指揮官の休日 No.107 船長はキャプテン?
2018/12/14 (Fri) 06:30
XXXX 様
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.115 海を舐めるな を掲載いたしました。
オーストラリア・ケアンズへ研修旅行中の高校生がシュノーケリングの体験中に事故で死亡しました。
この事故について考えています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1366 をご覧ください。
No.107 船長はキャプテン?
洋の東西を問わず、映画やテレビドラマで船や飛行機が取り上げられることは珍しくありません。私は車の運転は好きではありませんが、船を動かしたり、飛行機を飛ばしたりするのは好きなので、そういう映画やドラマは比較的よく観るほうです。
日本の映画やテレビのドラマで船が舞台になるとき、船長は「キャプテン」と呼ばれています。そして1等航海士は「ファーストオフィサー」と呼ばれるのが普通のようです。
旅客機が舞台となる時、機長はやはり「キャプテン」であり、副操縦士が「ファーストオフィサー」と呼ばれています。
旅客機の場合、機長資格を持ったパイロットが副操縦士として乗務することがあり、その場合、機長資格を持った副操縦士は「ファーストオフィサー」とは呼ばれず「コーパイ」と呼ばれます。コーパイというのはコ・パイロット(co-pilot)の略です。
ところが、飛行機の方はいいのですが、船の方は若干現実と異なっています。
日本の船舶では船内で船長は「キャプテン」と呼ばれることが多いと思われますが、世界的には必ずしもそうではありません。
英国では1894年に制定された海運法(Merchant Shipping Act)以来、船長を意味する場合必ず”master” をもって用語を統一しています。
私はある時船長協会の会合で、船長は「キャプテン」と「マスター」のどちらで呼ばれるのかを尋ねたことがありますが、日本ではキャプテンと呼ばれることが多いが、海外ではマスターと呼ばれる方が多いように思うということでした。
世界のプロは船長を「マスター」と呼んでいるのです。
このキャプテンとマスターの語源や使い分けに言及していると本が一冊書けてしまうのではないかと思うほどの歴史的背景があり、このテーマで論文を書いて文学博士になるのも悪くないかななどと思ったりしますが、この議論は当メールマガジンでは止めておきます。
本1冊分の内容を思い切り短く、簡単に説明すると、軍用船舶の船長をcaptain といい、商用船舶の船長をmaster と呼称していたことに起源があります。
ここで「軍艦の艦長」とか「商船の船長」という言い方をしていないのは、昔は軍用船舶と商用船舶がはっきりと区別されていなかったからです。
海賊対応のために商船が武装していることは珍しくなく、また、軍人が指揮している船が貿易に従事していることも珍しくなかった時代が長く続いていました。
時代を経ていくうちに軍艦と商船の役割分担が次第に明白になり、そこで異なる呼称が用いられるようになり、先にも記しましたが軍艦の艦長がcaptain であり、商船の船長がmasterと呼ばれるようになっていきました。
ところが、商船の船長をcaptainと呼ばないかというとそうではなく、儀礼的には商船の船長もcaptainと呼ばれることがあり、それが現代にそのまま受け継がれ、特に日本などではマスターというとバーやキャバレーの支配人のように受け取られてしまうため、この呼称が一般に使われることはほとんどありません。しかし、船長協会で聞いたところによれば、マスターという呼称が何の抵抗もなく用いられることが分かった次第です。
ちなみに公的な文書では商船の船長はmasterであり、商船が持っていなければならない各種証明書等の船長の欄には英文ではmasterと記載されています。
軍艦の艦長が署名する欄などにはcaptainではなくCOと記載されています。
Commanding Officer の略です。さらに次席指揮官の欄にはXOと記載されています。マルバツではなく、エックスオーです。これはexecutive officer の略です。
海外の港で制服で歩いていると、地元の土産を売る商人たちが”master“と言って話しかけてきます。こちらの階級章を読めないので、士官であるとみると片っ端から「船長」と呼びかけているのでしょう。バーやクラブの客引きが中年の男性に「社長」と声をかけているのと同じです。
飛行機の場合には各種書類の機長のサイン欄にはcaptainとは書かれてはおらず、PICと印刷されています。
これはPilot In Commandの略です。
パイロットが付けているフライトログにも機長”captain”ではなく、PICと記載するのが普通です。
航空機の操縦士が機長として飛んだ場合にはPICと記載するのです。
話を船に戻します。
かつて、このメールマガジンでジョセフ・コンラッドの” The Mirror of the Sea” という随筆を紹介したことがあります。(メールマガジン「指揮官の休日」No.068 『海の想い出』?)
