メールマガジン「指揮官の休日」 No.416 幽霊の正体見たり、枯れ尾花
2025/05/09 (Fri) 06:30
XXXX 様
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指揮官の休日
――コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日――
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危機管理に挑む経営者の皆様に贈るメールマガジンです。
当社コラム「指揮官の決断」の更新のお知らせ、当社セミナー情報はもちろん、危機管理の参考となる図書、是非参加をお薦めする他社主催のセミナーなどの情報をお届けして参ります。
あわせて、常時厳しい緊張状態を強いられている経営者の皆様にちょっと一息ついて頂けるような話題を選んでお送りします。「コーヒーで始まり、ドライマティーニで締めくくる心豊かな一日」というサブタイトルも、日頃すさまじいストレスにさらされながらも頑張っている経営者の皆様に、たまにはそんな日がありますようにという想いを込めています。
途中からお読みの方は、お時間のあるときに是非バックナンバーをお読みください。
ワンクリックでバックナンバーを読んで頂けます。
https://q.bmv.jp/bm/p/bn/list.php?i=aegismm&no=all
専門コラム「指揮官の決断」は、第431回 言葉の問題を掲載いたしました。
言葉の解釈が変わっていくことによって、その言葉が表していた概念が理解されなくなっています。
どうでもいい言葉はどう解釈されようといいのですが、一国の首相が「危機管理」を理解できないのは困りものです。
https://aegis-cms.co.jp/3517
No.416 幽霊の正体見たり、枯れ尾花
今回の表題について説明します。
疑心暗鬼で物事を見ると、実際とは違うものに見えてしまう、または、恐れていたものが実はつまらないものだったという、物事の真実を見抜く重要性を説く言葉です.
今年に入ってから、ある番組制作会社(と言っていますが、実際には何をやっている会社か知りません。)から、何度かメールが来て、ある番組にコメンテータとして出演してくれないかという打診がありました。
「このメディア嫌いの筆者に出演を依頼してくるとは、いい度胸だ」と思いましたが、返事をしないでいたら、観るに見かねたスタッフが返信してしまいました。
それによると、「For Japan」という古舘伊知郎さんがMCを務める情報番組で、ABEMA TVで配信されているようです。
話によると、準レギュラーということで、毎回ではないということでした。
ところが、専門の危機管理についてのコメントを求められるのかと思ったら、そうではなく、企業経営についての蘊蓄を語って欲しいということでした。
どうも、毎回10人ほどの様々な経営者が呼ばれ、その日のテーマについてのコメントを述べるということらしく、さらには別のコーナーで、毎回一人が取り上げられ、その経営する会社について10分くらい話をする機会があるということでした。
出演交渉のメールを送ってきた担当者によれば、そのブランディング力は大きく、また、番組の中ではないが、様々な懇親会が計画され、そこで多くの人たちと名刺交換をする機会があるということでした。二言目に「古舘伊知郎さん」という名前が出てきます。
私に言わせれば、「古舘伊知郎が何だ。」というところです。
専門の危機管理の話ではないというので急に興味を失ってしまったのですが、ABEMA TVというのが気になって、どういう番組なのかを観てみようと思いました。
筆者は地上波TVはほとんど観ないのですが、ABEMA TVの中で、ある情報番組だけは、司会者の采配が見事なので、たまたま目にした場合は、チャンネルを変えずに観ていることがあります。
「For Japan」という番組は、確かに古舘伊知郎さんが女性のアシスタントと共にMCを務め、10人程度の経営者と言われる人たちが参加していました。
当日のテーマについて、ゲストのコメントがあったのちに、古舘さんの指名で、準レギュラーの経営者たちがコメントを述べるという段取りで進行していき、それぞれの経営者たちが、それなりにしっかりとした意見を述べているようでした。
