本に囲まれて生活していたそうで、米国海兵隊にはそのような人材が珍しくなく存在します。世界最強の軍隊はそのようにして作られているのであって、ただやたらに厳しく乱暴な訓練でのみ作られているのではありません。
いずれにせよ、平成の時代の幕開けの際、米国で暮らして思わぬところで天皇陛下ご夫妻のファーストネームを聞いたり、その写真を海兵隊士官の執務室で見たりとびっくりするような発見をしたことと相まって、この度の譲位には一抹の感慨を覚えています。
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No.134 私、失敗しないので
テレビ朝日系で2012年から5シーズンにわたって放送された医療ドラマで、平均視聴率20%以上を叩きだした「ドクターX」の中で、主人公大門未知子が毎回発する決め台詞が今回の標題「私、失敗しないので」です。
この言葉は大変に重い意味を持っています。単に「自信がある」と言っているのではないからです。
彼女がこの言葉を発するのは、医師は失敗を糧に成長できるのかもしれないが、失敗された患者には後がない、したがって、医師は絶対に失敗してはならないという想いが根底にあるからです。つまり、どんな新米の意思であろうと、失敗を乗り越えて経験を積んでいくというような考え方であってはならないという厳しいプロ意識を彼女は持っており、医局の若手の医師にも情け容赦ない言葉を投げつけています。
これは「覚悟」の問題です。
https://aegis-cms.co.jp/1488
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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今回の改元は現天皇の譲位へのご意思に基づくものなのでしょうが、しかし、全体としてほのぼのとした祝賀ムードの中で行わる改元であり、昭和から平成への改元がいかに重苦しい雰囲気の中で行われたのかをしっかりと記憶している者の眼にはとても望ましいものに映ります。
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そこで米海軍の後方組織の中に入りこみ、実務レベルの調整を行うために送りこまれたのが私でした。
米海軍の補給システム司令部内で勤務して連絡調整を行うのですが、着任した年の夏にイラクがクェートに侵攻するという事件が起こり、私も米海軍が戦争に突入していく渦中に飲みこまれながらの仕事を強いられ大変な苦労をさせられました。
ただ、米海軍の同僚たちとは仲良く、楽しい勤務であったことも事実でした。
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アメリカの海兵隊員にしては珍しく日本での勤務の経験がなく、海外勤務はヨーロッパばかりという少佐でしたが、私が驚いたのはまだ在位1年にしかならない日本の天皇夫妻のファーストネームをしっかりと知っていたことでした。
当時の私は海兵隊員は脳ミソまで筋肉でできていると思っていましたので(米海軍の連中がそう言っていたのです。)、びっくりしました。
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当時三等海佐であった私にはもちろん秘書などいませんでしたが、同じ階級の海兵隊少佐であった彼には米軍の常識としては当然のことながら秘書がいて、「私の仕事は毎月送られてくる膨大な量の論文を整理すること。勉強になるので楽しい。」とニコニコしていたのが印象的でした。
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