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=94
このなかでコンラッドが想い出に残る船長について語る時、船長を何と呼んでいるかといえば、master ではなく、captainと呼んでいます。これは、それらの船長に対する敬意を込めているのだろうと思います。
それでは航海士は何と呼ばれているかというと、メイト"mate“と呼ばれます。
1等航海士は1st Mate であり、以下、2nd ,3rd となっていきます。
当メールマガジンではこれまでに何度か海事英語について触れ、著名な文学者や大学の英文学の教授ですら誤訳をすることがあると述べてきましたが、船長=captain であると思い込んでいる方々も多く、かつて英文学の翻訳の文庫本で「船の支配人」という言葉が出てきて意味がよく分からず、原書を確かめると案の定、“master of the ship “ を訳したものでした。
この訳者も、自分で訳しておきながら釈然としない思いをしていたはずです。「船の支配人」というのが何を指すのか多分その方にも分からないはずです。
船に指揮官が複数乗っていることは珍しくありません。
例えば軍艦が旗艦である場合、艦長のほかに司令官が乗っています。しかし、司令官がその旗艦の運航や戦闘指揮に関して艦長に口出しすることはありません。個艦については艦長が全責任を負っているからです。
漁船には船長のほかに漁労長が乗っている船があります。遠洋の漁船に多いのですが、船長は漁労長の指示を受けて漁場を目指し、操業の開始、終了も漁労長が指示を出しています。
しかし、この誤訳があった本に出てくる船は貨物船です。
幸か不幸かこの単語が2回しか登場しなかったのでその誤訳が放置されたのですが、しかし訳者は明らかにその訳が不自然であることに気が付いていたはずです。その部分だけがぎこちないのです。
船に船長以外に支配人などという配置があるとは訳者も思っていないのでしょう。
気が付いていながらも、船長=captain との思い込みから抜け出ることができなかったのです。船乗りなどに聞かなくとも、高校生が使う辞書にもmasterが船長であることが記載されているレベルの話ではあるのですが・・・。
かつて、福田恒存氏が翻訳したヘミングウェイの『老人と海』で“ When I was your age, I was before the mast on a square-rigged ship that run to Africa.” という一文が、「お前くらいの年ごろには、おれはアフリカ通いの横帆を張った船に乗り込んで、マストの前に立っていた。」と訳され、これが誤訳であると指摘したことがあります。
“before the mast” は「マストの前」ではなく、「平水夫として」と訳さなければならないのです。この一文でも福田恒存氏は釈然としないまま訳していたに違いないのです。
なぜ、これら文学者や英語専門の教授たちが、釈然としないまま、船乗りに訊こうとしないのかが不思議なのです。多分、彼らにはプライドあるいは驕りがあって、船方なんぞにお伺いをたてるなんてことができないのでしょう。
プロにとっては何でもない普通のことであっても、その他の人々にとってはびっくりするようなことは多々あります。専門家の知見というのはそういうものなのでしょう。
プロを舐めてはいけないとつくづく思います。
-------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くことが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
-------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
-------------------------------------------------------------------------------------
専門コラム「指揮官の決断」掲載のご案内
No.115 海を舐めるな
当コラムでは以前に「海を恐れるな、畏れよ」というタイトルの記事を掲載いたしました。(専門コラム「指揮官の決断」 No.096 海を恐れるな、畏れよ https://aegis-cms.co.jp/1229 )
今回はもっと強く、「海を舐めるな」です。
12月5日、オールトラリア・ケアンズに研修旅行中であった新潟県の私立高校の生徒がシュノーケリングの体験中に死亡するという事故が起こりました。
楽しみにしていたであろう海外研修旅行で若い命を落とした本人の無念さや送り出した親御さんの胸中を思うとやり切れません。
続きはこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/1366
---------------------------------------------------------------------------------------
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------
指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
-------------------------------------------------------------------
危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、No.115 海を舐めるな を掲載いたしました。
オーストラリア・ケアンズへ研修旅行中の高校生がシュノーケリングの体験中に事故で死亡しました。
この事故について考えています。
詳しくは、https://aegis-cms.co.jp/1366 をご覧ください。
No.107 船長はキャプテン?