ただ、筆者には関心のないテーマばかりで、自分の専門以外のことには極力触れないという弊社のポリシーに合致しないという思いが強く残りました。
さらに、びっくりするのは、その準レギュラーとして出演するために、出演料をもらうのではなく、出演させせて頂くために、こちらから出演料を支払うのだそうです。つまり、準レギュラーとして出演している経営者たちは、多額のお金を支払って出演しているということになります。
こちらからお金を払って、専門以外のことについてコメントを述べるにしても、多分、そのコメントは放送作家が用意したものでしょうし、その実態が分かったところで、お断りしました。
ただ、古舘伊知郎という人には関心を持ったので、YouTubeで見つけると観るようになりました。
かつて、ニュースステーションという番組のキャスターを彼が務めていたころ、護衛艦「くらま」が関門海峡で韓国のコンテナ船に衝突されるという事故がありました。この時、彼は、田岡俊次というaera編集長だった軍事評論家を電話出演させ、彼が「韓国船が自衛艦の左舷に衝突しているようですから、海上自衛隊に有利ですね。」という見当違いのコメントをした瞬間に言葉を失い、しばらくの沈黙の後、「それでも、観艦式の後ということで、気のゆるみとかがあったかもしれませんね。」というような印象操作に必死になっていたのを覚えています。
筆者は、当時、呉で造修補給所長兼呉地方総監部技術補給監理官という配置にあり、この事故を受けて、総監部から呼び出され、地方隊各指揮官と一緒に作戦室で大きなスクリーンでニュースを観ているところでした。
現場海域は海上衝突予防法適用海域ではなく、航路外から航路内を横切るためには、航路内を航行している船舶を避けなればならないので、左だろうが右だろうが関係ないのですが、田岡氏はその程度のことも知らずにコメントしています。筆者の印象に残ったのは、その時に必死になって印象操作をしようとした古舘氏の方でした。
田岡氏という人がどういう人なのかは、海上自衛隊が初めてウラジオストクに護衛艦を派遣した際の司令部幕僚として、現地で付きまとわられたので、よく知っていました。
その古舘氏ですが、古舘伊知郎チャンネルというYouTubeチャンネルを持っており、そこでいろいろな評論活動をしています。
ある時ウクライナ戦争について解説していたので、それを観たことがあります。
彼は、様々な情報をいろいろなニュースを観て、それをまとめて解説しているようでした。
ところが、彼は軍事に関しては素人なので、その解説もでたらめでした。
彼が偉そうに解説するには、攻撃側は防御側の3倍の兵力を持たねばならないというのが兵術の常識であるが、ウクライナ全軍を合わせても、ウクライナが攻撃目標としている東部4州に展開するロシア陸軍の3倍はない、したがって、兵術の常識に反し、ウクライナ軍の攻撃はうまくいかないということでした。
筆者の印象は、「これだから素人は困る。」というものでした。
当時、ロシア軍は東部4州の、主として6拠点に陣取っていました。
一斉に攻撃するのではなく、各拠点ごとに攻撃を加えれば、全体では3倍にならなくても、その局面では3倍を超える兵力を集中できます。攻撃側は、正面を自分で選ぶことができるからです。そうやって各個撃破を図っていく作戦をウクライナ軍は取ろうとするはずです。
南や北に圧力をかけて、どこが正面か分からないようにして、敵の手薄になったところを重心として突破していくというのが通常の戦術なのですが、彼は「3倍」ということは覚えたものの、そのあとの陽動について学んでいなかったのでしょう。
ちょうど田岡氏が、相手船を右に見る船が避航義務を負うという海上衝突予防法上の規定を、「あたご」の衝突事故の時に知って、それで得意になってコメントをしたのと似ています。現場が海上衝突予防法が適用される海域ではないということを知らないのです。
古舘伊知郎チャンネルというのは、その程度のチャンネルだと思っていました。
ところが、最近、またその古舘伊知郎チャンネルでとんでもない動画を見つけてしまいました。
問題は消費税でした。
現在、自民党から出ている消費減税案は食料品の消費税だけも期限を区切ってゼロにしたらどうかという案です。
