指揮官の休日 No.120 メシとエサの差
2019/03/15 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.128 プロトコールのと危機管理の関係 を掲載いたしました。
当コラムで何度かご紹介しているプロトコールの考え方について綴っています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1455
をご覧ください。
No.120 メシとエサの差
ミリメシというものが静かにブームになっていると聞いたのは私がまだ自衛隊の制服を着ていたころでした。何だろうと尋ねると「ミリタリーの食事」のことなのだそうです。
世の中には軍服を着て喜んだり、サバイバルゲームと言うから過酷なアドベンチャーかと思ったら何のことはない玩具のライフルなどで戦争ごっこをするだけのものであったりと軍隊に興味を持つ人が多いのだそうですが、その中でも兵隊が戦場で食べているものに関心のあるマニアックな人がいるらしいのです。
軍隊だからと言っていつも特殊な食事をしているわけではありません。通常は普通の集団給食です。国の予算から支出されますので、一食当たりの単価が設定されています。
マニアックな方々が関心を持っているのはこの食事ではなく、戦場で食べる食事の方でしょう。映画などで兵隊が缶詰のシチューなどを食べているシーンが出てきますが、これがコンバットレーションと呼ばれる所謂ミリメシです。
米軍ではMREと呼ばれるコンバットレーションが知られています。様々なバージョンがあり、通常の戦場で食されるものから、船が沈んだり飛行機が墜落したりした場合の非常食として準備されているものまであります。
MREとはmeals ready to eat の頭文字なのだそうですが、米軍の軍人に訊くと「冗談じゃない。あれはMeals rejected by everyone(誰も喰わないメシ)だ。」とご機嫌がよくありません。
よほどまずいのでしょう。
自衛隊はどうでしょうか。
海上自衛隊の艦艇が戦闘中何を食べているのかというと、実は普通の食事をしています。本当にその船が大砲を撃ったりミサイルを撃ち込まれたりしていない限り、戦闘航海をしていても調理員は食事を作り続けています。ただ、総員が戦闘配置に長く就かなければならない状況が続く場合には「非常配食」と呼ばれる料理に変わります。
これは士官室や食堂で供される料理ではなく、弁当の容器に入れられ、準備ができると順番に配食用の通路のハッチを開けて取りに行き、各自が戦闘配置において食べるものです。
その弁当も準備できないほど状況が厳しくなってくると、それが握り飯に代わっていきます。さらに厳しくなると缶詰を温めたものが出てきます。この缶詰が皆様が想像される自衛隊のコンバットレーションです。
飽きないようにバラエティが考えられており、鳥めし、赤飯、五目飯などのご飯の缶詰にソーセージの缶詰、沢庵の缶詰などが付いてきます。これは陸海空自衛隊が共通しています。
東日本大震災の時に陸上自衛隊の隊員が被災地で救援活動をしながら食べていたのはこの缶詰です。彼らは野外調理機という特別な装備を持っており、普通の料理はこれで何でも作れてしまうのですが、被災者のためにカレーライスや豚汁を作り続けながらも自分たちは温かい料理を食べることをせず、冷え切った缶詰を食べ続けたのです。「自分たちは後方へ下がれば温かい料理にありつける。すべては被災者のために。」という合言葉だったようです。彼らが被災地で温かい料理を食べ始めたのは5月になってからでした。
自衛隊の食事と言うのは先に述べたとおり予算が決まっています。陸海空で予算に差はありません。基本食の定額というのが定められており、それに少しずつ食べる者の種類によって若干の予算上の措置が加えられています。例えば幹部候補生は徹底的に鍛えられるので一般隊員よりも若干カロリー数が高く設定されています。自動的に一食当たりの単価も高くなりんます。また、艦艇乗員も他に楽しみがないなど特殊な環境が考慮されて高めの単価に設定されています。しかし、そのような考慮があるだけであり、陸海空の隊員食の予算は基本的には同じ金額に設定されています。
にもかかわらず、陸海空の料理には大きな差があります。
ダントツに食事がいいのは海上自衛隊です。これは私が自慢しているのではなく、陸自、空自の隊員も認めています。
何故かと言うと、海上自衛隊だけが調理員を一つの戦闘職種として特別に教育しているからです。隊員はそれぞれ自分の専門の戦闘職種を持っています。自衛隊ではこれを「特技」と呼びます。小銃射撃などは誰でも出来なければなりませんので特別な技ではありませんが、落下傘で降下したり、大砲を撃ったりするのは誰でもできるものではなく、そのための特別な教育を受けて資格を認定されなければならないからです。海上自衛隊では調理がそのような特別な職域の一つとして認定されているのです。