洋の東西を問わず、映画やテレビドラマで船や飛行機が取り上げられることは珍しくありません。私は車の運転は好きではありませんが、船を動かしたり、飛行機を飛ばしたりするのは好きなので、そういう映画やドラマは比較的よく観るほうです。
日本の映画やテレビのドラマで船が舞台になるとき、船長は「キャプテン」と呼ばれています。そして1等航海士は「ファーストオフィサー」と呼ばれるのが普通のようです。
旅客機が舞台となる時、機長はやはり「キャプテン」であり、副操縦士が「ファーストオフィサー」と呼ばれています。
旅客機の場合、機長資格を持ったパイロットが副操縦士として乗務することがあり、その場合、機長資格を持った副操縦士は「ファーストオフィサー」とは呼ばれず「コーパイ」と呼ばれます。コーパイというのはコ・パイロット(co-pilot)の略です。
ところが、飛行機の方はいいのですが、船の方は若干現実と異なっています。
日本の船舶では船内で船長は「キャプテン」と呼ばれることが多いと思われますが、世界的には必ずしもそうではありません。
英国では1894年に制定された海運法(Merchant Shipping Act)以来、船長を意味する場合必ず”master” をもって用語を統一しています。
私はある時船長協会の会合で、船長は「キャプテン」と「マスター」のどちらで呼ばれるのかを尋ねたことがありますが、日本ではキャプテンと呼ばれることが多いが、海外ではマスターと呼ばれる方が多いように思うということでした。
世界のプロは船長を「マスター」と呼んでいるのです。
このキャプテンとマスターの語源や使い分けに言及していると本が一冊書けてしまうのではないかと思うほどの歴史的背景があり、このテーマで論文を書いて文学博士になるのも悪くないかななどと思ったりしますが、この議論は当メールマガジンでは止めておきます。
本1冊分の内容を思い切り短く、簡単に説明すると、軍用船舶の船長をcaptain といい、商用船舶の船長をmaster と呼称していたことに起源があります。
ここで「軍艦の艦長」とか「商船の船長」という言い方をしていないのは、昔は軍用船舶と商用船舶がはっきりと区別されていなかったからです。
海賊対応のために商船が武装していることは珍しくなく、また、軍人が指揮している船が貿易に従事していることも珍しくなかった時代が長く続いていました。
時代を経ていくうちに軍艦と商船の役割分担が次第に明白になり、そこで異なる呼称が用いられるようになり、先にも記しましたが軍艦の艦長がcaptain であり、商船の船長がmasterと呼ばれるようになっていきました。
ところが、商船の船長をcaptainと呼ばないかというとそうではなく、儀礼的には商船の船長もcaptainと呼ばれることがあり、それが現代にそのまま受け継がれ、特に日本などではマスターというとバーやキャバレーの支配人のように受け取られてしまうため、この呼称が一般に使われることはほとんどありません。しかし、船長協会で聞いたところによれば、マスターという呼称が何の抵抗もなく用いられることが分かった次第です。
ちなみに公的な文書では商船の船長はmasterであり、商船が持っていなければならない各種証明書等の船長の欄には英文ではmasterと記載されています。
軍艦の艦長が署名する欄などにはcaptainではなくCOと記載されています。
Commanding Officer の略です。さらに次席指揮官の欄にはXOと記載されています。マルバツではなく、エックスオーです。これはexecutive officer の略です。
海外の港で制服で歩いていると、地元の土産を売る商人たちが”master“と言って話しかけてきます。こちらの階級章を読めないので、士官であるとみると片っ端から「船長」と呼びかけているのでしょう。バーやクラブの客引きが中年の男性に「社長」と声をかけているのと同じです。
飛行機の場合には各種書類の機長のサイン欄にはcaptainとは書かれてはおらず、PICと印刷されています。
これはPilot In Commandの略です。
パイロットが付けているフライトログにも機長”captain”ではなく、PICと記載するのが普通です。
航空機の操縦士が機長として飛んだ場合にはPICと記載するのです。
話を船に戻します。
かつて、このメールマガジンでジョセフ・コンラッドの” The Mirror of the Sea” という随筆を紹介したことがあります。(メールマガジン「指揮官の休日」No.068 『海の想い出』?)