筆者は、この案の危険性、出鱈目さにすぐに気が付きました。
何故すぐに気が付いたかというと、筆者が優秀だからではありません。
消費税を扱う現場の経験があったからです。そのような経験者は、すぐにこれがとんでもない案だということにすぐ気が付きます。
一般の方は、消費税を支払うだけなので、食料品の消費税がゼロになるというのは結構なことだと思うのですが、これは食料品を取り扱っている業者にとっては、大変なことなのです。
何故筆者が消費税に詳しかったかというと、筆者は海上自衛隊で予算要求作業をやっていたことがあったからです。
国の調達でも、消費税は支払います。最終的に国に返ってくる消費税をなぜ国の機関が支払う必要があるのかということに疑問を感じていました。
筆者は、それが変だと思ったので、消費税というのはどういう税なのかを調べたのです。消費税が導入された当時の国会の議論や諸外国の精度なども調べ、日本独特の税制であることに気付きました。
その後、予算要求をする業務から、予算を執行する業務に変わりました。総監部経理部長として、年間1400億円程度の予算を執行していたのです。
その予算執行の責任者として、防衛省訓令第1号という規則に縛られていました。
それは、予算執行にあたり、地元経済に配意しなさい、という訓令でした。
国の機関が行う調達は、予算を無駄にしないように、入札によってなるべく安く調達しようとするのですが、そればかりだと、大資本が有利になってしまう場合があるので、地元の零細企業に仕事が回るように工夫する必要があったのです。
したがって、零細中小企業の実態も調べました。
総監部経理部長が行う契約は、艦船修理から隊員の食事を作る食材の調達まで幅広いものです。しかし、業者にヒアリングしたりしている間に気付いたのは、食料品とその他の調達ではかなり相手方の経理が違うなということでした。
食料品には軽減税率が適用され、また消費税には原材料を調達する際に支払う消費税を差し引いて納入することが認められています。
ところが、食料品だけ消費税を免除すると、その控除ができなくなり、消費者から得た消費税を全部納入することになります。
原材料の価格が消費税分だけ確実に安くなっていけば問題は生じないのですが、これまで税込み110円で買っていたものが、すべて100円になるということは期待できません。
それほどきれいに消費税分が厳格されると期待する方が無理なのです。
ところが、最終的に消費者が買う段階では、消費税分が安くなっていないと、大変なクレームをつけられることになります。
消費税がなくなって値段が消費税分だけ安くならないことに文句を言う消費者は、円安による原材料費の高騰分の値上げに文句を言わないか、というとそうではありません。
それでも、原材料費の高騰分を価格に転嫁できる業者はいいのですが、多くの業者は転嫁できずに苦しんでいます。
そういった実情があることを、現場は知っているので、食料品だけの消費税免除に大きな問題があることに気付きます。これが消費税の一律廃止や一律減税ならまだ問題は小さいの ですが、食料品だけの免除は、最終消費者は良くても、食料品を扱う業者にとってはとんでもないことなのです。
この理屈は、詳しく語ると大きなページを必要としますし、そもそも当コラムの専門ではないので、あえて解説はしませんが、食品だけの消費税廃止は、食料を扱う業者いじめとなって大きな社会問題を惹起するはずです。
その問題にネットで気が付いて指摘しているチャンネルが多いことに古舘威郎チャンネルは気付いたようです。そこで数週間様子を見ていたらしいのですが、いよいよこの食料品に対する消費税免除問題を批判することが正しいようだという見極めがついたのでしょう。しばらく逡巡していたところが、一斉に攻勢に転じて動画を作ったようです。
ところが、ウクライナ反抗の兵術論の時のように、付け焼刃の知識で、やたらとネット上の議論を嗅ぎまわって作った動画らしく、彼の解説は、解説の体を成していません。
本人がしっかり理解していないのですから、分かりやすい解説になるはずはないのです。
彼の様々な解説など、その程度のものであることを知るべきです。それが彼の正体です。
ね、今回もどうでもいい話だったでしょ? 強いて言えば、似非情報に惑わされてはいけないという教訓くらいはあるかもしれませんが。