海上自衛隊の調理員は調理の教育を京都府舞鶴にある第4術科学校という学校で受けることになります。この学校は経理や補給になどのいわゆるロジスティックスに関する教育を専門にしていますが、ここで調理員の教育も行っているのです。
また、調理員の資格をとって艦艇や陸上部隊の調理を何年か経験した隊員の中からホテルなどでの実習などに出しています。大きなシティホテルなどで2年程度修行をさせるのです。
何故海上自衛隊が調理員の養成にこのように力を入れているかと言うと、航海中は食事くらいしか楽しみがないということもありますが、これは山の中にいる陸上自衛隊も同じでしょう。海上自衛隊が特殊なのは艦上で昼食会を行ったりレセプションを開いたりするからです。
海外の港に入港すると、その国の海軍の高官や政府要人などを招いて艦上昼食会を行うことがあります。フルコースの料理を供さねばなりません。したがって調理員はフレンチであろうが和の会席料理であろうが対応できなければなりません。
また、艦上レセプションではバンケット料理を供することになります。通常の立食のパーティで出される料理のほか、天ぷらや焼き鳥のブースを作ったりします。私は現役当時、海外での艦上レセプションに何度も参加し、また、外国海軍の艦上レセプションにも何度も招待されましたが、その料理の質においては海上自衛隊が圧倒的、ダントツに高いものを供しています。米海軍のレセプションには最初から期待もしていないのですが、意外なのはフランスなどもかなり手抜きの料理が出てきます。中国海軍はさぞかし素晴らしい中華料理が出されるかと言えば、スーパーの惣菜コーナーの方が遥かにましという程度です。
各国海軍も海上自衛隊の艦上レセプションのレベルの高さを熟知していますので、数か国が同時に艦上レセプションを開催すると海上自衛隊の船に群がるということが起きてしまいます。したがって、環太平洋合同軍事訓練など数か国の海軍が参加する場合、各艦で行われる艦上レセプションは日程調整が行われています。
このような次第で海上自衛隊にはプロの調理人がいるのですが、陸上自衛隊には調理という職種がありません。これはだれでも野外で調理ができなければならないからだそうです。
若い頃、ある陸上自衛隊の偉い方と話をしていて、「海上はメシがいいからな。」と言われたので、「陸上自衛隊の食事は、あれは教育的配慮なんですか?」と無邪気に尋ねたことがあります。「何だ?」と訊かれたので「口を驕らせないための躾とか‥‥」と答えたところ、「お前も強烈な皮肉を言うなぁ。」と呆れられたことがあります。
しかしこれはあながち冗談でもありませんでした。東日本大震災で冷たい缶詰を食べ続けた陸上自衛官たちには頭が下がる思いでした。海上自衛官なら缶詰が3日続いたら悲鳴を上げたかもしれません。
陸上自衛官が野戦訓練中の食事で「オッ、今日はかば焼きだ。」などとニコニコしているのを見ることがあります。近づいてみるとレトルトのサンマのかば焼きだったりします。
海上自衛官が訓練航海中に食べているのは普通の食事なので、「夕食で出てくるデザートがいつもアイスクリームなのは何故か?たまにはメロンとか出てこないかな。」などというのが話題なのと比べると同じ訓練に参加しているにも関わらず随分差があることが分かります。
食事に関してはよく陸上自衛隊をからかうことがあります。
「俺たちのはメシだけど、君たちのはエサだからな。」
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No,128 プロトコールと危機管理の関係
当コラムでは危機管理の三本柱として「意思決定」「リーダーシップ」そして「プロトコール」を掲げています。
この中でちょっと分かりにくいのがプロトコールかもしれません。当コラムでは何故プロトコールが危機管理において重要な役割を演ずるのかを何度か説明しておりますが、私の文章力の限界もあり、ご理解頂くのが難しいようです。従いまして、これからも折に触れてこのプロトコールの問題を取り上げて、ご理解を賜る努力を続けていきたいと思っています。
まず、イージスクライシスマネジメントにおけるプロトコールとは何なのかを説明しなければなりません。
もともとプロトコールとは「議定書」「儀礼」「儀典」などを意味する外交用語でした。最近ではIT関係の技術者がデータの受け渡しのフォーマットなどを確認する際にプロトコールという用語を使いますが、もとは外交用語です。
https://aegis-cms.co.jp/1455
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『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