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all&m=94
このなかでコンラッドが想い出に残る船長について語る時、船長を何と呼んでいるかといえば、master ではなく、captainと呼んでいます。これは、それらの船長に対する敬意を込めているのだろうと思います。
それでは航海士は何と呼ばれているかというと、メイト"mate“と呼ばれます。
1等航海士は1st Mate であり、以下、2nd ,3rd となっていきます。
当メールマガジンではこれまでに何度か海事英語について触れ、著名な文学者や大学の英文学の教授ですら誤訳をすることがあると述べてきましたが、船長=captain であると思い込んでいる方々も多く、かつて英文学の翻訳の文庫本で「船の支配人」という言葉が出てきて意味がよく分からず、原書を確かめると案の定、“master of the ship “ を訳したものでした。
この訳者も、自分で訳しておきながら釈然としない思いをしていたはずです。「船の支配人」というのが何を指すのか多分その方にも分からないはずです。
船に指揮官が複数乗っていることは珍しくありません。
例えば軍艦が旗艦である場合、艦長のほかに司令官が乗っています。しかし、司令官がその旗艦の運航や戦闘指揮に関して艦長に口出しすることはありません。個艦については艦長が全責任を負っているからです。
漁船には船長のほかに漁労長が乗っている船があります。遠洋の漁船に多いのですが、船長は漁労長の指示を受けて漁場を目指し、操業の開始、終了も漁労長が指示を出しています。
しかし、この誤訳があった本に出てくる船は貨物船です。
幸か不幸かこの単語が2回しか登場しなかったのでその誤訳が放置されたのですが、しかし訳者は明らかにその訳が不自然であることに気が付いていたはずです。その部分だけがぎこちないのです。
船に船長以外に支配人などという配置があるとは訳者も思っていないのでしょう。
気が付いていながらも、船長=captain との思い込みから抜け出ることができなかったのです。船乗りなどに聞かなくとも、高校生が使う辞書にもmasterが船長であることが記載されているレベルの話ではあるのですが・・・。
かつて、福田恒存氏が翻訳したヘミングウェイの『老人と海』で“ When I was your age, I was before the mast on a square-rigged ship that run to Africa.” という一文が、「お前くらいの年ごろには、おれはアフリカ通いの横帆を張った船に乗り込んで、マストの前に立っていた。」と訳され、これが誤訳であると指摘したことがあります。
“before the mast” は「マストの前」ではなく、「平水夫として」と訳さなければならないのです。この一文でも福田恒存氏は釈然としないまま訳していたに違いないのです。
なぜ、これら文学者や英語専門の教授たちが、釈然としないまま、船乗りに訊こうとしないのかが不思議なのです。多分、彼らにはプライドあるいは驕りがあって、船方なんぞにお伺いをたてるなんてことができないのでしょう。
プロにとっては何でもない普通のことであっても、その他の人々にとってはびっくりするようなことは多々あります。専門家の知見というのはそういうものなのでしょう。
プロを舐めてはいけないとつくづく思います。
-------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジンのバックナンバーは弊社Facebookページからもお読みいただけます。
Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くことが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
-------------------------------------------------------------------------------------
当社Webサイトに、専門コラム「指揮官の決断」をアップしております。是非、ご覧ください
-------------------------------------------------------------------------------------
専門コラム「指揮官の決断」掲載のご案内
No.115 海を舐めるな
当コラムでは以前に「海を恐れるな、畏れよ」というタイトルの記事を掲載いたしました。(専門コラム「指揮官の決断」 No.096 海を恐れるな、畏れよ https://aegis-cms.co.jp/1229 )
今回はもっと強く、「海を舐めるな」です。
12月5日、オールトラリア・ケアンズに研修旅行中であった新潟県の私立高校の生徒がシュノーケリングの体験中に死亡するという事故が起こりました。
楽しみにしていたであろう海外研修旅行で若い命を落とした本人の無念さや送り出した親御さんの胸中を思うとやり切れません。
続きはこちらからお読みください。
https://aegis-cms.co.jp/1366
---------------------------------------------------------------------------------------
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
https://aegis-cms.co.jp/book1
---------------------------------------------------------------------------------------
Facebookページを公開しています。
メールマガジン及び専門コラムのバックナンバーをお読みいただけます。
Facebookページ「指揮官の決断/休日」
https://www.facebook.com/aegis.cm
----------------------------------------------------------------------------------------
教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
https://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------------------
コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
----------------------------------------------------------------------------------------
図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
----------------------------------------------------------------------------------------
バックナンバーを公開しています。
こちらからご覧ください。https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
メールアドレスの変更はこちらからお手続きください。
http://aetis-cms.co.jp/mailmag
メールマガジンがご不要の場合はこちらから解除をして頂くことができます。
http://q.bmd.jp/bm/p/f/s.php?id=aegismm&mail=uhayashi%40jcom.zaq.ne.jp&no=2
----------------------------------------------------------------------------------------
メールマガジン「指揮官の休日」
発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
email: yhayashi@aegis-cms.co.jp
Web : http://aegis-cms.co.jp
----------------------------------------------------------------------------