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専門コラム 第431回 言葉の問題
当コラムでは、言葉の問題を扱うことが時々あります。
筆者は言葉の問題には若干敏感なところがあり、それは、自分が使う言葉の意味が正しく相手に伝わるかどうかを気にしているということもありますが、何故そうなったかという理由を考えると、多分、これまでの人生経験が大きく関わっているのだろうと思っています。
まず、大学院です。
経済学研究科博士前期課程に入って最初にショックだったのは、論文の読み方が学部の頃とまったく変わったことでした。
論文の執筆者が何を主張したいのかを、言葉の一言一言から探るのです。
経済学研究科に籍を置いたので、読む論文は社会科学の論文が圧倒的に多数でした。自然科学と異なるのは、実験室のような再現性が得られず、膨大なデータを統計的に分析するか、帰納的に、あるいは演繹的にある結論を導き出していくしかないのです。
言葉の使い方に厳密にならざるを得ません
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Facebookページ 「指揮官の決断/休日」 https://www.facebook.com/aegis.cm
Facebookページでは、当メールマガジンでは見ることのできない写真もご覧頂くこ
とが出来ます。
是非Facebookページをご訪問ください。
Twitterでも時々、折に触れて気が付いたことを呟いています。
https://twitter.com/CaptainHayashi です。
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弊社出版物のご紹介
『事業大躍進に挑む経営者のための「クライシスマネジメント」』
林 祐 著
セルバ出版
お求めの方は、こちらからどうぞ。
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教育訓練の受託を開始いたしました。
ご要望の多い教育訓練について、専門のスタッフを揃え、新たに教育訓練部門を開設いたしました。
内容について順次ご紹介して参りますが、弊社Webをご覧頂ければ概要をご理解頂けます。
こちらをどうぞ
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コンサルティングのご案内 当社では5種類のコンサルティングを行っています。
1 ACMS導入コンサルティング
イージスクライシスマネジメントシステムを導入するためのコンサルティングです。
全6回のコンサルティングで導入できるようパッケージ化されたシステムの導入支援を行います。
当社開催の戦略セミナーをあらかじめ受講し、コンサルティングの内容等にご理解を頂くことが前提
となっております。
2 スポットコンサルティング
何が問題で、どうコンサルティングを受ければいいのかわからない、自社にシステムを導入できるの
かどうかわからない、などのご相談はスポットコンサルティングをご利用ください。
3 プレコンサルティング
当社のコンサルティングの考え方をWeb等で理解されて導入を決めている方、一刻も早く導入をしたい
と考えている方には、このプレコンサルティングをお薦めします。
導入コンサルティングの第1回で行う内容を含んでおり、コンサルティングの概要及び必要な準備作業等
について、関係者全員が揃って受講できるため、理解を共有でき、導入が容易になります。
プレコンサルティングに引き続き導入コンサルティングを契約される際には、プレコンサルティング料金
は全額返金させていただきますので、費用が無駄になりません。
4 テーラード・コンサルティング
危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
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今回の表題について説明します。
疑心暗鬼で物事を見ると、実際とは違うものに見えてしまう、または、恐れていたものが実はつまらないものだったという、物事の真実を見抜く重要性を説く言葉です.