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お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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軍隊だからと言っていつも特殊な食事をしているわけではありません。通常は普通の集団給食です。国の予算から支出されますので、一食当たりの単価が設定されています。
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米軍ではMREと呼ばれるコンバットレーションが知られています。様々なバージョンがあり、通常の戦場で食されるものから、船が沈んだり飛行機が墜落したりした場合の非常食として準備されているものまであります。
MREとはmeals ready to eat の頭文字なのだそうですが、米軍の軍人に訊くと「冗談じゃない。あれはMeals rejected by everyone(誰も喰わないメシ)だ。」とご機嫌がよくありません。
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自衛隊はどうでしょうか。
海上自衛隊の艦艇が戦闘中何を食べているのかというと、実は普通の食事をしています。本当にその船が大砲を撃ったりミサイルを撃ち込まれたりしていない限り、戦闘航海をしていても調理員は食事を作り続けています。ただ、総員が戦闘配置に長く就かなければならない状況が続く場合には「非常配食」と呼ばれる料理に変わります。
これは士官室や食堂で供される料理ではなく、弁当の容器に入れられ、準備ができると順番に配食用の通路のハッチを開けて取りに行き、各自が戦闘配置において食べるものです。
その弁当も準備できないほど状況が厳しくなってくると、それが握り飯に代わっていきます。さらに厳しくなると缶詰を温めたものが出てきます。この缶詰が皆様が想像される自衛隊のコンバットレーションです。
飽きないようにバラエティが考えられており、鳥めし、赤飯、五目飯などのご飯の缶詰にソーセージの缶詰、沢庵の缶詰などが付いてきます。これは陸海空自衛隊が共通しています。
東日本大震災の時に陸上自衛隊の隊員が被災地で救援活動をしながら食べていたのはこの缶詰です。彼らは野外調理機という特別な装備を持っており、普通の料理はこれで何でも作れてしまうのですが、被災者のためにカレーライスや豚汁を作り続けながらも自分たちは温かい料理を食べることをせず、冷え切った缶詰を食べ続けたのです。「自分たちは後方へ下がれば温かい料理にありつける。すべては被災者のために。」という合言葉だったようです。彼らが被災地で温かい料理を食べ始めたのは5月になってからでした。
自衛隊の食事と言うのは先に述べたとおり予算が決まっています。陸海空で予算に差はありません。基本食の定額というのが定められており、それに少しずつ食べる者の種類によって若干の予算上の措置が加えられています。例えば幹部候補生は徹底的に鍛えられるので一般隊員よりも若干カロリー数が高く設定されています。自動的に一食当たりの単価も高くなりんます。また、艦艇乗員も他に楽しみがないなど特殊な環境が考慮されて高めの単価に設定されています。しかし、そのような考慮があるだけであり、陸海空の隊員食の予算は基本的には同じ金額に設定されています。
にもかかわらず、陸海空の料理には大きな差があります。
ダントツに食事がいいのは海上自衛隊です。これは私が自慢しているのではなく、陸自、空自の隊員も認めています。
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各国海軍も海上自衛隊の艦上レセプションのレベルの高さを熟知していますので、数か国が同時に艦上レセプションを開催すると海上自衛隊の船に群がるということが起きてしまいます。したがって、環太平洋合同軍事訓練など数か国の海軍が参加する場合、各艦で行われる艦上レセプションは日程調整が行われています。
このような次第で海上自衛隊にはプロの調理人がいるのですが、陸上自衛隊には調理という職種がありません。これはだれでも野外で調理ができなければならないからだそうです。
若い頃、ある陸上自衛隊の偉い方と話をしていて、「海上はメシがいいからな。」と言われたので、「陸上自衛隊の食事は、あれは教育的配慮なんですか?」と無邪気に尋ねたことがあります。「何だ?」と訊かれたので「口を驕らせないための躾とか‥‥」と答えたところ、「お前も強烈な皮肉を言うなぁ。」と呆れられたことがあります。
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