今年に入ってから、ある番組制作会社(と言っていますが、実際には何をやっている会社か知りません。)から、何度かメールが来て、ある番組にコメンテータとして出演してくれないかという打診がありました。
「このメディア嫌いの筆者に出演を依頼してくるとは、いい度胸だ」と思いましたが、返事をしないでいたら、観るに見かねたスタッフが返信してしまいました。
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話によると、準レギュラーということで、毎回ではないということでした。
ところが、専門の危機管理についてのコメントを求められるのかと思ったら、そうではなく、企業経営についての蘊蓄を語って欲しいということでした。
どうも、毎回10人ほどの様々な経営者が呼ばれ、その日のテーマについてのコメントを述べるということらしく、さらには別のコーナーで、毎回一人が取り上げられ、その経営する会社について10分くらい話をする機会があるということでした。
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私に言わせれば、「古舘伊知郎が何だ。」というところです。
専門の危機管理の話ではないというので急に興味を失ってしまったのですが、ABEMA TVというのが気になって、どういう番組なのかを観てみようと思いました。
筆者は地上波TVはほとんど観ないのですが、ABEMA TVの中で、ある情報番組だけは、司会者の采配が見事なので、たまたま目にした場合は、チャンネルを変えずに観ていることがあります。
「For Japan」という番組は、確かに古舘伊知郎さんが女性のアシスタントと共にMCを務め、10人程度の経営者と言われる人たちが参加していました。
当日のテーマについて、ゲストのコメントがあったのちに、古舘さんの指名で、準レギュラーの経営者たちがコメントを述べるという段取りで進行していき、それぞれの経営者たちが、それなりにしっかりとした意見を述べているようでした。
ただ、筆者には関心のないテーマばかりで、自分の専門以外のことには極力触れないという弊社のポリシーに合致しないという思いが強く残りました。
さらに、びっくりするのは、その準レギュラーとして出演するために、出演料をもらうのではなく、出演させせて頂くために、こちらから出演料を支払うのだそうです。つまり、準レギュラーとして出演している経営者たちは、多額のお金を支払って出演しているということになります。
こちらからお金を払って、専門以外のことについてコメントを述べるにしても、多分、そのコメントは放送作家が用意したものでしょうし、その実態が分かったところで、お断りしました。
ただ、古舘伊知郎という人には関心を持ったので、YouTubeで見つけると観るようになりました。
かつて、ニュースステーションという番組のキャスターを彼が務めていたころ、護衛艦「くらま」が関門海峡で韓国のコンテナ船に衝突されるという事故がありました。この時、彼は、田岡俊次というaera編集長だった軍事評論家を電話出演させ、彼が「韓国船が自衛艦の左舷に衝突しているようですから、海上自衛隊に有利ですね。」という見当違いのコメントをした瞬間に言葉を失い、しばらくの沈黙の後、「それでも、観艦式の後ということで、気のゆるみとかがあったかもしれませんね。」というような印象操作に必死になっていたのを覚えています。
筆者は、当時、呉で造修補給所長兼呉地方総監部技術補給監理官という配置にあり、この事故を受けて、総監部から呼び出され、地方隊各指揮官と一緒に作戦室で大きなスクリーンでニュースを観ているところでした。
現場海域は海上衝突予防法適用海域ではなく、航路外から航路内を横切るためには、航路内を航行している船舶を避けなればならないので、左だろうが右だろうが関係ないのですが、田岡氏はその程度のことも知らずにコメントしています。筆者の印象に残ったのは、その時に必死になって印象操作をしようとした古舘氏の方でした。
田岡氏という人がどういう人なのかは、海上自衛隊が初めてウラジオストクに護衛艦を派遣した際の司令部幕僚として、現地で付きまとわられたので、よく知っていました。
その古舘氏ですが、古舘伊知郎チャンネルというYouTubeチャンネルを持っており、そこでいろいろな評論活動をしています。
ある時ウクライナ戦争について解説していたので、それを観たことがあります。
彼は、様々な情報をいろいろなニュースを観て、それをまとめて解説しているようでした。
ところが、彼は軍事に関しては素人なので、その解説もでたらめでした。
彼が偉そうに解説するには、攻撃側は防御側の3倍の兵力を持たねばならないというのが兵術の常識であるが、ウクライナ全軍を合わせても、ウクライナが攻撃目標としている東部4州に展開するロシア陸軍の3倍はない、したがって、兵術の常識に反し、ウクライナ軍の攻撃はうまくいかないということでした。
筆者の印象は、「これだから素人は困る。」というものでした。
当時、ロシア軍は東部4州の、主として6拠点に陣取っていました。
一斉に攻撃するのではなく、各拠点ごとに攻撃を加えれば、全体では3倍にならなくても、その局面では3倍を超える兵力を集中できます。攻撃側は、正面を自分で選ぶことができるからです。そうやって各個撃破を図っていく作戦をウクライナ軍は取ろうとするはずです。
南や北に圧力をかけて、どこが正面か分からないようにして、敵の手薄になったところを重心として突破していくというのが通常の戦術なのですが、彼は「3倍」ということは覚えたものの、そのあとの陽動について学んでいなかったのでしょう。
ちょうど田岡氏が、相手船を右に見る船が避航義務を負うという海上衝突予防法上の規定を、「あたご」の衝突事故の時に知って、それで得意になってコメントをしたのと似ています。現場が海上衝突予防法が適用される海域ではないということを知らないのです。
古舘伊知郎チャンネルというのは、その程度のチャンネルだと思っていました。
ところが、最近、またその古舘伊知郎チャンネルでとんでもない動画を見つけてしまいました。
問題は消費税でした。
現在、自民党から出ている消費減税案は食料品の消費税だけも期限を区切ってゼロにしたらどうかという案です。
筆者は、この案の危険性、出鱈目さにすぐに気が付きました。
何故すぐに気が付いたかというと、筆者が優秀だからではありません。
消費税を扱う現場の経験があったからです。そのような経験者は、すぐにこれがとんでもない案だということにすぐ気が付きます。
一般の方は、消費税を支払うだけなので、食料品の消費税がゼロになるというのは結構なことだと思うのですが、これは食料品を取り扱っている業者にとっては、大変なことなのです。
何故筆者が消費税に詳しかったかというと、筆者は海上自衛隊で予算要求作業をやっていたことがあったからです。
国の調達でも、消費税は支払います。最終的に国に返ってくる消費税をなぜ国の機関が支払う必要があるのかということに疑問を感じていました。
筆者は、それが変だと思ったので、消費税というのはどういう税なのかを調べたのです。消費税が導入された当時の国会の議論や諸外国の精度なども調べ、日本独特の税制であることに気付きました。
その後、予算要求をする業務から、予算を執行する業務に変わりました。総監部経理部長として、年間1400億円程度の予算を執行していたのです。
その予算執行の責任者として、防衛省訓令第1号という規則に縛られていました。
それは、予算執行にあたり、地元経済に配意しなさい、という訓令でした。
国の機関が行う調達は、予算を無駄にしないように、入札によってなるべく安く調達しようとするのですが、そればかりだと、大資本が有利になってしまう場合があるので、地元の零細企業に仕事が回るように工夫する必要があったのです。
したがって、零細中小企業の実態も調べました。
総監部経理部長が行う契約は、艦船修理から隊員の食事を作る食材の調達まで幅広いものです。しかし、業者にヒアリングしたりしている間に気付いたのは、食料品とその他の調達ではかなり相手方の経理が違うなということでした。
食料品には軽減税率が適用され、また消費税には原材料を調達する際に支払う消費税を差し引いて納入することが認められています。
ところが、食料品だけ消費税を免除すると、その控除ができなくなり、消費者から得た消費税を全部納入することになります。
原材料の価格が消費税分だけ確実に安くなっていけば問題は生じないのですが、これまで税込み110円で買っていたものが、すべて100円になるということは期待できません。
それほどきれいに消費税分が厳格されると期待する方が無理なのです。
ところが、最終的に消費者が買う段階では、消費税分が安くなっていないと、大変なクレームをつけられることになります。
消費税がなくなって値段が消費税分だけ安くならないことに文句を言う消費者は、円安による原材料費の高騰分の値上げに文句を言わないか、というとそうではありません。
それでも、原材料費の高騰分を価格に転嫁できる業者はいいのですが、多くの業者は転嫁できずに苦しんでいます。
そういった実情があることを、現場は知っているので、食料品だけの消費税免除に大きな問題があることに気付きます。これが消費税の一律廃止や一律減税ならまだ問題は小さいの ですが、食料品だけの免除は、最終消費者は良くても、食料品を扱う業者にとってはとんでもないことなのです。
この理屈は、詳しく語ると大きなページを必要としますし、そもそも当コラムの専門ではないので、あえて解説はしませんが、食品だけの消費税廃止は、食料を扱う業者いじめとなって大きな社会問題を惹起するはずです。
その問題にネットで気が付いて指摘しているチャンネルが多いことに古舘威郎チャンネルは気付いたようです。そこで数週間様子を見ていたらしいのですが、いよいよこの食料品に対する消費税免除問題を批判することが正しいようだという見極めがついたのでしょう。しばらく逡巡していたところが、一斉に攻勢に転じて動画を作ったようです。
ところが、ウクライナ反抗の兵術論の時のように、付け焼刃の知識で、やたらとネット上の議論を嗅ぎまわって作った動画らしく、彼の解説は、解説の体を成していません。
本人がしっかり理解していないのですから、分かりやすい解説になるはずはないのです。
彼の様々な解説など、その程度のものであることを知るべきです。それが彼の正体です。
ね、今回もどうでもいい話だったでしょ? 強いて言えば、似非情報に惑わされてはいけないという教訓くらいはあるかもしれませんが。
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専門コラム 第431回 言葉の問題
当コラムでは、言葉の問題を扱うことが時々あります。
筆者は言葉の問題には若干敏感なところがあり、それは、自分が使う言葉の意味が正しく相手に伝わるかどうかを気にしているということもありますが、何故そうなったかという理由を考えると、多分、これまでの人生経験が大きく関わっているのだろうと思っています。
まず、大学院です。
経済学研究科博士前期課程に入って最初にショックだったのは、論文の読み方が学部の頃とまったく変わったことでした。
論文の執筆者が何を主張したいのかを、言葉の一言一言から探るのです。
経済学研究科に籍を置いたので、読む論文は社会科学の論文が圧倒的に多数でした。自然科学と異なるのは、実験室のような再現性が得られず、膨大なデータを統計的に分析するか、帰納的に、あるいは演繹的にある結論を導き出していくしかないのです。
言葉の使い方に厳密にならざるを得ません
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1 ACMS導入コンサルティング
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危機管理組織はすでに構築しているが指揮所演習について指導してもらいたい、中間管理層に活気がな
いので彼らに強力なリーダーとなってもらいたい、プロトコールに自信を持てるようになりたい、などのご
要望には、個別に対応させて頂きます。
5 指揮所演習コンサルティング
トップと主要スタッフだけで行うことのできるようにコンパクトに設計された図上演習です。
危機管理の先頭に立つスタッフを育てるために最適な手法として注目されています。
お気軽にご相談ください。
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図上演習コンサルティングのご案内
多数のご要望にお応えするため、図上演習に特化したコンサルティングを開始いたしました。
企業や公共放送機関での指導実績豊かなコンサルタントが各企業の実態に合わせた図上演習の運営
要領を確立します。
弊社では、図上演習を独自に企画・運営できるようになることを目標としたコンサルティングを行
っています。
毎回、図上演習の度にコンサルタントを呼ぶのではなく、自社のみで計画できる実力をつけて頂き
ます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://aegis-cms.co.jp/cpx
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発行人:株式会社イージスクライシスマネジメント
代表取締役 林 祐
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